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亞蝶の小話部屋ですー。

~タマゴの殻の外は~

登場人物紹介
アーモンド(リーフィア♀) ただいま絶賛反抗期中。



はじめは、ただドロドロの液体だった。
その液体は、除々に形を持っていく。
意志が生まれ、感情が生まれ、知識が生まれた。

窮屈な殻の中で、私はただ身を丸めて眠っていた。
時々寝返りをうったり、退屈で動いている時は、空間も一緒に揺れる。
その度に、“外”から驚いた声が聞こえた。

一回目を覚ましては、また眠る。
この空間の中は、永遠に時が止まっていた。
正確に言えば、そう感じたと言ったほうがいい。
それはただの勘違いで、実際に時が止まっていたら、とんでもない事だから。

一度だけ、ぽつりと考えた。
この空間の外は、どんな世界なんだろう。
この壁を突き破ったら、どんな光景が広がるんだろう。
そもそも、この空間以外に、“世界”はあるのだろうか?

この中は真っ暗。
何にも無いし、一人ぼっち。
ここから出たいとは思わなかった。
もし出ても、何にもないと思ったから。

だけど、何かがすぐ近くにあると感じた。
暖かくて、大きな何かが。

実際それが何なのか分からない。
どんな形をしているんだろう?
どんな物なんだろう?

そもそも、自分は何なんだろう?

真っ暗。
自分の姿(かたち)さえ分からない。
自分の声さえ分からない。
ていうか、“コエ”って何?
“カタチ”って何?

“ジブン”ッテ何?

ある時、外から“コエ”が聞こえた。

『さぁ、出ておいで』

出たい。
唐突にそう思った。
今までに無い芽生えて来た感情。
嗚呼、これは何なんだろう?

何故だか、とても“サビシイ”―

私は、邪魔な壁に向かって思い切り頭を打ちつけた。
もう一回。
またもう一回。

頭を打ちつける度に、乾いた音と共に壁に白い線が伸びる。
初めて見た“シロ”という色。
そして、大きく息を吸うと、思い切り“シロ”に頭を打ち付けた。

―パキィッ

視界が、“シロ”に包まれる。
眩しい―

最初に見えたのは、前に感じた暖かい物だった。

その暖かい物は、こう言った。

「お誕生日、おめでとう。よろしくね、アーモンド」

アーモンド。
それが、自分の名前なのだ。
私はアーモンド。
それ以外の何者でも無い。

私はここに存在した。


―んで、幾月。

何か退屈。
姿が変わったのはいいが、何故か退屈だった。
風景には見飽きたし、マスターのスパルタ特訓は厳しい。
ふと、ここから抜け出したいと思った。

新しい騒動まで、後三日。

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最終更新:2009年08月24日 06:48