◎ここまでのあらすじ◎
フレーム成長研究の為開発された鍛錬特化自律型アームヘッド・ヴィジャヤ達は、一定の成長を経た後実際の戦場へと挑む。
死のリスクを背負い数を減らしながらも強くなっていった彼らは、技の継承と同士討ちの果てに遂に一機へと終着したが……
ARMHEAD "MUSCLE CHRONICLE"
SIDE:VIJAYA PROLOGUE 18
--21XX.XX.XX--
地上では終わらない戦乱の果て、巨大試作エネルギープラントの暴走、爆発による惑星規模の環境変化により、人類文明の衰退が起こっていた。
ヴィジャヤはその間、海底で新フレームの限界までの鍛練に挑んでいたが、度重なる振動でシェルターは崩壊し内部が完全に水没した状態となっていた。
水圧が加わりトレーニングには申し分ないものの、結局対戦相手は現れない為、フレーム成長が止むと、地上に敵が現れるのを待つ必要があった。
絶え間なく降る灰が空に蓋をし、か細い日光が茶色く辺りを照らして、地上は文字通り土の世界といった様相だ。
砂煙の中、微かに光る点が灯り移動していた。
『わははは、この一帯のへブナーは滅んだようだ!ヘブンは我々のモノだ!』
トンドルの月の残党ファントム、ラフフィッシュが高笑う。
『フン、楽観だな。あの魔鎚の下、巣を作ってしぶとく生きてるんだろう』
ロンリーアンドが言いながら遠くに聳えるビスケットハンマーを見上げる。
『あれを倒す方法があれば……』
K1T3K2が呟くと、見通しの悪い大気の中に新たに影が浮かび上がった。
『誰だアイツは?』
ラフフィッシュも振り向くとデカい図体のアームヘッドがズシズシ向かっていた。
『おい貴様!所属と名前を言え!』
ロンリーアンドが捲し立てるとヴィジャヤは歩みを止めた。
『ああ良かった、全滅したかと思ったぞ』
その一言にトンドル残党は困惑した。
『……コイツ野良の自立型バイオニクルウェポンみたいだぞ、データにないが』
『おい貴様!目的が無ければ我々と来い!共に我らを縛るあの塔を倒そうぞ!』
『俺はただ戦いに来たんだ…その後だったら付き合ってやらんでもないぞ』
ヴィジャヤが突然戦闘態勢を取る。
『なんだコイツ…新入りの癖にイキってんじゃねー!』
ラフフィッシュが相手のフレームを考慮せず勇敢に挑む!
ヴィジャヤの拳!ラフフィッシュ粉砕!
『雑魚が…足りん』
『き、貴様ーッ!』
ロンリーアンドが透明人間の操るヌンチャクめいて飛び交い攻撃!
ヴィジャヤが両端機体を掴み引きちぎる!
『駄目だ…足りん』
『貴重な同志を!許せん!』
K1T3K2がローラーダッシュ!肩部鉄塊パンチを連打!ヴィジャヤの脚部が軋む!
『ほう、そういうパンチもあるのか……だが』
ヴィジャヤの反撃パンチ二連続!K1T3K2も同様に鉄拳で相殺するも、打突部を打ち出す機構のアーム部分が悲鳴を上げる!
更に二連続!拳を受けた肩叩き鉄塊が根本からボキリと破砕!
『構造に欠陥がある、それでは成長しても意味がない』
『舐めるなよ!』
K1T3K2の超硬質頭突きとヴィジャヤの拳が激突!互いに砕けず、ローラーが地を噛み押し続ける!
ヴィジャヤはもう片方で手刀を構え黄緑粒子を充填!甲羅の脳天に振り下ろす!
ギリィィィ!力づくでぶった切られた装甲は恐ろしい音を立て、K1T3K2は真ん中から分断し崩れた。
『足りん…足りんのだ』
ヴィジャヤは己を成長させるに至る力を持つ"仲間"を探しながら廃れた荒野を彷徨い続けた。
(続く)
ARMHEAD "MUSCLE CHRONICLE"
SIDE:VIJAYA PROLOGUE 19
--35XX.XX.XX--
あれから地上の環境は改善しつつあり、人類は再度進出して一度は失ったアームヘッドの発掘に至るまでも文明を取り戻した。
しかし、ビスケットハンマーによる呼吸停止、
大破局などによる直接破壊を免れることの出来た野良ファントムは、人の手の及ばぬ所で自ら環境適応して進化し、もはや自然生物として定着に向かう者すらいた。
密林を往く異形の群れがあった。
腰を折った海老めいた姿のまま地上を歩くガンマリッドだ。
それはかつての笹葉重工業製・スカッドシュリンプに酷似していたが、元々がファントムではない為、その設計を何らかの方法で読み取りアームヘッド達が自力で作り代わった、新世代の野生生物と言ったところだ。
それらは横にはみ出した脚を器用に使い木を掻き分け進んでいく。
その時先頭のガンマリッドを爆風が襲った。厚い甲殻により損傷は少ないがその隙に迫る者がいた。
「こいつはオレの獲物だ!」
発掘された旧型アームヘッド・ブートン改が二機!彼らはアームヘッド資源の回収を狙い野良ファントムを狩る者!
胴部から鉤付きワイヤを射出し一気に肉薄!
ガンマリッドは太いカマキリめいた捕脚を展開し、一機を殴り付ける!劣化したブートンは爆散!
もう一機が文句を言おうとした矢先、捕脚が両腕を拘束したかと思うと、ガンマリッドはバタバタと空中を泳ぐように高速宙返りしブートンにバックドロップ!
砕け散る劣化有人機にガンマリッドの群れは拍手のような行動で讃えた。この技が彼らのお家芸なのだ。
ハンターを撃退し安息するガンマリッド達だったが現れたのはそれだけではなかった。
地響きと共に木々が舞い巨人ヴィジャヤが着陸する!
『面白そうな奴らだ、俺と戦え!』
ガンマリッドの群れは恐ろしき筋肉怪物に逃げ出そうとしたが、彼らの背後から巨大な個体が出現すると従いとどまった。
『見せてみろ、お前達の力と技を…』
挑戦に対しリーダーガンマリッドが高速で宙を泳ぐ!捕脚でヴィジャヤの胴体をガッチリ掴む!
フン、と余裕の笑みで敵の次の手を窺った矢先、ガンマリッドの群れが一斉に跳びヴィジャヤの全身に爪を埋める!
そしてリーダーの遊泳脚が空を蹴り始めると各自が一斉に泳ぎ、宙に浮くヴィジャヤ!
発射失敗ロケットめいた加速と急激な墜落!ガンマリッド群のバックドロップボムがヴィジャヤを脳天から地表に叩きつける!
『………』
やや柔らかい土壌に突き刺さり自重で沈んでいくヴィジャヤ。
ガンマリッドは手放すと再び拍手のような行動で囃し立てた。
まもなく意識が戻ると、立ち上がるヴィジャヤの背後にはリーダーガンマリッドだけが鎮座していた。
先の攻撃では倒せないことが分かっていたため群れを先に逃がしたのだ。
『今のは効いたぞ…久々に骨がありそうだ!』
(続く)
ARMHEAD "MUSCLE CHRONICLE"
SIDE:VIJAYA PROLOGUE 20
ヴィジャヤとガンマリッドが同時に打撃!
分厚い甲殻に覆われる捕脚は傷付く気配なく拳を打ち消す!
更にリーダーが浮いたかと思うと鎌でヴィジャヤの腕を捕らえる!そのまま前転し雑巾めいて絞り上げる!
そしてはみ出た脚が巨人の足をかけ、巻いた腕が戻り回転させながら地面に叩きつける!
『何…ッ!』
起き上がり様に殴り返すヴィジャヤ、だがガンマリッドは機敏に泳ぎ、曲がった腰を弾き出しひっぱたく!
反動で間合いを取りつつ丸い背で軟着陸する。野性的だが戦術性も伺わせる新世代生物の動き!
頭を叩かれたヴィジャヤは前のめりになるが致命的ダメージは受けず持ち直した。
両手を突き出しテトラボール連射!ガンマリッドは高速で小回りを効かせ避けていくが、ヴィジャヤもフェイントをかけた上に二弾ずつ繋げた広範囲弾を射ち当てていく!
ガード姿勢のリーダーは次々と爆風に飲まれついに倒れた!
土煙の前に立つヴィジャヤ。だが違和感!
ガンマリッドはヨコエビめいて体を真横に倒した状態で走ってくる!
『!!』
踏み潰そうとするヴィジャヤの足裏が捕脚に殴り上げられる!
ヴィジャヤ転倒!その足をガンマリッドが捕縛!ジャイアントスイング!
回し投げた後も終わらず!巨人は掴まれ空中で再度バックドロップ体勢に直面する!
ヴィジャヤは両掌を発振させバリアで弾こうと試みた。だがガンマリッドは弾ける粒子の中で堪え離さない!
そして脳天岩石落としが決まり地面を炸裂させる!
その光景をヴィジャヤは見ていた。そうガンマリッドが抱えていたのは寸前でテトラボールにすり変わっていたのだ!
爆風と地面衝突のダメージに眩むガンマリッド!その尻尾をヴィジャヤが掴み……
『ウオオラァッ!!』
跳躍二回転バックドロップ!
巨大ヨコエビは頭から地面に食い込み沈黙した。
『ハハハ、お前は良い技を持ってる。なかなか闘りがいのあるいいトレーニング相手だ。またやろうぜ』
ヴィジャヤが言ってしばらくするとガンマリッドは起き上がり、
『ブシュルルルル!!』
口をもがもがすると緑色の粘っこい唾を吐きつけ、足早に泳ぎ逃げていった。
『やっぱりダメか……どっかに丁度良い敵いねえかな……』
ヴィジャヤは掌を顔に当て、しつこく留まり続ける唾をぬっぺりと拭った。
(続く)
ARMHEAD "MUSCLE CHRONICLE"
SIDE:VIJAYA PROLOGUE 21
--45XX.XX.XX--
人類文明はまた新たな変革を迎えていた。新たなる支配体によって人々は労働の対価に日々の糧食と生活を手にする代わり、民間のアームヘッドやシビルヘッドの所持禁止が敷かれた。
だがそれでも平和は訪れない。
現状に不満を募らせた不法所持者たちは法を執行すべく雇われた軍事企業と日々戦いを続けるのだった。
そうした背景の中で一部のアームヘッド企業の技術レベルは嘗ての時代に迫り、いや新鉱石の発見と利用法の発明によって上回るほどの力を手にしていたのだ。
『オオオオッ!!』
ヴィジャヤが砲丸投げめいて特大テトラスフィアバスター発射!
赤紫の光弾がそれを貫き、 吸収したかのように増大しヴィジャヤに向かう!
『クギィ……!』
加速する粒子ビームを間一髪でかわすヴィジャヤ。その眼前には二機のアームヘッドが舞う!
「あらまあ、とんでもないマッスルボディですわ、お姉様」
「ええ、しかしYR粒子への反応からして、所詮ノーマルのアームヘッドのようね。恐るるに足りないわ」
謎のYRアームヘッド・リリィスクイドは細身で花とも烏賊ともつかないフォルムだ。
ヴィジャヤの粒子弾はかつてに比べ遥かに強化されているはずだった。しかし、YR粒子のテトラダイ侵食作用の前では逆に牙を剥いてくるのだ!
二機のリリィスクイドが触手から花びらめいた飛び道具を宙に撃つ!
テトラダイ粒子を激しく撒くそれに対し、交差するように特殊銃を撃ち込むと、瞬く間に侵食が広がり恐るべきYR爆発が周囲を包む!
『妙な武器を……!』
ヴィジャヤが飛び逃げるが、その行き先に敵の撒いた粒子領域が待ち受けそこに侵食ビームが射たれていく!
反撃のため構えた掌が爆発!ヴィジャヤはようやくテトラダイ攻撃が通じぬ相手だと勘づいた。
エネルギー波の中をガードで堪えながら接近!拳を構える!
「そのくらい想定済ですわ!」
リリィスクイドが過剰に歯の長いチェーンソーめいた武器を抜いた!
歯の間からも破壊的粒子刃が伸び近接武器にしては異様な攻撃範囲!
キュイイイイ!!ヴィジャヤの拳が削られ紅い抉り跡が光る!
手を引いた瞬間にもう一機が射撃で追い討ち!やりこめられた筋肉は急速に高度を下げる!二輪の花も一定の距離を取りつつ追跡!
上空からの牽制!撃墜!派手に墜落し地面を破壊して…巨岩を投げ放つヴィジャヤ!
驚くリリィスクイドは投石を何とか回避!再びテトラ散布花びらミサイル発射!
左右から迫るそれにヴィジャヤは敢えて向かう!腕を交差してキャッチ!二機に向け投げ返す!
先の先を読む彼女らは既に強化粒子砲を発射!そこへ花びらミサイル!粒子浸食爆破が自らを襲う!
「キャーッ申し訳ありませんわ!お姉様!」
「謝る事はなくてよ。少々見くびりすぎた私に非があります」
「ここは退いて一息整えましょう。お茶でもいかがかしら?」
「お姉様!寛大!」
YR被爆したリリィスクイドはダメージを振り払うように足早に撤退していった。
ヴィジャヤは両手に尖った岩を構えていたが投げることはしなかった。
己の拳を見ると未だに赤紫の忌々しい粒子が傷を巣食っていた。
海底シェルター付近の海岸。ヴィジャヤはそこに降り立ち岩塊に手をついた。
あの粒子による汚染は決して浅くない。自己修復にやや遅れが生じこのまま入水すれば傷が沁みてしまう。
回復を待っている彼の前、突如、空間がぽっかり穴を開け、こじ開けるように手が出現した。
『!?』
驚いたヴィジャヤが身構える!異空間からの侵入者は、やがてその全身をこちらの世界に踏み出させた。
「久しぶりだなあ、ヴィジャヤ……」
その声の主には遥か、遥か昔に聞き覚えがあった。
『……あ、貴方は……ベルベキュー博士!?』
(続く)
ARMHEAD "MUSCLE CHRONICLE"
SIDE:VIJAYA PROLOGUE 22
「久しぶりだなあ、ヴィジャヤ……」
『……あ、貴方は……ベルベキュー博士!?』
出現したアームヘッドは、かつてのリズ連邦の高級量産機・メシドールの生体フレームを相当に鍛え上げたマッチョ・メシドールだった。
「私の言いつけを守って、よくぞここまで鍛えた!!えらいぞぉぉー!!」
メシドールが嬉しそうに跳び背の高いヴィジャヤの頭を撫でまくる。
『いやあ、ここまで本当、色々大変だったんすよ……』
ヴィジャヤスが頭をかきながら記憶を掘り起こす。
「素晴らしい!数々の苦難を経て勝ち取ったその肉体はこの世の何よりも美しいぞ!」
『あっそうだ!仲間が皆、いなくなって丁度いい対戦相手が欲しいんですよ……また仲間を造れませんかね』
「う~ん、その必要はないぞ!」
『え?いやシェルターにはヴィジャナやヴィジャローのアームコアもあるんすよ!あいつらだけでも…』
「同族との戦いはあくまで成長過程なのだ」
「最後に戦った奴はお前とよく似ていたろう。同族だけではある程度収斂してしまうのだよ」
『見ていたんですか?』
「たまにな。お前は私の誇りだ」
『でも俺は、仲間に生きてて欲しい…今度は倒さない、どこか遠くにいてもいい。あいつらだって、最強になれなくても鍛え続けたかったはずだ』
「それは出来ない。お前たちは戦い合うように作ってあるからな」
『何?』
ヴィジャヤスは次第に熱を失っていく博士の声色に訝しんだ。
「同胞の死は強くなるために必要不可欠なのだ。特に若いうちにはよく効く」
『何だと……』
「そんなことより!こうしてお前の前に現れたのは他でもない」
「新たな使命を与えるために来たのだ!」
マッチョメシドールが拳を上向け翳す!その手の甲には時計の化け物めいた紋章が刻まれていた。
「お前はこれから我々タイムスリップ教団の一員となり、超時空全座標麺類移送装置のエンジンとして活躍するのだ!無論、お前にとって悪い話ではない」
「装置の中で鍛え続ける事自体が動力源になる!これによりお前は無限に鍛えられ我が神は無限に何処までも旅立てるようになるぞ!」
『……』
「そうすれば私もお前も四天王入り間違いなし!お前は幾多の次元の中でも最も珍しい生き残りのヴィジャヤ!これだけ成長していれば素晴らしい成果が!」
博士の説明は熱を帯びていたが、それはヴィジャヤスにとって意味を成さない興奮だった。
『…もう一度言うぞ。仲間を生き返らせてくれ』
「それは無理な願いだ……この次元において新たにヴィジャヤを産み出す事に意義はない。だが、我ら教団と共に行けばいつでも会いに行けるのだ!」
その言葉はヴィジャヤスに何の損もない完全な勧誘のはずだった。だが、ヴィジャヤの抱いた失望を取り返すには至らなかった。
『俺は行かん。力づくで連れていってみろ。出来るもんならなァ!』
ヴィジャヤが吠え黄緑の粒子が辺りを照らす!
「これは想定外…」
「二千年もすれば精神も、もっと鍛えられていると思ったがな?頭の成長がまだ足りんようだ……!」
タイムスリップバーベキューが襲ってきた!
(続く)
ARMHEAD "MUSCLE CHRONICLE"
SIDE:VIJAYA PROLOGUE 23
マッチョメシドールが真横に右手を伸ばす!
「"フレッシュ・オフ・ザ・グリル"」
すると超自然の串が生成!この調和は串に刺している物体3つまでを無重量として扱える能力!
メシドールが串でヴィジャヤ背後の岩塊を軽々と持ち上げる!振り下ろされる巨大ハンマー!
ヴィジャヤも殴り受けるが岩壁は厚く粉砕できない!串が引き抜かれ圧し掛かってくる間、メシドールは逆の手から串を出しヴィジャヤの足元へ!
そのまま持ち上げ上下の岩石と重力に襲われるヴィジャヤ!上の岩を何とかメシドールに落とすが串で退けられる!地面ごと落とされながらテトラボール連射!
串はその内3つを貫き団子にすると残りの光弾を打ち弾く!
崩れた地面を踏み砕き前進するヴィジャヤ!テトラナックルとテトラ団子が激突!
団子一個の爆発と共にメシドールの肩キャノンがジェット推力を発し後退!残りの団子を振り投げ発射!
自身のテトラ弾は目眩まし程度だがそれが狙い!
ジェット急旋回し後ろ回し蹴りを放つマッチョメシドール!腹を蹴られ退くヴィジャヤに超自然の串が刺さる!
『ヌゥ!?』「ぬかったな!」
タイムスリップバーベキューは串に刺さった自信作の巨人を軽々振り回す!高速で岩に!地面に叩きつけ!小学生に与えた傘のように乱雑に!加減無くぶち壊す!
「どうした?それでは教団に入っても役立てんぞ!」
ヴィジャヤは目まぐるしく変わる視界の中でメシドールの足元にテトラボールを撃つ!
ひっくり返った拍子に垂直になったヴィジャヤは刺さった串をより刺してメシドールへ向かう!巨大な拳を一撃!二撃!
串が消滅し三撃目はマッチョメシドールの拳と衝突!手の大きさは二倍以上違うが拮抗!
バーベキューは串を地面に対し生成し棒高跳び!両脚をあらぬ方向に曲げ斧状に!メシドール特有の重量バトルアックス攻撃!
ヴィジャヤの両肩に刺さり食い込む!直立したまま受け、引き抜かずに頭突きを放つ!マッチョメシドールの股関節粉砕!
「うおーッ!」
雄叫びを上げるバーベキューに巨人の追撃が蹴り上げる!身体を縮こませ分厚いシールドを形作り防御!だが軋む程の衝撃!
「流石だァー!しかしまだ!」
串が岩を刺し、踏みつけようとするヴィジャヤの足を刺し、その背後の岩塊も貫く!
岩に挟まれる形で拘束されるヴィジャヤ!串は一気に伸びメシドールは離れていく!
「考え直せヴィジャヤ、私は鍛えること、戦うこと以外の存在理由を教えに来ただけだ。脚が治ったらもう一度迎えに来る。この世界線に閉じ籠っていてはもう仲間も出来ん。考えてみることだ」
マッチョメシドールが両腕に力を溜め筋肉を肥大化させる!そして放った拳の勢いで全身ごと吹き飛ばしタイムスリップ消滅した。
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ټټټټټټټټټټټټټټټټټټ
ڠڠڠڠ
ټټټټټټټټ
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「……!?」
タイムスリップバーベキューはタイムスリップ空間に旅立ち帰還したはずだった。
『逃がさんぞ』
だが彼の機体の頭はその空間に現れた掌に鷲掴みにされていた…ヴィジャヤによって!
「お前……"掴んだ"というのか!?」
『博士よォ、その程度で俺に勝てると思っていたのか?』
「フフフフ……親殺しの神話……私を超えることでお前は更なる飛躍を得たということだ…素晴らしい成果だ!お前も私も」
『でも、わざとじゃないんだろ?……俺にとっては、ヴィジャローの方がよっぽど親だったよ』
「…私を斃しても、必ずや我が同胞達がお前を迎えに来るだろう」
『フン、望むところだ……楽しみに待っておいてやる』
そして握り潰す!ベルベキュー博士は奇天烈なタイムスリップ空間で方向性を失い、何処かへ流れ消えて行った。
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ふと気づくとヴィジャヤは元の海沿いに戻ってきており、戦いの痕跡は残っていたがベルべキューは完全にそこにいなくなった。掌を見ると、微かに圧触痕が刻まれていた。
そしてヴィジャヤは傷の事も忘れ、そのまま海へと向かうのであった。
(続く)
最終更新:2019年06月30日 10:08