ぺりぺりと、現れていく。
はだけた着物から除く不可侵性の矛盾。
溶けるような赤に情熱はない。
飾り付けられた虚栄は、しかし嘘などない。
強欲にして無欲の打破すべき姫。
とこしえの姫。
縷々姫。
「おひさ」こちらだけを見ている。
「きみが呼んだでしょだ、きみだけがぼくを呼べるから」そして、周りを見る。
「うーん、邪魔」手をかざすと、スニグラーチカが吹き飛んだ。
消えたといってもいい。ここからは見えないようなところまで飛ばされた。時間差で音だけが聞こえた。

ガツン、ガツンという音。振り向くと、金食夜叉が左手を右手にたたきつけている。
「なにしてるの」
「拍手のつもりだったのだが、お気に召さなかったか」かかか、と笑う。
「拍手ってこうだよ」
縷々姫が軽やかに手を鳴らす。金食夜叉を鳴らした分の光の矢が襲う。見たことのない数。
光の剣山が出来上がる。

初めてのことではない、あれに挑ませるのは。それでだめだと思ったから、この間は自分でやろうとまで考えた。
だが、こんなもの、どうしようもない。今回も、まさかここまでとは、と思うばかり。
きっと跡形もない。早かった。今回もあれの底しれなさを知っただけだった。
初めてではないことだ。あれが私を殺さないことも知っている。なら、次を考えよう。でも、それでドロップが死ぬのは、嫌かな……。
それを見抜いてか言う。
「いつも通りにおさまっちゃうね」

私ではない者が返事をした。

砕け散る剣山。
「なんだ、毎度やられているのか?」
金食夜叉が立っていた。それも無傷。変わらぬ姿。
縷々姫が手をかざし、再び光の槍を飛ばす。今度は数を絞って。矢は直前で消えていた。
「なるほど、そういう能力をぼくの目以外が使うってことは」
一本の光。矢というよりは投槍。
「調和だね」投げられる。
金食夜叉が再びなにかをしたようだが、消えない。
「芸がないなあ」金食夜叉がなにかをする。
すると、また直前で消えた。消えたが、消え方が違っていた。まるで、それを喰らうように。
「空間への干渉能力に干渉する能力を付与したか、芸達者だな、とこしえの姫」
縷々姫が動揺する。
「は?」にじり寄る下劣の夜叉。放たれる光の矢。
そのことごとくを喰らい、飛ばし、反射し、削り、最後にはすべてを消し去る。

縷々姫が捕まる。
心拍数が上がる。
まさか。
本当に。

ごとん。白濁の剣に、縷々姫の首が落ちた。

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最終更新:2015年04月28日 14:50