◎The Second Day Wonder◎
……まずい。これは非常にまずい。
リアルミーティング当日。待ち合わせ場所として無難に選んだ、あまり広くもない公園に辿り着いてから、僕は恐るべき可能性に気付いた。
というか、ここまで来るまでの間にそのことに気づかない自分にいい加減呆れが差した。
……服だ。
僕は学校が終わると、現実世界をなるべく遮断しながらまっすぐに帰る。
そしていつも変わらず自分の居場所、ワールド・ナーブを起動し、その世界を彷徨って、そして眠る。
そんな毎日を送り続けたのが災いした。
今僕が着ている服は、黒基調のパーカーにインナーのピンクのシャツ、そしてジーンズ。
このなんか垢抜けない感のある服装が、
休みの日も滅多に人と会わず、ナーブが居場所だった僕に出来る限界のお洒落だった。
……でも、今日会うアリスさんは、そうでないかもしれない。
もしも正しく僕と同年代な感じの服装で来られたら、正直その後の僕の精神状態は保証できない。
もしこちらの姿を見られて、あからさまに微妙な表情でもされれば、きっと僕の吹けば飛ぶような心は音を立てて折れる。
そのまましばらく一緒に行動するとか、想像しただけで首を吊りたくなる。
……これ、大丈夫だろうか。そんな風に、公園の中で頭を抱えていたときだった。
「……え」
視界の片隅に、ちらと見えた人影。
僕の懊悩は、そこでフリーズした。
黒くて少し短い、さらさらの髪。
おずおずとこちらを確認するように見つめる透き通る目。
華奢で凹凸のあまりない、それでいて抜けるように白い肌を、白と黒の派手すぎず簡素すぎもしないワンピースで包んでいる。
その人影……いやその子は、何処か恥ずかしそうに、不安げに歩み寄ってきた。
まさか、と胸の奥が高鳴った。勿論、期待と不安で。
この子が“そう”だとしたら、それはそれで予想していたのとは全く逆方向にまずい。
何故なら――
「……あの、アリス、です。……セント・ガッポさん、ですか……?」
――どうしてワールド・ナーブに居て、よりにもよって僕なんかと話しているんだ、と思う程に。
“アリス”さんは、何処か儚げな雰囲気を纏う、綺麗で可愛い女の子だったからだ。
◎“Hollow horizon”◎
最終更新:2015年05月13日 16:04