◎The -7/0 Day Wonder◎



――そうして、ボクの走馬灯は、フィルムが切れたように終わった。

冷たい泥のような、心地よい脱力感に身を震わせる。
もう、全身の感覚なんかとっくにない。
絶え絶えの溜息をひとつついて、静かに全身の力を抜いた。

もう、アリスの声は聞こえない。
色々なものが巡り巡って、結局ボクはまた独りに戻ってしまったようだった。
……あの時ほど孤独を感じないのは、きっとボクがそこまで歪んだせいだからだろう。

世界から完全に取り残されたボクは、
昏くて冷たい静寂の中で、静かに瞳を閉じた。





――?

それは、夢だったのか。それとも現実だったのか。
ふと何か、温かい光を感じて、すっかり重くなった瞼をなんとか開けた。


――それは、鮮やかな光。
夕暮れなんかじゃない、何処までも遠くて、青い空。
地平線を境に、その下に無限に広がる草色の平原。
日差しを遮る大きな木陰の中。
変わることなく隣に座っていたのは、あの眩しい笑顔だった。


「――これはない。ボクには、過ぎた最期だ」


――ボクは皮肉めいた笑いを漏らした。
この期に及んで、最後の最後で、
こんな景色を見る自分が、最高におかしかった。
――でも、これくらいなら。

ただ、ひとつだけ。
あの時と同じような暖かな微睡みに、瞼の重さを任せて。

……いつか見た、暖かな夢の続きの中。
いつの間にか、残骸に成り果ててしまった記憶(いのち)を――





――ボクは今度こそ、永遠に手放した。

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最終更新:2015年05月13日 17:34