山田 気の真宵 能力原理後編



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※注意!
このSSは山田気の真宵の能力原理の後編となります。
前編をまだ読んでいない人はhttp://www25.atwiki.jp/akatsukidng/pages/29.htmlから能力原理を読みましょう。
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前回までのあらすじ:
自分が過去に起こした事件から逃げ、寂れた温泉街で夫と二人慎ましくも幸せな日々を送っていた山田気の真宵。
しかしある日、彼女のもとに十年前の事件について話したいことがあるという男があらわれ………

「そんな!あなたの言うことが正しいとすると私が十年前に刺したあの人は実は異世界からやってきた魔王の化身で、魔王を刺殺した私の包丁には無敵の魔王殺しの力が宿っているとでも言うの!?」
「そうとも、今あちらの世界を滅ぼさんとしている無敵の魔王を殺すことができるのは魔王の化身を殺した君と君の包丁だけなんだ!どうか私と一緒に来てあちらの世界を救ってくれ!」
「にわかには信じがたいわ。仮に本当だとしても私にはもう夫も子供もいるの。あの人達を置いて異世界に行く事なんてできないわ」
「話は聞かせてもらった!」
「ママー」
「あなた!それに坊や!」
「出会った時から君はミステリアスで何か隠しているのかとは思っていたけどあえて聞いていなかったんだ。それがまさかこんな秘密だったとはな」
「ごめんなさいあなた」
「ママー」
「それでも君と一緒にいたい気持ちはあるが、君にしかできないことがあるというのなら私は心を鬼にして冷たい言葉を告げよう。出て行ってくれ!人殺しと一緒に生活なんてできない!」
「ああ!そんな!あなたの眼に浮かんだ涙から気持ちを察するわ。なんて優しい人……ありがとう、ごめんなさい」
「ママー」
「元気でね。坊や……」
「旦那さんありがとう。話は着いたようだな。では早速異世界に行こう。それ」
「この人が能力を使ったと思ったら一瞬で風景が変わって異世界についたわ。目の前に立ちはだかる荘厳で禍々しい雰囲気の城……これが魔王の城なのね」
「この女が魔王を殺す力を持っているんだって?」
「可憐な人ですね」
「……」
「この人達は?」
「魔王を倒しにいくパーティの皆さんです。あなたには彼らと一緒に魔王を倒してもらいます」
「へっ、女に魔王が倒せるとは思えないね。俺一人いれば十分だ」
「すみません、この人口が悪くて」
「……」
「まあ、なんて感じの悪い人と感じの悪い人のフォローをする笑顔が素敵な人とよくわからない無口な人なのかしら。よろしくおねがいしますね」
「くくく、愚かな人間どもめ。この魔王城は五階層からなっており上に行くにつれてフロアを徘徊する魔物達は強くなっていく。さらに階段には魔王軍四天王が立ちはだかっておりこれを倒さねば私の下までたどりつくことはできないぞ」
「これは魔王の声!玉座からここまで声を届かせるとはなんてすごい魔力なんだ」
「恐ろしい声だけれどもどこかで聞いたことのある気もするわ。これは一体……」
「おやおや、お嬢ちゃんはビビっちまったのかい?」
「すみません、この人口が悪くて」
「……」
「ビビってなんかいません!もう、なんて失礼な人なんでしょう。少しだけ不機嫌になるけどそれよりも魔王の声のことが気になるわ。早くいきましょう」
「脚をひっぱるんじゃねえぞ」
「すみません、この人口が悪くて」
「……」
(くくく……来るか、気の真宵よ……)

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「ぐあああ!仲間を全員失いながらも魔王軍四天王を全て撃破し、ついには私まで殺すか気の真宵よ!」
「まさかあの感じのいい人が実は魔王軍四天王の一人でスパイだったのは驚いたけど、感じの悪い人が自分の命を犠牲にしてくれて突破できたわ!そして無口な彼と解説役はトラップにハマって死んだわ!死んだ人たちの気持ちを無駄にしない!ヤー!」
「グワーッ!」
「それにしてもこの感じは何なの?この感触にはすごく良く覚えがあるわ。まるで十年前に彼を刺した時のような……」
「気づいたか気の真宵よ。お前が十年前に刺したのは平和な世界というものを知るためそちらの世界に送り込んだ私の転生体。その記憶は私にもあるから実質的に私と同一なのだ」
「そんな!」
「君との触れ合いで私の中には戦いを憎む心と世界を滅ぼす心の二つが生まれた。どちらが正しいか決めかねたから君に運命を委ねることにしたのだ。どうやら私は世界を滅ぼすべきではないらしい」
「なんてこと!」
「ありがとう気の真宵よ。君のおかげで私は本当の気持ちに気づけた。さあ、私が死ぬことで魔王城を維持していた魔力が消え去り崩れてしまう。行くんだ」
「行かないわ!あなたみたいな寂しい人を一人にしていられない、最期まで私も一緒に居てあげる。そういう気持ちを込めてあなたを抱きしめるわ」
「おお、温かい……そうか、私が生きていたのはこの日のために……」
「ああ、城が崩れていく……あなた、坊や、ごめんなさい………」
「ところ変わってここは元の世界で私は気の真宵の旦那だ。ああ、気の真宵は無事だろうか」
「ママー」
「どうしたんだい息子よ夜空を見て。おや、あれはひときわ大きく輝く流れ星。そうか、気の真宵……君は……ありがとう。君との生活は幸せだったよ」
「ママー」
キラーン…………

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どうして母はいないのか、僕がそう尋ねると、父は決まって空を見上げてこのような昔話をしてくれた。
周りの人達は嫁に逃げられた男が描いた妄想だ、と馬鹿にしている。否定はできない、とても信用できない打ち切りマンガのような荒唐無稽な話だ。
でも、僕は信じている。
母は――本当に世界を救ったんだって。


※ご愛読ありがとうございました!単行本の発売は未定です!不祝誕生日先生の次回作にご期待ください!

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最終更新:2016年01月16日 12:37