第一回放送/謀略の朝 ◆QO671ROflA
静寂に包まれたそのホールに似た一室の壇上で、広川剛志はマイクを手に取った。
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おはよう諸君。では只今より第一回定時放送を始める。
ルールブックにも記載してあったとは思うが、この定時放送は6時間に1回行われ、足を踏み入れた時点で首輪の爆発する【禁止エリア】と【新たな死亡者】を読み上げる。
当然の事だが、今現在の放送は一度しか読み上げない。
今から伝える情報に嘘偽りのない真実だ。誤報は絶対に流さない。
【禁止エリア】と【死亡者】に関しては、それぞれ地図や名簿に直接印を入れる事をオススメしよう。
その他の他媒体に記入するのも効果的かもしれないな。
では始めさせてもらうよ。
まずは今回の【禁止エリア】の発表に移ろう。
禁止エリアは全部で3箇所だ。
今から1時間後、ちょうど7時から【F-7】。
それから2時間後。今から3時間後の9時より【H-2】。
最後にそれから2時間後で今から5時間後の11時より【C-3】。
以上が今回の【禁止エリア】だ。
禁止エリアの数が多いと思った参加者も居るとは思うが、この禁止エリアに関しては時間の経過と共に増減する。要するにケースバイケースという訳だ。
続いて、皆が最も感心が寄せているであろう【死亡者の発表】と行こうか。
以上の16名が、この6時間での死亡者だ。
この数を『多い』と感じるか。はたまた『少ない』と感じるか。
それはこの情報を受け取る君達の判断に任せよう。
これにて第一回定時放送を終了する。
まだゲームは始まったばかりだ、
諸君の健闘、そして次に君達が私の声が聞ける事を祈っているよ。
□
「酔狂な事だねぇ」
第一回定時放送を終え、壇上を下る桧皮色のスーツ姿の男に、もう一人の男は声を掛けた。
「なんだ君か」
スーツの男───広川剛志は、その男を見つめながらそう呟く。
「どうよ、白いウサギちゃんのペットにされる気分は?」
もう一人の男は不穏な微笑みを浮かべながら、卑小げに語る。
「何が言いたい?」
「いや~さ。あんな薄気味悪い白兎に扱き使われてる君が可哀想に思えちゃってさ」
何やら愉快げに語るその男の態度を見る限り、どうやら彼は何かしか善からぬ事を考えているらしい。
「悪いな。君の皮肉に付き合っている程、私も暇じゃないものでね」
広川はその後も小言を続けるその男を無視して、颯爽とその部屋を後にした。
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「連れない男だねぇ」
一人残されたその男は広川に愛想を尽かしたのか溜息を付いていた。
そして自身のポケットからそっと黒一色の携帯デバイスを取り出す。
9・6・1
その番号をタップしたその男は、デバイスを耳を傾ける。
「もしもし」
『声紋認証。961様確認。シビュラシステムに接続しますか?』
「ああ、頼む」
その通話上の囁きの直後、961の男のデバイスから「カチッ」という何かが振動する事が静寂の漂うその一室に響き渡った。
「それにしても便利なもんだね、これって。」
961の男はその静止した時間の中で、自身のデバイスに目をやる。
『確かにそうですね。ところで、広川剛志の方はどうなりましたか?』
通話の相手───その女声の機械音は悠然と話題を本題へと転換する。
「あー、あの男を計画に引き抜くは厳しそう。やっぱこっちはこっちだけで動かないと不味いようだね」
『了解しました』
「ところで、そっちで用意させた情報に辿り着いた参加者は居た?」
『いいえ。そのエリアにまで踏み込んだ参加者は居ましたが、依然としてアイテムに気付かないままでした』
「そうか。で、ジョーカーの方は特定出来た?」
『ニアジョーカーからの最終報告の時点ではそのような情報は入っておりません』
「なるほどねぇ。ニアジョーカーには《警戒を怠るな》って念を押しといて」
『了解しました。他に共有・伝達すべき情報はございますか?』
「うーん。特にはないかな。強いて言うならシビュラも頑張ってね。折角、あの白兎を言いくるめてそっちに設置させたんだから」
『お言葉ありがとうございます。それでは時間停止モードを解除させて頂きます』
「ああ、了解」
その言葉と共に時の流れは正常に戻る。
961の男はデバイスの電源が切れている事を確認し、再びポケットにそれを入れた。
そして男は犇めく野望を胸にその一室を後にした。
【広川剛志@寄生獣-セイの格率-】
[備考]
※このバトルロワイアルの主催者(管理人/進行役)の一人。
【961の男@???】
[備考]
※このバトルロワイアルの主催者(管理人)の一人。
※バトルロワイアルの真の主催者(黒幕)である白いウサギ/白兎に反感を抱いており、ゲーム自体を乗っ取る事を目標に暗躍する。
※ロワ会場内に白いウサギ/白兎の正体に繋がる情報を隠しています。
【シビュラシステム@PSYCO-PASS】
[備考]
※961の男がドミネーターのリンクサーバーを建前にロワ会場内に設置したバイオコンピューター。
※961の男のブレインとして機能し、961の男とニアジョーカーの意思疎通デバイスとしての効果も担っている。
※当然ながらドミネーターのリンクサーバーとしての機能も担っている。
【ニアジョーカー@???】
[備考]
※961の男が白いウサギ/白兎に対抗して、ゲームを思うがままに進行するべく送り込んだマーダー。
※シビュラシステムを通じて、961の男と意思疎通を行っている。
※誰がこの人物に該当するのかは、961の男にしか分からない。
【ジョーカー@???】
[備考]
※白いウサギ/白兎がゲームを円滑に進行するべく用意したマーダー。
※誰がこの人物に該当するのかは、白いウサギ/白兎にしか分からない。
【白いウサギ/白兎@???】
[備考]
※このバトルロワイアルの主催者の一人にて元凶。
※「白いウサギ」と揶揄される小動物に酷似した容姿を持っている。
【961の男の携帯デバイス@オリジナル(世界観:魔法少女まどか☆マギカ)】
※961の男が所持している携帯デバイス。
※961の男が声紋認証を行う事で、デバイスに内蔵された砂時計が反転し、3分間のみ擬似的な時間停止を可能とする。
※時間停止は、
暁美ほむらの盾の技術の転用。
最終更新:2015年07月08日 17:11