ああ、十一年目。
やっぱりあの子が一番かわいく見える。やきもちだってやいてしまう。
まあ、本物の記憶が一番頑張って我慢していた気もしてしまうのだけどね。
私は、嫉妬深いから。

本当のあの日、つまり二年目のあの日。週刊誌の表紙の水着姿も、画面に映るコメディアンとの交流も、仕事だと割り切って捉えた。
けれど、ふっと流れてきたワイドショーがメリー・ストロベリーの熱愛を報道したときはさすがに耐えられなかった。
「お姉さま、こんなのあるわけないじゃないですか、誤解ですよ。大体この服を着てた日は」
「別に、夜だけが二人きりになれる時間じゃないでしょう」
「私はお姉さましか――」
「そう。じゃあいいけど」
その時も嘘をついてない目に見えた。
だけど私はあの子に不信感を抱いて、それからだ。それから、少しのズレが気になるようになった。
私とあの子は分かり合えないのではないかと思うようになった。
その頃にはもうあの子に裏切られること、捨てられることではなくて、あの子が私を理解してくれないことが辛くなっていた。
私のすべてを無条件で愛してくれる人としてだけ求めてしまっていた。
「信じてないなら、責めてください」
「別に、そのことは信じた。でも、そう。私が機嫌悪い理由、わからないんだ」
私たちの間に明確に亀裂が入った日だったように思う。

ふっとこんな過去に思いを馳せて物思いにふけっていると鍵が開く音がした。そうだ、今は二年目じゃない。十一年目なんだ。
「お姉さま!この週刊誌見てください!私がこーんなわけのわからない男と付き合ってるだなんて!そもそも会ったこともないんですよ」
「そうなんだ。今知った。ねえ、あなたは私を愛しているわよね」
「もちろんです!疑っていますか」
「いいえ。ねえ、私は、あなたを愛していたかしら」
その子は、少し変な顔をしてから、また自分のしたい話を勝手に始めた。
ベッドに移ってそれを聞く。ものすごい量の言葉の奔流。
「ねえ、疲れてしまったわ。もう眠ってもいいかしら」
「お姉さま、やきもちもやいてくれないんですね」
「疲れたって、言ったでしょう。」

十一年目は甘い夢すら見せてくれなくなって。
そして背中を向けて眠った。虚構の声が急に聞き苦しくなってしまったから。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2016年10月15日 17:46