序章

視界が重く暗い。

どの程度、血を流したのかも分からない。

全身を蝕む痛みは、既に限界を通り越して、指先の感触さえも覚束ない。

空を仰ぐ、薄闇に支配された夜空には一切の光明さえ見えず。

「僕は…此処までか…」

──遠くから、四回目の放送が響き、死者の名が読み上げられていく。

「…ルルーシュ……ユフィ……」

終ぞ──そのどちら共に再会は叶わなかったけれど。     ゲーム
世界の明日を願い、共に手を取り合った彼は、今も何処かでこの遊戯を壊す反逆の機会を窺っているに違いない。
そして、彼女の優しい微笑みを思い出して、彼女が本当に生きているのなら──。
変わってしまった僕が──たとえ騎士失格だったとしても。
やはり彼女に逢いたかった、死の際でそう思ってしまう。


「──どこまでいっても…僕は中途半端だな…」


故郷を裏切り、ブリタニアを裏切り、そんな事を繰り返してきた果ての結末がこの有様か。

ふっ、と苦笑いを浮かべてしまう。


「まぁ…お似合い…なのかな…」

路地裏の片隅で、枢木スザクはただ静かに瞳を閉じた。

 ☆

一章 再会

黒髪の少女と翠髪の女、戦場ヶ原ひたぎの背中からC.C.がゆっくりと地に足を降ろす。

「すまない戦場ヶ原、ちょっと人助けをしていたんだ」

ひたぎは一呼吸を置くと暦を見つめて話しかける。

「──遅いのよ」
「ああ、お待たせ」

暦はひたぎの身体をぎゅっと抱きしめる。

 ☆

二章 アラガウ者

枢木スザクの命の灯が尽きようとして──。

そして、ソレを繋ぎ留める事は誰にも出来ず、死に逝く様を静かに見守る事しか出来なかった。

──否。

「死ぬな、スザクッ」

こんな最低最悪の結末は──絶対にダメだッ。

その瞳は宙を彷徨い。

「阿良々木君、彼はもう…」
「黙ってろ、戦場ヶ原ッ!」

脳裏をかすめるモノは──。

だから、諦める訳にはいかなかった。

そして、僕は覚悟を決めて。


三章 薬局崩壊

暦の瞳が紅く輝き、その瞳孔が縦に開く。

「うおおおおおおおおおおおおおおお」

爆砕粉砕した瓦礫を押しのけながら立ち上がり。
連結を解除した二刀を掲げたグラハム・エーカーが地を駆ける。

「──これはっ」

その胸の奥底に、彼の者との戦いの記憶と、その最後の残滓が湧き上がり。

魔王の剣を受け止める。だが、魔王と拮抗するには余りに小さな力でしかなく。

グラハムの刃は届かず魔王が猛る。


その瞬間、不死鳥が跳ぶ。


四章 すざくフェニックス

鋭い痛みと、それを取り巻く鈍い疼きとが身体中を這い登り、苦悶の声が喉を震わせる。

それでも……。

冷たく硬い空気の中に足音が響き、信長が笑う。

「羽虫共が──」

「魔王、織田信長──お前は僕が此処で倒す」

その瞳の中で、両翼を左右に広げた鳳の紋章が輝き。

赤く、紅く、不死鳥のように舞い。

枢木スザク、最後の戦いが始まった。



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最終更新:2010年09月19日 21:02