Let's Party!  ◆OBTuXOu5qc



――な――

(声が聞こえる……)

――旦那――

(むう、もう少し……今しばらく眠らせてくだされ……)

――旦那、起きたほうがいいですぜ?――
――……――

(お前か、佐助……うるさいな、疲れているんだ……)

――それは俺も同じだぜ? いやそうじゃなくてな、今は――
――…………――

(異常があればその時に起こしてくれ)

――いやぁ、俺はいいんだけどさぁ。大将がもうカンカンで――
――もうよい、佐助。下がっておれ――
――あ、大将……俺は起こしたぜ? 旦那――

(大将……? いかんな、お館様をお待たせしては……)

――――何をしておるか幸村ァァァァッ! 合戦の最中に居眠りなど弛んでおるぞォォォォッ!――


(……ッ!?)


「ふおおおッ!? も、申し訳ございませぬお館様! この幸村一生の不覚! かくなる上はこの腹掻っ捌いてお詫びをば……!」

信玄の魂の籠った拳により叩き起こされた(と思った)真田幸村の目に飛び込んできたのは、しかし敬愛する武田信玄ではなかった。
暗い広間のような空間。昨夜床についた武田の屋敷では断じてない。
そして所々に転がる人影。

「こ、ここは!?」
「Good――いや、Bad morningって言うべきかい? 真田幸村」
「伊達殿……ここはどこでござるか!?」
「知るかよ。俺もついさっき目が覚めたんだ」
「なんと……ハッ!? お館様、お館様はいずこに!?」
「うっせぇなあ、耳元で喚くんじゃねえ。あれを見ろ」

なぜか隣にいた宿敵――伊達政宗が示す方向に目を向けると、そこにいたのは金髪の偉丈夫。

「異人……でござるか?」
「Ha.らしいな。少し前から薄気味悪い顔で見てやがる。何か知ってるとすりゃアイツだ」
「それがわかっていて、」

何故お主ほどの男がおとなしくしているのか、と聞こうとした。
だがその前に政宗の指先が幸村の首元を示す。鈍く輝く首輪。
政宗の首にも同じもの。
三々五々と目覚める者が出て、金髪の異人はにこやかに語り出した。

「まずは自己紹介をしようか。私の名はシュナイゼル・エル・ブリタニア。
 ここに集まった君達には、申し訳ないが最後の一人になるまで戦っていただきたい」

一片の悪意も感じさせない声で、そう告げた。
ざわ……ざわ……。
にわかに騒ぎ出した広間で、ただ一人シュナイゼルと名乗った男だけが泰然とした笑みを浮かべている。

「……ッ!?」
「待ちなよ」

状況はわからずとも、男の言ったことは到底幸村に受け入れられることではない。
自慢の槍で素っ首叩き落としてやるとばかり、声を上げようとした。
が、その腕を政宗が掴む。

「伊達殿、なぜ止める!? 奴が言っていることを許すと申されるか?」
「アンタとやり合えるなら俺としちゃあ文句はないんだが……そうじゃねえ。何かヤバい匂いがする」

軽口に似合わず眼光は鋭い。
幸村は腕を振り払おうとしたが、政宗はそれを許さない。

「Just a moment. まあ待てよ。ここは様子を見た方がいい」
「む……」

独眼竜とまで言われた男にこう言われては、強く出ることもできない。
静観の体を崩さない政宗にならい、幸村の男の言葉を聞くことにする。

「細かいルール……規則は後で渡す荷物の中に詳しく書いてあるよ。今はこれだけ覚えてもらえばいい。
 勝ち残った者にはあらゆる望みを叶える褒賞を与える――財も、心も、命も。望むものは何でもだ。
 ああ……そうだ、もう一つ。君達の首にあるものを見てもらいたい」

その言葉に人々が視線を降ろす。幸村や政宗のように先に気付いていた者は比較的冷静に、そうでない者は愕然として口々に疑問の声を上げた。
中には煩わしいとばかりに引っ張ろうとする者もいた。

「なんだぁこりゃ? おい、俺は犬じゃねえぞ! 誰がブリキ野郎の言う事なんて聞くかよ!」

髪を逆立てた思慮の足りなそうな男。
金髪の男を罵り、首輪を強引に引きちぎろうとして――

「……Shit! おい待て、それに触るな!」
「るせえ、俺は日本人だ! だから外人の言う事なんざ――」

政宗が突然顔色を変え、叫んだ。だが男は振り返らず、その言葉で政宗を偉人と判断したのだろう。
この男に似合わず切羽詰まったような――と幸村が考えたその時。

ボンッ。

音がして、その方向に首をめぐらせた幸村の目に飛び込んできたのは赤い噴水だ。
一瞬、理解が遅れる。何が起きたのか――だが、それはすぐに分かった。
むせ返るほどの血臭。戦場ではどこにでもありふれている、そんな臭いのおかげで。
首から上をなくした身体が、倒れる。

「玉城……!」

誰かが、そう叫んだ。あの男の名前だろうか。
それを皮切りに、どよめきが悲鳴へと変わった。

「言い忘れていたが、首輪を外そうとすればそうなる。気を付けてくれ。
 ――では、存分に戦ってくれたまえ。素晴らしい戦いを期待しているよ」

一気に凍りついた広間で、幸村すらも息を呑む。
金髪の男は――笑っている。たった今、男の命を絶った事をなんら斟酌せずに、悠然と。

「野郎……!」
「政宗殿?」
「野郎、笑いやがった。あの男が首輪に指をかけた時、確かに笑いやがった……!」

牙を剥き出さんばかりの政宗の言葉に戦慄する。
男の底知れなさに、そして激昂する政宗をして行動を起こさせないこの状況に。

(お館様……某はどうすれば――!?)

だが幸村を教え導く武田信玄の声は、いつまでも響いては来なかった。



【主催 シュナイゼル・エル・ブリタニア】



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最終更新:2009年10月23日 20:31