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その男は愛するあまり - (2008/10/07 (火) 16:45:42) の1つ前との変更点

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 「週刊少年ジャンプ」って知ってるか? 毎週すげぇ数の再生紙を使って作られてる、日本一の漫画雑誌、ってやつだ。  俺は、ずーっと「そこにいた」。創刊された当時のことはほとんど忘れちまったが、それこそ気の遠くなるほど、ずっと。  ジャンプのシンボルとして、いつも変わらぬ顔でそこにいた。  まあ文字通り、海賊みたいな“顔だけ”、なんだが。 「――色んな作品を見てきたよ、俺は。それこそ大ヒットした作品から、打ち切られた漫画、読み切りに至るまで全部覚えてる。全部愛している」  その言葉に偽りは含まれていない。本当の事だ。  例えどんなに人気が無くなろうと、発行部数がいくら少なくなろうと。  一つの雑誌が終わるその最後まで、ジャンプと共に沿い遂げる覚悟があった。  そしてそれまで、一時たりともジャンプから目を反らさない覚悟もあった。  なのに。 「なのによ、これは――どうしたことだってんだ?」  何故か体が動くかと思えば、顔だけのはずの俺には立派な体が付いていて。  それだけでも首を傾げたくなる出来事なのに、見たことない人間が現れ、テンポ良く話し始め。  気が付いたら俺は、どっかの川のほとりに寝てやがった。  空に浮かぶ月。さらさらと流れる澄んだ川。緑色の、短く整えられた芝生。  起き上がって背後を見ると、荷物入れ――デイパック、が落ちていて。  さっきあの変な野郎が言ったことは、本当のことだ、と実感させられる。 「バトルロワイアル、ねぇ――今どきの流行りだってのは認めるけどよ」  俺はあまり、こういう話は好きじゃない。  努力・友情・勝利。俺の脳髄に刻み込まれたこの3つの単語と、  裏切り・疑心・殺人が売りのバトルロワイアルとじゃ、正反対にも程があるってもんだ。  まあ――それが売れちまう、ってのも、世界の移り変わりって奴かも知れねぇけどな。 「物騒なもんだ……さぁて、どうするか……」  自分が物語の登場人物になる。全く考えたことのない展開だ。  出来れば今すぐにでもジャンプに帰りたいが、そうは問屋が降ろさないだろう。  右手を首に当てる。ひんやりとした、鉄の感触。頭と体を繋ぐ場所に、首輪が付けられている。  あの変な人間を倒さない限り、俺の生死は奴に握られているって訳だ。  そうだな……例えるなら、ジャンプで連載してる作家達か?  いい作品だろうと、人気がなけりゃ切られる。  それと同じで、どんなに強い奴でもあの人間に逆らえば――死ぬってことだ。  そこまで理解して、俺は堪えられなくなった。 「ははははは! ふざけてやがる!」  死ぬ。そんなことで。そんなことで、ジャンプで連載している作家達は心を変えない。  いつだって彼らは打ち切り――死と戦っている。ジャンプのシンボルである俺だって、それは同じ。  大体、物騒になり下がった世の中じゃ、こんな首輪なんて有っても無くても変わんねぇ。  誰だって、死ぬ時は突然に来るもんだ。問題はそれまでに、全力を尽せるかどうかだ。  こんな物で、俺達の思想は縛れない。  それに――あの人間は忘れているのか?  追い詰められた時こそ、俺達は真価を発揮するってことを。  デイパックを背負い立ち上がると、俺は叫んだ。 「俺は――愛している! ジャンプの作品の全てと、生まれてから見てきた全ての作品をな! ……だが、今のこの作品は嫌いだ! 裏切り、疑心、殺人。全て下らねぇ! だから、変えてやる」  沢山の仲間を集めて、悪い奴らをぶっ飛ばそう。  ぶっ飛ばした悪い奴らを、なんだかんだで仲間に変えて見せよう。  そして全ての悪を倒し――この物語を、友情・努力・勝利で染めてやる! 「聞いてるか、名も知らない人間……悪の絶対王政ほど、崩れやすい設定はない! 年季の違いと言うものを教えてやるから、耳でもほじって待ってろや!!」  さぁて、目標は出来た。後はそれに向かって、一気に突き進んで行くだけだ。  停滞なんて、させやしない。俺達の戦いは、これからだ――――!! 「ほう、成程」  俺の後ろから、声がした。 「絶対王政は崩れやすい、か。そこの白黒面の者、中々に知を蓄えていると見える。だが――この場で叫び声を上げることがどのような愚かは、解っていないようだ。」  ずっと考え事をしていたからか。それとも周りが見えなくなるほどに、精神が高ぶってしまっていたのか。 「だれ、だ――」 「ここに呼ばれる前は、帝の名を名乗らせて貰っていた者だ。恐らく、民を苦しめたことは無いと思うがな。だが今は――、」  草を踏む音。すでに、完全に背後に回られている。  男は俺の背中に細い棒のようなものを当てると、逃げられないように俺の肩を掴んだ。 「今の私は、姫を愛するただの人間。姫のためならば殺人すらいとわない。さあ、どちらの信念が王にふさわしいか――決めようではないか。」  そして、ゲームが始まった。――始まり、ました。  私は敗け、帝様は王になり、私は、帝様の言う事を聞く、平民と成ったのです。  なんとも光栄な、ことに。 ◇◇◇◇◇  王様ゲーム、と言うらしい。人数分の棒きれに番号を振り、うち1つは王の印を付け。  王を引いた者が、特定の番号を持つ者に命令を下せる、という遊戯だ。  私の……デイパック、と言うらしい袋には、棒きれ10本と、王様ゲームの説明書きが付いていた。  他にも鉄で出来た曲がった筒や、見慣れない紙が詰まった入れ物があったが、説明書きが付いていなかったので、とりあえずは閉まっておいた。 「はい。私は、漫画と呼ばれるものの集合した、雑誌――本のシンボルで」 「シンボル? 何だそれは。」 「は、はい。シンボルとは象徴、帝様の言葉で言いますと平民から見た帝様のような物のことで」 「そうか、解った。次へ行け。」 「はい。次にドラゴンボールですが――」  それにしても、凄い代物だ。相手の体に棒きれを触れさせる必要がある、との注意書きには落胆したが、それさえ上手く行けばかなり使える。  勿論、ゲームに勝つ必要こそあれど、見返りは大きい。先程まで荒々しい言葉を吐いていた若者が、見る影もなく小さな平民になってしまった。  一応、もう少し確かめて置こう。 「――でして、今や海外にもジャンプは進出しているのです」 「そうか。よし、大方の話は解った。もういいぞ、死ね」 「ええっ――い、嫌です! 死ぬなんて、そんな」  どうやら、最初にした命令以外のことは聞いてくれないようだ。  敗者の男には、「知っている全てを教えろ」と命令した。王様ゲームの効力を試す意味も有ったし、私も情報が欲しかったからだ。  漫画、という物について、この男は実に多くの知識を持っていた。殺し合いに役立つとは思えない情報ばかりだったが、構わない。  この殺し合いの遊戯に似た話を、とある漫画で見た――という情報が手に入っただけでも、意味があった。 「そうか、死にたくはないか。」 「は、はいっ……生きたいです!」 「ならば私に逆らうか?」「い、いえ、滅相もない! 帝様、どうか御慈悲を――」  ほう、成程。初めの命令以外は聞けないが、だからといって逆らう訳ではない、と。ますますもって、不思議で面白い遊戯だ。  10本あれば、10人まで同時にゲームを始めることが出来るだろう――「①番は②番を殺せ」、などと命令してみるのも良いかもしれない。  始めるまでが難しいから、あまり使えないとは思うが。 「さて――時間が勿体ない。」  私は白黒面の男に再度近付くと、押し倒しながら首を絞める。 「が……あっ……帝様、お止め、くだ……」 「いつまでこの遊戯の効力が続くのか、分からぬのでな。今のうちに殺させてもらう。」  首輪が邪魔になり、あまり力が入れられないものの、段々と男の顔が青ざめて行くのが解った。  命を摘み取る音が聞こえる。私にはそれが、とても心地よい旋律に聞こえた。  実感、だ。  こうして人を殺すことにより、殺し合いに勝つ確率が高くなるという、実感。  私は帰らなければならないのだ。彼女の返事を、まだ聞いていないのだ。 「ああ、かぐや姫よ。私はお前を愛している。一目見て、お前しかいないと気付けた。だから、求婚した。」  男の体から力が抜けていく。魂も、抜けていっているのだろうか。 「突然、こんな所に呼び出されたときは驚いたが――私の信念も、変わらない。私はお前を見ていたいのだ、なよ竹のかぐや姫」  そのためならば、どんなことでもして見せよう。  もしお前もここに呼ばれているなら、私とお前以外の者を皆殺しにして、そして私が死のう。  愛している。愛しているのだ。逢いたくてたまらない。愛して、いる。  この愛を邪魔しようものならば、地の果てまでも追って、その存在を滅してくれよう―――― 「私の愛の証として、お前には死んでもらうのだ……さらばだ、白黒面の男。」  男はついに白眼を向いて、口から泡を吹き――動かなく、なった。 ◇◇◇◇◇  F-2の草原、北側の、川のほとり。  月が辺りを仄かに照らし、澄んだ川のせせらぎが聞こえ、緑色の、短く整えられた芝生が広がる中。  平安時代の正装、黒の冠に黒の束帯を身に付けた男が、笑っていた。  男の側には、白黒の顔を真っ青にした男が、冷たく横たわっている。だが、それは笑う男にとって、どうでもいいことであった。 「さて、この男のデイパックを確認せねばな」  すでに男は、次を考えていた。どうやってこの遊戯で優位に立ち、殺し合いを制するか。  一人の女を愛し、愛して、求婚さえした男は――これ以上ない程に、狂った笑みを浮かべていたという。  いと、あはれなり。 【F-2/子の刻(AM:0時)】 【帝@竹取物語】 【服装】黒い冠に黒い束帯(着物みたいなやつ) 【状態】興奮 【装備】なし 【持ち物】王様ゲームセット@王様ゲーム、9mm拳銃@現実、札束の詰まったスーツケース@ハヤテのごとく!、不明支給品1~3 【思考】 ・かぐや姫に逢いたい。 ・かぐや姫のためなら殺人でも何でもする。 ・知らない物が多いな……。 ※かぐや姫に求婚した直後からの参戦です。 ※ジャンプが創刊されてからの漫画についての知識を得ました。 【王様ゲームセット@王様ゲーム】 10本入り。参加させたい人の体に棒を触れさせ、王様ゲームを始める旨を伝えるとゲームが始まる。 ゲーム中は殺人は禁止。そして、王様の命令はギアス並に絶対の物になる。命令は1ゲーム1回まで。 &color(red){【海賊マーク@ジャンプ 死亡】} *時系列順で読む Back:[[捜し物]] Next:[[セレブと1ギル野郎]] *投下順で読む Back:[[捜し物]] Next:[[セレブと1ギル野郎]] ||帝|[[]]| ||&color(red){海賊マーク}||

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