第五回定時放送「死に行く女の為に出来ること」 ◆1aw4LHSuEI



 運命の歯車は決して止まることはない。
 ただ無情にも正確に時を刻む。
 止まらない。戻らない。やり直すことは出来ない。
 どれほど取り返しがつかなくても、先に進むしかない。

 掛け替えの無い未来が奪われて。
 あるいは、掛け替えの無い未来を刈り取って。
 生き残った者たちの、夜が明ける。

 さて。
 誰しもに平等に寸分違わぬ六時間が経過し。
 第五回定時放送が、始まった。


 ――――――――――――――――――


「えっと、これでいいのかしら。……んん。
 ―――お疲れ様。イリヤスフィール・フォン・アインツベルンよ。
 ゲーム開始から三十時間が経過したみたいね。
 んー。思えば長かったような短かったような……。
 ……ああ、私の感慨なんてどうでもいいわよね。
 それじゃ、連絡事項を言うけれど聞き逃さないでね。
 一度しか言わないから。……意地悪じゃないのよ?

 …………。

 いいかしら?
 じゃ、伝えるわよ。

 まずは電車の運行状況よ。
 修復中ってことだったけど―――。
 うーん。もう、いいわよね、これ。直さなくても。
 だって、これ誰か使ってるの? 今。

 だいたい陣の見立てにしてもどうも中途半端だし……。
 わざと空けるにしても北西……?
 駅の数も五。……デビルスターにしても歪よね。
 地脈に重なってるわけでもないし……。
 やっぱり魔術的なものじゃなさそうよね、多分。

 そもそもなんでいちいち修復してたのかしら?
 誰の指示だったの、これ? ……え、リボンズ?
 ふうん……。ま、別にいいでしょ。

 ―――と、いうわけで。
 私たち主催者は今後一切電車が破壊されても修理しませんので参加者の皆様ご理解の方よろしくお願いします!
 って、ところかしら。
 ……あ。でも【Dー6】駅はもう復旧させちゃったみたいね。
 別に今まで通り問題の無い範囲では動かすから、適当に使っちゃっていいわよ」


 流れだした音声は、名乗られた姓名は。
 これまで出てきた誰でもない名前。
 それを知る者は最早死に絶えている。
 だが、知らぬものでも理解できるだろう。
 いままでの事務的な放送と違い、不要とも言えるような情報が過多に詰められたのその内容。
 明らかすぎるほどの異常事態には。

 その場違いとも取れるほどの違和感にどれだけ気付けているのだろう。
 特に緊張した様子もなく、幼い少女の声は言葉を続ける。


「……で、次は禁止エリアの発表?
 三時間後には【A-6】【C-4】【G-3】も禁止エリアになるみたい。
 間違って踏み込まないように気をつけてね。
 うっかりドカン! ……なんていやでしょ?
 もう一度言うけど……気をつけてね。

 ん……。
 ―――じゃ、最後になったけどこの六時間以内での死亡者の発表をするわよ。




 以上、十名。これで、残りは十二名。

 はあ……。随分、死んだわね。死んじゃったのね……。
 うん。まさかペースが上がるとは思っていなかったわ。
 こっちとしては加速してくれるなら文句は無いんだけど……。

 ―――賭け、負けちゃったな。
 ふう…………。

 ―――……あ、ごめんなさい。
 私からの連絡事項は以上よ。
 生き残ったみんなにも期待しているから頑張って。
 こんなこと言っても信じられないかもしれないけど……。
 約束は、ちゃんと守るから。

 ―――えっと、それで、最後に遠藤のメッセージがある、っていうのがいつもの流れみたいだけど……。
 残念だけど、まだ生き返ってないみたい。本当に色々と段取り悪くてごめんね?
 放送自体も今回は此処まで。……それじゃ」


 ――――――――――――――――――


 ―――何かが、起きた。
 きっと参加者達の多くが気付くであろう事実。
 ―――何かが、あった。
 確かに、既に語られた物語以上のことが。

 それは一体どういう物語なのか。
 参加者にとって福音となるものか。
 あるいはさらなる破滅へと誘う序曲か。
 未だこの時点では誰一人予想も出来ず。
 音も無くローレライの唄だけが闇に響いた。


【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/stay night】
[状態]:限界に近い
[服装]:???
[装備]:???
[道具]:???
[思考]
基本:聖杯としての役割を果たして、優勝者の望みを叶える。
1:この殺し合いを完遂し、優勝者の望みを叶える。
2:それまでは死なない。
[備考]
※参戦時期は本編終了後から一年経過程度です



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最終更新:2010年11月04日 19:40