第二回定時放送~たった一つのミス~ ◆4QcrSDrueI
これは第二回定時放送が行われるより前に起こった事である。
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事は一つの報告から始まった。
『遠藤様』
「……どうした?」
『
荒耶宗蓮の死亡が確認されました。』
「……そうか。……あのお方はなんと?」
遠藤は〈魔法〉を提供した協力者のことを気にした。
確か荒耶宗蓮は協力者が最も注目していたはずだ。
『別になんとも……遠藤様と同じく『そうか』としか…』
「………
インデックス……これをどうみる?」
遠藤は〈魔法〉だの〈魔術〉だのには全く心得がないので、隣にいるインデックスに聞いた。
「今のところは何とも言えません。ただあの会場には結界が張ってあります。それを信じるならば〈荒耶宗蓮〉が蘇生している可能性は低いと思われます」
「……ふむ」
通常参加者の生死は首輪に付いてある熱源センサーの反応によってきまる。だが万が一首輪が解除されてしまった時のために一つの結界が張ってある。
それはかつてアウレオルス=イザードが三沢塾にかけたものと同じもの。
首輪をつけた参加者が『表』の住人になり、それ以外の人間は全て『裏』の住人になる。
だから荒耶が何らかの手段を使って蘇生を果たしたとしても、『裏』の世界に侵入したとしてこちらに存在が掴めるはずである。
しかしこの結界は首輪をつけてない人間は全て『裏』の住人と判断するよう設定されてある。
たとえこの結界を仕掛けた者であったとしても例外ではない。
故に遠藤たちは会場に、正確には『表』の住人である参加者に直接介入することが出来ないのだ。
そしてこの結界は【人間】にしか作用しない。荒耶宗蓮の幸運はここにあった。
【支給品】である【その人形】には【首】が破壊されない限り結界は作用しないようになっている。
【首】が破壊されない限り【その人形】はただのガラクタに過ぎないことを遠藤たちは知っているからだ。
だからこそまさか【その人形】が荒耶宗蓮の代わりの肉体など気付くはずもない。
荒耶は【この結界】のことを知らなかったけれど
遠藤たちは【その人形】のことを知っていた。
だから難を逃れることが出来た。
ただそれだけの話。
まぁそのような出来事があったのがこれから行われる放送の前にあったのである。
―――――――――――
『こんにちは。インデックスです。
6時間が経過いたしました。これより二回目の定時放送を開始いたします。
………………。
…………。
……。
よろしいでしょうか。それでは連絡事項を伝えます。
まず第一に前回の放送の時に伝えた自動運行の列車の復旧についてお知らせいたします。
本来ならこの放送と同時に運行を再開する予定でしたが諸事情により未だに運行を再開することができません。
今しばらく皆様の移動の際に迷惑をかけることをご了承下さい。
続きまして、禁止エリアの発表に移ります。
今回の禁止エリアは【】【】【】の三ヶ所です。
今回の死亡者は以上の13名、現時点での残り参加者の人数は37名です。
では遠藤の方から皆様へのメッセージを最後に今回の放送は終了させていただきます。』
『遠藤だ!諸君がこの〈バトルロワイアル〉に参加してから早半日がたった。
震えていた弱者もそろそろこの環境に慣れてきたんじゃないか……?
そして理解しただろう、この場から逃げ出すには優勝するしかないのだとっ……!
だがひょっとしたら手を組めばなんとかなると楽観している者もいるかもしれない……
そういう奴らに俺からのアドバイスだっ……!
そういう輩は信用したら負けだっ……!
信用した時点でお前の命はそいつに握られている……!気をつけることだ!
ついでにもう一つ、アドバイスをくれてやろう。
第一回定時放送の時、俺はこの放送の最中が1番安全な時間だと……そう断言したっ!
だが!実際はどうなのか?……諸君は俺がその後に言った言葉のほうに夢中になって忘れたかも知れないが………その言葉を聞いた時疑問に思った筈だ……!
この〈ゲーム〉に安全な時間などあるのかとっ…………!!
その通りだっ……!俺は嘘をついていた……!いや正確にはあの時点では嘘ではなかった…!
事実どんな殺し屋でも……食事や睡眠を削ることはあっても…情報は欲しいから……一旦手を休まざるを得ないっ……!
しかし!それは〈理性〉があればの話だっ……!
諸君らはどんなことがあっても〈自分を見失わない〉と信じていたのだが………
と、今回のところはここまでだ……
不意打ちには気をつけるといい……
そんな死にかたはこちらも望んでいないからな……!
引き続き諸君らの奮戦を期待するっ………!!』
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こうして二回目の放送は幕を閉じた。
一つの矛盾を抱えたまま………。
【第二回定時放送終了(ゲーム開始十二時間経過)@残り38名】
最終更新:2009年12月27日 03:24