ここは「N.E.S.T.」。
突然現れた怪獣「バイオニクル」と戦う防衛組織の本部基地だ。
ゼロ隊員「へいイブちゃん、今日もいつも通り可愛いねぇ」
イブ隊長「そんな///」
ゼロ隊員「あんまり可愛いから疲れが吹っ飛ぶよぅ」
イブ隊長「むむむ・・・///」
ゼロ隊員「ところでウブ・・・じゃなくてイブちゃん、俺たちって付き合ってるのかな?」
イブ隊長「え///」
ゼロ隊員「いやさ、いつもそうやって照れてばっかりだから、実際俺の事どう思ってるのかなって」
イブ隊長「それは、ゼロ隊員には尊敬できる所もあるし、カッコいいとは思ってますけど・・・///」
ゼロ隊員「それでそれでぇ」
イブ隊長「・・・でも、付き合ってはいません」
ゼロ隊員「え?」
イブ隊長「だって、だって浮気しているんでしょう?」
ゼロ隊員「おいおい俺がイブちゃん以外の誰を愛するってのさ?
この基地の女性隊員だってあとダーヌ隊員しか居ないんだぜ?俺がダーヌ隊員と会う機会はそんなに無いでしょうよ」
イブ隊長「ダーヌさんじゃありません・・・ヨシダ隊員とカンタ隊員といつも話していたじゃないですか。あなたが好きな女の子の事」
ゼロ隊員「え!?」
イブ隊長「髪がピンクでヤンデレで喧嘩が強くて可愛い女の子が好きって照れながら言ってたじゃない!」
ゼロ隊員「いや、それは・・・!」
イブ隊長「やっぱりそうなのね!もうゼロさんの事なんか知らない!」
隊長は怒って去っていった。
ゼロ隊員「そ、そんなぁ・・・」
ゼロ隊員がガッカリして司令室に戻る。
イブ隊長がヨシダ隊員と何やら楽しそうに話しているのが見えた。
ゼロ隊員「・・・なんでいなんでい、こう見るとイブ隊長も大概じゃあないか」
コゼニ研究員「すれ違い、すれ違い。すれ違ったらスレ違い。そしてまたまたすれ違い」
ゼロ隊員「・・・おい何だとっつぁん、どういうつもりで言ってんだ?」
コゼニ研究員「何でもないっすよ。ところでちょっと来てくれません?」
ゼロ隊員「は、はぁ」
その直後である。
突然基地のレーダーに巨大生物反応が出た。それも基地の敷地内だ。
マトア隊員「隊長、緊急事態です!」
イブ隊長「こんな近くにバイオニクルが!?」
突如現れたバイオニクル・変身怪獣ゼローズは既に基地へと迫ってきていた。
それは狐に似た頭部と尻尾を持ち、手足に鋭い爪を持っていた。
動物とは思えない縦に並ぶ三段のゴーグル状の目が連続して光った。
カンタ隊員「相手の特性が分からない、ひとまずは威嚇射撃を」
イブ隊長「ヨシダ隊員!私と一緒に威嚇装備の用意を!」
ヨシダ隊員「そういうのはゼロ隊員の仕事じゃ?」
イブ隊長「今日は違うんです!急ぎましょう!」
そして二人はバズーカを担いで外に出る。
ゼローズが二人を見下ろした。
二人はバズーカを発射するが、着弾する寸前にゼローズが一瞬姿を消し、その背中を通り抜けてバズーカ弾が爆発した。
ゼローズの目がゆがんだかと思うと、突然ゼローズの尻尾がうなりを上げ、二人の目の前にたたきつけられた。
直撃はしなかったが衝撃で二人は吹き飛ばされて離れ離れになってしまった。
ゼローズはヨシダ隊員に目もくれず、倒れたイブ隊長に向かって接近する。
ビオナイクラーはゼローズの首にチョップを食らわせる。
ゼローズは一瞬よろめいたが、素早い身のこなしで後退した。
すかさずビオナイクラーがカッター光刃を投げつける。
すると突然ゼローズが消えた。
驚くビオナイクラー。
しかしその直後、視界の端にあった建物がゼローズの形に変貌し、襲い掛かった。
カンタ隊員「どうやらビオナイクラーは狐に化かされているらしい」
イグ隊員「変身能力の類でしょうかね」
ビオナイクラーは再び手刀を放つ。
するとまた消えた。すぐに後ろから飛び掛ってくる。
今度は基地の外壁に変身していたのだ。
ビオナイクラーはゼローズを背負い投げして、地面にたたきつけた。
またゼローズが消える。突然ビオナイクラーの足が掴まれ、ひっくり返された。
今度は地面だ。
ニトロ隊員「変身した時のレーダー反応が無いwwwwww」
シグレ隊員「どうやら細胞そのものを変質させられるようで」
ダーヌ隊員「鉄にも紙にもなれるって事ですね」
ビオナイクラーが立ち上がるとまた消えていた。
急いで辺りを見渡す。・・・あんなに大きな車が有るはずが無い!
ビオナイクラーはすかさずカッター光刃を投げる。
巨大な車はゼローズの形に戻り、ゼローズは泡状に還った。
ニトロ隊員「あっさりすぐるwwww」
そして勝利を確認したビオナイクラーは、空高く飛んでいった。
隊員全員が安堵の息を漏らし、イブ隊長もゆっくり起き上がる。
その時だった。
泡の塊は再びゼローズの形に戻って、ゼローズがイブ隊長の前に姿を現す。
今度は泡に化けていたのだ。
シグレ隊員「化かされた!」
カンタ隊員「こ、この程度のトリックに騙されただと・・・!?」
ビオナイクラーが帰ってしまった今、ゼローズの破壊活動が始まると思われた。
だが何故かゼローズはイブ隊長に向かって手を伸ばした。
イブ隊長は逃げようとしたが、すぐに捕まって持ち上げられてしまった。
ゼローズは素早く大きな跳躍をすると、山の方面へと逃げていった。
マトア隊員「イブ隊長が連れ去られた!?」
ダーヌ隊員「バイオニクルが人間を誘拐?一体何故?」
すると司令室にヨシダ隊員が戻ってくる。土煙で服が茶色がかっていた。
ヨシダ隊員「今すぐ追跡するぞ」
その頃、ゼローズはイブ隊長を掴んだまま山の上を疾走していた。
山を越え谷を越えた後、崖のような所でゼローズが止まった。
そして崖の先にイブ隊長を降ろしたかと思うと、振り返って森の中を覗きだした。
イブ隊長はすぐにでも逃げようと思ったが、前には怪獣、後ろは切り立った崖という状況の中で動けずにいた。
ゼローズが向き直り、イブ隊長に手を伸ばす。
手には、背の高い花で作られた大きな花束が置かれていた。
貰わなければ落とされる気がして、イブ隊長は花束を抱える。
ゼローズは手を引っ込めると、安心したようにしてそこに座った。
イブ隊長は逃げ道を塞がれますます逃げられなくなったので、真似して座ってやった。
ゼローズはさらに満足したようにし、寝転がりだした。
イブ隊長にはその仕草がユーモラスに見えて、とりあえず真似して寝転んでやった。
そしてそのまま夜になる。
イブ隊長(私は一体いつまでこうしていなければならないのかしら・・・
このバイオニクルからは殺気も感じないし、むしろ可愛くすら思えてくるんだけど、実際私をどうする気なのだろう?
あぁ、早く救助が来ないかしら・・・)
イブ隊長の耳にはゼローズの大きな寝息が聞こえ始めていた。
そしていつしかイブ隊長も眠りに落ちていた。
深夜。
突然の衝撃でイブ隊長は目を覚ます。
ゼローズはイブ隊長をかなりの勢いで掴むと、これまでよりずっと速く走り出した。
N.E.S.T.の戦闘機が追跡に来たのだ。
ゼローズは稲妻のごとく山の上を跳び続けて逃げた。
ボンコーイV1が威嚇射撃をすると、ゼローズは背中で銃弾を受けた。
イブ隊長を懐に隠している様子はまるで守っているようにも見えた。
途中でゼローズが夜の闇の中に消える。
ボンコーイが諦めて去ると、ゼローズは元の形に戻って月を見上げた。
それから何処かへと進み続けるゼローズ。
イブ隊長は不安であったが内心ではワクワクもしていた。
ゼローズが郊外の海岸の砂浜に飛び降りる。
月明かりに照らされた海の前で、イブ隊長は降ろされた。
何だか久しぶりに広い所に出た気がした。
ここならば逃げ出しても捕まらずに済むかもしれない。
しかしイブ隊長はそれをしなかった。
目の前のバイオニクルが、何故か愛しく思えて、少しだけそばにいてやりたい気分になったからだ。
依然としてゼローズは危害を加えようとはしなかった。
ゼローズは尻尾で隊長を包むようにする。
イブ隊長「・・・意外と、軟らかいのね」
丸まったゼローズが巨大な葉っぱの固まりに姿を変える。
イブ隊長「・・・寝心地なんて気にしなくていいのよ?」
ゼローズは体を鳥の巣のようにする。隊長は首を振った。
更に体を綿状に変形させた。隊長が笑って首を振る。
次には人間の使う布団のようになった。隊長は上で転がって見せたが、途中で首を振ってあげた。
理解したゼローズが変身を解き、最初の姿に戻る。
ゼローズがまるで狐のように丸まって眠りはじめ、隊長はそれに包まれるようにして眠った。
早朝。
イブ隊長は大砲の音で目を覚ました。
とっさに隊長を掴み飛び上がるゼローズ。
一人と一匹の周りには十数台の戦車が駆けつけており、N.E.S.T.のビークルも救出の準備をしていた。
追い詰められたゼローズは、N.E.S.T.の飛行ビークルに変身すると、最大速度で飛行した。
隊員たちと戦車隊はひたすらそれを追い続ける。
大砲による攻撃がゼローズに当たった。変身が解け、ゼローズは再び走り出す。
ボンコーイV1に追いつかれそうになると、今度は巨大な車に変身して逃げ回った。
いつしか都市中心部に向かい始めていた。
気づいたNEST隊員達はゼローズをそこから離れさせる方法を考えはじめる。
しかし戦車隊は駆逐をやめなかった。誘導に時間をかけるより、危険分子の排除を短時間で行う事を優先しているからだ。
砲撃を避けきれなくなり、ゼローズの傷が目立ち始めた。
イブ隊長「どういうつもりなの!?早く私を放せば、アナタは助かるかもしれないのに!」
ゼローズは全力で街を駆け抜けた。
そして最も高い電波塔をよじ登り始める。
戦車はまだしばらく砲撃していたが、タワーの崩壊を恐れると攻撃を中止した。
ゼローズはイブ隊長を片手に持ったまま、タワーの頂上まで登りきった。
朝焼けに照らされたタワーの上で、勝利の咆哮を上げるゼローズ。
いつしか見物人も集まり始めていた。
ゼローズは機械的な目でイブ隊長を見つめる。
隊長は自分のタワーからの転落よりも、この怪獣がこれからどうなってしまうかが心配であった。
イブ隊長「離して・・・くれないの?」
ゼローズ「・・・・・・」
イブ隊長「もしかして・・・私たちって付き合ってるのかな?」
ゼローズ「・・・///」
イブ隊長「違うよね、だってアナタは私をさらっただけだもの。一方的過ぎる。」
ゼローズ「・・・・・・」
イブ隊長「・・・・・・だけどね」
その時ゼローズの背中で爆発が起きた。
戦車隊が射程の長い武装で攻撃してきたのだ。
ゼローズは落ちそうになったが、気合でタワーの中腹にしがみついた。
イブ隊長「待って下さい!私はまだ生きています!だからこれ以上この子を傷つけないであげて下さい!」
その叫びは誰にも聞こえる事はなかった。
戦車隊が次の砲撃を行った。
誰もが息を呑んだ時、空の彼方から猛スピードでビオナイクラーが現れ、戦車の弾を握りつぶした。
ビオナイクラーは戦車の攻撃を全て潰し、ゼローズを守ると、ゼローズの前で浮遊していた。
ゼローズは隊長をかばいながら足でタワーにしがみつき、片手でビオナイクラーを殴ろうと暴れたが、しばらくしてやめた。
ビオナイクラーは静かに指を構え、ゼローズに突きつけた。狐の怪獣はもう逃げたりしないという風に睨んだままだった。
イブ隊長「待って、この子をどうする気?」
隊長が心配そうに言うと、ゼローズは隊長に向かって振り返り、見つめた。
ビオナイクラーがリターン光線を放つ。
ゼローズは泡になり、イブ隊長は下へと落ちていく。
一貫の終わりだと思った時、何かがイブ隊長を抱きとめた。
驚いた隊長が見ると、そこにいたのはゼロ隊員だった。
タワー展望台の屋上で二人は再会する事となった。
イブ隊長「ゼロさん・・・どうしてここに?」
ゼロ隊員「わからない・・・ただ、君を助けたいと思っていたら、ここにいた」
イブ隊長「どうして・・・私、あんなコト言ってしまったのに」
ゼロ隊員「決まってるだろ、君を愛しているからさ」
イブ隊長「!!/////////」
ゼロ隊員「・・・俺が好きだって言ってた女の子、実はアニメのキャラの事だったんだよ」
イブ隊長「え!///」
ゼロ隊員「これで信じてくれるだろう?俺のイブちゃんへの思い」
イブ隊長「・・・・・・例えアニメのキャラクターとはいえ、本気で好きなのなら話は別です」
ゼロ隊員「・・・え?」
イブ隊長「どんな形であれ、ゼロさんがそっぽ向いてるのは嫌なんです!」
ゼロ隊員「・・・ようするに、"私だけを見て"ってコトだろ?」
イブ隊長「/////////////」
泡だらけのタワーの屋上でいちゃいちゃしている二人を見て、なぁにやってんだかと呆れたようにビオナイクラーは去って行った。
ゼロ隊員はイブ隊長を抱えたまま帰ろうと歩き出した。
隊長はタワーについた泡を見て、バイオニクルが泡にされたらどこへ辿りつくのかが気になった。
彼らが泡になることは死を意味するのか?それとも新たな生命ヘと変わって、再び会うことが出来るのだろうか。
いつものように突然現れたバイオニクル。
私をさらって旅に出たバイオニクル。
私を愛し守ってくれたバイオニクル。
泡となって私の元から去ったバイオニクル。
私の特別なバイオニクル。
私はアナタに恋をしていただろうか?
続・・・・・・く・・・//////
wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
最終更新:2010年06月09日 16:32