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◎The fourth Day Wonder◎ ---- ――ここは。 朦朧とする意識が、カメラのレンズのピントを合わせるようにして収束する。 周りの景色がすりガラス越しのようになっていたのが、今度ははっきりと見えるようになっていく。 まず最初に僕が明確に認識できたのは、無機質な天井だった。 顔を上げてみると、どうやら僕は真っ白なベッドの上にいるようだった。 よくある物語のように、手足が拘束されて身動きが取れない――ということはない。 僕の身体は、それこそ自分のベッドでの寝起きのように、自然に動いた。 「お目覚めになられたようですね」 すぐ横から、聞いたことのない男の人の声がかかる。 首を横に向けると、そこにいたのは、何やら小綺麗な白衣に身を包んだ中年の人だった。 髭を生やした跡こそあるが、綺麗に整えられていて、粗野な印象はない。 「あの……ここは……」 「至極尤もな質問です。こちらとしても、貴方にお話したいことが御座います。  ですが、まずは暫しのご辛抱を。ただいま飲み物をお持ちします。何か注文は?」 「……特には」 男は粛々と頭を下げると、手元のマイクのスイッチを入れて「お客様が起床された、すぐに飲み物を」と伝えると、 僕にもう一度だけ軽く会釈して、そのまますごすごと部屋から出ていってしまった。 ……端的にいうと、状況がよく解らない。 そうこうしている内に、また別の白衣を着た中年の人が、お盆の上にマグカップを置いて部屋に入ってきた。 ほかほかと湯気を立てているそのカップの中には、温かい色合いのココアが注がれている。 こと、という音を立てて置かれたマグカップに、僕は手を付けなかった。 「信用ならないのは当然でしょう。むしろ懸命な判断です。 ですが、そのココアには毒など入っておりません。私達のせめてものお詫びです」 男の口調は演技めいてもなく、かといって親身といった感じでもなかった。 「あの……さっきの人は、僕に話があるって……」 「ええ、その通りです。只今担当者が参りますので……おや、来られたようですね」 僕の質問に特に気を害した風もなく応えてくれていた男の人が、ドアノブの開く音に振り向いた。 粛々とした足音。 僕のいるベッドに近づいてくる、長いコートのような白衣。 下品な印象を持たせる動作がひとつもないような身の使い方で、その人はすぐ近くにあった椅子に腰掛けた。 ――銀色の、長い髪。 ――美人といっても差し支えない、儚げなようでいて凛とした顔つき。 ――まるで吸い込まれてしまいそうな、透き通った、黄金色の瞳。 思わず見惚れている僕に微笑むと、彼女は少し困ったような表情で言った。 「――はじめまして、セント・ガッポさん。  私は当施設の責任者、セリア・オルコットと申します」 ---- ◎Dream After Bad Dream◎
◎The fourth Day Wonder◎ ---- ――ここは。 朦朧とする意識が、カメラのレンズのピントを合わせるようにして収束する。 周りの景色がすりガラス越しのようになっていたのが、今度ははっきりと見えるようになっていく。 まず最初に僕が明確に認識できたのは、無機質な天井だった。 顔を上げてみると、どうやら僕は真っ白なベッドの上にいるようだった。 よくある物語のように、手足が拘束されて身動きが取れない――ということはない。 僕の身体は、それこそ自分のベッドでの寝起きのように、自然に動いた。 「お目覚めになられたようですね」 すぐ横から、聞いたことのない男の人の声がかかる。 首を横に向けると、そこにいたのは、何やら小綺麗な白衣に身を包んだ中年の人だった。 髭を生やした跡こそあるが、綺麗に整えられていて、粗野な印象はない。 「あの……ここは……」 「至極尤もな質問です。こちらとしても、貴方にお話したいことが御座います。  ですが、まずは暫しのご辛抱を。ただいま飲み物をお持ちします。何か注文は?」 「……特には」 男は粛々と頭を下げると、手元のマイクのスイッチを入れて「お客様が起床された、すぐに飲み物を」と伝えると、 僕にもう一度だけ軽く会釈して、そのまますごすごと部屋から出ていってしまった。 ……端的にいうと、状況がよく解らない。 そうこうしている内に、また別の白衣を着た中年の人が、お盆の上にマグカップを置いて部屋に入ってきた。 ほかほかと湯気を立てているそのカップの中には、温かい色合いのココアが注がれている。 こと、という音を立てて置かれたマグカップに、僕は手を付けなかった。 「信用ならないのは当然でしょう。むしろ懸命な判断です。 ですが、そのココアには毒など入っておりません。私達のせめてものお詫びです」 男の口調は演技めいてもなく、かといって親身といった感じでもなかった。 「あの……さっきの人は、僕に話があるって……」 「ええ、その通りです。只今担当者が参りますので……おや、来られたようですね」 僕の質問に特に気を害した風もなく応えてくれていた男の人が、ドアノブの開く音に振り向いた。 粛々とした足音。 僕のいるベッドに近づいてくる、長いコートのような白衣。 下品な印象を持たせる動作がひとつもないような身の使い方で、その人はすぐ近くにあった椅子に腰掛けた。 ――銀色の、長い髪。 ――美人といっても差し支えない、儚げなようでいて凛とした顔つき。 ――まるで吸い込まれてしまいそうな、透き通った、黄金色の瞳。 思わず見惚れている僕に微笑むと、彼女は少し困ったような表情で言った。 「――はじめまして、セント・ガッポさん。  私は当施設の責任者、セリア・オルコットと申します」 ---- ◎Dream After Bad Dream◎

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