Phase 3 「アリスゲーム」

その場に現れた蒼星石と対峙する真紅は赤い服を靡かせて立ち上がった。
そしてその周りを赤い光が飛び回っていた。
「ホーリエ、行きなさい」
そう告げると、人工精霊ホーリエは一直線に蒼星石の元へと飛び掛った。
蒼星石は素早いジャンプでそれをかわすと、真紅に向かい庭師の鋏をかざした。
「真紅、君も目覚めていたんだね」
真っ直ぐに真紅へ向けた蒼星石のオッドアイは、手にした鋏のように鋭く好戦的だった。
「そうね」
真紅もステッキを構え空へと飛び上がる。
蒼星石はそれを追って飛び、鋏を振り回して真紅に襲い掛かる。

「な、何を…何をしてるですか!」
「見て分からんのか? あれがアリスゲームだ」
夕映は目の前で起きたことが理解しがたかった。
一応の説明は受けたが、殆ど有無を言わさず戦闘に突入した二体のドール。
同じ姉妹でありながらなぜこんなことをしなくてはならないのか。
もちろん夕映は人形でもなければローゼンメイデンのことなど今知ったばかりだ。
しかし成り行きで契約してしまった身であるため、他人事にも取れない。
いきなりの出来事に戸惑い、どうするべきか悩む夕映。
そんな葛藤をしているうちに二体のドールは別荘の外へと飛び出した。
「ま、待つです……っ!」
その瞬間、左手の指にある指輪が赤く輝き、その指輪から力が吸い取られる感じがした。
「夕映さん、大丈夫ですか」
目の前で生徒が苦しみ、慌てて駆け寄るネギ。
「な、何ですかこれ…」

その様子にエヴァが立ち上がる。
「どうやら、あの人形がお前の力を使っているようだな」
「ち、力?」
赤く輝くその指輪は細工もなければ魔法を使っているわけでもない。
真紅と蒼星石が戦うたびに、その指輪は輝き続けている。
「その指輪を通じてドールたちは力を供給している、ただ使いすぎるとまずいことになるがな」
「まずいこと…?」
ネギがその会話に入り込む。
「まぁその程度なら大丈夫だ。安心しろ」
エヴァは勝手にしろと言わんばかりに椅子に腰掛ける。真紅と蒼星石のことは放ったらかしだ。
「や、止めさせないと…」
夕映がそう呟いて立ち上がる。

空中で何度もぶつかり合う真紅と蒼星石。
真紅が薔薇の花びらを飛ばせば、それをかわしつつ鋏で応戦。
さらにシルクハットをブーメランのように飛ばしてかく乱する。
「どうやら、それなりに戦術を変えてきているようね」
「僕だって、ただ鋏を振り回すだけが能じゃない」
大振りながら相手をしっかりと見据えて攻撃する蒼星石。
対してヒットアンドアウェー戦法で一定の距離を保ちながら攻撃する真紅。
「乙女を目指すドールが『僕』だなんて、ふふふ」
「!!」
真紅の軽い挑発に蒼星石は一瞬カッなり、一直線に突撃する。
その瞬間を狙って真紅が手をかざした瞬間――

「やめるです!!」

そこへ二人の動きを止める声。
視線を下へ向けると夕映が大声で叫んでいた。

「やめるです蒼星石! マスター命令です!」
夕映の叫びに蒼星石はその手が緩んだ。
だがこの一瞬の隙に真紅は手を出さず、ホーリエとステッキを片付けてしまう。
「何の真似だ」
「あなたはマスターに背くの? この状況で戦えるわけないじゃない。折角知り合ったばかりですしね」
「……」
蒼星石は鋏を片付けて夕映の元へと飛び去った。
「ふぅ」
夕映は帰ってきた蒼星石に向かって何やら声を荒々しくさせてしゃべっている。
遅れてネギもその場に駆けつけてやっと夕映に安堵の表情が出た。
それを眺めて真紅は軽く微笑むとエヴァの別荘へと戻った。

「お帰りなさい真紅さん」
まず出迎えてくれたのは茶々丸であった。
「茶々丸、すぐ紅茶を入れて頂戴」
「はい」
すぐにキッチンに向かう茶々丸を見て真紅はいつもの机に向かう。
今度はそこにもう一体の人形が座っていた。
「ケケケ、オ前モオ人好シダナ」
チャチャゼロはそんな真紅を見て笑う。
「うるさいわね、操り人形のくせに」
「オ前ダッテ人形ノクセニ……」
エヴァンジェリンはそんな人ではない茶々丸、チャチャゼロ、真紅を横目で見ると、だるそうにベッドに横になる。
そして小さく呟いた。

「さて、今年のアリスゲームはどうなるのかな……」

つづく

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最終更新:2007年05月11日 22:45
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