寝込んでて死者スレに投下しそびれたんでこっちに

リリーナ・ドーリアンね?!ようこそ!死者たちのたまり場へ!…って~~ッッ!」
透華は戦慄した
いま扉の前に居るこの新入りは明らかに自分の上位に立つものだと
いままでは庶民や薄汚い老人、コスプレ男が着ているにすぎなかった
しかしこの女は…ッッ!
いや、このお方は自分より遥かに気位の高いまさに高貴なるものだと…ッッ!
遠くに見る山の頂の高さを裾野に来て初めて知る…
まさにその境地に透華は居る

透華に軽く会釈をして歩を進めるリリーナの足元に透華は赤い絨毯を確かに視た
貴族などでは決してたどり着けない頂にこの人はいる
いや…今は死者の憂き目に会っている為かつて、であろう
生きてこの人に会いたかった…いや逆に死んでからすらも会いたくなかった
ここまで負けを認めざるをえない存在など知りたくもなかった
透華は知らず内に唇をかみ締めていた

「コレほどまで、こんな数になるほどにこのくだらない争いの犠牲者が出ていたのですか!」
まさに雷鳴のごとくリリーナの怒号は部屋中に響いた
眦を決したリリーナの姿はまさに百獣の王。
孤高にして絶無の支配者
そこには殺されたことへの怒りや不満、空虚さなど微塵も感じさせない
彼女はこの争いそのものに憤っていた

「そんな事いっても死んでる私達にはもう何も出来ないし!」
リリーナの怒気によって支配された場に猫が一匹しゃしゃり出た
猫は好奇心からなのかはよく分からないがよく道路に飛び出す

そして何割かのそれなりに高い確率で道路に毛皮を残すのみとなる

「諦観は人を腐らせます。
 腐った人間は周囲の人間の精神すら蝕みます
 私はまだ諦めては居ません。無論あなた方にも諦めてもらいたくありません
 だからこそ諦めて全てを放棄するのなら…今すぐここから出ておいきなさい!」

ラーマイヤーナにおけるインドラの矢、旧約聖書に書かれたソドムとゴモラを打ち滅ぼした神の光

塩の柱と化した子猫が突っ立っている脇を竹井がすり抜ける
池田を囮にした見事なる誘導作戦といえる

「まぁここで怒っててもしょうがないじゃない。それよりピザはどう?美味しいわよ」

注文から三十分以内で配達されたピザは美味しそうな香りを部屋に充満させていた
濃厚なチーズの香りが部屋のもの全てを魅了する
やはり年頃の女の子でもあるリリーナはその細い喉をごくりと動かした
「えぇありがとう」
今は亡き王国の女王は鷹揚に一欠けら受け取ると口元に運ぶ
―――あんな庶民の味覚を薦めるだなんて!
透華は戦慄とともに目を白くさせた
だが

「美味しいですね、コレはなんというピザなんですか?」

―――好評だ~~~~~ッッ!!!!!!

部屋の空気は一気に弛緩した
最早そこに居るのは雷光身にまとう怒りの女王ではなく
かっこいい男の子やパフェとかクレープとかDANZEN気になっちゃう女の子

「マルゲリータ、よ。イタリア庶民の味と呼ばれているわ」
気さくな笑顔で答える久の瞳は情熱に燃え盛っていた
まだ大博打を控えているのだろう、と加治木と兵藤は観察した
「知ってる?マルゲリータってかのイタリア王妃マルゲリータ・マリア・テレーサ・ジョヴァンナ・ディ・サヴォイアから付けられたのよ」
人差し指を立てて人懐っこい笑顔を見せながら竹井は続ける
「王妃が…?なのに庶民の味なのですか?」
きょとんとした表情でリリーナが竹井を見やる。
部屋中の視線が24の瞳が竹井に集中する

「えぇマルゲリータピザはマルゲリータ王妃が庶民に下賜したピザなの
 まさに王族の味よね
 ちなみに今日11/20はピザの日。マルゲリータ王妃の誕生日なのよ」
にこやかに説明する竹井の横で一応は高校教師である玄霧が微妙な表情を浮かべていたが
事態が事態なので黙っておくことにしたようだ
「王族の寛容さの証、ということですか…なるほど、すばらしいお話ですね…」
リリーナは感心したように頷き、今までとは一変した可愛らしい少女の表情で尋ねた
「所でこのピザはどこのものなのですか?」
頬の位置で固定された人差し指を右に振りつつ竹井は答えた
「ご存じないのかしら?それは―――」

―――あなたのご家庭に王妃の味を―――
                  ピザ○ット
11/20はピザの日

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最終更新:2010年01月05日 11:19