みんなのアイドル☆イリヤちゃんの第五回定時放送 ◆5iKodMGu52



水平線から地平から山の谷間からビル影から太陽が昇る。
日が沈み、日が昇る。
ごく単純な1日の終わりと始まりである。

曙は場所によって出ずる所を変えるが、いずれも同じ太陽であることは周知の事だ。
だが、それでも見る者によって曙光は姿を変える。

ある者は暗闇から救い出してくれた偉大なる神の姿を。
ある者にとっては狩りの時間の終了を。
ある者にとっては逆に狩りの始まりを。
ある者にとっては反逆の狼煙であると。
ある者は、また一つ人生が終わりに近づいたと達観する。

陽は唯一であり、陽光は万人に分け隔てなく降り注ぐ。
しかし全ての人が全て同じ思いを抱くとは限らない。

地上で殺し合いを続けざるを得ない彼らにとって、この日の光はどう映るのか。
それは彼ら一人一人にとって違うのであろう。


朝の到来を告げる風が巻き起こる。
陽は強いが暑いというわけでもない。
ただただ強烈な光を人々に差し込ませていた。


そして

ハウリングすら起こらずに、スピーカーから素っ頓狂な、ただひたすらに下品でハイテンションかつノリノリの音楽が響き渡った。

 『はぁ~い♪みんな~元気ぃぃぃぃ?
 みんなの主催者

 イ リ ヤ ス フ ィ ー ル ・ フ ォ ン ・ ア イ ン ツ ベ ル ン で~す!

 あ、誰?って思った君!そう、そこの君!ひっどいなぁ~私はず~っとみんなの事を思って来たって言うのにぃ!
 さて!それじゃあみんな大好き定時放送!行ってみよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!』

 『まずは電車の運行状況!
 えーっと、【D-6】 がぁ復旧してぇ、でもでもぉ、【F-3】駅がぁ
 もぉぉぉぉおおおおおおお、アイドルにめんどくさしごと押し付けないでよね!
 もうめんどいから電車はもう走りません!永久に停止!禁止エリアに囲まれる人残念!じわじわ死んでね!』

 『はい、次ぃ。
 禁止エリア!午前9時からは、この三つのエリアに入ると死んじゃうから気を付けてね?
 【B-6】【D-2】【F-5】
 この3か所含めた計15カ所には絶対に近寄らないでよ?絶対よ?イリヤとの約束♪』

 『あ、あとついでに、なんだけどぉ。
 ごめんね、みんな!もう【F-3】ギャンブル船と【C-3】憩いの館は無いの。 消失しちゃったの。
 クスン。みんなのエンジョイルームだったのにね。 酷い事するよね。許せないよね。
 でもイリヤを責めないでね!ぜーんぶ壊した人が悪いんだから!』

 『最後に死んじゃった人の発表をするよ~!
 【C.C.
 【ファサリナ
 【戦場ヶ原ひたぎ
 【ユーフェミア・リ・ブリタニア
 【上条当麻
 【福路美穂子
 【衛宮士郎
 【デュオ・マックスウェル
 【浅上藤乃
 【白井黒子

 以上10人!残り参加者は12人だよ☆
 いやぁ~ずいぶん減ったねぇ~☆イリヤ感激!
 もっとも~っと殺し合って、早く優勝してね!イリヤ待ってる!』

 『あぁ~ん、楽しい時間はあっという間!
 もうお別れの時間なの!
 でも別れあれば出会いあり!またお会いできる時を楽しみに!
 お相手はみんなのアイドル

 イ リ ヤ ス フ ィ ー ル ・ フ ォ ン ・ ア イ ン ツ ベ ル ン

 でした!しーゆーねくすとぶろーどきゃーす!』

 「ふぅ」

放送を終え、イリヤはマイクから口を離した。
のろのろと、ゆっくりと。
その姿に放送で見せた快活さはない。
陰鬱に、そして憂鬱そうに右に目をやる。
放送の間ずっと瞼を閉じていた者が目を開ける。

 「よくやってくれた。辛い仕事をよくのり切ってくれたね、イリヤ」

少年とも少女ともつかぬ振る舞いで、その人物は告げた。
イリヤはそのまま腰を落ち着け、当然の疑問を口にした。

 「ねぇ、なんでわたしが放送をやらなければいけなかったのかしら」
 「それは先程説明しただろう?
 ・言峰はこの飛行船に来なかった。
 ・他に放送を任せられる人間が居なかった。
 ・そして僕は今死んだ事になっている。
 この3点によって、だよ」

その人物、リボンズ・アルマークは間髪をいれずに答える。
さらに続けて、飛行船における黒服たちの縦構造と横との連携の無さを挙げた。
黒服たちにはこの状況を統括する、能力と責任が無い事。
また、横の連携が重要である放送においては、彼らは全くの無力である事を述べた。
無論、持ち場に着いている黒服たちは職務を完璧にこなしている為、バトルロワイヤルになんら支障はない。

 「台本に関しては、あのようなユニークな放送形態の方が、より深く傾聴してもらえるのではないか、という側面もある」
 「も、というからには他に理由があるのね?」
 「当然さ。だが今は語るべき時ではない」

そう言ったきり、リボンズは押し黙った。
つまりはなにも理由は無いのね、とイリヤは推し量り、ただ冷ややかな視線を送った。


イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/stay night】
[状態]:限界に近い
[服装]:???
[装備]:???
[道具]:???
[思考]
基本:聖杯としての役割を果たして、優勝者の望みを叶える。
1:この殺し合いを完遂し、優勝者の望みを叶える。
2:それまでは死なない。
[備考]
※参戦時期は本編終了後から一年経過程度です

 「知っているに決まっているだろう?」

放送よりも少し前、ヴェーダから離れたリボンズはデータの確認をしていた。
無論、先程自分の体に起きた変調の原因を調べるためだ。
リボンズがわざわざ自ら宮永咲の前に姿を表したのは、彼女が脳量子波を用いてヴェーダにどう干渉しているのかを試す意味もある。
だがヴェーダに干渉した脳量子波は皆無であった。
宮永咲が発した脳量子波はあの時、ただ単に助けを呼ぶことしかしていなかった。
つまり、宮永咲の呼びかけに応じてヴェーダを操り、妹たちの身体を操った存在が他に居る、ということである。
ヴェーダは現在隔離され、誰も手をつけられない状態である。
にもかかわらずヴェーダを操ることが出来る存在。

 「僕は君の上位存在なのだから」

そんなことが出来る存在を、彼は一つしか知らなかった。
かつてソレスタルビーイングのガンダムマイスターの一人として世界を革新しようと奔走したイノベイド。
そして自分からヴェーダを奪った、ただ一つの存在。

 「そうだろう?ティエリア・アーデ」

ヴェーダを奪い返した後に、その存在をヴェーダ内から徹底的に消去したはずだった。
もはやティエリアが姿を顕すことなど出来ないはず。
そう確信していたリボンズにとって、先程の事態から導かれたこの憶測は、非常に不愉快極まりないものだった。
故にヴェーダ内のデータをすべて洗い出し、その存在を全て暴こうとした。
巧妙に偽装されていたが、ヴェーダの殆どを掌握している彼にとって、そんな偽装など無意味である。
ほどなくして反乱分子の割り出しに成功したリボンズは、ヴェーダの数少ない交信記録の中にイリヤの名があることに注目した。

 「そしてさようなら。尻尾を出した君が悪いのさ」

つまりティエリアは外部協力者として、よりにもよって自分のパートナーであるイリヤを選んだ、ということだ。
ヴェーダ内のティエリアが、ヴェーダと始終共に居るイリヤを篭絡するのは、考えて見れば至極当然の流れと言える。
リボンズは喉元にナイフを突きつけられた状態であったわけだ。
なのでリボンズは一旦イリヤとヴェーダを引き離すことを企てた。
それが先程の放送だ。
データ消去の作業中、イリヤがティエリアと結託して、自分に離反することを恐れてのことである。
なだめすかしてイリヤを放送に引っ張り出させることになんとか成功したリボンズは、先程自分を攻撃したプログラムの削除に成功した。

作業を終えたリボンズはそのまま眠りについた。
放送ごとに行われている、いつもの工程。
ヴェーダ内のデータの刷新。
データ削除に手間取ったために多少遅れはしたが、いつも余裕をもって終わらせている作業である。
なんの支障もなく、放送中に終了した。

放送を終えたイリヤを見つめながら、リボンズはこの小さな反逆者をどう処断するべきか一瞬思考した。
結論はすぐに出た。
放置である。
イリヤの存在はリボンズにとって要であり、他に代替できない。
そもそも万が一、彼女が反逆する意志を持っていたとしても、既にその手段は奪われた。
ならばなんの危険性もない。
道具として利用するのみである。
彼女自身も道具として生涯を終えることを望んでいるのだ。
なんら文句の出る所でもないだろう。
そう、考えた。

【リボンズ・アルマーク@機動戦士ガンダムOO】
[状態]:???
[服装]:???
[装備]:???
[道具]:???
[思考]
基本:聖杯を用いて望みを叶える。
?:敢えて首輪を解除させて対主催戦に持ち込ませ、最終的に自分が勝利する。
?:妹達とサーシェスを通じて運営を円滑に進める。
[備考]
※妹達と情報を共有しています。各妹達への上位命令権を所持しています。
※妹達はイノベイドの技術によって新造された個体です。

×

実際のところ、ティエリア・アーデはヴェーダ内には元からいないし、外部から介入もしていない。
おそらくはこの世界において、ティエリアが存在する可能性はチリほどもない。
このリボンズの誤解は、ヴェーダが魔道書になっていることを、彼が理解できなかっただけのことである。
そしてデータ上の反乱分子を消去したところで、ヴェーダ内における勢力図は変わらない。

未だリボンズ9:イリヤ1のままである。

ヴェーダ内のイリヤの影響はガンの病巣のように切除しても無くなるものではない。
水溶液の濃度が10%であるからと言って、全体の10%を捨てたからと言って濃度が変わるわけではないのだ。
だがリボンズの誤解を誰が責められようか。
彼は魔術師ではないし、ましてや魔術が存在する世界の住人でもないのだ。



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最終更新:2010年11月04日 19:41