ル・アーブル(Le Havre)

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ル・アーブル

(原題:Le Havre)
発売年 2008年
プレイ人数 1~5人
プレイ時間 150分
対象年齢 12歳以上
デザイナー Uwe Rosenberg
備考
※画像は日本語版

ゲーム概要

フランス北西部の港湾都市「ル・アーブル」。「港」を意味するオランダ語「アーブル」からその名が取られた。
フランスにおいて港湾の規模はマルセイユに次ぎ、大西洋岸に限れば第1位。町では盛んに交易が行われ、造船所では大型の貨物船が建造されている。
このル・アーブルの町で名士として経営手腕を振るい巨大船のオーナーとなるのが、プレイヤーの目的である。
  • 2007年作の『アグリコラ(Agricola)』、2009年作の『洛陽の門にて』を合わせて、同じ作者であるローゼンベルクによる「収穫三部作」と位置付けられている。

ルール(概略)

コンポーネントの特徴
  • メインボード中段には横一直線に7マスの航路が引かれ、上は資材の保管場所、下は供給スペースとなっている。
  • このゲームで用いるリソースは、非常に種類が多い。8種ある資材チップは裏表で種類が異なり、概ね原料と加工品でそれぞれ一対になっている。
  • 各手番のアクションで建設できる「建物カード」がある。これには効果の他に、建設コストとレンタルコストが併記されている。
    • 建物カードは「スタート時の建物」「標準の建物」「特別な建物」の3種類がある。
      この内標準の建物は、1~5の数字とチェックマークが書かれている。プレイ人数によって使用する建物カードを選別し、バランスを調整するという仕組み。
  • ラウンドの節目で使用する「ラウンドカード」には、食料消費の指示が書かれている。
    規定コストを支払えなかった場合に使用する「借用書カード」も用意されており、毎ラウンドの食料確保に四苦八苦するゲーム模様が伺える。

セットアップ
  1. 各プレイヤーは色を1色選んで、船コマ・マーカー・手元サマリ兼倉庫カード、そして初期リソースの「5金、石炭1個」を受け取る
  2. メインボードを組んでコンポーネントを配置
    1. 各プレイヤーの船コマを航路の左端に置く
    2. 7枚の補給タイルを、航路の各マスに伏せて置く
    3. お金を含む9種類のリソースチップを、ボード中央の保管場所にそれぞれ分けて配置
    4. ラウンドカードを順番通りに積み、食料の支払い・収穫に関する面を表にして航路の右端に山を作る
    5. 供給スペースに「2金・魚2・材木2・粘土1」を配置する
  3. 3枚の初期建物を、「街所有の建物」として共通の場に並べる
  4. 建物カードをメインボード上部に並べる。
    1. 特別の建物カードは、ランダムで6枚をシャッフルして山を作り、所定の場所に置く
    2. 標準の建物カードは、人数に対応したチェックボックスに大きいチェックマークの無いものをゲームから取り除く。
      その後、シャッフルして3山に分けてから表返してカード右上の数字で昇順にソート*1し、カード下部が覗くようにずらして所定の場所に並べる

プレイ上のポイント
  • プレイヤーの手番とラウンドの流れは以下の通り。
    • 1. 自分の色の船コマを、右方向で空いている先頭マスへ進める。
      この時、止まったマスに置かれているリソースが供給スペースに追加される。
      • 初周のみ補給タイルは裏返したまま船を進め、到達し次第開示していく。
      • このゲームのリソースは、表か裏かで価値が全く異なる。追加する際は向きに注意。
    • 2. 次から1つアクションを選ぶ。「任意の港1箇所の品物を全て取る」「建物カードにマーカーを置いてアクションを行う」
      • 既に誰かのマーカーが置かれている建物に、他のプレイヤーが更にマーカーを置く事はできない。
    • 3. ターンが終了し、次のプレイヤーへ手番を回す。
      • 誰かの船が7マス目へ到達した時、手番終了後にラウンド終了処理を行う。
        その後、次の先頭マスは右端の1マス目となり、以降も同じ要領でコマを進める。

  • 建物と建設について
    • 建物を建設するアクションは、建物カードの効果(初期配置の建物にも含まれている)の中にある。ここにマーカーを置き、必要なコストを支払って建てる。
      • 3列に分けられた標準の建物カードは、ゲーム開始時点の並び順通りに登場する。
        建設の対象とできるのは、一番上に並んでいるカードのみ。下に埋まっている建物を欲していても、上の建物が建てられるまでは我慢。
    • 建物に入って効果を起動する際は、稼動に必要なコストを街に支払う(メインボードへ戻す)。自分がオーナーの建物はそれだけで良いが、 他人がオーナーの建物は、更にレンタルコストをオーナーに支払う
      • 街が所有する建物のレンタルコストは、本来のコストと一緒にメインボードへ戻すこと。
    • 素材の加工、船の建造、利潤の大きい交易など、モノ造りからお金稼ぎまで主だったアクションのほとんどが建物カードに集約されている。経営方針に合わせて積極的に建設すべし。
      ただし、建てた物は他人にも使われる。レンタルコストの安い建物は意外な落とし穴となる点に注意。
  • 資産の売買
    • 他のプレイヤーのアクション中を除き、各プレイヤーは好きなタイミングで 船・建物の売買が可能
      売却価格は資産価値の半分で、売った資産は街のものとなる。街のものと建設計画の一番上にある建物3つは、手番中のプレイヤーが代金を支払って購入できる。購入した資産は自分の場に建設する。

  • ラウンド終了時は、以下の処理を行う。
    • 食料の支払い *2。食料が足りない場合は、不足分を1金で補う。
    • 収穫。牛が2頭以上、麦が1つ以上ある場合に、それぞれ1個ずつ増える。第1ラウンドには収穫処理は無い。
    • 建物カードの指示があるラウンドでは、アイコンに応じて標準の建物(トップの3枚の内数字が最も小さいもの)か特別な建物(山札トップ)のいずれかを街の建物として建設する。
    • ラウンドカードが裏返されて船カード となり、新しい造船計画としてメインボードに並ぶ。
  • 借金について
    • 食料の支払いでお金が足りない場合のみ、借金(5金の借用書を作って4金受け取る)をする。
    • 「利息」と書かれた補給タイルに船コマが置かれた時、借用書を持っているプレイヤーは1金の利息が発生する*3。また、借用書はゲーム終了まで持っていると減点対象となる。
    • 借金の返済はどのタイミングで行っても良い。

  • その他の補足事項
    • 船はクリア後に計上される資産であると共に、毎ターン必要な食料の量を軽減する効果を持つ。
      これと併せて、本作は基本的に 船を作りながら進めないと勝てない バランスとなっている点を強調しておきたい。これは説明書にも明記されている重要事項である。
    • 売買された建物に乗っていたマーカーは、持ち主に返される。他人のマーカーが邪魔だった場合に活用可能。
    • 建物に乗っているマーカーは、今乗っている建物の効果を再度起動する事はできない。
    • 計算で「1/2」が出てくる時、端数の扱いは プレイヤーが損をする方に切り上げ・切捨て を行う。支払いにおける端数は「1」であり、収入における端数は「0」となる。
    • このゲームの支払いに、お釣りの概念は無い。食料やエネルギーの余剰分は、単に無視される。
    • 「食料」の支払いは「金」、「粘土」の支払いは「レンガ」、「鉄」の支払いは「鋼鉄」で代用可。

終了条件・得点計算
  • プレイ人数に応じた規定ラウンド経過時点でゲーム終了。その後、プレイヤー全員が最後のアクションを1回ずつ行い、最も多くのお金を稼いだプレイヤーの勝利となる。
    • 以下の要素も資産として計上する。
      • 所有する建物・船の価値(カード左上の数値分。「購入金額」の方ではない)
      • 特別な資産価値のある建物(カードの指示に従う)
      • 借用書(-7金)

ゲームの流れ
  1. 初期配置
  2. ラウンド開始
    1. 船コマを進めると、資材が供給スペースに溜まっていく
    2. 「資材の獲得」「建物アクションを実行」から1つを実行
  3. 誰かの船が航路の右端に到着したら、ラウンド終了処理
    1. 食料の支払い
    2. 牛と麦が増える
    3. 場合によっては街所有の建物が建設される
    4. 新しい船カードが登場
  4. プレイ人数に応じた規定のラウンド数を消化していない場合は、2に戻る
    1. 全ラウンドが満了した後、各プレイヤーが1アクションずつ行って終了
コマを道なりに進めて資材を取りながら建物を建設し、その効果で経営を進める。キーは造船。
セットアップは面倒だが、ゲーム進行は経営方式としてはわりと普通であり、スリムな構造をしている。
流れの中で存在感が大きいのは、やはりラウンドの合間で発生する食料消費か。

コメント

対応するregion、endregionプラグインが不足しています。対になるようプラグインを配置してください。
難易度
はっきりと 難しい 。このラウンド終了時の食料を何で賄うか、この仕事に手番は何回費やせばいいのか、大型船を作るまでの将来設計は、高額物件はいつ建築計画に挙がるか……。刻々と状況の移り変わる中、目先の利益を生む小目標とラウンドをまたぐ大目標を個別に設定して同時進行させる必要がある。
建物の効果や各リソースの関連性をしっかり把握した上で、建物カードの登場順に左右される「場の流れ」を上手に読まないと、最上位の船にはなかなか手が届かない。明確にプレイヤーを選ぶ重量級ゲームであり、それ相応に大きな達成感を伴う。
リソースマネジメント
お金以外の資材8種はそれぞれ表面/裏面でモノが異なり、食材・素材・エネルギー・商材と種類も用途も豊富。原料で手に入れ、加工の手間をかけてから使う。
「なんか今日は胃もたれするほどリソースをいじりたい気分」なんて時にジャストフィット。
ゲーム性
考える事も他人と絡む要素も多いのだが、日々の食料のやりくりに追われている内に一周回って普段は他人の事がどうでもよくなってくる。
しかし、ゲーム中のランダム性や非公開情報はごく一部しか無く、大量に飛び交う情報の全てが後の大仕事への伏線。造船・高額物件が視野に入った時に、自分の事で手一杯の経営が一転して互いの動きの読み合い・刺し合いへ発展する様は、よく比較対象に挙がる『アグリコラ』より構図が鮮明である。
食料の準備にかける手間を他に回す「計画的借金」も、場の現金化手段によっては有効。総合的にはかなりアグレッシブなゲームと言える。

欠点

  • ルールは整然としているがリソースの動きは複雑。アナログゲームとしては上限超えスレスレ級に手が込んでいて、ここまで難易度が高いとやはり問題になりうる。
    他人の動向を読もうとしても、視認性諸々の事情で必要な情報を把握しやすい設計とは言えない。
    肌に合う人・合わない人の温度差は、依然として大きいだろう。
  • 勘所を感覚的に掴みにくいゲーム設計をしている。どの行動を起こすとどのくらいリターンが生じるのかを推し量るのは非常に難しく、説明書にも「船は絶対造れ」とあえて明記されている。
    きちんとルール通りに動けたとしても「自分の行動は妥当かどうか?」との混乱は尽きない。初見プレイヤーへの配慮には、特に要注意。
  • プレイ時間の長さ。長所と背中合わせではあるが、これがネックでなかなか稼動できないという状況もままある。
    ただし、短縮ルールの導入で軽減可能。
  • 手間のかかるセットアップ。チップ類を大量に使用するので、100円均一などで購入できるミニケースを事前に用意されたし。そうでない場合は、ボードに少量ずつ盛って在庫が減り次第気づいた人が補給すべし。

お勧めタイプ

とにかくリソースを動かしたい人にはうってつけ。また、建物の種類が豊富であり、ゲームバランスは慎重に調整されているだけあって穴が無く、ルールの理解と手番処理についても複雑な重量級ゲームとしては比較的容易……等々、様々な長所を持っている。
避けて通れない欠点は、元々のハードルの高さ。ゲーマー気質の持ち主でもない限り、最後までモチベーションを維持するだけでも一苦労。そして習熟したらしたで、運の良し悪しを逃げ道にできない厳しさを持っている。
目標を高く設定し、大局を見据えて地道な努力を重ね、困難を乗り越える事で初めて得られる、物造りの満足感。そんなひと手間かかった面白さを堪能できるこのゲームは、「やり込むほど味が出る」とヘビーゲーマーから厚く支持されている。

【お勧め度:★★★★★★☆☆☆-】

【このゲームのイメージ図】
プレイの鍵を握るのは船。
なんだかんだで大事な建物。
各要素は食料供給を補助し、
失敗すると「借金」の形で資産にはね返る。

その他

  • ショートゲーム
    • ラウンド数が短く、基礎的な建物カード中心で構成され、初期リソースが多め。大型の船は完成しにくくなるが、所用時間は1/3~2/3ほど短縮可能。
      大人数では2、3時間かかるとされているゲームなので、初回プレイ時はこちらが推奨される。
対応するregion、endregionプラグインが不足しています。対になるようプラグインを配置してください。
  • ショートルールでは、以下の点がフルゲームと異なる。
    • 標準の建物カードの選別では、小さいチェックマークを使用する(除外される建物が多い)。特別の建物は使わない。
    • 初期配置のリソースは「3金・魚3・材木3・粘土2・鉄1・麦1・牛1」
    • 各プレイヤーに初期配布されるリソースは「5金・魚2・材木2・粘土2・鉄2・牛1・石炭2・毛皮2」
    • ラウンド終了処理では、小さい円マークを参照する(ラウンド数は少ない)。
    • 1人プレイ時は、プレイヤーは「木造の船」を所有する。また、木造の船カード1枚を造船計画スペースに置く。
      2人プレイ時は、各プレイヤーは「木造の船」を所有する。

プレイ人数 1 2 3 4 (5)
フル 7 14 18 20 (20)
ショート 4 08 12 12 (15)
ちなみに、フルの推定プレイ時間は2人で2時間、3人で3時間。
ショートにすると、これが2人で45分、3人で2時間(いきなり増大。ショートでも2人と3人の壁は厚い。)になる。

FAQ

Q:豪華客船が造れません。バランスおかしくないですか。
A: 本作のゲームバランスは、プレイ人数や建物カードの建設順に応じて有機的に変動していきます。並び順によるし、参加プレイヤーの意向にも左右されます。そうすると、重要な建物が建設計画の深い位置に埋まり込んでしまうなど、時間や材料が足りなくなるケースもあり得るでしょう。
このあたりの空気を感じ取るのもゲームの内。平たく言うと「仕様」です。
Q:「ある建物にマーカーを置き、建物アクションは行わない」という動きは可能ですか?
A: 動機としては、妨害行為でしょうか。結論を言うと「ダメ」です。そういうのは、自分にも有益な行動でもって副次的に実現してください。


改定履歴

対応するregion、endregionプラグインが不足しています。対になるようプラグインを配置してください。
  • 13/02/26[ルール解釈ミス] 利息の支払いは、借用書が2枚以上あっても最大1金。
  • 13/02/26[誤解] 建物カードの内容が大きく変わるのはソロプレイ時が中心で、思っていたほどセットアップは煩雑でなかった。
  • 13/02/26[ルール解釈ミス] 補給タイルの開示タイミングは、セットアップ時ではない。かなりアホな記述ミスをしていた。
  • 13/02/27[誤記] ↑に伴う修正漏れ。「補給タイルの上に書かれたリソースを置く」という手順は不要。
  • 13/02/27[追記] 一部の例外を除き「同じ建物は2回連続起動不可」を補足事項に追記。併せてFAQの不適切な回答を変更。
最終更新:2013年06月10日 01:45

*1 これらの手順を踏むことで、プレイ人数に応じたゲームの規模に相応しい強さのカードが選別され、また建物のパワーバランスが「前半<後半」の傾向になるよう調整される。

*2 ラウンドカードに、1人用から5人用まで指示が書かれている。カード左端のプレイ人数に対応する数字を参照。

*3 ここで支払いに窮した場合は、更に借用書を重ねる。