ゾンゲリアなるあまり意味をなさない邦題が付されているが、原題は「DEAD & BURIED」である。死んで、埋められた、ということか。アメリカでは、近年火葬が増えつつあるとはいえ、土葬が主流である。それにはアメリカやヨーロッパでは、キリスト教における死者は復活するという信仰と齟齬のない土葬が標準化したという経緯がある。埋葬は死後数日経ってから行なわれることが多く、その間遺体を保存しておくための技術であるエンバーミングも一般的であるのだろう。なお本稿は映画「ゾンゲリア」の内容に触れています。
さて、そうするとこの「DEAD & BURIED」は非常に喚起力に富んだ題であることがわかる。死後、埋葬までに数日を経るのは自然であるが、敢えてその隔たりに焦点を絞っているようにも感じられる。その数日間こそが、エンバーミングを施す葬儀屋にとっての晴れの舞台である。そして、本作の鍵を握る葬儀屋ドッブスは、それが数日間で終焉を迎えることに飽き足りなかった。彼はその晴れがましい舞台がずっと続いてほしいと夢想し、そのために行動を起こした。まさに本作で描かれるのは、人が死んでから、埋められるまでのドッブスにとっては夢のような世界である。
だが当然ながら、埋められないかぎり死者は復活しない。埋葬を無限に先送りされることは死者にとって、土葬が根づいた宗教的背景からみて甚だ迷惑な事態であろうと推し量られる。
ジャンルとしてのゾンビ映画という視点では、姿かっこうからは普通の人との違いがわからないゾンビが、生きている人のように普通に生活しているという設定は特徴的である。
結局、ゾンゲリアなる邦題にはルチオ・フルチの「サンゲリア」をもじったというほかに意味はないのだろう。また、「ルチオ・フルチの新ゾンゲリア」(原題:The Murder Secret)という映画もあるが、お察しのとおり、「ゾンゲリア」(原題:DEAD & BURIED)とはいささかの連関もないし、監督がルチオ・フルチというわけでもない。(2013-11-09)