『情報ではこの領域にデスパージがいるはずよ』
オペレーターが通信する。
『本当だろうな、それにいいのか?俺達のような新入りに、デスパージの討伐を任せていいのか?』
ニキータが自信ありげに自信の無さそうなことを言う。言葉と裏腹に彼女は勝つ気でいるのだ。
『……』
『本当にやばかったらどちらかを囮にして逃げなさい』
『……』
『へっ、そうさせてもらうぜ』
『デスパージを捕捉したわ、アームコア反応よ』
三人は絶句した。
『なんだあのアームヘッド』
『へ・・・変態』
『……』
デスパージは自分用の自分サイズの大きな「ですぱーじ」と書かれたスクール水着のようなものをまとっていた。
『待っていたぞ・・・。ヘブナー共、俺がデスパージだ』
『なんだそれは?』
ニキータが問う。
『この装束のことか?よく言われる。これは我が主エクジコウ様から下賜されたヘブンの戦装束だ。俺はヘブンの文化にかなり詳しいぞ。どうだ?』
『……』
『俺がやる』
ニキータのアームヘッド、ダークローズが先行する。
『2体1を崩しちゃダメ、相手は旧エクジコウ軍の大将軍よ!』
『黙ってみていろ!ムスタングの真似しやがって気に入らねえ!』
『お前からか・・・いいだろう。来い!』

 デスパージは自らの後部のランドセルから四本の剣を取り出す。肩が変形し二本の腕になった。一方ダークローズは右腕に装備されたボウガンに矢を装填する。デスパージが突進する。ダークローズはボウガンを発射する。矢とデスパージがだんだんと近づいていき、交差する。デスパージは高速で迫る矢をすれ違いざまに落とす。
『擬似アームホーンの矢とはエグいな』
『格好は変でも流石にエクジコウの直轄の部下だな』
ダークローズにデスパージが近づく。四本の剣で同時に斬りかかる。右腕のボウガンを捨て、左腕のチェーンを回してダークローズは四本の剣を同時に絡めとる。
『俺はヘブンの文化に詳しいからな、お前たちの武器も知っている』
デスパージは剣を捨て、後退する。ランドセルから四丁のフィジカルライフルを取り出しダークローズに向けて一斉射撃する。ダークローズは後部のジャベリンを展開する。四機のジャベリンは生きているようにデスパージに向かう。と、同時に反武殺外套をダークローズがまとう。フィジカルライフの威力が削がれる。そしてジャベリンがフィジカルライフのそれぞれの銃口に刺さる。ボロボロの外套をデスパージに向けて投げる。視界を奪われたデスパージ。ダークローズが頭部のウサギの耳のような二本のアームホーンを外套に覆われたデスパージに向ける。

『…強い』
『……』
二人は固唾を飲んで戦いを見ていた。デスパージが外套を切り裂く。更に腕が増えている。腕が八本となったデスパージはそれぞれの腕に超振動兵器を装備していた。棒状のそれは触れただけで大ダメージを負いかね無いシロモノだ。
『…よくも…俺の衣装を…』
あの水着も反武殺外套だったらしい。そしてそれも今ボロボロに破壊された。怒りで平静を失ったデスパージは腕をむちゃくちゃに振り回しながら、無計画に突進する。スイートピーはフィジカルライフルを構える。
『邪魔をするな!』
ニキータが叫ぶ。
『……』
ダークローズは地面を走るデスパージをあざ笑うかのように耳で飛ぶ。空飛ぶうさぎに対しデスパージは喚くだけだ。
『ああ、降りてきてやるよ』
ニキータが言うと、ダークローズは耳を広げて急降下する。すべての腕を躱しデスパージを両断する。

 上半身と下半身にわかれたデスパージの後ろにダークローズが立つ。
『…少し頭に血が登りすぎてしまったな』
ニキータがつぶやく。
『それは俺もだ』
デスパージの上半身が言う。左側の腕二本を残したそれの切り口からジャベリンがとび出す。ダークローズはその反応を感じ腰の剣を構え、切り捨てる。
『知らなかったのか?融合した我々にはアームキルなんて効かない。そしてこれが俺の調和能力だ』
穴から足がとび出す。
『しつこい奴め』
ニキータが吐き捨てる。左の腕に二本、まだ武器が残っている。デスパージはさらに武器を構えるかもしれない。しかしダークローズは逆にすべての武器を捨てた。
『なんだ?観念したのか?』
『ダークローズは…』
ダークローズが形を変える。
『多くの追加武装により普段機能していないが変形が可能なアームヘッドだ』
耳を翼にした鳥のような飛行機に姿を変える。
『何!?』
ダークローズが姿を消す。
『最高のスピードと旋回性能を誇るセイントメシア、それがダークローズだ』
翼でデスパージを両断する。そして最高速のままUターンし再び両断する。それを繰り返した後デスパージは爆発した。

 二機のセイントメシアはデスパージを倒し帰途に着く。
『まさか本当に倒すなんてね』
オペレーターは一人呟いた。

デスパージ
エクジコウのかつての部下集団ゴールドブレスの一員のなかでもかなりの高い階級にいたとされる。部下を再編成しヘブンの侵攻を企てるも大半の部下がヴァーミリオンに破壊され、計画は頓挫した。あらゆる穴を四次元空間にする調和能力「こんなこといいなできたらいいな」を使用する。

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最終更新:2012年11月02日 21:36