空中ランチタイム~第二回定時放送~  ◆MQZCGutBfo



―――とある一室、チェス盤を挟んで対峙する男が二人。

「チェックメイト…ですね。」

白の服に身を包んだ男が、優雅に駒を動かす。
その一動作一動作から気品のようなものが溢れている。

「ほう――まさか、あの荒耶宗蓮がな――」

対峙する男は対象的に全身黒。
そこに存在するだけで場が威圧される風格を持つ。

時刻は正午の前。
俗に言うランチタイムに差し掛かろうという時間帯である。

「<ギアス>の力、やはりあの<場>を持ってしても、止められる物ではないようですね。
……貴方には、何かしらの思惑があったようですが。」

白の男が探るように相手を伺う。

「思惑などと――私は純粋にこの<ゲーム>を楽しんでいるに過ぎんよ。
その点はそちらも御同様と思っているのだがね。

――さて、このチェスでは降参としよう。そろそろ時間だ。
我々も参加している者達のように、耳を傾けようではないか。」

男の発言を一笑に伏し、両の目を閉じる。

(魔術師、荒耶宗蓮――どうやら転移したようだな――
これならば、更に動きやすくなりそうだ――)


『皆様、ご機嫌は如何でしょうか。
前回放送より6時間経過致しました。これより第二回の定時放送を開始致します。

戦闘行為等を行っている方々も、一度戦闘を停止して頂き、
この放送を聞いて頂くことが最良の選択かと思われます。

………………。
…………。
……。

よろしいでしょうか。

それでは連絡事項をお伝えします。
放送内容は禁止エリア、死者の発表、列車の運行についてのご連絡となります。

まず、禁止エリアの発表を致します。
前回同様、三時間後の午後三時以降、立ち入り禁止エリアが三つ増加します。

今回の閉鎖エリアは【】【】【】の三カ所です。

続きまして、第一回定時放送から現在までの死亡者を発表させていただきます。

真田幸村
キャスター
黒桐幹也
田井中律
八九寺真宵
利根川幸雄
【刹那・F・セイエイ】
本多忠勝
船井譲次
琴吹紬
アーニャ・アールストレイム
【荒耶宗蓮】
セイバー

今回の死亡者は以上の13名、現時点での残り参加者の人数は37名となります。

続きまして、列車の運行状況についてお知らせ致します。
誠に申し訳ございません。新たに線路に被害が出ておりまして、
現在復旧の目途が立っておりません。
後続の放送をお待ち頂きますよう、お願い申し上げます。

私からの連絡事項は以上となります。
最後に、遠藤から皆様へのメッセージがございますので、お聞き下さい。
また6時間後にお会い致しましょう。』

『みんなご機嫌はいかがかなっ・・・!再び会えて嬉しいだろう、遠藤だ・・・!
13人も・・・!この短時間で13人も死んでしまった・・・!
諸君はこの<<バトルロワイアル>>に我先に乗っているようで何よりだっ・・・!!

信じたものは救われる・・・?
信じていいのは自分だけ、仲間と思っていた奴に背中から撃たれる!
そんなものはこの場に限った話じゃあない!

だが、心配しなくてもいい・・・!
「死者を生き返らせる」<魔法>は本物だ・・・っ!!
もし仮に先程名前を呼ばれた中に最愛の人間が居たとしてもっ・・・!
君が優勝すればその人は生き返るんだ・・・っ!!

どうだ、まさに地獄に仏、一縷の希望・・・!!
勝ち抜いてこそ意味がある・・・!

殺し合いに励めばそれだけ優勝に一歩近づけるんだ・・・!
勇敢に!華麗に!泥臭く!卑怯に!各々のスタイルで優勝を目指してくれ!!

何人次の放送を聴けるかわからないがっ・・・!
聴いている君には是非残っていることを期待しよう・・・!
諸君らの奮戦を期待するっ………!!』


「ハイカット!……良い放送でしたよ、お二方」

金髪の男が拍手をしながら遠藤とインデックスに近づく。

「あちらでお食事のご用意が出来ております。あの方々もお待ちですよ。」

「そうか・・・御苦労・・・!」

いそいそと歩き始める遠藤。
常ならば食事と聞けば我先に走り出すインデックスは、
普段とは別人のようにゆっくりと別室へと向かう。


「この料理、この景色・・・!
文字通り愚民共を見下ろしながらの食事はたまらんですな・・・!」

「ハハハ……どうやらこの<アヴァロン>はお気に召してくれたようだね。」
白の男が微笑みながら遠藤に受け答える。

「ふむ――この麻婆豆腐は絶品だな」
満足そうに真紅の麻婆を掻きこむ黒の男。

「そちらの方はよろしいのですか?
このピザも絶品ですが、ホットドッグもお勧めですよ」

黒の男に付き従いながら、不機嫌そうに控えている青の男に話題を振る。

「ンだとテメエ……!」
青の男がいきり立つと、白の男に控えていた片目の偉丈夫が前に出る。

「控えろ、ランサー」
「……チッ」

ランサーと呼ばれた男が下がるのを見て、片目も同様に下がる。

「いやいや、何かお気に障ることでもあったのなら謝ります。申し訳ない。」
まったく動揺せず、白の男が芝居じみた動作で頭を下げる。

「ま・・・まあまあ・・・!
折角の食事ですし、楽しくいきましょうや・・・!」

遠藤が取り成し、空中でのランチタイムは進む。


「さて――この場に辿りつけるものがいるのかどうか。
是非我々を楽しませて欲しいものだ――」


それぞれの思惑を秘めたまま、
空中でのランチタイムは過ぎてゆく……


――――その間、インデックスは目を虚ろにしながらも、手と口を休めず食を進めていた――。


【第二回定時放送終了(ゲーム開始六時間経過)@残り37人】



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最終更新:2009年12月27日 03:26