第二回定時放送X動き出す現状X新たなる刺客(?)◆hqt46RawAo
少女の声が、再び島中に響きわたる。
それは誰かの死を告げる声であり。
同時に、聞く者全ての生を告げる声なのだ。
死した者には死した事実を、生き残った者には更なる死地を示すだろう。
だがこれはただの予兆にすぎない、多くの未来へつながる一つの分岐点でしかないのだ。
すべてはこれを聞く者達に懸かっている、彼等が何を見出し、そして何を選択するか。
それによって、未来は大きく変動する。
やがて――
己の生を噛み締める者、誰かの死を想う者、気に留めず次の戦いへと赴く者。
誰であろうと分け隔てなく、殺人遊戯の第二幕は上がる。
幾多の屍を礎に、それぞれの物語が動き出す。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
『こんにちは、
インデックスです。
予定していた時刻になりましたので、これより第二回定時放送を開始いたします。
戦闘中の方や会話中の方は一時中断とし、放送の内容に集中される事を推奨します。
――――――――――。
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では、よろしいでしょうか?
放送を続けます。
まずは例によりまして死者の発表から始めたいと思います。
この6時間の間における死者は――
以上13名となりました。
これで、残る参加者は37名となります。
次に禁止エリアの発表です。
【C-2】【D-6】【G-6】
今回は以上三つのエリアとなりました。
十五時以降、進入した参加者の首輪は爆破されます。
また、同じく十五時以降はエリア【列:5~7】の範囲が雨天となります。
この雨は
第四回定時放送時まで続く見込みです。
最後に、列車の運休に関しましては更なる問題が発生いたしましたので、運行復旧は第三回放送時まで延期となりました。
なお、線路上に禁止エリアがありますが、車両内部は禁止エリア外となっておりますので、皆様ご心配なく。
私からは以上です。
引き続き遠藤様から重要な発表がありますので、皆様お聞き逃しの無いようご注意ください。』
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
『遠藤だ、クククっ……重畳……!
まさか13人も死ぬとは俺も思わなかったぞ……!実に嬉しいサプライズだ……!
諸君らの中にも『第二回放送時では死者が減る』と考えていた者が居ただろう?我々もそう考えていたさ……!
だが…この現状はどうだ?たったの十二時間で、参加者全員の約半数が死んだ訳だ……!
これが何を意味しているか、賢い者には分かるかな?
殺し合いに乗った人間が異常に多かった?何人も連続で殺せる強力な参加者が存在する?
もしくはその両方か?いやいやそれ以外にも……?!
まあ…結論は諸君らそれぞれに任せるとしよう。
さて前座はこれ位にして、そろそろ本題に入るとしようか。
重大発表とは即ち、ギャンブル船と円形闘技場についてだ……!
まずギャンブル船について説明させてもらおう……!
すでに知っている者もいるだろうが、優勝賞金のペリカはこの島の中でも得る事が出来る……!
それを優勝するまでとって置く事も選択の内だが、得たペリカをギャンブル船で使用すれば、強力な武器を購入する事が出来るのだ……!
ふふっ……驚いたかな?まあこれも既に知っている者が居たろうが……。
さて、そのギャンブル船だが、実は三時間後に二つの変化がおきる事となる……!
一つ目は購入景品の増加だ、今までは単純な武器や防具、またはお助けツール類しか購入出来なかった……!
しかしこれからは、更に強力な武器……!強力な防具……!そしてなにより魔法の力を得る事が出来るようになる……!
魔法……!そう、魔法だ……!
力無き哀れな者達に力を授ける魔法……!ただの殺人鬼を魔人に変える魔法……!
それら全てそこに在る……!
力を欲する全ての者達よ……!ギャンブル船に急げ……!今すぐ……!
……と言いたいところだが、ここで二つ目の変化が問題になる……!
なんと、このギャンブル船は三時間後に移動を開始するのだ……!
行き先は【F-3】の船着場……!
ここの近くに居る者は座して待つほうが良いとも言える……!
そこでまた重要になってくるのが、円形闘技場についての説明だ……!
ギャンブル船の出航に間に合わず、ペリカが使えなくて嘆く者も居るかもしれない……!
だが、心配するな……!
もしギャンブル船の出航開始に間に合わなくても、円形闘技場に行けば良い……!
三時間後に我々は円形闘技場へスタッフを配置し、新たなギャンブル場を設置する……!
ペリカで購入できる景品も、ギャンブル船に比べて量も質も大きく劣るがそれなりに豊富だ……!魔法の力を得る事はできないがね……!
更に、円形闘技場で出来てギャンブル船ではできない事が一つある……!
それは『キルポイントの交換』だ……!
何の事か聡い者ならもう分かってしまったか?
実は諸君らの首輪の中には、諸君らが今まで奪った命の数に応じてポイントが加算されている……!
そしてそれらのポイントは、円形闘技場にてペリカに返金可能だ……!
さあ、どうする諸君?
出航前のギャンブル船へと急ぐかな?
それとも一旦は円形闘技場へ出向き、ペリカを増やしてからゆっくりと船着場に到着したギャンブル船へと向かうかな?
当然、どちらでもない行動もまた選択の内だがね。
だが諸君等にはこの変化を十全に活かし、さらに殺し合いを充実させて貰いたい……!
俺からの発表もこれで終わりだ……!
では諸君ら……!第三回目の定時放送でまた会おう……!』
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ふう……」
明るい放送室の中、マイクを切り、一つ息をついて、
遠藤は座っていた椅子に、深くもたれ掛かる。
横を見やると隣に座るインデックスが、相変わらずの無表情で彼を見返していた。
顔色はいつも通りの無表情だったが、その視線に言いようの無い何かを感じた彼は、
「なにか……不満でもあるのか?」
知らず、そんな問いを投げかけていた。
その質問に、インデックスはやはりいつも通りの無機質な声で答える。
「十二時間で約半数。確かに順調かと、しかし…」
「順調すぎる……か?」
言葉の先を読んだ質問に、少女は肯定を返す。
「確かに死亡人数だけを見れば順調ですが、想定外の死が一つあります」
「荒耶宗蓮……か。確かに奴を失った事は少々痛い。これから更に殺し合いを盛り上げてもらう矢先に、死なれてしまったからな」
帝愛グループにとって、求められる物はより苛烈な死、そして凄惨な死である。
なぜならそれが彼らの“顧客”達のご要望なのだから。
それらを演出する為に、荒耶宗蓮のような主催の息が掛かった人間が重宝したのだ。
事実、彼か演出した琴吹紬によるシアン化カリウムを使った一連の惨劇は非常に受けがよかった。
「これ以降、ゲームの進行を円滑に進める為には荒耶宗蓮に代わる演出家が必要なのでは?」
それは主催の都合よく動き、ゲームを盛り上げてくれる存在。
殺し合いを助長し、また自らも果敢に殺しを遂行できる人物。
遠藤には心当たりがあった。
「分かっている、そのために俺から一つ提案があるんだ……!」
黙って先を促す少女に遠藤はそれを告げる。
「荒耶の代わりになるには、ちょうど良い奴が居るじゃないか……!喜んで我々に協力してくれそうな男が一人……!」
果たしてその男とは誰か?
少女は無表情ながらも少し考え、しかしすぐに見当をつけた。
【第二回定時放送終了(ゲーム開始12時間経過)@残り37名】
最終更新:2010年01月06日 11:52