第二回放送候補話 (第二回放送案A)◆dKv6nbYMB.


暗い、暗い、真っ暗闇の部屋の中。

その中央で、不自然に浮かび上がった机。

彼はその檀上に進む。

己の役割を果たすため、机上のマイクに手をかける。

様々な悲喜劇を視、檀上に立つ彼の心境は如何なるものか。

それを知るのは、他ならぬ彼自身のみだろう。


―――ザザッ

ごきげんよう。もはやルールを把握していない者はいないはずなので、ややこしい挨拶は省略させてもらおう。
それでは、30秒後に今回の内容を発表する。各自、準備をしてくれ。
...準備はできたかな?

それでは、まずは禁止エリアだ。
禁止エリアは

C-6
G-4
H-6

だ。
禁止エリア付近にいる者たちは、放送後に速やかにエリアから避難する準備をするといい。
死にたければ別だがね。

続いて、今回の脱落者の発表をする。


以上、12名だ。

...さて、このゲームが始まってから半日が経過した。
純粋に力の強い者。立ち回りが上手い者。運の強い者。
これまで残った者たちは一筋縄でいかない連中ばかりだろう。
生き残ったしょくんは気を引き締めるべきだ。
そうそう、前の放送で私が忠告したことだが...やはりと言うべきか実現してしまったらしい。
信頼関係が出来上がっていると勘違いしている者もいるようだが、気をつけた方がいいよ。
脱落者の中には、隣にいた者に裏切られ命を落とした者もいるのだからね。
それを防ぎたければ、その者を見つけ出し、すぐに殺すべきだ。
でないと、次に呼ばれる脱落者の中にきみの名が含まれることになるだろう。
以上で放送は終わりだ。
これからもしょくんの健闘を祈る。
それでは、また次の放送で会おう。


―――プツン



放送を終えて数分後。
広川は背もたれに身を預け、このゲームについて思いを馳せる。

参加者72名のうち、既に26名が脱落した。
このゲームが順調に進んでいることについて、自分と同じくこの殺し合いの運営に携わった彼らはどう思うだろうか。

『彼』は思うだろう。
参加者の血が流れる度に、『真理』へと近づけると。

『彼』は思うだろう。
生死の極限の中で勝ち残った思いこそが人間の真の望みであると。

『彼』は思うだろう。
憎悪。憤怒。歓喜。悲哀。人間の持つ感情を様々な方法で引きだし表現する参加者たちは、これからの宇宙のエネルギー問題の参考にできると。

なら、自分は?
自分...広川剛志はこのバトルロワイアルについてなにを思うのか?
自分の最終目的は増えすぎた人間の間引きだ。それだけならバトルロワイアルに関わる意義は少ない。
ならば、広川剛志が関わる理由はなんだ。それは―――


広川は、壇上に置いてある携帯電話を手にとる。

『らっしゃーせー』
「...いまのあなたの職業では不釣り合いな気もするが」
『アハハ、すいません。ガソリンスタンドで慣れちゃったもので。なんにします?』
「肉どんで」
『ありがとございまーす』

電話を机上に置き、再び想いを馳せる。

この殺し合いは、中盤へと差し掛かる。
これから先、なにが起こるかは誰にもわからない。

この殺し合いを行う者たちにも。
この殺し合いに携わる者たちにも。
このゲームの行く末は、神や悪魔ですらわからないだろう。

そんな中で彼に出来ることといえば、主催らしく振る舞うことだ。
どのような結末になろうとも、後悔のないように自分らしくあることだ。
いつ、何が起きても構わないように。
そんな思いを胸に秘め、広川剛志もまた、このバトルロワイアルに真摯に臨む。


【残り 44名】

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最終更新:2015年10月18日 19:42