牢を破壊すると、金食夜叉がこちらを出迎えた。
宣言通り、一つ上の次元の色を持っていた。
催しが始まる。

鬼神が手をかざすと、光の矢が降り注ぐ。

ドロップ・ワールズマイン駆るカハタレと、カヌレ・クロイン駆るスニグラーチカ。対峙するは金食夜叉ただひとつ。
今は、今だけは、エクレーンのことを忘れる。これを倒すまでの間だけは。
金食夜叉が再び光の矢を向ける。バチンと幾千の光を、空間ごと捻じり切る。
その隙を白濁の剣が襲う。チェリポルカがはじく。
そのまま体重をもって金食夜叉を地面に押し付けるスニグラーチカの後方から、空間を捻じる。
「なるほど」壮年の声。
声と共に空間のねじれが解消される。スニグラーチカを弾き返す鬼神は無傷。
再び発生する幾千の光。
それを空間ごと、捻じ、れない。
襲いくる矢。躱し切れない。
「チッ!なんだあれは!空間がねじれない!」カハタレなんかに乗っているから、相手にそういうものが居るのもわかる。
だがおかしい。なんだあれは。あれは、おかしい。
「かはははははは、何を遊んでいる、小僧ども」
こちらに剣を向ける。
「だが良い、同じ阿呆なら踊る阿呆よ!」

そこにスニグラーチカが飛びかかる。排熱機関がフル稼働している。それを調和能力で抑え、更に稼働、加速。
「良い手だ。単細胞」エスカベッシュ・グラードの声と共に、スニグラーチカが不自然に地に落ちる。その速度の持つ力で地面を抉る。
壁に激突したスニグラーチカは風に押さえつけられ、装甲が削られていく。
拘束を解くべく、スニグラーチカを蹴り飛ばす。
「助かった、しかし――」カヌレ・クロインは同じことを考えている。あれはおかしい。
そして「うぉっ」と急な加速。向かう先を見ると金食夜叉が手をこまねいている。二つのアームヘッドが引き寄せられる。
これはさっきの風とは違う能力。このアームヘッドは、なぜここまで多種多様な能力を行使できる。
スニグラーチカの首とカハタレの尾を掴むと、ふたつを勢いよくぶつけた。尾が砕ける。
そして、熱量を失い、ついに飛ぶこともかなわなくなったスニグラーチカが隣に沈む。
「ここまでか?これでは催し物としては些か面白みに欠けよう?」

尾の粉砕により空間へ干渉する能力は封じられ、スニグラーチカとの共同戦線もここまで。
カハタレと俺との限界も感じている。
「この私が得た力をもう少し試させてくれんものか」

距離を盗ろうと後方へ飛ぶ。勢いよく。少しでも遠くへ、と。
「よいぞ!」金食夜叉がこちらへ走り、笑いながら手を伸ばす。
速い。やはり、ボロボロのカハタレではここまでか。
心拍数が上がる。上がる。上がる。

「終わりだ、小僧」振り上げられる白濁の剣。
心拍数が上がる。熱さで胸が溶けて死んでしまいそうだ。
だが――。

振り上げられる剣。
それを、スニグラーチカのアームホーンがとらえた。ただのオブジェと化したはずの存在のアームホーンが。
砕け散る白濁の剣。自らの核を失い自壊する金食夜叉。

「機転を利かせたいい手だ。成長したな」
スニグラーチカから声がした。

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最終更新:2015年04月28日 14:53