ここは「N.E.S.T.」。
突然現れた怪獣「バイオニクル」と戦う防衛組織の本部基地だ。
イブ隊長「ヨシダ隊員・・・」
ヨシダ隊員「何です隊長?」
イブ隊長「人間は死んだ後、どうなるんでしょうか」
ヨシダ隊員「他の生き物同様、肉体は土に還るだろう」
イブ隊長「では、精神は?」
ヨシダ隊員「三途の川を渡り、天国か地獄に行く事になる・・・というのは無難すぎる答えか」
イブ隊長「私は、一度死んだ精神は永遠の暗闇の中に閉じ込められると思うのです」
ヨシダ隊員「随分ネガティブな発想だな?」
イブ隊長「もしも死後の世界が夢のような理想郷だったら、皆よろこんで死ぬと思います。
だから本当の死後の世界は、永遠に、孤独に暗闇を見ているだけのものだと思うんです」
ヨシダ隊員「何かあったのか?」
イブ隊長「いいえ、私はずっと前からそう思ってました」
この会話から数日後である。
突然、ヨシダ隊員が行方不明になった。
隊員達は総力を尽くしてヨシダ隊員を捜索したが、何処にも見つからなかった。
ヨシダ隊員の無線に通信を図る。なんと繋がった。
しかしそこから聞こえてきたのは、不気味な電子音と
「・・・ミッ・・・グーン・・・」
という途切れた謎の音声だけであった。
更にその数日後・・・
N.E.S.T.基地のレーダーに不気味な影が映った。
基地の真上、大気圏外から巨大な物体が迫っていた。
ゼロ隊員「いっ隕石か!?」
カンタ隊員「あれが落ちたらこの基地は・・・いやこの国はクレータになって壊滅してしまうぞ!」
ニトロ隊員「表面温度2兆度wwwwwwww」
マトア隊員「遂に、地球は終わるんですね・・・」
イブ隊長「なんて事でしょう・・・ヨシダ隊員も見つかっていないというのに」
謎の巨大物体は高速で基地へと落ちてくるだろうと思われた。
だが基地との距離1000M辺りから急に減速して、まるで正確に基地の中心を狙うかのようにゆっくりと飛来してきた。
イグ隊員「あれは、隕石じゃない・・・!?」
ダーヌ隊員「まさか・・・」
シグレ隊員「バイオニクル・・・!」
突起に囲まれた卵型の巨大物体は遂にN.E.S.T.基地に墜落した。
それは基地より一回り小さかったが、中心部から基地を倒壊させるのには十分な大きさだった。
突然、巨大物体が光を放ち、縦に八つに割れる。
卵型の物体はまるで花のようにゆっくりと開いた。
激しい煙が辺りを包む。
煙が晴れ、卵があった場所には、顔の前で手を合わせるバイオニクルの姿があった。
全く微動だにせず、静止している。
その漆黒の体は黒光りし、顔の黄緑色の発光器が不気味に光る。
頭の銀灰の鎌のような角が展開し、かつて基地のあった場所には不気味な電子音が鳴り響いていた。
そしてゆっくりと腕を動かし、腰の横へ下ろした。
史上最強のバイオニクル・最強怪獣ミグダスの降臨。
ゼロ隊員「・・・ふうっ!」
隊員達は隕石の落ちる前に緊急脱出機で基地を出ていた。
しかし基地崩壊の激しい爆風に飲み込まれて脱出機も瓦礫の下敷きとなっていた。
何とか脱出機から脱出した隊員たちが見たものは、最悪の光景であった。
瓦礫の山となった自分達の基地と、そこに聳え立つ黒い悪魔。
兵器格納庫もばらばらになって、NESTの売りであった超最新兵器類も全て破壊されていた。
そしてもう一つ、驚愕の事実があった。
ゼロ隊員「・・・居ない!」
カンタ隊員「ヨシダ隊員なら、数日前から居ないだろ?」
ゼロ隊員「違う!イブ隊長だ!イブちゃんが居ないんだよ!」
基地に居る人間全てを乗せたはずの脱出機の中に、隊長の姿は無かった。
最強怪獣ミグダスはそこから一歩も動かず、脱出機の方を向く。
そして両手を前に突き出し、脱出機に向けた。
その時、白く眩い光が基地周辺を包んだ。
ビオナイクラーは急ぐようにミグダスの両手を掴む。
ミグダスは腕だけを動かしそれを弾き飛ばした。
ビオナイクラーはミグダスに向けて拳を振るう。
ミグダスは片腕でそれを受け止めた。
ビオナイクラーはすかさずローキックを繰り出す。
ミグダスは下に向かって手を翳し防いだ。
続けてビオナイクラーはハイキックを放った。
ミグダスは両腕をあわせてそれをガードすると、そのまま両手でビオナイクラーの体を突き飛ばした。
ビオナイクラーは自分の身長ほど吹っ飛ばされ倒れる。
ミグダスは体の前で腕を組んだ。
ビオナイクラーが起き上がって、カッター光刃を放った。
するとミグダスが消え、ビオナイクラーの死角に現れる。
ビオナイクラーが振り向くと、今度は後ろに回っていた。
正真正銘のテレポート移動である。
ミグダスは片腕だけを振ってビオナイクラーの後頭部を殴る。
よろけるビオナイクラーの背中をもう一方の腕で突いた。
前のめりになり倒れるビオナイクラー。
ミグダスは追い討ちをかけず、テレポートをして間合いを取った。
もう一度カッター光刃を放つビオナイクラー。
ミグダスはそれを片手で弾き飛ばした。
すかさずビオナイクラーがリターン光線を発射する。
ミグダスはバリアーを張り完全に防いだ。
驚くビオナイクラーを尻目に、ミグダスは発光器の上部からクラッシュ光弾を連続して放出する。
ビオナイクラーもバリアーを張ったが、光弾はバリアーを突き抜けてビオナイクラーに直撃した。
よろめく白い巨人と、全く動じない黒い悪魔。
ビオナイクラーはすぐに指先から水を噴射した。それは強力な水流カッターへと変化した。
そのまま居合いの刀のように構え、ミグダスに向かって切りかかる。
ミグダスはそれを腕だけで止めた。水流カッターを受けても全く動じない。
ビオナイクラーはもう一度拳で殴りかかった。ミグダスも同時に拳を放って、ビオナイクラーの拳を潰した。
急いでビオナイクラーが膝蹴りを放つ。ミグダスも同時に膝を上げて止めた。ミグダスが足を動かしたのはこの時が初めてである。
衝撃で隙が出来たビオナイクラーの首を、ミグダスが片手で掴んで持ち上げた。
そのまま格納庫の方へ放り投げる。
力なく倒れるビオナイクラー。
ミグダスは移動せずゆっくり振り向くだけだ。
立ち上がったビオナイクラーが腕を×字型に構える。
そして今までで最も強力なニクリウム光線を放った。
ミグダスは全く動かずニクリウム光線を受ける。
それどころか胸の吸収器官で高濃度のニクリウムを吸収した。
ミグダスが両腕を前に伸ばす。そして手首をクロスさせた。
手から発せられる波状光線・アルティメットビームはビオナイクラーの胸に命中した。
ビオナイクラーは苦しそうにもがいた後、静かに地に膝をついた。
その様子を見たミグダスが、ゆっくりと歩みだす。
そして動きが停まったビオナイクラーの前で静止した。
ミグダスはビオナイクラーの胸にある点滅した宝石の近くを手で突き、穴を開けた。
ビオナイクラーに空いた穴からは、体の中でせわしなく動く歯車と、人サイズのカプセルを見ることが出来た。
それは即ち、ビオナイクラーもまたバイオニクルであるという証拠だった。
そしてミグダスはビオナイクラーの宝石を掴む。
ビオナイクラーは既に抵抗できなかった。
ミグダスが、ビオナイクラーの心臓ともいえる宝石を、握って粉砕した。
ビオナイクラーの目の光が消える。
ビオナイクラーの体は泡状に溶け、地を流れた。
そして残ったカプセル。
ひびが入り、砕けて煙が噴出す。
中に入っていたのは、イブ隊長だった・・・。
意識は無く、ただ瓦礫の上に倒れるだけだった。
一同「隊長!!?」
その時だった。
突然ミグダスが苦しみ、もがいた後に泡状に分解した。
泡になったミグダスから落ちるカプセル。
そのカプセルにもひびが入ったかと思うと、
突然蓋が吹き飛び、
中からヨシダ隊員が倒れ出てきた。
自力で起き上がり、ヨシダ隊員は倒れたイブ隊長の姿を見た。
ヨシダ隊員「・・・イブ隊長!?」
隊員たちは突然の出来事に呆然としていた。
イブ隊長がビオナイクラー!?
ヨシダ隊員がバイオニクル!?
全員、驚かずには居られなかった。
・・・ただ一人を除いては。
あと二話で終わり!!
wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
最終更新:2010年06月09日 16:38