※イラストできていないので文章だけです



#01
「星になった男」


『我々は天州連邦所属第三移民船団アプルーエ艦隊です』

…それは、暑い夏の日の出来事だった。

『我々は現在、◎◉・●⦿星系の付近を進んでいます。あなた方に会える日を楽しみにしています』

「太陽系外から来たという移民船団から、地球へ向けてメッセージを送ってくる」という現実離れした事件。誰もが最初はフェイクニュースだと本気にはしなかった。

…だがその日から数カ月の間で、地球上で新たなロボット兵器…[アームヘッド]と呼称される兵器群が散発的に出現。

既存の兵器を謎のバリアで無効化し、圧倒的パワーと多様性を持ち、目的すら不明なそれらを対策・研究するべく、対アームヘッド組織が各国に結成されるのだった……


天球のアストロノーチカ
#01
「星になった男」


日本の対アームヘッド組織セルム。
今日もここにアームヘッドの情報が舞い込んだ。

『九州某所に巨大ロボットの目撃情報アリ、直ちに調査に向かって下さい』

新人隊員の幕魂憂鬱は目撃ポイントに向かう為、車を運転していた。

「本当にこんな所にアームヘッドが出たのか?全然騒ぎになってないぞ」

目撃ポイント付近に三角コーンに偽装した粒子探知機(アームヘッド共通のバリアを構成する粒子を探知する装置)を設置する。
…彼の今日の仕事は、これで終わる筈だった。


4つ目の探知機を設置した時の事だった。

「…ねえお兄さん、それ、何?」

憂鬱は後ろを振り向く、背後にはぶかぶかの珍しい服を着た少年の姿。

「…これ?これは目印だよ、ここは危ないからあまり近付いたら駄目っていう…」

マニュアル通り、探知機である事を伏せて返答する。

「そうだね、確かにここは危ないよ。だからお兄さんも離れた方がいいよ」

「…君、何か知っているのか!?」

ユーツが慌てて情報を聞き出そうとするが、既に少年の姿は消えていた。

「なあ!…」

何か嫌な予感がするので、急いで次の探知機設置に向かった。

最後の探知機8を設置し、車の中で探知機の動作を点検する為粒子濃度のウインドウを映し出すと……


[探知機8 粒子濃度高]


「…ウソだろおい」

車の窓から周囲を見渡すが、近くには不自然な大きな岩しか…

「あんな所に岩なんてあったか!?」

岩が変形を始め、巨大ロボット…アームヘッドに変形した!


岩石擬態巨人 ガントーズ


「なっ…」

ユーツは咄嗟に車のエンジンをつけようとするが、間に合わない!
ガントーズの両腕のブレードを叩きつけられ、車はバターの様に両断される!!


―――


…気がつくと、ユーツは車の残骸から上半身だけが出た状態で倒れていた。

「何故俺はこんな仕事を選んでしまったんだろう…」

身体に力が入らない、ガントーズの足音が何処かへと遠ざかっていく。

「最悪な仕事だ、給料は少ないし、探知機は重いし、ロボットに潰されて死ぬし」


…そこへ、先程の少年が現れた。

「君は…」

『ボクはアストロノーチカの生体制御ユニットのノーチカ、突然だけどお兄さんはもうすぐ死ぬ』

「…知ってる、いろいろ身体から漏れてるし」

『…一つだけ、助かる方法がある』


―――


何処かへと歩き続けるガントーズが、ふと立ち止まる。
そこで再び岩石に擬態し、高速回転で地面を掘り始めた。

…その直後!
夜の森の中で光の柱が立ち、そこから宇宙服のような装甲に身を包んだアームヘッドが姿を現した。

「…どうなってるんだ!?俺の身体は…」

『今、お兄さんの身体はこのアームヘッド、アストロノーチカ・アルタルフの一部になっている』

宇宙服のアームヘッド…アルタルフは、頭部のメットに星空の光を反射させ静かに佇む…

『だからお兄さんが致命傷を受けても、このアルタルフの再生力を共有して治癒する事ができるんだ』

「なるほど、俺はその治療費代わりにあのアームヘッドを倒せばいいというワケか」

アルタルフのヘッドガードが降り目が輝き、地下へと潜っていくガントーズを掴み引き上げようとする!摩擦で散る火花!!

「どっせい!」

引き上げられたガントーズは空中へ飛び上がり、アルタルフをプレスしてから人型に変形し着地!

「んげえ!」

『立て直して、すぐ襲ってくる』

ガントーズが右手のブレードで斬りかかる!
対するアルタルフは片膝をつき両腕をクロスしてそれをガード!

「こっちも何か武器は無いのか!?」

『パンチとキックと…ビームがある』

「了解…ここはパンチとキックだ!」

アルタルフは立ち上がる勢いでガントーズの剣を押しのけ、頭部にパンチを叩き込む!

拳は一瞬だけガントーズのバリアに阻まれるが、アルタルフのバリアが侵食して拳が通る!!
ガントーズの頭部フレームが変形し、同時にカメラアイが点滅する!!!

「おらおらおらあ!」

仰け反りで硬直する敵にパンチとキックをさらに連続で浴びせる!
ガントーズが纏っていた岩の鎧が砕け、真っ黒な本体が露呈する!

「やった!」『いや、まだだ』

岩を失いただのトーズとなった黒いアームヘッドは残った武器…頭部の角にエネルギーを集中させ突進を始めた!

『アームキル!あれに当たるとアームヘッドは一発でやられる』

「何!どうする!?」

『僕たちもアームキルを狙う』

アルタルフは敵機を睨み付けたまま動かない…対するトーズは角を突き出し獣の突進!!

『…テトラブラスタービーム』

アルタルフの額から、敵機のアームキルと同じ類の光を内包した細いビームが射出される!!

トーズはそれを避ける事すら出来ず、ビームで身体を腰から肩まで斜めに切断される!

「な……」

…そして光線の照射が止むと、敵機とビームを受けた地面は大規模な粒子爆発を起こす!!

爆風が止んだのと同時に、アルタルフは光りながら小さくなっていき姿を消し…ガントーズだった物体は粉となって崩壊した。


―――


その直後ユーツは、"小さなロケット"を持った状態でノーチカと共に夜の森の中で倒れていた。

「ありがとう、お兄さんのお陰で勝つ事が出来た」

「お兄さんってのも何かアレだな、俺の事はユーツでいいよ」

「ユーツ…うん、暫くの間よろしくね、ユーツ」

「…ああ、よろしく、ノーチカ!」


【人物紹介】
幕魂憂鬱
地球生まれ地球育ちの対アームヘッド組織セルム隊員。
高待遇に釣られてセルムのアームヘッド探知機設置手になったが、探知機が重かったり休暇が少なかったり思ったより給料が少なかったりと多くの不満を抱えていた。

ノーチカ
アルタルフの生体制御ユニット。
ある目的があって地球にやって来た謎多き少年で、偶然出会ったユーツと共に、同じく天球から来たアームヘッド達との戦いに身を投じていく事となる。

【機体紹介】

ガントーズ
九州某所に出現したアームヘッド。
周囲の鉱物を取り込んで装甲にしたり、手足を格納して岩石に擬態する機能を有している偵察・採掘に特化している。
主な武装は両手のブレードと頭部の角「アームホーン」。

アストロノーチカ・アルタルフ
惑星ヘブンから飛来した宇宙アームヘッド。
剣や銃などの武器は持たないため、徒手空拳による戦闘を行う。
またアームヘッド特有の"角"は頭部バリアグラスに覆われているが、代わりに額から発射される圧縮粒子ビーム「テトラブラスタービーム」によりアームキルを行う。

【単語紹介】
アームヘッド
地球から遠く離れた惑星「天球」の兵器。
半機械半生物の特性を持っている他、アームヘッド以外の殆どの攻撃を無効化する粒子バリア「AAB(アドバンスドアウェイクニングバリアー)」を持つ超兵器。

AAB(アドバンスドアウェイクニングバリアー)
稼働中のアームヘッドの表面を覆う粒子バリアー。
外部からの殆どの攻撃や空気抵抗などをすべて遮断する程の瞬間硬度を持つ為、通常兵器でのアームヘッド撃破を困難にしている。

アームキル
アームヘッドの体内に含まれている特殊エネルギー粒子「テトラダイ」が、別個体のアームヘッドの体内に侵入する事で発生する現象。
アームキルを受けたアームヘッドは拒絶反応により自壊する為、現状アームヘッド唯一の弱点と言える。

【次回予告】

謎の少年ノーチカと共にアームヘッド・ガントーズを倒したユーツを待っていたのは、車を破壊された報告とアームヘッド同士の戦いに巻き込まれた報告の尋問地獄だった。
ノーチカとの接触、自分がアームヘッド・アルタルフと共生状態にある事を隠しつつ報告を済ませ休息を取っている最中、新たなアームヘッドの情報が舞い込み…

次回、#02「暗躍、闇の兄弟団」

『アルタルフ…ちょっと味見してみようかな』

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最終更新:2021年09月05日 17:22