#02
「暗躍、邪悪の兄弟団」

【あらすじ】
防衛隊セルムの新人ユーツは、探知機の設置作業中にアームヘッド「ガントーズ」に襲われ致命傷を負ったが、謎の少年ノーチカの提案で「アストロノーチカ・アルタルフ」との共生を選び復活。
二人で協力しアームヘッド同士のバトルに勝利する。

だが戦いを終えたユーツを待つものは、組織人としての報告地獄だった…


―――


天球のアストロノーチカ
#02
「暗躍、邪悪の兄弟団」


―――


日本国内某所、薄暗い地下アジト…
乱暴にドアが開かれ、眼鏡を掛けたボロボロの男が転がり込んでくる。

「いてて…まさか地球側につくアームヘッドが居るとは…」

「随分と派手にやられたねえ」

それを出迎える黒い服の少年…

「今回は擬態重視の機体だったから仕方ないねー…で、相手はどんなヤツだった?」

「空手とビームで戦う宇宙飛行士みたいなアームヘッドだった、識別コードは確か…"アルタルフ"」

「へえ、アルタルフっていうのかあ…仲間にも知らせておかないとね」

「ああ…あのお方が戻ってくるまでに何とかしないと」

「そうだねえ、あのまま放っておくとボクたち邪悪の兄弟団の計画が目茶苦茶になっちゃうよ」

少年が古びたソファーから立ち上がり、何処かへと行こうとする…

「アルタルフ…ちょっと味見してみようかな」


―――


…深夜。
報告という名の尋問をなんとか乗り切ったユーツは、満身創痍で自宅のアパートへと帰宅した。

「やあ、ユーツ…遅かったね」

「ま…色々あったからな」

ユーツはふらふらとした動きでソファーの方まで歩き、倒れるように眠り始めた。

「グゴゴ……」

その役2時間後、ユーツの携帯電話が何かのメッセージを受信し振動した。

「ん?………ああ…」

目を覚まし画面を見たユーツの顔色が悪くなる…

「どうしたの?」

「仕事だ、またアームヘッドが出た」

「……これ、持っていって」

ノーチカがユーツに小さなロケットを手渡す。

「これは、あの時の…」

「アルタルフはこのマクロトランサーに封入されてる…いざという時は、使って」

「…オーケー、ありがとうよ」

ユーツはまだ少しフラフラしたまま、夜明け前の外へと出ていった。


―――


…今度の仕事も探知機設置である。

今度は前のようなヘマはしたくないので、急いで置いていった。

「よし!帰る!」

車(二代目)に乗り込み、迅速にその場を離れる!!

「へへ、何とか終わっ…」

が、急に車が宙に浮かび、勝手にあらぬ方向へと向かい始めた!

「……へ?」

恐る恐る外を覗き込むと、車を片足で持ち上げ飛行する巨大な怪鳥の顔!!

「飛行型アームヘッド!?」

吸血飛空巨獣ヴァンデバン

ユーツと目があったヴァンデバンは暫くの空中遊泳の後、用済みと言わんばかりに車を放り投げる!

「うわああああああーーー」

そして車は落下し、無残にも潰れ爆発する!
そして、それと同時に宇宙服の巨人…アルタルフも着地する!!

「…間に合ったようだね、ユーツ」

「何とか…車はまたぶっ壊れたが」

アルタルフのヘッドガードが降り目が輝く!すると……

『…君がアルタルフだね』

目の前に着地したヴァンデバンが声を発した!

「しゃべった!」「まあアームヘッドは基本人が乗ってるからね」「…何だって?」

ユーツは前回の戦いを思い出す…確か、前に戦ったガントーズは……

「俺、人を殺して……」

『クラタ君の服を黒焦げにした借り、返させてもらうよ』

「よかった!生きてたのか〜」

「…ユーツ、来るよ」

ヴァンデバンが人型に変形し、アルタルフに組み付く!!

「なっ!こいつ速いぞ!?」

「純粋な戦闘用アームヘッドだ、昨日の比じゃない」

上空に連れ去られるアルタルフ!

『君のDNA、解析させてもらうよ』

ヴァンデバンの口が開き、アルタルフの肩に噛み付く!!

「いでえ!何すん…あっあっああ……」

傷口から血を吸い取る!アームヘッドは半生物半機械である為、血を失うと力が抜ける!!

『?流れる血の種類が多い……』

「ユーツ!しっかりして!」

「あっああ…はっ!このままだと死ぬ!」

アルタルフの目が再び輝き、高速回転し拘束を引き剥がす!

「うおおお!落ちる!」

「ううん、アルタルフも一応飛べる」

アルタルフの背中のロケットから粒子が放出され、落下する前にもう一度上昇する!

「おお!これなら…」

「ただし小回りは効かない、宇宙用だからね」

「テトラブラスタービーム!」

額から必殺のビームを射出するアルタルフ!だが!

『そうか、中に乗ってるのは二人…人っぽいのと、もう一人は…?』

ヴァンデバンは射線を読み素早く横に移動し回避、蹴りを入れ地面に叩き落とす!

「ぐわあ!くそお…」

立ち上がろうとするが力が抜ける!先程の出血と…睡眠不足!

アルタルフは輝きながら小さくなり…消滅した。

『ありゃ…倒しちゃった、調子でも悪かったのかな』

―――

セルム本拠地、情報統括司令室。

「…アームヘッド2号、消失しました」

「周囲を捜索しろ…そこに幕魂憂鬱が居るはずだ」

「長官…やはり、彼を拘束するべきでは?」

「いや…まだだ。彼のアームヘッド2号との関連性を完全に明らかにするまではな」


―――


【機体・アイテム紹介】
ヴァンデバン
空中戦に特化した純粋な戦闘用アームヘッド。
巨大な鳥のような姿から人型に変形する機能、敵アームヘッドの血液を吸い取りDNAを解析する機能を持つ。

マクロトランサー
手のひらサイズの小さな宇宙船。
物質を圧縮して保存する機能を有しており、この中にアルタルフが封入されている。

【人物紹介】
倉田(くらた)
アームヘッド・ガントーズに乗っていた邪悪の兄弟団の構成員。
眼鏡をかけた冴えない男だが、アームヘッドの自壊に巻き込まれても死なない程度の頑丈さが取り柄。

エレ・メリエール
アームヘッド・ヴァンデバンを操る邪悪の兄弟団の構成員。
吸血や捕食の能力を持ったアームヘッドを好んで使用する、どこか人間らしからぬ雰囲気を持った少年。


―――


【次回予告】
初の純粋な戦闘用アームヘッドとの戦闘に敗北したユーツは、アルタルフと共に姿を消した。
一方ノーチカは、強敵ヴァンデバン突破の為、"ある秘策"の準備に取り掛かっていた…

次回、#03「合体、スカイローダー」

『…スカイローダー、ユニオンシステムセットアップ!』

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最終更新:2021年09月07日 22:30