オアイソ・ガッポ
5年前のリド政府軍最高責任者。
敵の工作員に気付き、オシズシ博士の警告以前に封鎖を行うなどキャリアー相手に先手を打っていた。
自分の机の下に散弾銃を隠している。


これまでのあらすじ
バテラ達が天井破りを決行する5年前。
キャリアーによる上層への攻撃が開始され、政府軍の戦力はみるみる弱体化していった。
残されたトロ、イサキ、スズキ達μTのパイロットが上層の守護に努めるが、ある事件が発生し…


パーフェクト・クライムアップ
第17話「最高責任者代理」


その日、オアイソ・ガッポ最高責任者が機械化ウイルスにかかり、死亡した。
それにより、最も階級の高いイサキが最高責任者代理を務めることとなった。
「お姉さま…」
「案ずるな、まだ私達にはμTシリーズがある、あれがある限りは負けんよ」


だが、イサキにはこの先が見えていた。
これまで反攻作戦は全て失敗し、守ることしか出来なくなった以上、どれだけ守りが固くとも消耗しいつかは瓦解してしまう事は避けられない未来だ。
(残された希望は…サアバス博士の残した一手だけ、か)


「スズキ…頼みたいことがある」
「どうしたの?イサキ」
「もし私に何かあったら、ロックスミスを中間三層に隠してほしい」
「貴女…」
スズキはこの先を言おうとしたが言えなかった。


最早上層に希望など無い、だがそれを調和だけでリドの封鎖を維持するトロの前で言い出せなかったのだ。
「…いや、今のは聞かなかった事にしてくれ、少し弱気になった」
「ならいいのだけど」


ーーー


…それから、数カ月。今度はイサキが機械化病を発症した。
アームヘッドとのシンクロで免疫力が高まったとは言え、長期間の接触には耐えられなかったのだ。


「そんな…お姉さまがどうして!」
「…私はそこまで適合率が高くなかった、それだけの事だよ」
トロが泣きすがるが、イサキはそのまま自動治療室へと運ばれていった。
「お姉さま……」


その日の夜、病室から抜け出したイサキはロックスミスに乗り何処かへと消えた。
恐らく、自らを犠牲に機体を中間三層に隠しに行ったのだろう。
そして次はスズキが最高責任者代理となった。


ーーー


…それからまた数カ月後、今度はスズキだった。
「お姉さま!」
「…ごめんね、トロ。貴方を一人にはしたくなかったのに…」


「どうして…」
「それはね、貴方の才能よ。貴方が一番アームヘッドを上手く操れるから、その分貴方のアームヘッドが貴方を守ってくれているのよ」
数週間後、スズキは静かに息を引き取った。


ーーー


…トロは、アームヘッドに乗って、初めて"会話"をした。
この時代のアームヘッドにはパイロットとの過度なコンタクトを防ぐためのプロテクトが標準装備されているのだが、彼女はそれをアンインストールしたのだ。


その翌日、リド政府軍最高責任者代理、トロ・マックロードが誕生した。
これまでの消極的だった戦いは、まるで古代の戦士のような戦いぶりに変わり、口調もかつてのイサキを意識したものとなったのだ。


そして、彼女は5年間戦い続け、今日まで上層を守り続けていたのだった。

次回、第18話「異なる世界へ」に続く。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2020年06月28日 16:53