OP候補作

OP候補1 ◆BEQBTq4Ltk



導かれるように彼らは目を覚ました。
意識を失い始めてからどれぐらいの時が経過したかは不明である。
覚えているのは突然闇に飲み込まれたかのような感覚だけだ。

最初に思うのはここが何処なのか。

円状に広がっているためホールのような印象を与えるが別段広くはない。
無機質でありただ存在している空間だと感じる。
辺りを見渡せば老若男女様々な人間が状況を確認していた。

「目が覚めたな。これより諸君には殺し合いを行ってもらう」

演台のような場所から幼い声が聴こえる。
少年が告げた言葉は回復し始めた思考回路には少々理解に時間がかかる。
目的を聞く前に状況の理解が出来ていない。

「起きたばかりで申し訳ないがこれは皇帝命令である」

「陛下のご命令ですぞ。これは従わないといけませんなぁ」

皇帝と名乗った少年の隣には大柄な男が立っていた。
肉に齧り付きながら話しており他の人間を見下しているかのようだった。
誰からの返答も得ていないが皇帝は説明を続けた。

「これからお前たちには最後の一人になるまで殺し合いをしてもらう。
 最後まで残ったものには特別に願いを叶えてやる」

意味不明な説明は更に加速し願いの特典を突き出した。
外部的要因で願いを叶えるのは不可能だ。可能ならば多くの人間が実行している。
富や名声が欲しいならば叶えられるだろうが死者の蘇生などはどうするつもりなのか。
そもそも何人が殺し合いに興味を抱くのだろうか。

「支給品として地図や食糧などがあるから確認しておくといいぞ。
 名簿が入っているから目を通して知り合いが居るのを確認するのもおすすめだ」

「流石は陛下。殺し合いを行う劣等に慈悲を与えるとは……。
 大臣である私から言うとですねぇ、武器はランダムで支給ですので恨まないでもらいたい」

生身で放り出されることはなく幾つかの物資が支給される。
肝心の武器はランダムらしく確認する瞬間まで不明なのだろう。
自分の身を守る武器が入っていれば有難いが無ければ大変危険だ。

知り合いの確認を促されたか気乗りはしない。
名前が在ったとして安心するかもしれないが一緒に巻き込まれている。
生命を落とす危険と隣り合わせであり素直に喜べないだろう。

「陛下、彼らはまだ状況を飲み込めていないようです。コレの説明をしましょう」

「そ、そうだな! ありがとう大臣……気付いている者いると思うが首輪を嵌めさせてもらった」

裏の顔のように不敵な笑みを浮かべた大臣は首を指す。
その動きから皇帝は何かを思い出したかのように発言した。


「この首輪は爆弾が仕込まれている。歯向かうとこのように爆発するから気を付けてくれ」


皇帝が言い終えると同時に機械的な音声が響き渡る。
ピ、ピ、ピ……。
映画のクライマックスで馴染み深い一定の間隔で鳴る音声。

「え……えぇ!?」

その発信源である首輪を嵌めている少女は涙を浮かべながら叫ぶ。
音が聞こえなくなった時、それは首輪が爆発した時だろう。
何故自分がこのような事態にあわなければならないのか。

「だ、誰か……助けてください!」

周囲に助けを呼ぶが誰も救いの手を差し伸べてくれない。
助けるどころか自分の身を心配して遠ざかっている。
無理もないだろう。近くにいれば爆発に巻き込まれて自分が死んでしまうのだから。

この光景を大臣は笑いながら見物していた。
皇帝は真剣な表情だが大臣対照的であり未だ肉を食べている。
多くの人間が彼に不信感と怒りを抱いていた。

「もう時間ですねぇ。残念です」

「卯月……っ」

黒髪の少女が首輪の少女の名前を呟く。
距離が離れているため助けることも出来ず爆発を待つだけ。
無力感に襲われながら目を背ける。友人の死ぬ瞬間は目撃したくないから。
やがて音声の間隔は短くなり爆発の時が近づいていた。

首輪の少女――島村卯月は涙を流す。
自分はアイドルを目指していた、それだけ。
たったそれだけなのに殺し合いを強要され首輪を爆破されようとなっているのだ。
理解も出来なければ納得も出来ずこの世を去るだけだった。


「こんな可愛い子を見殺しに出来る訳ないよな……!」


死を覚悟していた卯月に訪れたのは爆発ではなく開放。
首輪は切断され床に堕ちており彼女の生命は救われた。
助けたと推測される男は首輪を遠くへ蹴り飛ばし卯月の方を向く。

「首輪は俺が切断したから安心してくれ」

「あ……ありがとうござ……います」

助けてくれたのは見た目だけなら卯月と同世代ぐらいの少年であった。
緑の髪にゴーグルを付けている少年は糸を輝かせながら笑っていた。

「ここまでくると本当に救えないな大臣」

「これはこれはナイトレイドではありませんか。人殺しのあなた達が何を言いますかな?」

「黙ってな。今の俺は相当キテるぜ……ッ!」

緑髪の少年と大臣は知り合いらしく彼は怒りを露わにしていた。
少し会話を交わすと首輪を切断した糸を自由自在に操り大臣の心臓へ向かわせた。
機械である首輪を切断した糸ならば人体の臓器を簡単に破壊できるだろう。




「賊め……陛下に野蛮な真似は許しませんぞ」




始めと同じように再び訪れた静寂。
それを打ち破るように響く乾いた音、大臣の声、落下音。
大臣に糸は届かず健在であり未だに肉を食べている。
少しの間を置いた後、二つの声が重なった。

「そ、そんな……私を助けてくれた……いや、いや……っ」

「ラバ……ラバアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」

島村卯月は零す。
助けてくれた男の人が目の前で首輪を爆発させられ死んだ現実へ。

タツミは叫ぶ。
仲間であるラバックが死んだ現実へ、何も出来なかった自分へ。

「このように陛下に逆らうとあなた達の生命は保証致しません。後は頼みましたよ」

虫けらを殺したかのようにラバックの生命に興味を示さない大臣。
彼の後ろから出て来た褐色肌の男が【何か】を発動させると紫の紋章のような物が浮かび上がる。

触れた者から身体が消え始め会場にいる人間は数を減らしていく。
これが説明された殺し合いの会場へ移動するということだろうか。
何も理解出来ないまま一方的に行わる現状に思考が追い付かない。

「それではバトルロワイアルの開始です。それなりに期待していますぞ」

大臣の言葉を最後に全ての人間が消え殺し合いの火蓋が斬って落とされた。


【ラバック@アカメが斬る! 死亡】


【主催】
【皇帝@アカメが斬る!】
【オネスト大臣@アカメが斬る!】
最終更新:2015年05月24日 13:19