「作品の方はいいのかい?」
ポルノはたなびく煙を見上げながら呟く。自分はもう戦線から離脱した身だが、あいつはまだこれからだ。中途参加ながらデビュー作は好評で、次を望む声は多い。
それが世辞ではなく、ただの純粋な願いだというのは、あの作品を読めば一目瞭然だ。
「いいさ。破棄するわけじゃない」
下腹部が幸福でズキズキする自分を見ながらそう言ったこいつに対し、何と言えばいいのか分からない。とりあえず吸い終えた煙草を灰皿に押し付け、
窓の外を見遣る。雪がしんしんと降っており、まるで今日という日を演出しているようだ。
「ホワイトクリスマスだ」
「クッションの中身でも使ったの?」
「ああ。親に叱られるだろうさ」
どちらともなく二人は笑い、シャンペンの入ったグラスを傾ける。淡い黄金色が炭酸で弾ける様は、何とも感慨深い。刺激的という意味では、自分の作品も諸氏には劣らないだろう。
ただ、そのベクトルがまずかっただけ。後は句読点とか……まあ、色々だ。
(これは美味だがね)
刺激的な葡萄酒を口に含み、舌の上で転がす。芳醇な香りと味を堪能しているこの時が、『生』をよく実感できると思う。
それとは別のベクトルで作品が糾弾されていた時も『生』は実感できたが、あれは生きた心地がしなかった。読者が実感できたのは『性』だろうがね。
「それで、どういう内容なんだい」
「ネタバレはご法度だろ?」
こいつはクリスマスケーキを攻略しつつも隙がない。困ったものだ。二本目の煙草を取り出し、先端に火をつける。
「カイジと衣か……。ここはオーソドックスに脱衣麻雀かな」
「それのどこがオーソドックスなんだよ。一応全年齢対象だぞ」
砂糖菓子のサンタクロースをバリバリ砕く口元を窺いつつ、さらに思考を深める。いいと思うんだがな、脱衣麻雀。カイジは脱ぎ慣れてるし、衣が脱げば皆喜んでウケがいいだろうし。
それとももっとストレートに肉体をかけた勝負とか。これはこれでおいしい。絵師が参加してくれるともっとおいしい。
未成熟な体がろくでなしのプーに蹂躙されるなんて、NTR属性感涙ものじゃないか。そこらへんの描写はこちらの専売特許だがな。
「やはり時代は寝取りとヤンデレだよな」
「どうしてそういう話になるんだ」
『メリークリスマス』と書かれたチョコのプレートを奪うと、心なしか朝ちゅんは不機嫌になった。イチゴをやるから許せ。
ところでケーキの上にのってるイチゴって最後に残すとか、誰にも渡さないとか、美味そうな表現しているけど、実際はそんなにおいしくないよね。
けちったイチゴが多いから、『あんまりうまくないですね!』。あの酸味がいいのだろうか。
「
明智光秀、浅上藤乃、神原駿河、平沢憂、
ファサリナ……キャプテンは更生させたから除外するとしても、現時点の生存者だけでこんなにいるじゃないか、ヤンデレ」
「正確には『病んでる』だけどな」
「カイジが圧倒的大差をもって勝利っ……! 麻雀という長所を奪われた衣は絶望し、泣く泣くその柔肌を……そしてヤンデレ」
「そんなの書いたら『第二のポルノ』とか言われてフルボッコじゃないか」
「仕方ない。惜しいがこの称号を君に譲ろう。これからは『ポルノ二世』と名乗るといい」
「絶対嫌だ!」
「そうか。では『ポルノ2nd』、『ポルノツヴァイ』、オーソドックスに『ポルノⅡ』とか、『ポルノMk-Ⅱ』というのも……」
「左半分がアウトなんだよ!」
イチゴをむしゃむしゃ食べながらそう言う朝ちゅん。『朝ちゅん』もどうかと思うけどね。
すっかり短くなった二本目のタバコを吸いがらに押し込んで、温くなったシャンパンを飲む。うん、おいしいね。
「さて、本題に入ろうか」
「え、今までの前振りだったの? アバン? 長いなオイ」
「某三期に比べればそうでもないさ。じゃあこれ見てね」