俺は追われていた。
市役所から出てきた男は俺を見るとすぐに持っていた得物を俺に向けた。それは見間違える事はない。キルナイフだ。


狭い道へと逃げ込む。壁に貼られたポスターには「キルナイフで美しい未来を」の文字。市役所から随分離れてしまった。放置された生ゴミの臭いがキツい。「もう逃げないのかな」背後から声がした。俺は振り向きながら相手との距離を取る。「逃げすぎてしまったぜ」市役所までまたこの汚い街を歩かなければいけなくなってしまった。「ふふ、キルナイフって知っているかい」俺の言葉を意に介さずキルナイフを見せつけた。俺はその刃でなく腕輪の三つのランプの方を見た。「登録したばかりのようだな。それで俺に何か恨みでもあるのか。登録してすぐに仇に会えるなんてうらやましいな」無論俺にはこいつから恨みを買った覚えは無いのだが。「試して見たかったんだ」俺は相手の言葉に耳を疑った。「試す?正気か?三回しかないんだぞ?」世の中にはこういう人間も居るのか。あきれを通り越して感心すらしている。「命乞いをしているのか」男は俺を嘲笑った。「もういいや」キルナイフを突きつけた。キルナイフの刃は何度か空を斬った。こいつは俺の話を聞く気はないらしい。「ほらもっと恐がれよ。死んじゃうぞ」キルナイフの柄を見定める。やはりそうだ。「つまんない。まだ二回あるし終わらせちゃうよ」ほとんどわざと外していたキルナイフが明確に俺の胸を狙い始めた。狭い路地で先は行き止まり、すぐにかわす限界が来た。

キルナイフの刃は俺の脇腹を刺している。俺は男の腕をつかみなんとか刃を反らした。「フフフ、外しちゃったけど死んじゃうよね」男は興味津々だ。経験が無ければそう感じるのかもしれない。「死にはしない。仇を取るまでは」俺はコートを脱いだ。右腕には男と同じ腕輪、一つ違う点をあげるとすればランプが一つ点灯している。つまり一度使用している。「き、キルナイフ。おまえも。しかも使っている。ぼ、僕も殺す気か」ランプのことは聞いていたらしい。俺を再三殺そうとしていて良く言う。「いやそんなもったいないことはしない」俺は脇腹に刺さった男のキルナイフを引き抜いた。「いいかもう説明しないぞ。キルナイフは腕輪につけて使用するんだ。じゃないと毒が刃に入らない」俺は男のキルナイフを男の腕輪の接続部につけた。そしてそのまま刺す。「や、やめろ」キルナイフの毒が男の身体を巡る。「次からは気をつけるんだな」男はもう聞いていなかった。

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最終更新:2017年11月21日 18:53