――雑踏の中。
あいつの金色の髪はすごく目立って、すぐに解った。

正直な話、俺は全部解っていたんだぞ。
『この世はわずか数分前に創造されたという説を覆すことはできない』、そんな学説がある。
この世界は、まさにそれだ。どういう訳か、俺はそれを認識できていた。

きっと俺が、あいつに深く関わり過ぎたからもしれない。
でもこの俺は、あいつの知っている俺とこれまた微妙に違う。
この世界にあらゆる可能性が詰まっているように、俺だっていろいろな俺を全部付与されているんだ。
俺がサイクルだった頃の人格。記憶。
私がポーリーだった頃の人格。記憶。
俺がムスタングだった頃の人格。記憶。
今の俺は、それら全てを自分で選ぶことができる。
きっと他の奴らも、それを一緒くたに持っていることに違和感を抱かないだけで自然とできている。

こうなると、ちょっと残念だとか思ってしまうのがおかしいもんだ。
俺だってせっかくだし、何も解らない状態でこの世界を味わってみたかった……とか思う。

でも、俺がこうなっている以上。
俺はやっぱり、今までのように、いつかのように。
憎まれ口を叩くあいつの側で、面倒をみてやんないといけない感じになってるんだぞ。

――ああ。それは、なんて。
なんて面倒くさくて、なんて骨が折れそうで。
――なんて、懐かしい。

でも、まずは。
ある意味お前が一番解ってなさそうだから、ワンクッション置くんだぞ。
「お前も、このドーナツ早食い大会を見に来たのか?」

――驚いた顔が、俺にに振り向かれる。
アイリーン。エクジコウ。ゴレン。
きっとこれが、本当に最後のひと頑張りになるだろうから。
これだけは、いつかきっと、聞いておきたいんだぞ。


――お前は、エクジコウになって、何を見つけた?

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最終更新:2015年08月03日 00:16