第62話 爆誕!メタルベルデ


「おいっ! 何なんだよコイツらは!?」
「判らない」
「…ったく」

ダァーン! ガーンッ!

相棒の落ち着いた… というよりもそっけない返事に呆れつつも、ガンギブソンは得意の拳銃さばきで“敵”を射抜いていた。
ガンボルバーにブローソン…彼の相棒中の相棒が今標的としているは、鏡の世界からの招かれざる客であった。
それは全身をアルミホイルで覆ったような冷たい金属光沢が目に付く、二足歩行の山羊のようなモンスターの群れが突如襲ってきたのだ。
そこで乱戦が始まった。

バキッ! バーン!

一方、ガンギブソンのそっけない相棒ことジャンパーソンもまた、ジャンデジックとジャンスティックを巧みに使い分け、怪物の群れを撃退してゆく。

だが、こちらからは侵入できないガラスの向こうから、金属山羊は湯水のように彼らに襲い掛かってくる。
じわりじわりと追い詰められているのは、目に見えて明らかだった。

「コイツはすげぇな…」
まるでアニメに夢中な子どものように、モニターにかぶりつく男…高見沢逸郎である。
彼は今、居候先の帯刀コンツェルン会議室のモニターから、ジャンパーソン達の戦いを生で観戦しているのだ。

「ウチが開発したミラーメタルモンスターのデモンストレーションはどうだい?」
ペロペロキャンディーを舐めながら入ってきたのは、帯刀龍三郎だ。
どうやら、新ベルデ開発の試作品があの金属山羊達のようだ。

「アンドロイドにミラーワールドの技術を融合させて誕生したミラーメタルモンスターか…アンタんトコの発想と技術力には全くお手上げですな、帯刀さん」
「いやいや、これも貴方の協力あってのことですよ、高見沢さん。おかげでこの計画に邪魔なジャンピーとガンモドキもあのザマだ」
モニターに映る2体のロボットは、銃を撃ちながら後退している。
帯刀の怪物“メタルゼール”の前に、帯刀コンツェルンに近づくことも出来ない。

「…さて、お邪魔虫はメタルゼールに任せておけば十分だろう。この間に、もう一つのデモンストレーションだ、高見沢さん」
「いよいよか…!」
待ちわびていた言葉に、高見沢の顔がパッと輝く。
悪意に満ちた欲望が、結実する時は近い。



「ついに完成したわ……」

警視庁、榎田ひかりの研究室。
喜ぶ榎田の目の前にはガラスケースがあり、その中には3枚のカードが入っていた。

榎田は香川らと共にバルカンベースでの大会議に出た後、アドベントカードの研究を1人任されていた。
『無限』のアドベントカードのパワーを別の2枚のカードにも封入すること……。
それが今ついに成功したのである。

「これが『無限』のカードなら……
 こっちの赤い渦のカードは『烈火』、こっちの青いのは『疾風』とでも名付けようかしら……
 ねぇ、ちょっとあなた、総監を呼んで来てくれるかしら?」
「はい。」

榎田は外にいる研究室の護衛をしていた警官に話し掛けた……。
いや警官ではない…そのシルエットは明らかに人間ではなかった。ロボットである。

警視庁はミレニアムライダーズを始め戦士たちが旅立ち、警備が薄く…なってはいなかった。
出払っていた警察ロボット、または警察型ロボットたちが戻って来て警視庁の警備についていた。
榎田の研究室はロボピーとエバポリスに守られていた。

一方、警視庁の入り口の方は杉田守道、そして警察型ロボットのロボイヌが守っていた。そこへ……。

「ねぇ、オイラも協力させてよ~」
赤いロボットが現れる。
「だから何度来てもダメだと言ってるだろ……」
「なんでだよ~、そろにいるロボイヌは良いのにオイラはダメなのか!?
 オイラも警視庁を守って100点貰うんだ~い!」
すでに疲れたように言う杉田に、そのロボット…ロボコンは言い続ける。
「いやロボイヌはそういうロボットだし……困ったな」

杉田が頭を掻こうとした、その瞬間。

ドカアァァァンッ!
「キャアァァァァッ!」

突如、爆発音と悲鳴が辺りに響き渡った。
「な…何だ!?」
そこへ婦人警官の笹山望見が掛けて来た。
「杉田さん!」
「おぅ、一体何事だ!?」
「研究室の方です!」
「何っ!?…ロボイヌ、お前はここにいろ。」
「分かった」

すぐさま榎田の研究室へと向かって駆け出す杉田。
研究室には既に山吹英三郎と北條透らが駆け付けていた。
そこへ到着する杉田。
「一体何が……あっ!」
研究室の前にはロボピーとエバポリスが倒れていて、その先には榎田も倒れている。
そして研究室の中には、異形の姿をした者が立っている。
「お前は何者だ!?」
山吹英三郎が銃を構えながら尋ねる。

「クックックッ……我が名はギレール」
「ギレール……?」
ギレールとは邪電王国ネジレジアの幹部でメガレンジャーを何度も苦しめた強敵である。

「このカードか……ものすごい量のエネルギーを感じる……!!」
ギレールは3枚のカードを手に取って言う。
「安心しろ、私の目的はこのカードだ…貴様らの命まで取ろうとは思わぬ」

「杉田、北條、撃て!」
「はい。」
「それを返しやがれ!」
神経断裂弾の詰まった銃を発射する3人。だが、ギレールは愛用の短剣で弾いた。

「クックックッ…どうやら死にたいようですね……」

ギレールが2本の短剣を振りかぶりながら杉田の方に向かって来る!
「くっ!」
その一撃をかわした杉田だが、ギレールの蹴りがみぞおちに入る。
「ぐぅっ!!」

「杉田!!」
「次はお前だ!」
ギレールは山吹の方へ方向をかえる。
「…!」
山吹英三郎が死を覚悟した…その時。

「ロボ根性~!!」

大声をあげながら赤い物体がものすごいスピードで走って来る。
そう、ロボコンだ。
そして、そのままギレールに突進する。

「ぐわあぁっ!?」
突然の不意打ちの一撃に吹き飛ばされるギレール。その衝撃で、手にもっていたカードを2枚落としてしまった。
「しまった!」

「今です、一斉射撃!」
その隙を見逃さず、警官隊に指示を出す北條。一斉に発射された神経断裂弾、ガス弾がギレールの全身に降り注ぐ。
いくらネジレジアの幹部とはいえ、これだけの量を浴びて痛みを感じないはずがない。

「ぐうぅぅっ、おのれっ!」
口から赤い光線を放って、警官隊を吹き飛ばすギレール。
「うわああぁぁぁっ!」「ぎゃああぁぁっ!」
その一撃で警官隊は全滅してしまった。
「ひっ…ひいぃぃぃっ!?」
驚愕の声をあげる北條。

しかしギレールは窓ガラスを割り、外へと飛び出してしまった。
さすがにあの攻撃は効いたようである。
「待て~、逃がさないぞ~!!」
「ダメだ、深追いするな!」
ギレールの後を追おうとするロボコンを呼び止める山吹。

「おのれ…甘く見すぎていたようだな……。」
警視庁の外へと逃亡したギレールは人気のない道にいた。
「だが、これさえあれば…」
そう言って、奪って来たカード『無限』を取り出す。
「1枚とはいえ十分だ…この力を利用すればバダムの頂点に立つことも…クックック……」

「おい、それをよこせ」

突然、何処からともなく声が聞こえる。
ギレールが振り返ると、そこには1人の男が立っている。。
「何者だ?」
短剣を構えながら尋ねるギレール。

「本当は警視庁から直接奪おうと思ってたんだがなぁ。そのカードはお前が持つより、オレが持ってる方が役立つ」
そう言いながら、懐からカードデッキを取り出す。
「って、ま、お前に話が通じるとは思ってないがな……変身」
指をパチッと鳴らしカードデッキをVバックルに装填する。
それと同時に高見沢逸郎は仮面ライダーベルデに変身した。

その姿は猿島の戦いで見せた姿とは違っていた。
以前はところどころに黄緑が入っていたのに対し、全身を冷たいグリーンメタリックを覆っている。
これが帯刀の作り出したミラーメタルライダーなのか。

「まずはお前からだ」

そう言ってベルデはVバックルからカードを引き抜いた……。
「生憎ですが、私は虫ケラの相手をしているほど暇じゃないのですよ」
そう言うと、ギレールはカードをデッキに差し込もうとしたベルデに向って光線を放った。
「うぉっ」
光線を受けたベルデは爆炎に包まれた。

「クックック…跡形もなく吹き飛んだようですね…」
炎と煙が消え去ると、そこにはベルデの姿はなくなっていた。
「刃向かわなければ、僕にでもしてやってものを…愚かな。」
そう言ってギレールがその場を立ち去ろうとした時、

「ハッハッハ…愚かなのは貴様だ!」
何処からともなくベルデの声が響く。
「何…一体どこに!?」
慌てて辺りを見回すギレールを背後から何かが襲った。
「グハァッ!」
吹き飛ばされるギレール。

そして、ベルデが姿を現した。
手にはホールドベント・バイオワインダーを持っている。
「ハンッ…姿が見えなくなったからといって油断したな!」
そう、ベルデは「クリアーベント」の力で姿を消していたに過ぎなかった。

「これでトドメだっ!」

『ファイナルベント』

突如、何もない所からバイオグリーザが出現する。
だがそのバイオグリーザはベルデと同じく全身メタリックグリーンだった。
ミラーメタルモンスター・バイオグリーザだ。

バイオグリーザの舌が伸びる、と同時にベルデは手をついてジャンプする。
舌は空中でベルデの両足を縛り、そのまま振り子の要領でギレールに突撃。
「何ッ!?」
驚くギレールをベルデが掴み、そのまま空中回転。
そして空中高くからギレールの頭を下に向け、地面に激突させた。

「ぐああぁぁぁぁぁっ!!」
ギレールの絶叫とともに大爆発が起き…それが収まると、そこにはベルデが立っていた。

「…これはすげぇぜ、以前の時よりも段違いに強くなっている…」
そしてヒラヒラと、『無限』のカードが舞い降りてきた。
「フフ…これさえあれば…!!」
そのカードを取ると、ベルデはそのまま姿を消した…。


歪みが歪みを呼ぶ。

最初に“自分”が起こした歪みは歪みと言えるほどのモノではなくなっていたが、それをきっかけにして生まれた歪みは、最早修正不可能なまでに広がっていた。

「予想外だ」
誰かが呟く。

「予想外だ」
神崎士郎が呟いた。

発声した歪みを利用して、戦士達がまとまるようにしたのは自分だ。
戦士達が鍛えられるように『試練』を与えたのも自分だ…だが今は。
戦士達はまとまったり離れたりを繰り返し、一向に一つの形にならない。

「何を間違えた?」
「全てだ。お前は妹だけを守りたかった。あの時と同じように、妹のためだけに彼らを利用した」

『鏡』に映る自分が嘲笑しながら答える。

「だが今はあの時とは違う」
「そう。あの時と違って、お前はもう手駒を全て失った」
「オーディンの力を譲り渡してしまった」
「無限のカードを手放してしまった」
「今のお前は、無力だ」

陰鬱な自分の声が、己の心を切り刻む。

「……しかし、まだ望みがないわけではない。歪みが広がったのは、こっちにとっても好都合だ」
影に言い聞かせるように士郎は呟く。

「帝王のベルトか」
「あれは無限のカードと同等の力を秘めている」
「奪う気か」
「奪う事はしない。あれの力を少し借りる。今ココに流れている力だけでも、充分にカードを取り戻す力はある」
「…………………シアゴーストを再生するつもりか」

「予想外だわ」
神崎優衣が呟いた。

歪みが広がりつつある。
このままでは、例え全てが終わったとしても元に戻る事がありえなくなる。

粉々に砕けたグラスは決して元に戻りはしない。

「どうすればいいの?」
「貴女は全てを見届ければいいの」

自分の問いは『鏡』に映る幼い自分が答えてくれた。

「何もしなくていいの?」
「何かはするの。貴女はもうそれをしているでしょ?」
「でも、あれだけでいいの?」
「今はあれだけでいいの。だって貴女はこの世界の歪みをよく知っている数少ない人だもの」
「その歪みを、皆に教えなくていいの?」
「貴女は歪みをよく知っている。でもその歪みが正確にどうなのかは知らないの。
だってそれは自然なまで不自然な形で生まれているから。よく知らない事は皆を不安にさせるだけだよ」
「お兄ちゃんはそう考えてないかもしれないのよ」
「貴女のお兄ちゃんは、今はこの歪みを修正しようと努力している。もっと信じてあげたら?」
「でも」
「……もし、彼らと話がしたいなら。彼らを助けたいなら、方法はあるよ」
貴女のお兄ちゃんがミラーモンスターを甦らせようとしている。でもその大半の“元”を生み出したのは誰?」
「……あ!」

「彼は貴女の使い魔として、貴女ができない事を代わりにしてくれるはずだよ」


ギレールを倒した高見沢は電話で誰かと連絡を取っていた。
「よう、帯刀さん、ブツは手に入ったぜ。」
電話の相手は帯刀グループ総裁、帯刀又三郎であった。
「そんなあっさりと手に入ったのか。」
「先客をいてよ、そいつが先にブツを奪ってたんだけど俺がそいつ始末してやったんだよ」
「それよりも高見沢さんよぉ、早くしないとショー終わっちまうぞ」
帯刀のいうショーとはジャンパーソンとガンギブソンの行く手を阻むメタルゼール軍団のデモンストレーションであった。
「ショーの主役はこの俺だから楽しみは取っといてくれよ」
「わかってるとも、うちの技術力とライダーの力をあわせたあんたならショーを盛り上げてくれるぜ」
高見沢は携帯を切ると車のドアミラーの方を向いた。

高見沢の後ろ側にあった車のドアミラーに無数の怪物の姿が映っていた。
「あのモンスター、俺を狙っているのか」
そのモンスターは神崎士郎が無限のカードを奪回するために送り込まれたヤゴのモンスター、シアゴーストであった。
「なら相手になってやるぜ、変身!」
高見沢はドアミラーにカードデッキをかざすとメタルベルデに変身し、ミラーワールドへと入っていった。

「おもしれぇ…こんだけの数がいるなら帯刀さんにはやばいがブツを使うか」
シアゴースト軍団はベルデに向かってくるがベルデはバイオワインダーに「無限」のサバイブカードを装填した。

「サバイブ」という機械的な音と共にベルデの姿はベルデサバイブへと変わっていった。
「さぁ、こいや、相手になってやるぜ!」
ベルデサバイブは右腕からカメレオンの舌の様なムチを出しシアゴースト達に向かい振るい始めた。
「おりゃぁぁぁぁぁぁ!」
シアゴースト達はベルデサバイブのムチで一気に吹き飛ばされ爆発していった。
「他愛の無い奴らめ…」
ベルデサバイブの周りにはもう既にシアゴーストは一匹もいなかった。
「さぁ、ショーへ戻るか!」
そして高見沢はミラーワールドから出ると帯刀コンツェルンへと戻っていった。


再び帯刀コンツェルン。
「けっ、どうやら打ち止めみたいだな」
ガンギブソンがメタルゼールが出てこなくなることを確認する。
「油断するな、帯刀がまだ何か出してきそうだ」
ジャンパーソンがジャンデジックを構えならが警戒する。

そのとき、赤いカメレオンの舌の様な鞭がガンギブソン向かってきた。
「なにぃ、うわっ!」
その鞭でガンギブソンは吹き飛ばされ柱に叩きつけられる。
「ガンギブソン!」
ジャンパーソンがガンギブソンに駆け寄る。

「どうやらショーはこれからの様だな…」
鞭を振りかざした緑色に輝く戦士が現れた。
「貴様がガンギブソンを!」
「へへへ、そいつは失礼、俺は仮面ライダーベルデ、もう二度と会うことはねぇ様だからよく覚えておきな!」
彼は更にはベルデサバイブになっていた。

「くらえっ!」
ベルデサバイブのグリーザウイップが今度はジャンパーソンを襲う。
「うっ!」
「ジャンパーソン!」
ジャンパーソンも壁に叩きつけられてしまい、
何とか起き上がったガンギブソンがジャンパーソンに近寄る。
「さあ、そろそろ終わりだな…」
ベルデサバイブが二人に静かに歩み寄っている時…。
「ジャンパーソン、ガンモドキ、お待たせ!」
「アールジーコ!」
「助かったぜ!」
ジャンパーソンのサポートロボット、
アールジーコがスピンドルキャノンを担ぎながら二人を助けに来た。
「よし、一気に決めてやろうぜ!」
ガンギブソンがスピンドルキャノンを受け取り、狙いをベルデサバイブに定める。
「うう…ううう…」
「ジャンパーソン!?」
突如としてジャンパーソンが頭を抱え始める。
「奴は…人間…倒せない…」
「ジャンパーソン、あいつが人間だというのか!?」
ジャンパーソンがベルデサバイブがロボットでは無いという事を見抜いていた。
それを見たガンギブソンが驚く。
「くっ、あと少しのようだな…」
メタルベルデも変身可能時間の限界が来る事を感じ取っていた。

その時、どこからとも無く、ボウガンの矢が二人を襲った。
「まさか!?」
ジャンパーソンがその声と共に矢が放たれた方を見ると、
ボウガンを構えた帯刀の秘書、シンディが高台の上に立っていた。
「シンディか!」
「高見沢様は早く総裁の下へ!」
「ありがてぇ!」
シンディに言われるまま、ベルデサバイブは本社ビルへ入っていった。
「待ちやがれ!」
「総裁には一歩も触れさせん!」
ガンギブソンがベルデサバイブを追おうするが、
帯刀のもう一人の秘書、赤い鎧に身を包んだマヤに阻まれる。
「ったく、何て奴らだ。」
「ガンギブソン、大丈夫か?」
ジャンパーソンがガンギブソンに近寄る。
「二人とも、もう奴らはいないみたいだよ」
アールジーコの言うとおり既にメタルベルデ達は撤退した後だった。
「とんでもない敵が出てきたな、ベイベー」
「ああ、今は体勢を整えなおす為にもコスモアカデミアへ戻ろう」
三人は基地は戻っていった。


帯刀コンツェルンの総裁室…高見沢が入ってきた
「帯刀さんよ、しっかりブツは持ってきたぜ」「これがサバイブカードか…」
高見沢がギレールから手に入れた「無限」のカードを見せる。
「だがライダーには欠点がある…」
「欠点?」
高見沢が話し始める。
「ライダーには変身できのは10分足らずしかない、そこさえ克服できれば…」
「すまんが高見沢さんよ、うちのテクノロジーを持ってしてでもそれは克服できない、って事は短期決着しかないだろうな」
高見沢の説明を聞いて帯刀が含み笑いをする。

「入るぞ…」
その言葉と共にドアが開き、スペースカノンの設計図を奪ったキャプテン・ゴメスの一党が入ってきた。
「キャプテン・ゴメス、どくろ団との交渉はうまく行ったか?」
「ああ、邪魔が入ったが何とかスペースカノンの設計図も手に入った」
帯刀に言われ先程までの経過を話すゴメス。
「そういやぁ、あんたが作っているブレインとやらはどうなったのか?」
「ああ、私の協力者が色々と科学者を捕らえて作らせている、もうあと一息で完成だ」
高見沢に言われ、ブレインの事も話すゴメス。
「そのスペースカノンとやらを組み込めば凄い事になるんじゃないのか?」
「ああ、私もそれは考えている、設計図を科学者共に見せる予定だ」
ゴメスは今後の予定を話続けた。

「ふぅ…ったくあの宇宙人巨大化するとは思いもよらなかったよ…」「あのガキ…」
左側の鏡から仮面ライダーガイ・芝浦淳が現れ、ゴメスが怒りの表情になる。
「まあいい、ゴメスの旦那、あいつもライダーだから大目に見てやってくれ。」
「くっ…今回は多めに見てやろう…」
帯刀が芝浦を許すよう、ゴメスを促した。
「サンキュー、帯刀さん、俺、ちょっとゲーセンよってくるわ」
と、芝浦はゲームセンターに行く為部屋を出た。
「私はブレインの経過を見るために戻る、何かあったら連絡を入れておこう、ブルー、ピンク、行くぞ」
ゴメスは二人の秘書と共に部屋を出た。


MATの岸田技術主任は牙隊長ゲドリアンによってバダム本部のブレインの目の前へ連れて行かれた。
「岸田主任、貴方の頭脳とサターンZをこのブレインの開発に役立てて欲しいのですが、よろしいでしょうか?」
「断る!貴様らバダムの手助けをする位なら死んだ方がマシだ!」
ゲドリアンに対し岸田の怒りが爆発する。
「ならばこれを見てもらいましょう…」
ゲドリアンが指を鳴らすと目の前に岩本博士と村野博士がやって来たが、兵士チャップによって背中に銃を突きつけられていた。
「郷…」
岸田が村野博士を見てかってMATにいた郷秀樹を思い出した。
「郷?私は村野ですが…」
「いや、貴方が私の後輩だった男に似ていましたから」
岸田が村野博士に郷に似ていた事を話す。
「では、おしゃべりはそこまでにしてまた仕事に戻ってもらいましょう」
「何!?」
ゲドリアンが合図をすると岸田の背中にチャップが銃を付きつけた。
そして、ブレインの建造が再開された。


ゴメスがどくろ団と交渉してた時、とある研究機関では諜報参謀マリバロンの襲撃を受けていた。
「マリバロン様、この部屋の様です」
「ほう、ならば入るぞ」
兵士チャップが指さした部屋に入ると厳重に試験管に入れられたエネルギー物質が怪しく輝いていた。
「ほう、これがダイモニウムか…」
そのエネルギー物質は大門博士が発見したダイモニウムであった。
大門博士の息子、大門豊が電人ザボーガーと共にΣ(シグマ)団と戦っていた時から人工的にダイモニウムを生産する研究が進められていた。
「よし、目当ての物を手に入れた、ゴメス殿の所へ戻るぞ!」
ダイモニウムはマリバロンの手に渡り、今まさにブレインが目覚める一歩前に近づいたのであった。


「ゴメス殿、頼まれたダイモニウムはブレインに組み込まれています」
「ご苦労、これで我々が大いなる意思へ近づく事が出来ますな」
バダム本部に戻ったマリバロンはゴメスと共にダイモニウムがブレインに取り付けられる所を見ていた。
「と、言いますと?」
「ダイモニウムとサターンZをバロニウムに組み込んだ事によりλ2000に耐えられるだけの装甲になりました。それはブレインが完成したと言う事です」
ゴメスがブレインの完成を確信したかの様に語り始めた。
「キャプテン・ゴメス、ブレインは完成した。約束どおり陽を開放してもらおう」
ブレインの方から村野博士ら三人の科学者がやって来た。
「村野博士、よろしいでしょう。ですが次の仕事を終わらせてからです」
「次の仕事?」
「このブレインが目覚めるのを見届けてからです」
ゴメスはブレインを見ながら三人に言う。

「俺達も付き合わせてもらうぜ」
「ガテゾーン殿、それにゲドリアン殿にボスガン殿もですか」
更にクライシスの他の三人もゴメス達の元へ来た。
「役者は揃ったのか…」
ボスガンが静かにブレインを見ながら呟く。
「ああ、何とかして同胞達を救わなければな」
ゲドリアンが怪魔界の同胞の事を考えていた。

「ゴメス、遂に動き出すのか!」
「タイガー、貴方も見に来たのですか…」
ブラックタイガーも娘のピンクジャガーとブルージャガーと共にブレインにやって来た。
「それでは皆さん、これからブレインを作動させます」
ゴメスはブレインの方を向いた。
「では、ミスターブレイン、我々を大いなる意思に合わせてください」
ゴメスがブレインに指示を出すとブレインが光り始めた。

「我が声を聞くのはお前達か…」
突如として上空から声が聞こえてきた。
「あなたが大いなる意思ですか」
岩本博士がその声に応える。
「大いなる意思…お前達はそう呼んでいるのか」
「その通りだが、一つ聞きたい。何故善悪問わず多くの死んだ者達を蘇らせているのだ?」
村野博士が大いなる意思に聞く。
「この世界にはありとあらゆる世界の悪意・邪念・欲望、そして戦いを望む心が集まっている。
 この世界において様々な戦いで散っていった者を蘇らせ、我が肉体を手に入れようしている」
「肉体ですか…どの様な体をお望みなのでしょうか?」
ゴメスが大いなる意思に聞く。
「最初は機械の体を選んだのだがな…巨大化は出来るとはいえ結局は役立たずだった」
「巨大化する機械、面白い物があるのですか」
ゴメスがニヤリと笑う。その「巨大化する機械」とはガオレンジャーとゴッドマンによって敗れたダダロイドであった。

「役立たず?というと貴様には理想の体というのがあるのか!?」
「理想の体?それは「光の巨人」とでも呼んでおこう…」
岸田技術主任の問いに大いなる意思は即座に答えた。
「光の巨人、といいますと我々はウルトラマンを思い出しますが?」
「ウルトラマンか…外宇宙から来た者もいればこの星の人間が光や地球の力で進化した者も聞くというが…」
ゴメスは光の巨人と聞いてウルトラマンを思い出した。
「ほう、ウルトラマンってそんなにいるのか?」
ガテゾーンがブレインに聞く。
「光の巨人は様々な星にいるという…特にこの地球という星に集まる傾向が強いのでな…」
大いなる意思は淡々と答えって言った。
「私が言えるのはそこまでだ…また合おう…」
大いなる意思の声はそのまま消え、ブレインも光も消えた。
「待て!俺達の同胞は助かるのか!?」
「ゲドリアン、今は落ち着け!」
ゲドリアンがブレインに向かい叫ぶがボスガンに止められる。

「ところでブレインはこの後どうする気だ?」
「タイガー殿、このブレインには以前の様な超生産機能は付けておりません。あくまでも大いなる意思との通信手段としてまた使います。」
ゴメスはタイガーにブレインの今後の使用を語った。
「ゴメス、約束どおり陽を返してもらおう!」
「約束?どうですかな…」
村野博士がゴメスに陽を返して欲しいと頼むが、村野博士の後ろから数人の戦闘員が現れた。
「返してくれる約束じゃなかったのか!?」
岩本博士がゴメスに叫ぶ。
「まだ博士達にはやってもらいたい事がありますので」
ゴメスは博士達を向きながらニヤリと笑う。
(くっ、郷…お前が助けに来てくれる事を信じているぞ…)
岸田技術主任は郷の事を考えていた。
「よし、マッハバロンのパイロットがいる牢獄に一緒に入れろ!」
「はっ!」
ゴメスは戦闘員に指示すると博士達を牢獄へ送って行った。


トランザ達との戦いを終えたジェットマン。
トランザ達のいた場所でキラキラ光っている物が目に入り、ホワイトが近付いてみると、それは一枚のCDだった。
そう。このCDは、トランザ達が、平和守備隊研究所からどくろ団に便乗して奪っていった、本物のホシノカノンの設計図の入ったディスクであった。
そう、逃げる時にトランザ達が落として行ったのであった。
五人は、近くでゴメス達と会談をしていた伴内達と合流し、このディスクを平和守備隊に返還してくれるよう頼むと、再び神崎士郎の調査に戻るのであった。

しかし、竜は悩んでいた。

再びリエが自分に牙を剥く…それは過去にしてきた努力を全て無にされたと言う事だ。
ラゲムと化したラディゲを倒し、香との結婚式を挙げ、その二人を草場の影から祝福してくれたリエ…そのリエが、再び悪に身を委ねるとは…信じたく無かった。
だが、紛れもない現実は、竜の心を蝕んでいった。

そしてもう一人…深く沈んだ人物がいた。鹿鳴館香である。
竜の配偶者でありながら何も出来ない現実…改めて自分の無力さに気が滅入るばかりだった。

「…香」
最初に香に声をかけたのは、アコだった。
同性の友人として、そして勿論ともに戦った仲間として…アコは香を励まそうと、自分から声をかけたのだ。
「ふさぎこむなんて、らしくないよ?」
「らしくない…いいえ、きっと、この姿が本来の私なんです。内気で何も出来ない、只のお嬢様なんです」
「そんなことない!…香は…強い人だって、私も…私もみんなも…わかってるもん」
アコの声は震えていた。涙と怒りの入り混じった複雑な感情を必死で抑える。
普段見せないアコの姿に、香の心は揺れていた。
「アコさん…」
「だって…せっかく凱が蘇って、五人揃ったのに…えぐっ…こんなにみんなバラバラになるなんて…ひっく…絶対ヤダもん…」
最後の方は最早言葉にすらなっていない。
だが、アコの気持ちは確かに香にも伝わっていた。
「…そうですね…私が落ち込んでちゃ、何にもなりませんわね」
「…香…」
「ごめんなさい…さっきの私は忘れて下さい」
「うん…うっ…うわあああああああっ…」
アコは泣いた。まるで子供のように、感情を止めることなく、香の胸に顔を当てて泣きじゃくった。
それをゆっくり抱きしめる香。その顔はさながら聖母のようだった。


一方の竜には、雷太と凱がいた。
「これからどうするの…竜?」
「…ああ」
「バルカンベースとやらに行くのか?それともアンチバダム同盟か?いずれにしても戦力を整えねぇと、勝てる戦いも勝てねぇぜ」
「…ああ」

「どうしよう、全然上の空だよ」
「上の空、か…そいつぁいい。今日から雷太がリーダーやれ」
「何言ってるんだよ、リーダーは竜だろ」
「その竜が使い物になんねぇじゃねぇか」
「そ…それは…」
「ったく、どいつもこいつも…いいか竜、よく聞け!」
凱は竜の両頬を掴み、今にもぶつかりそうな程まで顔を近づける。
雷太は凱が何をしでかすかと、ヒヤヒヤした顔で見ている。
「お前のリエへの思いはそんな物だったのか?何度マリアになろうとも、また戦って元に戻せばいいだろうが!それともお前は、マリアになったリエを見捨てるのか?」
その言葉を聞いて、竜の瞳の色が変わった。
「俺は!リエを見捨てたりなんかしない!!」
「だったらまた戦おうぜ。それが…お前のつとめだ」
「ああ…そうだな、凱」
「よかったぁ!竜が元に戻った!」
「済まなかった、雷太、それに凱」
「いいってことよ。で、これからどうするんだ?」
「俺達はアンチバダム同盟へ向かう。そこで戦力を整え、頃合いを見てバルカンベースへ向かう」
「わかった!僕は香に知らせてくるね」
「ああ、頼んだぜ」
「ありがとう、凱…お前のおかげで助かったよ」
「さあて、何のことかな?俺は忘れっぽいんでね」
「おーい…香とアコが来たよ!」
「よし…それじゃあ、アンチバダム同盟へ行くぞ!」
「はい♪」
「うん!」
「了解☆(^O^)/」

「ほらほら、凱も一緒に」
「ったくしょうがねぇな…」
やれやれ、という感じで凱がため息をつき、今までにない気合いで声をあげる。
「…おうっ!」


竜が何故、アンチバダム同盟へ向かうのか…それには確たる理由があった。
時は、数時間前…竜がホシノカノンの設計図を多羅尾伴内に渡した時に遡る。

竜「これがホシノカノンの設計図の入ったCDROMです」
伴内「なるほど…いや、ありがとう。おかげで助かりました」
竜「俺は別になにも…仲間達のおかげです」
伴内「それはよい仲間をお持ちだ。ところで…神崎士郎の調査をしていると、香川教授にお聞きしましたが」
竜「その事なんですが…彼の研究室で、時空破断装置という機械の設計図を発見したのですが…」
。と、彼の口から意外な言葉が出た。
「時空破断装置?海堂博士が発表した物ですか?」
その一言を、竜は聞き逃さなかった。
竜「海堂博士?その人が神崎士郎と関係が?」
伴内「直接の関係があるかどうかは分からないが…かつて彼はバダンという組織と接触し、時空破断装置の情報を得たらしい。だが、彼は大まかな理論を学会で発表したのみだ。悪用されないように、概論的な話しかしなかったのだろう」
竜「それを神崎士郎が聞いてというわけですか…彼は今どこに?」
伴内「アンチバダム同盟に身を置いていると聞きます」
竜「アンチバダム同盟…場所は?」
伴内「ポイントH072、立花レーシングクラブです」
竜「立花レーシングクラブ…わかりました、ありがとうございます」
伴内「お役に立てて何よりです。では、お互いに頑張りましょう」
竜「はい…ありがとうございます!」


その頃、他の四人はアクマイザー3と接触していた。
ガブラ「うーん…久々の地上や♪ごっつ気持ちええわぁ」
アコ「な、何なのこいつら…」
凱「おい、おっさんら誰だいったい?」
イビル「おっさんとは失敬な。拙者達は由緒正しきアクマ族の…」
ザビタン「アクマイザー3、ザビタンだ」
イビル「拙者はイビル。そして…」
ガブラ「わいはよい子の味方、ガブラちゃんやで~」
雷太「アクマイザー3?ザビタン?」
アコ「なぜ、あの中に閉じ込められてたの?」
ザビタン「うむ…我々三人は、それぞれ月村圭、渡部剛、菅一郎の三人の体に乗り移り、超神ビビューンとして生活していたのだが…」
イビル「あの銃に狙われ、魂を分離された上に封印されたのでござるよ」
ガブラ「ホンマもー、辛かったでぇ…ワイも泣きそうやった」

香「それは…お気の毒でしたね」
凱「だけどよ、体がないんじゃ不便でしょうがねぇだろ」
ザビタン「ああ…まずは、圭らを探し、体を完全にせねば」
雷太「じゃあ、僕らもいっしょに…」
イビル「お心遣い感謝いたす。しかし、拙者達アクマ族に見合う体を探すのは、普通の人間には不可能」
アコ「そうなんだ…じゃあ、ひとまずお別れだね」
ザビタン「ああ。だが、約束する。ビビューンになって再び、君たちの前に現れるのをな」
香「わかりました。では、またお会いしましょう♪」

アクマイザー3は去っていくと反対側から竜がホシノカノンの設計図を渡し、戻ってきた。

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最終更新:2013年03月05日 19:07
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