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お漏らしがどうとか、タイムリーにもこんなSS書いてしまった…支援レス入れてもらえると有難いかもデス


「あ、あああ……よく、寝た」
 アグリアスの一日は、盛大な欠伸とともに始まる。
 ただし、周りに確実に誰もいない時に限る。誰かがいるときには、彼女は決して
そのような緊張感の無い表情を見せない。
 名門貴族出身の淑女というプライドが、そんな態度を他人に見せることを許さない
のである。
 もっとも、それをくだらない見栄だと指摘されると、沸騰した湯沸かし器のごとく
逆上するのが彼女の性格であるが。
「ううん、久々にぐっすり眠れた。ここ数日行軍続きだったからな……」
 アグリアスはひとりごちた。
 何日かぶりの投宿。この日の朝は彼女に仕事は割り振られていなかったので、
疲れを癒すべくいささか遅くまで寝ていたというわけだ。
 同室のラヴィアンやアリシアは、とっくに起き出して仕事――荷物積みだの装備の
整理だの――に向かっている。
「んん。まだちょっとボーっとしてるな……ゆうべの酒が残っているのか」
 彼女は頭をブンブンと振った。
 久々にゆっくり寝られるとあって緊張感が緩んだか、普段あまり酒を口にしない
アグリアスも、昨夜は少々深酒が過ぎた。
 そのままいい気分になってベッドに向かい、ばたんきゅうだったのである。
「……しかしこのまま惰眠を貪ってるのもいかがなものか」
 天性、彼女は働き者である。
 いかに仕事がないとて、そのままごろごろしているのはなんとなく落ち着かない。
「ま、とりあえず起きるか……食事もせねばならんし――ん?」
 もそもそとベッドから這い出ようとしたその時。
「……これ……は?」
瞬間、それが何か、アグリアスは分からなかった。
 いや、正確には分かりたくなかった、のである。
「まさか……」
 ベッドから這い出ようとしたその時、下半身にちょっとした違和感を感じた。
「こ、こ、こ……」
 アグリアスの表情はラーナー海峡の海面のように青ざめていた。
 寝汗にしてはいやに腰まわりにだけ集中した水分。
 鼻をつく異臭。
 そして、シーツにはうっすらと、薄黄色の染み――。
「こ、こんな、こんな……!」 
 そこから導きだされる結論は、ただ一つしかなかった。
 しかし、痩せても枯れても、異端者一行となってさえ、彼女は誇り高きルザリアの
オークス家の令嬢、アグリアスなのである。
 「その私が! 私ともあろうものが!」
 しかし、目の前の現実は冷たく彼女をあざ笑っている。
「この私が! 二十歳もとうに過ぎた私が!――って、いやいや二十歳過ぎたのは
ついこないだだ。――って、そんな見栄はどうでもいい!」
 ノリツッコミなどかましている場合ではない。
「私ともあろうものが! ね、ねね、寝小便を……したと……いうのか!!」
 それだけのことを認めるのに、もってまわった言い回しで大仰に騒がねばならん
とは、お貴族様とは厄介なものだと、その場にムスタディオでもいたら皮肉の一つも
かましていたであろう。
「まずいまずいまずいまずいまずい」
 アグリアスは、さながら東洋の修行僧のようにベッドの上にこちんと正座し、しばらく
そればかり繰り返していた。
「こ、こんなことが部隊の連中に露見しようものなら……」
 穏健なラムザやアリシアなどは、まだしも慰めの一つも言ってくれるやも知れぬ。
だが、噂好きのラヴィアンや皮肉屋のムスタディオ、相性の悪いメリアドールなどに
知られようものなら、むこう十年ぐらいはこれをネタにからかわれ続けるだろう。
 聖騎士の矜持も面目も木っ端微塵になること請け合いである。
「い、嫌だ、そんなのは!!」
 嫌だと言ってもどうすればいいのか。
「と、とにかく何とか隠匿せねばならん。確か今日の予定は……」
 アグリアスはベッドの脇のぜんまい時計に目をやった。
「九時か……出発は十二時とラムザが言っていたな。……いやまてよ、たしかこの宿は
十一時にはリネン係がシーツを変えに来るはずだ……つまり……」
 猶予は二時間しかないことになる。
「洗って乾かすなど、二時間では無理な相談だな。……第一そんなことをする場所もない。
……うむむ……」
 その時。
「あー、忘れ物した!」
「うわぱぁッ!!!」
 部屋に飛び込んできたラヴィアンを見て、アグリアスは奇声を上げて慌てて布団にもぐり
こんだ。当然ながらラヴィアンは仰天している。
「な、なんですか隊長いきなりでっかい声出して。――てか、起きたんですか」
「い、いや、えーとその、なんだ……」
 必死に自然体を装おうとアグリアスは言葉を探したが、すでにラヴィアンは盛大に怪訝な
顔をしてアグリアスをまじまじと眺めている。
「なんか、顔色悪いですよ?」
「う、うん、えーと、あれだ、昨夜の酒がちょっと残ってて……」
「あー、二日酔いですか。なんだったらあたし、お薬貰ってきましょうか?」
 幸いラヴィアンは、あまり疑わなかったようだ。
「い、いや、そんなに酷くないから、少し大人しくしてれば治るだろう。……お前こそ、どう
したんだ。仕事は?」
「いや、ちょっと忘れ物しちゃって。……ああこれこれ、ロープ切り。いやぁ、今朝は大変
ですよぉ。昨日倒した山賊団から奪った戦利品、あれの整理でてんやわんやで」
「ほ、ほう、そうか」
「隊長、今日ローテ外で幸いでしたねぇ。男どもは伯やらベイオさんまで総出ですよ」
「ふーん、全員出てるのか」
「ええ、男子部屋空っぽ――って、あたしも油売ってらんないな。そんじゃ隊長、お大事に」
 喋るだけ喋ると、ラヴィアンは階下にすっ飛んでいった。
 アグリアスは汗だくで起き上がった。
「あ、あ、危なかった……」
 寿命が縮まるとはこういう心境なのだろう。
「う、ううむ、ぐずぐずしていられんな。全員出払っているとはいえ、今みたいに誰か来ない
とも限らん。さっさと何とかしてしまわないと……」
 だが、どうしようと言うのか。
「洗って乾かす暇などない……かといって、シーツとマットごと始末したらこれはこれで宿の
ものが騒ぐだろうし……」
 アグリアスは狂ったように頭を働かせた。
「別の液体をこぼしたかのように誤魔化す……これもおかしいな。水なり酒がほしいなら、
井戸か食堂に行くのが自然だし……うむむ」
 その時、アグリアスの脳裏に、先ほどのラヴィアンの言葉が蘇った。
(――男どもは伯やらベイオさんまで総出ですよ。男子部屋は空っぽ――)
「男子部屋は空っぽ――」
 アグリアスはその意味を反芻し、
「スケープ・ゴート……」
 とひとりごちた。
 スケープ・ゴート。すなわち、シーツとマットをすり替え、誰かに罪を被ってもらうのだ。
 さすがに女子を身代わりにするのは、たとえメリアドールのように相性の悪いものでも
気が引ける。
 しかし男子ならば。しかも、今、男子の部屋はもぬけの殻なのだ。
(――いや、しかし、いくら男でもそれは悪辣すぎやしないか) 
 ラムザと付き合って、ずいぶんものの考え方が柔軟になったとはいえ、基本的に彼女は
曲がったことがキライである。
(だがそうかと言って、他にいい手もない――寝小便が知れ渡ってもいいのか……)
 やはりそんな破目はご免である。採るべき道は一つしかない。
 彼女は頭を掻き毟った。
「ああ、聖アジョラ様! お母様! オヴェリア様! お許しください、アグリアスはやはり、
そんな恥辱には耐えられませんッ。――よし、懺悔終わり!」
 決心が変わらないよう、彼女は一気にまくしたてた。
 賽は投げられたのだ。
「ラヴィアンのように戻ってくるものがいないとも限らん。慎重にやらねば……」
 シーツとマットを担ぎ、アグリアスは廊下の様子を窺った。
「今の時間なら、女中も下の洗い場の仕事が忙しいはずだ……掃除に上がってくるには
まだ早いしな……よし!」
 勇躍、アグリアスは一歩を踏み出したが、大柄な彼女が布団を抱えて廊下をこそこそと
歩く姿は、どう見ても挙動不審であった。
 男子部屋は、女子部屋のはす向かい、10メートルほどのところにある。
 大した距離ではないのだが、乾坤一擲のアグリアスにとっては1キロにも感じられる道程
だった。首尾よく男子部屋にたどり着いた時には、前身汗まみれになっていた。
「ふーう……やれやれ、これほど肝を冷やしたのは久しぶりだ」
 シーツとマットを床に下ろすと、アグリアスは深い吐息をついた。
「ふむ……確かに誰もいないな……さて、とっとと摩り替えて、部屋に戻らなくては」
 が、ここで問題が発生した。どのベッドに誰が寝たのか、それが分からないのである。
 こんな際、摩り替えるのなど誰のでも良さそうなものだが、そこはアグリアスも封建時代の
女性である。無意識の選民思想が頭をもたげた。
「いかに何でも伯に濡れ衣を着せるわけにいかんし……ベイオ殿とラムザも除外だな……
となると、ムスタディオ、ラッド、マラークか……」
 勝手にターゲットにされた3人にとってはいい面の皮である。
「しかし困ったな、みんな私物を一切持って出たせいか、誰がどこに寝たのやら……ん?」
 アグリアスは、一つのベッドに目を向けた。その枕元には、小さな袋が置いてある。
「なんだこれは、良い香りがするが……ああ、そうか、ムスタディオの奴が、柄にもなく寝る
前にポプリの匂いを嗅ぐんだとか言って、匂い袋をちらつかせていたっけ。するとここは、
ムスタディオが寝たベッドか……」
 アグリアスは周囲を見渡し、ベッドを見下ろし、そして声を絞り出した。
「許せ、ムスタディオ――」
 午前十一時。出発一時間前になって、ラムザ隊は宿のホールに全員が集まった。
「あ、隊長、二日酔い、もう大丈夫ですか?」
「あ、ああ、なんとかな」
 ラヴィアンの問いにアグリアスはぎこちなく頷いた。そこにラムザも割って入る。
「――あれ、アグリアスさん、調子悪かったんですか」
「う、いや、大した事ではない。心配には及ばんさ」
 と打ち消したが、その笑いは引きつっていた。
 それに気付いたラムザが何かを言おうとした時。
「お客様」
 宿の女中が、ラムザに声をかけてきたのだ。
 瞬間、隊に動揺が走る。
 なにしろ一向はおたずね者集団なのだ。なるべく派手な行動を控えているとはいえ、
(まさか知られたか?)という緊張は、いつも付きまとっている。
 が、女中はしかめ面をして、一枚の布を差し出したのだ。
「困るんですよねぇ、こういうことされると」
「え――は? なんですこれ?」
 ラムザは目を丸くした。
「何ですって、ベッドのシーツですよ。見てくださいこの染み! お客様の中で、おねしょを
なさったかたがいらっしゃるようで」
「オネショぉ!?」
「うわ、なっさけねぇ、誰だよ! ……つーかお姉さん、どこの部屋にあったの、それ」
「8号室ですけど……」
「えー、8号室って男子の部屋じゃない! うんわー、えんがちょー!」
「8号室の、どのベッドだよ?」
「入り口から三つ目、窓際のベッドです」
「えー、三つ目って! あれだよ! ラムザが寝てたベッドじゃねぇか!」
「なッ!」
 危うくアグリアスは、そんな馬鹿な! と叫ぶところだった。
 が、その場の空気はアグリアスの動揺などそっちのけであった。
「うわー、マジかよ、やっちゃったなー、ラムザ!」
「ち、違うよ! 僕オネショなんかしてないって!」 
「おいおい今さら見苦しいぞぉ! 男なら認めちまえって、なぁ!」
「本当に違うって! なんでこんな……」
「えー、ちょっと幻滅かも……」
「ま、まぁあれですよ! ラムザさんもほら、久しぶりの投宿で緊張が緩んで……」
「緊張緩んだって、いい大人が寝小便はねぇよなぁ!」
「だから違うんだぁぁぁ!!!」
 蜂の巣をつついたようなその場を、さすがに年の功で収拾したのはオルランドゥであった。
「まあまあ諸君。長い人生、誰でも過ちはあるさ。そう責めてやるな……で、女中のお嬢さん、
なにかね、洗濯代でも出せばいいのかな」
「はぁ、そうして頂ければ」
「ふむ、じゃぁラムザ、払ってやりなさい」
 ラムザは完全にふてくされていたが、それでもしぶしぶ金貨を取り出し、女中に渡した。
「はい確かに。では皆様、よい旅を」
 女中は貰うものだけ貰うと、そそくさと退散した。
 ラムザは怒りと屈辱で口も利かない。オルランドゥが苦笑して、かわりに一同に指示を出した。
「では、出発しようか、諸君」
 アグリアスは隊の最後列で、「なぜ」という思いと、ラムザへの慙愧の念で消え入りそうに
なっていた。
「アグリアスさん、いらっしゃいますか」
 その夜、一向は別の小さな町の宿に投宿していた。
「――ああ、ラムザか、どうぞ」
 今度の宿は個室が多く、アグリアスの割り当ても個室であった。
「顔色が悪いな……」
 入ってきたラムザを見て、アグリアスは心からいたわりの声をかけた。誰も知らないが、
確かに彼女のせいでラムザは憔悴しているのである。
「最悪な一日でした……物証がある以上、いくら反論しても無駄ですしね」
「そ、そうだな――」
 まるで自分が責められているような心持になり、アグリアスは面をそむけた。
「で、な、何か用か」 
 その話題に触れられないように、アグリアスはラムザの用件を引き出そうとした。何か
相談したいと言うのであれば、なるべく乗ってやろうというつもりでもあった。
「ええ。……いや大したことじゃないんですが」
 ラムザはおもむろに座りなおし――
 そしてその次の言葉は、アグリアスを凍りつかせた。
「アグリアスさん、今朝、僕らの部屋に入りましたよね?」
「――ッ!?」
 アグリアスの目が見開かれ、ルカヴィでも見たかのようにラムザを凝視した。
「な、なな、なぬを――! 突然!」
「くどいようですけど、僕は寝小便なんかしてません。ということは、誰かがシーツとマットを
摩り替えたということになります」
「そ、それが私だと言うのか? そんな証拠がどこに――」
「……女中からシーツを突きつけられた時、尿の臭い以外に、微かですがフローラルな
匂いがしたんですよ。あの匂い、なんだろうとずっと考えてたんですが、分かりました。
――シャンタージュの匂い、だとね
「あ……」
「ウチの隊で、シャンタージュ使ってるの、アグリアスさんしかいませんよね? 僕は寝小便
なんかしていない、しかるに誰かが摩り替えた、昨夜は僕ら以外、あの宿には止まっておらず、
そしてそのシーツからシャンタージュの匂いがするということは……」
 ここで強弁のひとつもして、そんなの知らんということも、アグリアスには可能だったはずだ。
しかしやはり彼女は、嘘のつける女性ではなった。彼女は脆くも涙目になって、
「す、すまん――そうだ、寝小便をしたのは私だ――私が摩り替えたんだ……」
「やっぱりね。……しかし何で僕だったんです?」
 ラムザは少し、口調を険しくした。
「違う! 貴公じゃない! 貴公を狙ったんじゃないんだ! 本当は……これも誉めらた話じゃ
ないが、ムスタディオを狙ったんだ。ベッドの上に、奴の匂い袋があったから……」
「ああ、あれですか。――昨夜寝つけないんで、ムスタから借りたんですよ。そういやそのまま
枕元に置きっぱなしだったかな」
「それでか……だがいずれ、私は騎士として、いや人間として恥ずべきことをしてしまった……」
 アグリアスは肩を落とし、
「き、貴公、どうするのだ、こ、このことを、皆に――?」
「さぁ……」
 ラムザはニヤニヤと、たちの良くない笑いを浮かべた。
「どうしようかなぁ?」
 アグリアスは背筋が寒くなって、
「頼む! お願いだ! 何でもする! キツイ儲け話でも何でも! だから! 皆には――!」
「何でもする? 本当に?」
 ラムザはますますニヤニヤして、
「それじゃぁ……こうしようかな」
「ひっ!?」
 次の瞬間、アグリアスはベッドに押し倒されていた。
「な、何をする――!」
 アグリアスはかすかに抗ったが、ラムザは構わず、
「だって最近、二人っきりでいられる時間、全然ないじゃないですか」
 いくらか甘えるような声で、ラムザはアグリアスの耳に吐息を吹きかける。
「そ、そそ、そんなところに息を! じゃなくて! ひ、卑怯じゃないか! こんなやり方!」
 アグリアスの抗議にもラムザはしれっとして、
「だって僕卑怯者だし。異端者だし」
「な、何を開きなおっとる!」
「第一、卑怯って言うなら、オネショを他人に被ってもらうのは卑怯じゃないのかなぁ?」
「だッ!! ぐ、そ、それは、しかし!」
「おまけに僕だって、精神的苦痛を蒙ったんですからね……すこし憂さ晴らしさせてくれても
いいじゃないですか……もともとアグリアスさんが原因なんだし」
「だ、だからってその! こんなの――!」
 ラムザはここで急に真顔になって、
「僕のこと――嫌いですか?」
「う――ぐ、貴様、そんな聞きかた、反則――!」
「嫌い、ですか?」
 なおも畳み掛けるラムザに、アグリアスはとうとう白旗を揚げた。
 好きにしろ、とばかりに前身の力を抜いたのだ。
「と、いうわけで、今夜は寝かさないと言う刑を執行しますね」
 ラムザは、張り倒したくなるほど明るい笑顔を浮かべて、そう宣言した。
「どうしたんです、隊長」
 その翌朝。
 目の下に見事に不健康な隈をこさえたアグリアスに、アリシアが話しかけてきた。
「なんでもない」
 そっけなく、アグリアスは答える。
「おい、ラヴィアン、ちょっとその、生卵と……そっちはポーキーの肝か、それをくれ」
「ええ? 朝からこんな重たいもの食べて大丈夫ですかぁ?」
「見たところ寝不足のようですけど……食欲はあるんですか、変ですねぇ」
「うるさいな、ほっといてくれ」
 あからさまにアグリアスは、機嫌が悪かった。
(あたた、腰が痛い……うう、ラムザめ……本当に一晩中私をめちゃくちゃにしおって)
 もっともそれがいやなのかと言うと、そうわけでもない。
 アグリアスは奇妙に浮わついた感覚の中にいた。そこへ、
「おはようございます、アグリアスさん」
 いたって朗らかに、昨夜の疲れなど微塵も感じさせない爽やかさでラムザが現れた。
「いよう、オネショの大将! よく眠れたみたいだな!」
 早速、マラークがひとしきりからかう。
 ラムザはそれへ、屈託のない笑顔を向けて、
「たまには、オネショも悪くないぜ」
 などと朗らかに切り替えした。
(立ち直りの早い男だ――)
 アグリアスはぼんやりとラムザを眺め、苦笑いし、それから窓の外の空に目を向けた。
 今日もいい天気になりそうだ――奇妙な疲れと充足感を感じながら、彼女はそんな事を
考えていた。
                                      おしまい
最終更新:2010年03月28日 16:33