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ある日、ラムザ一行の食卓にマインドフレイアの活け造りが現れた。
ゲテモノ好きの(と言うと怒る)アリシアが腕によりをかけて作ったのだ。
食糧難の事情から蛙も蛇もモンスターも調理してきたラッドの手解きもあって、
その晩の夕食はとても楽しいものとなった。

が、さすがにマインドフレイア丸ごと一匹はボリュームがありすぎましたので、
あまり味のよろしくない頭部を残して生ゴミ処分といたしました。

夜が更け、皆が寝静まった時刻、アグリアスはふと尿意を覚え、
同室のアリシアとラヴィアンを起こさないよう注意しながら、そっとトイレに立ちました。

コン、コン。
礼儀正しいアグリアスは、もう夜分だというのにわざわざトイレの戸をノックします。
当然、こんな時間に返答があるはずもなく、アグリアスはノブを掴みました。
コン、コン。
ところが、トイレの内側からノックが返ってきたのです。
恐らくアグリアス同様、夜更けにトイレに来た何者かが使用中で、
まさかこんな時間にトイレでかち合うなどと想像していなかったため、
アグリアスの丁寧なノックに驚き、返事が送れてしまったのでしょう。
そう納得したアグリアスは、中の人が出てくるまでしばし待つ事にいたしました。
廊下の窓から射し込んでいた月明かりが雲にさえぎられ、
そしてまた雲が途切れて月明かりが再び廊下を照らすほどの時間が経ちましたが、
先に入っている方は一向にトイレから出てくる気配がありません。
耳をすませる、などといった下品な真似はしておりませんが、
用を足すためにどうしても出てしまう音というものがまったく聞こえないのも奇妙。
不審に思い、アグリアスは再びノックをしました。
すると今度はすぐに返事のノックがされます。
ずいぶんと長い用の様子で、アグリアスは自分の用の焦りからではなく、
親切心からこのように声をかけました。
「もし、ずいぶんと長くおられるようですが、お加減でも悪いのですか?」
コン、コン、とノックの返事がありました。
しかしそれでは「はい」「いいえ」のどちらなのか解りかねます。
どうしたものかと困ってしまったアグリアスですが、粘り強く訊ねました。
「失礼ですが、例え人気のない時間でも、
 一人で長時間トイレを独占するというのはいかがなものでしょう」
コン、コン。またです。返事をする気があるのかないのか、ノックで応えるだけ。
さすがのアグリアスも、胸にほんの少しの苛立ちをつのらせました。
もう少し強い語調で言ってやるかと思いましたが、
ノック以外まったく反応をしないという奇妙な行動が不安を誘います。
「声で返事をできない事情でもあるのですか?」
コン、コン。やはりノックで応えてくる。これは肯定の意なのだろうか。
(もしや声が出ないほど具合が悪く、ノックするのが精いっぱいなのでは?)
そう思い至ったアグリアスは、強めに戸を叩きました。
「もし、もし、大丈夫ですか? 失礼ながら、開けさせていただきます」
ドアノブを回し、戸を引くと、どうやら鍵がかかっていないらしく、
すんなりと開いてしまいました。
アグリアスはすぐさま人の姿を探しましたが、トイレの中は空っぽです。
まさか、誰かのイタズラだったのでしょうか?
しかしイタズラにしても、どうやればこんな真似ができるのか見当もつきません。
「奇妙な事もあるものだ」
いぶかしがりながらも、そろそろ下の方がつらくなっていたアグリアスは、
戸を静かに閉めて、鍵をかけ、寝巻きとパンツをおろして、トイレに座ります。
コン、コン。
すると、外からトイレの戸を叩く音。
「……入っている」
あまりにもできすぎたタイミングに、アグリアスはわずかな警戒心を作ります。
コン、コン。
「入っている、もうしばし待ってくれ」
そう言いながら、アグリアスはトイレから立ち、パンツをはき直しました。
ドン、ドン。戸を叩く力が強くなります。
「入っていると申しているだろう。もう夜も遅いのだ、静かにせぬか」
ドンドンドンドンドン。
やはり悪意あるイタズラを何者かが行っているのだ。
アグリアスは右手を強く握り、左手でトイレの鍵をはずします。
瞬間、バタンと勢いよく戸が引かれました。
咄嗟に両の拳を構えますが、人の姿はやはりありません。
しかし人がいるとするならば、開いた戸の裏側の小さな空間に隠れているのでしょう。
そんな小柄な人間は、仲間内ではラファくらいしか思いつきません。
「ラファ……か?」
こんなイタズラをする娘ではないと承知していながらも、確認のため問います。
返事はありません。
じりじりとアグリアスは歩を進め、ぬるり、足元に嫌な感触が。
どうやら水で濡れているようで、しかも妙に粘性があるように思えます。
いったい誰のイタズラか! そう思いながら、確認のため顔を下に向けます。
人間の頭ほどの大きさの何かが、足元で蠢いていました。
窓から射し込む月明かりは、再び雲に隠れてしまって、
足元にいる物がいったい何なのかよく解りません。
ともかく人間ではない事は確かであったため、蹴りつけてやろうとしました。
ところが足元のそれは突如、アグリアスの顔面にヌルヌルとした液体を放ちます。
「ぐぷっ!?」
視界をさえぎられ、アグリアスはのけぞりました。
いったい何をされたのか、さすがの彼女も混乱に陥り、尻餅という醜態をさらします。
「いったい、何だ……!」
素早く立ち上がろうとした瞬間、足首をヌルリとした物が絡め取ります。
そのおぞましい感触に、アグリアスは悲鳴を押し殺しました。
そのおぞましいものはアグリアスの白い足首を這い、すねを通り、太ももにまで至ります。
チラリと見た影は、とても足の入ったズボンに入ってこれる大きさではなかったというのに!
「ひぃっ、うぁあ!」
たまらずアグリアスは悲鳴を上げました。
太ももから、足の付け根にまでやってきたそれは、今度は上半身にまで這い上がろうとします。
あまりの気色悪さに涙をこらえながら、アグリアスは寝巻きの中のそれを引っ掴むと、
トイレの中に投げ込んで、すぐさま流してしまいました。
『……イア……! ……イア!』
流れていく水音に混じって、人間の発音ではないおぞましい声が聞こえました。
それの意味する所など、とても理解できようはずがありません。
ただ、どうしようもなく恐ろしい、人智の範疇を超えた存在である事は確かなように思えます。
「助かった……のか……」
心地よい安堵感のせいか、アグリアスの下腹部はほんわりと温かくなりました。
その温かさがあまりにも気持ちいいので、うっとりとしたアグリアスはそのまま意識を手放してしまいます。

翌朝。トイレの前で寝小便を垂れて、顔と髪を黒く汚したアグリアスを発見したラムザは、
大慌てでアグリアスを起こし、すぐお風呂に入るよう指示しました。
それから彼女の部屋に忍び込み、アリシアとラヴィアンが起きないように気を配りながら、
アグリアスの着替えを持ってお風呂場へと行きました。

こうして何とか面目をラムザ以外に保つ事ができたアグリアスは、
昨晩の出来事を寒々とした様子で語り聞かせます。
ラムザも、お漏らしをした言い訳にしては、あまりにもアグリアスが怯えているので、
これは真実なのだろうとうなずいて、その正体を思案します。
これで怪異が終われば、この時限りの不思議事ですんだでしょう。
しかしラムザ一行が旅する先、毎夜毎夜、仲間の誰かがそのおぞましいものに襲われるのです。
噛んだり引っ掻いたりと、直接傷をつけるような真似はしてきませんが、
あまりの恐ろしさに皆恐々としてしまいます。

ところがある晩、レーゼがそのおぞましいものを引っ捕まえました。
正体は身体が4分の1ほどしかないマインドフレイアです。
粘性のある液体を垂らしながら這い回ったり、墨を吐いて目をくらませたり、
触手で撫で回すなどして嫌がらせをしてきたのは、
すべてラムザ達に身体の大部分を食われた恨みを晴らすためでございました。
ドラゴンだけでなく通常モンスターをも従えようと魔獣語をセットしていたレーゼは、
その事情を見事に聞き出し、どちらが強者でどちらが弱者かを叩き込み、
見事にそのマインドフレイアを屈服させたのでした。
「ちなみにこの子の名前はゴンザレスと言うそうよ」

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ゴンザレス
マインドフレイア
レベル99

その晩、食べ残してもいいようにとマインドフレイアの丸焼きが振舞われましたとさ。
しかしこれで安心してはいけません。
ほんのわずかな頭部だけから蘇ったゴンザレスです。
触手の一欠けらでも残そうものなら、ゴンザレスは何度でも蘇るさ!
最終更新:2010年03月28日 16:40