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本編(年表以外)第弐話 - (2008/02/05 (火) 17:56:28) の最新版との変更点

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<p>本編第弐話です。</p> <hr> <dl> <dt><a href="menu:786"><font color="#0000FF">786</font></a> 名前:<strong><a href= "mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong> <font color= "#0000FF">◆80fYLf0UTM</font> 投稿日:2008/01/27(日) 15:20:02 ID:???</dt> <dt>・・・ロシア海軍の保有する、ただ一隻の原子力空母―――もっとも事実上、というだけで、その艦種は重航空巡洋艦となっていた<br> それが、ベーリング海という、構造体攻撃をはあまり関係のない海域に、巡航ミサイルを発射可能な艦艇を引き連れて出現していた<br> それに迷惑する一部の人々がその動きに気がついたころ、ほとんど形だけのIUEITA本部にある、使われることの無い一室を借用し、全権委員たちが集まっていた<br> パソコンの起動音と同時に、真っ暗な部屋の中にいる、数人の人間の体が、ゆっくりと浮かび上がる<br> 全員、それなりに年を食っているようで、腕には皺がある者も多い<br> 「―――聞いたか?」<br> 「ああ、聞いたよ、こりゃまた大変なことになってきたらしいな」<br> ようやく薄暗くなった部屋の中で、スーツに身を包んだ数人の男たちが壁に寄りかかったり、机を石にしたりしながら、思い思いの姿勢で楽にしている<br> 不思議と椅子に座っている人間はいなかった<br> 「佐藤……だったか? 異例だからな、あの男は」<br> 長身の男が、ネクタイピンの位置を微調整しながら、その発言に賛同する<br> 「まぁな―――執行官と委員を兼任。しかしなんと言っても身元が確りとしているんだ、血が繋がっていないと言っても、家柄だとかで親戚が相当数―――」<br> <br> <br></dt> <dd><a name="a787" id="a787"></a></dd> <dt><font color="#FFFFFF"><a href="menu:787"><font color= "#0000FF">787</font></a> 名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color= "#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong> <font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font> 投稿日:2008/01/27(日) 15:20:32 ID:???</font></dt> <dt>「妹もいるとか言っていたな」<br> 低い声で要らぬ補足しつつ、組んでいた腕を解き、さらに話を続ける<br> 「そのしっかりとした身元を作ったのは、あの男自身というよりも、日本政府のほうだろう、ゴーストを作るのは逆に向こうだと面倒だとかで」<br> 「もっとも、そもそも異例なのが日本政府だからな―――」<br> 吐き捨てるように言ってのけた割には、あまり悪意の感じさせない言葉が続く<br> 「―――中国政府の穴埋め…もとい、中国政府より必要だったから日本政府が加わっているわけだが…」<br> 話が脱線していることに気がつき、壁に寄りかかっていた一人が声を出す<br> 「そろそろ本題に戻ろう」<br> 壁に寄りかかり直して話を続ける<br> 「あの男が異例だとか、そんなことはどうでもいい……やつのやろうとしていることが問題だ」<br> 「そうだな、まだ“D”計画の続きをやろうとしている」<br> 「その通り…」<br> 感情がこもった声ではなかったが、多少怒りの成分を含んでいるようだった<br> 「どれだけの予算を捻出することになったことやら……それだけならまだしも、代償が大きすぎる<br>  マンハッタン島どころか、全世界にひろがるネントワークに高度な電子機器。軍民間の衛星に、これでもかという人類側の情報とを引き換えにしたんだ」<br> 「そして得られたものは何も無い」<br> 「そうでもない、審判の結果は聞かされていないが、どうやら彼らのほうは裁定をすでに下したらしい」<br> 少し笑いながら諭すような声を出した男が、持参したノートパソコンの操作を行う<br> ディスプレイの明かりに照らされて見えた彼の顔は、どうやらラテン系の人間らしい<br> 「後は彼…彼ら、というべきか―――の進めている、“A”計画の具合にもよるが、“D”計画の続行はある意味必要だろう」<br> 「……あの連中がいっていたことを知っているか?」<br> 「なに?」<br> わざとらしく間をおいて話し始めるので、聞く方の男はもう一度パソコンに向き直っていた<br> <br> <br></dt> <dd><a name="a788" id="a788"></a></dd> <dt><font color="#FFFFFF"><a href="menu:788"><font color= "#0000FF">788</font></a> 名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color= "#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong> <font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font> 投稿日:2008/01/27(日) 15:21:47 ID:???</font></dt> <dt>「曰く―――この仕事に宗教的な考えだとか、哲学的な考えだとかを持ち込むと、どうも面倒な方向に転びそう―――だそうだ」<br> 「確かに、あの男……いや、あの連中はそういう方向に肩まで浸かっているな」<br> 悪そうな笑みを浮かべるが、悪意はないようだった<br> その証拠に、次には肯定的な台詞を吐く<br> 「だが、そうでもしなければ仕事にならんだろう、あくまでやつらに勝つために、そういう趣向のシナリオも用意している……そうでもしなければならない相手だ」<br> 「経典の類の内容を再現してくるなどという馬鹿な真似をするとすれば、それは奴らの方だ―――」<br> 黙って話を聞いていた別の男が、年のためかしわがれた声で忘れかけていたことを掲示してみせる<br> 「―――我々と学者連中が、この一年足らずの間に導き出した仮説にのっとればな」<br> EIEやIUEITAなどの各種機関が公に創立される前から、空から降ってくるであろう存在を感知していた国連<br> そして、それらが地球に及ぼした微弱な影響や、その行動を下に、その目的やそれ以降の動きを、ある程度予測しておく必要があった<br> 実際に落ちてくるまでは何とも言えない状況ではあったが、その予測が現実となりつつある現状を前にして、この男の声もこわばる<br> 「……もっともだな、大体、仮に目の前に本物の神が降りてきても、跪くことすらしないような人間しか、この仕事には参加していないことだし」<br> 嫌味の様にも聞こえなくなかったが、本人は自身の言葉を他人がどう受け取るかよりも、襟元の形が気になるらしい<br> 第一、彼の言うように、宗教を信じているというだけでこの役職につくのは難しかった<br> 「まったく……映画に出てきたような科学技術に頼るエイリアンたちが、地球を焦土にして去っていくほうがずっと楽だというのに…」<br> 「あれは神だよ、能力的にも性質的にも、そういって差し支えないのだ、くそ!」<br> 明らかに何かを危惧するといった声で、必死とも取れる内容の文章を吐き出す<br> <br> <br></dt> <dd><a name="a789" id="a789"></a></dd> <dt><font color="#FFFFFF"><a href="menu:789"><font color= "#0000FF">789</font></a> 名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color= "#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong> <font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font> 投稿日:2008/01/27(日) 15:22:21 ID:???</font></dt> <dt>「神か…計画の秘匿名称の由来事態、相手が神だと認めているようなものだな」<br> 「アメリカのな……キリスト教徒といい、イスラム教徒といい、どちらも邪魔ばかりする」<br> 「仏教は?」<br> 「さあな―――敬虔な仏教徒というのを見たことが無い」<br> 「そういう意味では、“A”計画という秘匿名称……というか、あれは計画の意味そのままか」<br> まだ続けようとしたところで、別の誰かが代弁する<br> 「確かに、宗教的なものは感じさせないな」<br> 「“控訴者達(Appelat`s)”計画か……案外、あの連中ならどんな判決が下ろうとも、不服としないかもれないな」<br> それをまた誰かが笑う<br> 「元から我々は、どのような判決が下ろうとも、控訴なんぞする気はさらさら無い」<br> <br> <br></dt> <dd><a name="a790" id="a790"></a></dd> <dt><font color="#FFFFFF"><a href="menu:790"><font color= "#0000FF">790</font></a> 名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color= "#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong> <font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font> 投稿日:2008/01/27(日) 15:23:11 ID:???</font></dt> <dt>「計画名が“最後の審判(Doom)”だしな、誰がつけたんだ、こんな名称?」<br> 本当に不思議そうな声を上げる<br> 屈み込んだせいで、彼の浅黒い顔がパソコンのディスプレイに照らされる<br> 表情は特になかった<br> 「仮説が正しいとしたら―――おそらくは、そのとおりなのだろうが―――やつらの行動は絞られてくる<br> 「となると、場合によってはこちらの攻撃への報復を行い、最悪全面核戦争による殲滅戦もありうるが―――」<br> 続けようとしたところで、パソコンの前の男が口を開く<br> 「それは無いだろう、彼らが火器を持ち出さなかったことがそれを証明している」<br> 「ただ可能性は十分にある」<br> 「とりあえず、アメリカとロシアを捨てて様子を見ることになったが―――」<br> やるせない表情を見せる数人の同僚の顔を見て、多少言葉にオブラートをかぶせればよかったと後悔するかのように、一瞬口を閉める<br> 「―――とにかく…まぁー、忙しくなるな」<br> 結局曖昧な言葉で締めくくって次の人間に発言権を譲る<br> 「国連軍の類があればいいんだが」<br> 「国連軍? そんなもの無い方が良いさ、あったら“戦争”だ!」<br> ポケットから手を出しながら、一人の老人が声を荒げる<br> それに驚くことすらしない委員たちは、諭す風でもなく、呟くように話を進める<br> 「安心しろ、これは戦争ではない、それは何も知らない連中がやることだ」<br> 「不謹慎かもしれんが、我々がするのはただのゲーム。ルールは簡単、有るのは勝利条件のみ!」<br> 若干誇るような口調で喋る<br> 表情もそれに合わせて変化しているのだろうか?<br> <br> <br></dt> <dd><a name="a791" id="a791"></a></dd> <dt><font color="#FFFFFF"><a href="menu:791"><font color= "#0000FF">791</font></a> 名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color= "#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong> <font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font> 投稿日:2008/01/27(日) 15:24:10 ID:???</font></dt> <dt>「その勝利条件も簡単だな、人類という駒が“残って”いれば良い」<br> 「そのあたりは専門外だがな、我々の仕事はあくまで国家の総意を動かすことだ、どういうことをやるかは連中が決める」<br> 「にしては、やつら自身、忙しなく動き回っているがな」<br> 要するに、お互いの領分を互いに侵しあい、いざこざを繰り返していることに他ならない<br> 人類が一致団結するなどという妄想は、彼らの脳に欠片も無いのだろう<br> 「兵隊の数はこちらの方が圧倒的だが、イリーガルの数においては向こうが多い」<br> 「奴らについても連中のほうがよく知っている、我々は所詮政治的なもの―――それも、人類同士のことに関してだ」<br> 人と人との関係が、その共通の敵である者たちと人類の関係よりも、遥かに複雑で解きにくいものだ<br> そう言いたげな彼は、ここに敵が干渉してきた場合のことを考えてか、憂いの表情を浮かべる<br> 「あいつらに政治も何もないだろう」<br> 「そう願いたいものだ」<br> 「いっそのこと、全面戦争のひとつでも起こしてくれればよかった」<br> 「勝てるなら良いが、どうせだったら出来るだけ機会が多いほうが良いと思うがね」<br> 嬉しそうに脈動する声を聞いて、腹を立てたように低い声が聞こえる<br> 「ギャンブルではないぞ、政治とは」<br> 「政治じゃないだろう、これはむしろギャンブルに近いゲームだ、例えるならポーカー。ワンペアであがっても良いし、一思いにきってしまっても良い」<br> <br> <br></dt> <dd><a name="a792" id="a792"></a></dd> <dt><font color="#FFFFFF"><a href="menu:792"><font color= "#0000FF">792</font></a> 名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color= "#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong> <font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font> 投稿日:2008/01/27(日) 15:24:46 ID:???</font></dt> <dt>しばらく誰も口を開こうとせず、妙な間が続く<br> 「………ワンペアすら出来ていないのが現状だ」<br> 「というより、カードすらない」<br> 「配られていないのか、配られたのに無いのかすらわからんが―――」<br> 「急ぐ必要があるな、計画はやはり続けるべきだろう」<br> 一瞬の沈黙<br> しっかりとした議場でもお子地売るのに、まして議長のいない話し合いの場では、当然のように訪れるものだ<br> 「決を採ろう」<br> ノートパソコンを片付けながら、男が声を上げる<br> 「計画続行を黙認するか、アドミラル・クズネツォフを動かすか……」<br> この程度の会話を済ませただけで決を採ってしまうなど、全権委員と言えるのだろうかなどと考えるものもいたが、あくまで確認程度の意味合いしかない会議だった<br> 「動かす必要はないだろう」<br> 少しの間もおかず、前者に賛同する声が上がる<br> 「だな、黙認すべきだ」<br> 「空母を動かしたところで、フランスの一件と同じことになるだけだ」<br> 「ヤクーツクで何かがあっても、奴らがすべて消してくれるだろうし、その後に続く核攻撃の影響もある―――」<br> 「何も漏洩しはしない―――か…その通りだな」<br> 「前者賛成する」<br> 「私もだ、黙認しよう」<br> 「ははは、いっそのこと協力してみればどうだね?」<br> <br> <br></dt> <dd><a name="a793" id="a793"></a></dd> <dt><font color="#FFFFFF"><a href="menu:793"><font color= "#0000FF">793</font></a> 名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color= "#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong> <font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font> 投稿日:2008/01/27(日) 15:25:08 ID:???</font></dt> <dt>ふざけ半分の声だったが、決を取っていた男は生真面目に答える<br> 「彼はそのうち嫌でも日本に帰ることになる、その間は我々がことを進めよう」<br> 肩をすくめて見せ、すぐに全員が目礼を済ませて六にない荷物をまとめるか、服装を正しつつ、扉へとゆっくり歩き出す<br> 国連に設立された、人類最高意思決定機関の試作品、その基幹を担うはずであった中国を除く常任理事国と先進各国から選出された全権委員<br> 本来その直接管理下に置かれ、その手足となるはずであった執行官と各種機関<br> わずか一年足らずの間に計画され、ほんの数日で組織されたこれらの機関は、国連という枠組みをはずれ、各々の意志で動き始める<br> 人類の為に―――その意思は共通のものではあった<br> だが、どのような手段を用いるべきか、それは必ずしも一致してはいなかった<br> そして、一部の機関の動きが、別の機関にとっての、公意義で言う敵となりうる要素であることは明白となりつつある<br> だが、宇宙からの来訪者の動きよりも、それが味方と呼ぶに近いものであることも明白であった<br> 人類の為に――いったい何が最良の選択となりうるか、何のために其れを成すか、それすら未だ決めかねられている<br> 彼らはそれぞれの思惑と、そういった個人の感情よりも優先される、それぞれの仕事を抱えて、会議室を後にしていった<br> 問題なのは、保存か保管か現存か…はたまた存続か―――<br> <br> <br></dt> <dd><a name="a794" id="a794"></a></dd> <dt><font color="#FFFFFF"><a href="menu:794"><font color= "#0000FF">794</font></a> 名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color= "#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong> <font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font> 投稿日:2008/01/27(日) 15:26:05 ID:???</font></dt> <dd><br> <br> <―――盗聴終了><br> <br> <br> <br></dd> <dd><a name="a795" id="a795"></a></dd> <dt><font color="#FFFFFF"><a href="menu:795"><font color= "#0000FF">795</font></a> 名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color= "#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong> <font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font> 投稿日:2008/01/27(日) 15:27:17 ID:???</font></dt> <dt>―――鉛色の空から、大粒の水滴が地面に向かって叩きつけられて来る<br> もはや車どころか、人通りすら殆ど見なくなったアメリカ合衆国の首都近郊は、軍用車両が時折姿を見せるだけの、ゴーストタウンといった様相を呈している<br> 「録音は終わりましたか?」<br> 車の中はいたって静かだった<br> 運転手も乗客もスーツ姿で、どこかの会社の重役と、それを運ぶ取引先の人間を思わせた<br> 軍用車両の中であることを感じさせるのは、せいぜい併走している装甲車の姿程度だろうか<br> 「いいのですか? 公式のものではないといえ、全権委員たちを盗聴するなど―――」<br> 「いいんです。もとはといえば私も全権委員の一人ですし、なまじ、佐藤を名乗っているのだから会議の内容を聞かせてもらうくらいは…」<br> 「盗聴はそれ自体が罪を問われますが」<br> 「…相原君」<br> 「盗聴は警視庁勤務のころに君もやってたでしょうに、偉そうな事言わないでください」<br> 「………」<br> 佐藤がイヤホンを外して車に備え付けられている受信機に戻す<br> 「それで、どう致しますか、盗聴器の回収は―――」<br> 「いえ、必要ないでしょう……彼らは分かっていて盗聴器のチェックをしていないんだ」<br> 「はぁ……」<br> それでも心配でしょうがないといった表情の熊谷を横目に、佐藤はなにやら携帯をいじっている<br> 「―あっ、どうも……久しぶりです。暫くしたらそちらに……おや、もう準備は終わった。それはまた………では後ほど―」<br> ピッという聞きなれた電子音を最後に、誰も口を開かなくなる<br> 佐藤は電話の内容を反芻しながら、なにやら考え込み<br> 相原は黙ったままノートパソコンのディスプレイを眺めこんでいる<br> 熊谷はといえば、ハンドルを握る堤外、微動だにしない<br> 「―――あ、熊谷君…そこらへんの売店か自販機で、缶コーヒーとサンドイッチか何か買って来て下さい」<br> 「申し訳ありませんが……開いている店を探すこと自体が至難かと」<br> 別段残念そうでもない表情の佐藤だったが、いやな予感がするといった風の熊谷の反応は無駄にはならなかった<br> <br> 「ドーナッツでもいいので探してください、まだ便が出るのに時間はあるので」<br> <br> <br></dt> <dd><a name="a796" id="a796"></a></dd> <dt><font color="#FFFFFF"><a href="menu:796"><font color= "#0000FF">796</font></a> 名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color= "#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong> <font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font> 投稿日:2008/01/27(日) 15:43:06 ID:???</font></dt> <dt>これまでのおさらい<br> <br> ―――宇宙から何か落ちてきて困ってる<br> <br> 全権委員`s、ジャックとヨシュアの皆さん→「もういい加減面倒くさくなってきた」<br> 人類最高意思決定機関(仮名すら無し)→「その本来のたいそうな名前も、最初から最後までお飾り」<br> 佐藤→「こんな仕事になるはずじゃなかったorz もう帰りたい9<br> 執行官`s+書記or秘書官`s→「右に同じ」<br> 教授`s→「研究はしたい」<br> 国家元首`sと愉快な仲間たち→「○○国が…我々の祖国が……」<br> 軍人→「敵は宇宙人だ!」<br> イレギュラーな軍人→「人間の敵は、所詮人間だ!」<br> イリーガルな軍人→「この捕虜って人体実験に使うらしいよ」<br> 被験者のみなさん→「私は何か…されたようだ……」<br> EOLT(低度個体)→「………」<br> EOLT(高度個体)→「―――」<br> EOLT(高度すぎて人と話せる個体)→「……話す相手すらいませんね」<br> OMNI(製作者)→「   」<br> 神様→神は沈黙するのみ<br> <br></dt> </dl>
<p>本編第弐話です。</p> <hr /><dl><dt><a><font color="#0000FF">786</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2008/01/27(日) 15:20:02 ID:???</dt> <dt>・・・ロシア海軍の保有する、ただ一隻の原子力空母―――もっとも事実上、というだけで、その艦種は重航空巡洋艦となっていた<br /> それが、ベーリング海という、構造体攻撃とはあまり関係のない海域に、巡航ミサイルを発射可能な艦艇を引き連れて出現していた<br /> それに迷惑する一部の人々がその動きに気がついたころ、ほとんど形だけのIUEITA本部にある、使われることの無い一室を借用し、全権委員たちが集まっていた<br /> パソコンの起動音と同時に、真っ暗な部屋の中にいる、数人の人間の体が、ゆっくりと浮かび上がる<br /> 全員、それなりに年を食っているようで、腕には皺がある者も多い<br /> 「―――聞いたか?」<br /> 「ああ、聞いたよ、こりゃまた大変なことになってきたらしいな」<br /> ようやく薄暗くなった部屋の中で、スーツに身を包んだ数人の男たちが壁に寄りかかったり、机を石にしたりしながら、思い思いの姿勢で楽にしている<br /> 不思議と椅子に座っている人間はいなかった<br /> 「佐藤……だったか? 異例だからな、あの男は」<br /> 長身の男が、ネクタイピンの位置を微調整しながら、その発言に賛同する<br /> 「まぁな―――執行官と委員を兼任。しかしなんと言っても身元が確りとしているんだ、血が繋がっていないと言っても、家柄だとかで親戚が相当数―――」<br /><br /><br /></dt> <dd><a id="a787" name="a787"></a></dd> <dt><font color="#FFFFFF"><a><font color="#0000FF">787</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2008/01/27(日) 15:20:32 ID:???</font></dt> <dt>「妹もいるとか言っていたな」<br /> 低い声で要らぬ補足しつつ、組んでいた腕を解き、さらに話を続ける<br /> 「そのしっかりとした身元を作ったのは、あの男自身というよりも、日本政府のほうだろう、ゴーストを作るのは逆に向こうだと面倒だとかで」<br /> 「もっとも、そもそも異例なのが日本政府だからな―――」<br /> 吐き捨てるように言ってのけた割には、あまり悪意の感じさせない言葉が続く<br /> 「―――中国政府の穴埋め…もとい、中国政府より必要だったから日本政府が加わっているわけだが…」<br /> 話が脱線していることに気がつき、壁に寄りかかっていた一人が声を出す<br /> 「そろそろ本題に戻ろう」<br /> 壁に寄りかかり直して話を続ける<br /> 「あの男が異例だとか、そんなことはどうでもいい……やつのやろうとしていることが問題だ」<br /> 「そうだな、まだ“D”計画の続きをやろうとしている」<br /> 「その通り…」<br /> 感情がこもった声ではなかったが、多少怒りの成分を含んでいるようだった<br /> 「どれだけの予算を捻出することになったことやら……それだけならまだしも、代償が大きすぎる<br />  マンハッタン島どころか、全世界にひろがるネントワークに高度な電子機器。軍民間の衛星に、これでもかという人類側の情報とを引き換えにしたんだ」<br /> 「そして得られたものは何も無い」<br /> 「そうでもない、審判の結果は聞かされていないが、どうやら彼らのほうは裁定をすでに下したらしい」<br /> 少し笑いながら諭すような声を出した男が、持参したノートパソコンの操作を行う<br /> ディスプレイの明かりに照らされて見えた彼の顔は、どうやらラテン系の人間らしい<br /> 「後は彼…彼ら、というべきか―――の進めている、“A”計画の具合にもよるが、“D”計画の続行はある意味必要だろう」<br /> 「……あの連中がいっていたことを知っているか?」<br /> 「なに?」<br /> わざとらしく間をおいて話し始めるので、聞く方の男はもう一度パソコンに向き直っていた<br /><br /><br /></dt> <dd><a id="a788" name="a788"></a></dd> <dt><font color="#FFFFFF"><a><font color="#0000FF">788</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2008/01/27(日) 15:21:47 ID:???</font></dt> <dt>「曰く―――この仕事に宗教的な考えだとか、哲学的な考えだとかを持ち込むと、どうも面倒な方向に転びそう―――だそうだ」<br /> 「確かに、あの男……いや、あの連中はそういう方向に肩まで浸かっているな」<br /> 悪そうな笑みを浮かべるが、悪意はないようだった<br /> その証拠に、次には肯定的な台詞を吐く<br /> 「だが、そうでもしなければ仕事にならんだろう、あくまでやつらに勝つために、そういう趣向のシナリオも用意している……そうでもしなければならない相手だ」<br /> 「経典の類の内容を再現してくるなどという馬鹿な真似をするとすれば、それは奴らの方だ―――」<br /> 黙って話を聞いていた別の男が、年のためかしわがれた声で忘れかけていたことを掲示してみせる<br /> 「―――我々と学者連中が、この一年足らずの間に導き出した仮説にのっとればな」<br /> EIEやIUEITAなどの各種機関が公に創立される前から、空から降ってくるであろう存在を感知していた国連<br /> そして、それらが地球に及ぼした微弱な影響や、その行動を下に、その目的やそれ以降の動きを、ある程度予測しておく必要があった<br /> 実際に落ちてくるまでは何とも言えない状況ではあったが、その予測が現実となりつつある現状を前にして、この男の声もこわばる<br /> 「……もっともだな、大体、仮に目の前に本物の神が降りてきても、跪くことすらしないような人間しか、この仕事には参加していないことだし」<br /> 嫌味の様にも聞こえなくなかったが、本人は自身の言葉を他人がどう受け取るかよりも、襟元の形が気になるらしい<br /> 第一、彼の言うように、宗教を信じているというだけでこの役職につくのは難しかった<br /> 「まったく……映画に出てきたような科学技術に頼るエイリアンたちが、地球を焦土にして去っていくほうがずっと楽だというのに…」<br /> 「あれは神だよ、能力的にも性質的にも、そういって差し支えないのだ、くそ!」<br /> 明らかに何かを危惧するといった声で、必死とも取れる内容の文章を吐き出す<br /><br /><br /></dt> <dd><a id="a789" name="a789"></a></dd> <dt><font color="#FFFFFF"><a><font color="#0000FF">789</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2008/01/27(日) 15:22:21 ID:???</font></dt> <dt>「神か…計画の秘匿名称の由来事態、相手が神だと認めているようなものだな」<br /> 「アメリカのな……キリスト教徒といい、イスラム教徒といい、どちらも邪魔ばかりする」<br /> 「仏教は?」<br /> 「さあな―――敬虔な仏教徒というのを見たことが無い」<br /> 「そういう意味では、“A”計画という秘匿名称……というか、あれは計画の意味そのままか」<br /> まだ続けようとしたところで、別の誰かが代弁する<br /> 「確かに、宗教的なものは感じさせないな」<br /> 「“控訴者達(Appelat`s)”計画か……案外、あの連中ならどんな判決が下ろうとも、不服としないかもれないな」<br /> それをまた誰かが笑う<br /> 「元から我々は、どのような判決が下ろうとも、控訴なんぞする気はさらさら無い」<br /><br /><br /></dt> <dd><a id="a790" name="a790"></a></dd> <dt><font color="#FFFFFF"><a><font color="#0000FF">790</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2008/01/27(日) 15:23:11 ID:???</font></dt> <dt>「計画名が“最後の審判(Doom)”だしな、誰がつけたんだ、こんな名称?」<br /> 本当に不思議そうな声を上げる<br /> 屈み込んだせいで、彼の浅黒い顔がパソコンのディスプレイに照らされる<br /> 表情は特になかった<br /> 「仮説が正しいとしたら―――おそらくは、そのとおりなのだろうが―――やつらの行動は絞られてくる<br /> 「となると、場合によってはこちらの攻撃への報復を行い、最悪全面核戦争による殲滅戦もありうるが―――」<br /> 続けようとしたところで、パソコンの前の男が口を開く<br /> 「それは無いだろう、彼らが火器を持ち出さなかったことがそれを証明している」<br /> 「ただ可能性は十分にある」<br /> 「とりあえず、アメリカとロシアを捨てて様子を見ることになったが―――」<br /> やるせない表情を見せる数人の同僚の顔を見て、多少言葉にオブラートをかぶせればよかったと後悔するかのように、一瞬口を閉める<br /> 「―――とにかく…まぁー、忙しくなるな」<br /> 結局曖昧な言葉で締めくくって次の人間に発言権を譲る<br /> 「国連軍の類があればいいんだが」<br /> 「国連軍? そんなもの無い方が良いさ、あったら“戦争”だ!」<br /> ポケットから手を出しながら、一人の老人が声を荒げる<br /> それに驚くことすらしない委員たちは、諭す風でもなく、呟くように話を進める<br /> 「安心しろ、これは戦争ではない、それは何も知らない連中がやることだ」<br /> 「不謹慎かもしれんが、我々がするのはただのゲーム。ルールは簡単、有るのは勝利条件のみ!」<br /> 若干誇るような口調で喋る<br /> 表情もそれに合わせて変化しているのだろうか?<br /><br /><br /></dt> <dd><a id="a791" name="a791"></a></dd> <dt><font color="#FFFFFF"><a><font color="#0000FF">791</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2008/01/27(日) 15:24:10 ID:???</font></dt> <dt>「その勝利条件も簡単だな、人類という駒が“残って”いれば良い」<br /> 「そのあたりは専門外だがな、我々の仕事はあくまで国家の総意を動かすことだ、どういうことをやるかは連中が決める」<br /> 「にしては、やつら自身、忙しなく動き回っているがな」<br /> 要するに、お互いの領分を互いに侵しあい、いざこざを繰り返していることに他ならない<br /> 人類が一致団結するなどという妄想は、彼らの脳に欠片も無いのだろう<br /> 「兵隊の数はこちらの方が圧倒的だが、イリーガルの数においては向こうが多い」<br /> 「奴らについても連中のほうがよく知っている、我々は所詮政治的なもの―――それも、人類同士のことに関してだ」<br /> 人と人との関係が、その共通の敵である者たちと人類の関係よりも、遥かに複雑で解きにくいものだ<br /> そう言いたげな彼は、ここに敵が干渉してきた場合のことを考えてか、憂いの表情を浮かべる<br /> 「あいつらに政治も何もないだろう」<br /> 「そう願いたいものだ」<br /> 「いっそのこと、全面戦争のひとつでも起こしてくれればよかった」<br /> 「勝てるなら良いが、どうせだったら出来るだけ機会が多いほうが良いと思うがね」<br /> 嬉しそうに脈動する声を聞いて、腹を立てたように低い声が聞こえる<br /> 「ギャンブルではないぞ、政治とは」<br /> 「政治じゃないだろう、これはむしろギャンブルに近いゲームだ、例えるならポーカー。ワンペアであがっても良いし、一思いにきってしまっても良い」<br /><br /><br /></dt> <dd><a id="a792" name="a792"></a></dd> <dt><font color="#FFFFFF"><a><font color="#0000FF">792</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2008/01/27(日) 15:24:46 ID:???</font></dt> <dt>しばらく誰も口を開こうとせず、妙な間が続く<br /> 「………ワンペアすら出来ていないのが現状だ」<br /> 「というより、カードすらない」<br /> 「配られていないのか、配られたのに無いのかすらわからんが―――」<br /> 「急ぐ必要があるな、計画はやはり続けるべきだろう」<br /> 一瞬の沈黙<br /> しっかりとした議場でも起こり得るのに、まして議長のいない話し合いの場では、当然のように訪れるものだ<br /> 「決を採ろう」<br /> ノートパソコンを片付けながら、男が声を上げる<br /> 「計画続行を黙認するか、アドミラル・クズネツォフを動かすか……」<br /> この程度の会話を済ませただけで決を採ってしまうなど、全権委員と言えるのだろうかなどと考えるものもいたが、あくまで確認程度の意味合いしかない会議だった<br /> 「動かす必要はないだろう」<br /> 少しの間もおかず、前者に賛同する声が上がる<br /> 「だな、黙認すべきだ」<br /> 「空母を動かしたところで、フランスの一件と同じことになるだけだ」<br /> 「ヤクーツクで何かがあっても、奴らがすべて消してくれるだろうし、その後に続く核攻撃の影響もある―――」<br /> 「何も漏洩しはしない―――か…その通りだな」<br /> 「前者に賛成する」<br /> 「私もだ、黙認しよう」<br /> 「ははは、いっそのこと協力してみればどうだね?」<br /><br /><br /></dt> <dd><a id="a793" name="a793"></a></dd> <dt><font color="#FFFFFF"><a><font color="#0000FF">793</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2008/01/27(日) 15:25:08 ID:???</font></dt> <dt>ふざけ半分の声だったが、決を取っていた男は生真面目に答える<br /> 「彼はそのうち嫌でも日本に帰ることになる、その間は我々がことを進めよう」<br /> 肩をすくめて見せ、すぐに全員が目礼を済ませてろくにない荷物をまとめるか、服装を正しつつ、扉へとゆっくり歩き出す<br /> 国連に設立された、人類最高意思決定機関の試作品、その基幹を担うはずであった中国を除く常任理事国と先進各国から選出された全権委員<br /> 本来その直接管理下に置かれ、その手足となるはずであった執行官と各種機関<br /> わずか一年足らずの間に計画され、ほんの数日で組織されたこれらの機関は、国連という枠組みをはずれ、各々の意志で動き始める<br /> 人類の為に―――その意思は共通のものではあった<br /> だが、どのような手段を用いるべきか、それは必ずしも一致してはいなかった<br /> そして、一部の機関の動きが、別の機関にとっての、公意義で言う敵となりうる要素であることは明白となりつつある<br /> だが、宇宙からの来訪者の動きよりも、それが味方と呼ぶに近いものであることも明白であった<br /> 人類の為に―――いったい何が最良の選択となりうるか、何のために其れを成すか、それすら未だ決めかねられている<br /> 彼らはそれぞれの思惑と、そういった個人の感情よりも優先される、それぞれの仕事を抱えて、会議室を後にしていった<br /> 問題なのは、保存か保管か現存か…はたまた存続か―――<br /><br /><br /></dt> <dd><a id="a794" name="a794"></a></dd> <dt><font color="#FFFFFF"><a><font color="#0000FF">794</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2008/01/27(日) 15:26:05 ID:???</font></dt> </dl><p><―――盗聴終了></p> <dl><dd><a id="a795" name="a795"></a></dd> <dt><font color="#FFFFFF"><a><font color="#0000FF">795</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2008/01/27(日) 15:27:17 ID:???</font></dt> <dt>―――鉛色の空から、大粒の水滴が地面に向かって叩きつけられて来る<br /> もはや車どころか、人通りすら殆ど見なくなったアメリカ合衆国の首都近郊は、軍用車両が時折姿を見せるだけの、ゴーストタウンといった様相を呈している<br /> 「録音は終わりましたか?」<br /> 車の中はいたって静かだった<br /> 運転手も乗客もスーツ姿で、どこかの会社の重役と、それを運ぶ取引先の人間を思わせた<br /> 軍用車両の中であることを感じさせるのは、せいぜい併走している装甲車の姿程度だろうか<br /> 「いいのですか? 公式のものではないといえ、全権委員たちを盗聴するなど―――」<br /> 「いいんです。もとはといえば私も全権委員の一人ですし、なまじ、佐藤を名乗っているのだから会議の内容を聞かせてもらうくらいは…」<br /> 「盗聴はそれ自体が罪を問われますが」<br /> 「…相原君」<br /> 「盗聴は警視庁勤務のころに君もやってたでしょうに、偉そうな事言わないでください」<br /> 「………」<br /> 佐藤がイヤホンを外して車に備え付けられている受信機に戻す<br /> 「それで、どう致しますか、盗聴器の回収は―――」<br /> 「いえ、必要ないでしょう……彼らは分かっていて盗聴器のチェックをしていないんだ」<br /> 「はぁ……」<br /> それでも心配でしょうがないといった表情の熊谷を横目に、佐藤はなにやら携帯をいじっている<br /> 「―あっ、どうも……久しぶりです。暫くしたらそちらに……おや、もう準備は終わった。それはまた………では後ほど―」<br /> ピッという聞きなれた電子音を最後に、誰も口を開かなくなる<br /> 佐藤は電話の内容を反芻しながら、なにやら考え込み<br /> 相原は黙ったままノートパソコンのディスプレイを眺めこんでいる<br /> 熊谷はといえば、ハンドルを握る手以外、微動だにしない<br /> 「―――あ、熊谷君…そこらへんの売店か自販機で、缶コーヒーとサンドイッチか何か買って来て下さい」<br /> 「申し訳ありませんが……開いている店を探すこと自体が至難かと」<br /> 別段残念そうでもない表情の佐藤だったが、いやな予感がするといった風の熊谷の反応は無駄にはならなかった<br /><br /> 「ドーナッツでもいいので探してください、まだ便が出るのに時間はあるので」<br /><br /><br /></dt> <dd><a id="a796" name="a796"></a></dd> <dt><font color="#FFFFFF"><a><font color="#0000FF">796</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2008/01/27(日) 15:43:06 ID:???</font></dt> <dt>これまでのおさらい<br /><br /> ―――宇宙から何か落ちてきて困ってる<br /><br /> 全権委員`s、ジャックとヨシュアの皆さん→「もういい加減面倒くさくなってきた」<br /> 人類最高意思決定機関(仮名すら無し)→「その本来のたいそうな名前も、最初から最後までお飾り」<br /> 佐藤→「こんな仕事になるはずじゃなかったorz もう帰りたい9<br /> 執行官`s+書記or秘書官`s→「右に同じ」<br /> 教授`s→「研究はしたい」<br /> 国家元首`sと愉快な仲間たち→「○○国が…我々の祖国が……」<br /> 軍人→「敵は宇宙人だ!」<br /> イレギュラーな軍人→「人間の敵は、所詮人間だ!」<br /> イリーガルな軍人→「この捕虜って人体実験に使うらしいよ」<br /> 被験者のみなさん→「私は何か…されたようだ……」<br /> EOLT(低度個体)→「………」<br /> EOLT(高度個体)→「―――」<br /> EOLT(高度すぎて人と話せる個体)→「……話す相手すらいませんね」<br /> OMNI(製作者)→「   」<br /> 神様→神は沈黙するのみ<br /></dt> <dt><br /></dt> <dt><a><font color="#0000FF">797</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2008/01/27(日) 15:52:46 ID:???</dt> <dt>組織構成<br /><br /> 「   (名称無し)」<br /> ↓        ↓   ←上がないので、委員会と国連は=じゃない<br /> 「全権委員会」「国連」<br /> ↓        ↓   ←全権委員は実際この辺、国家の代表程度<br /> ↓       「国家」<br /> ↓            ←このあたりに執行官その他<br /> 「各種計画推進機関」←頑張る<br /> ↓<br /> 「末端機関」      ←名前すらないのにとてもよく頑張る<br /><br /></dt> </dl><p><a id="a798" name="a798"></a></p> <dl><dt><font color="#FFFFFF"><a><font color="#0000FF">798</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2008/01/27(日) 16:03:36 ID:???</font></dt> <dt>役職<br /><br /> 全権委員:偉いことになってる人たち、国家とすっかり仲良くなった国連の人なので権限は絶対。一番多い苗字or名前<br /> ジャックとヨシュア:国連のリモートコントロール型手足。聖書に由来したりと、凝った偽名<br /><br /> 執行官:特務から一般まで、いろいろな人間の自立型手足、よく勝手に動くので迷惑この上ない。偽名、佐藤さん<br /><br /> 政府首脳部:一番可哀想な役職。実際の名前を捻るor適当、たとえばエドワーズ大統領→エドワード大統領<br /> 軍上層部:一番犠牲者が出る役職。実際の名前を捻るor適当<br /><br /> 書記・秘書官:執行官専属の部下、最低一名で通常は二名付く。偽名、相原や熊谷、命名規則は特に無し<br /> 教授:執行官などとつるんでいろいろと頑張る人たち。偽名、命名規則は特に無し<br /> 担当官:各種事件や計画にくっ付いて来る。偽名、種類によって命名規則が存在<br /> 事務官:事務担当の割には現場へ出張ってくる。偽名、命名規則はあってないようなもの<br /> 武官(?):そもそも全員がこれみたいなもの、下っ端で使い道の少ないSP。名前を呼ばれることすらない<br /><br /></dt> </dl><p><a id="a799" name="a799"></a></p> <dl><dt><font color="#FFFFFF"><a><font color="#0000FF">799</font></a>名前:<strong><a href="mailto:sage"><font color="#0000FF">名無し上級大将</font></a></strong><font color="#0000FF">◆80fYLf0UTM</font>投稿日:2008/01/27(日) 16:09:16 ID:???</font></dt> <dt>マルタンは全権委員、チャーリーはエシュロン担当官<br /> 佐藤は外務省出なこともあり、何かの手違いで委員と執行官を兼任、国家と国連の両方に振り回される<br /><br /><br /> そんなところ<br /><br /> 役人根性とは言っても、この状況を前にラリっている感は否めない<br /></dt> <dt><a><font color="#0000FF"><br /></font></a></dt> </dl>

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