(うーん~……よっしゃ確変大当たり!!……むにゃむにゃ)
幸せな夢を見ているこの男は松野おそ松。
六つ子の長男であり成人になってもニートのままギャンブルを嗜む男である。
そんな彼の自堕落な人生は今この時を持って急激に変わることになる。
「はーい皆さん!!起きてくださーい!!」
「んん!?……なんだよ。今とってもいい夢見てた所なのに、ってここどこ!!?」
おそ松が目を覚ますとそこはいつもの寝室ではなく。
まるで貴族達の社交界でも開くような広々とした会場で
周囲には見た事も無い人達が沢山いた。
「なんか骸骨とか獣耳とかいるし、何?コスプレパーティーか何かなの?」
「これから皆さんに大事なお話をしますのでご静聴お願いします!」
周囲が戸惑い、騒めいているのを無視して司会者の男は話を進めようとする。
しかも周りにはヤクザみたいなグラサンをかけた黒服の男達がいる。
全員同じ顔だ、何十つ子ってレベルじゃねえぞ。
「えー本日より第一回バトル・ロワイアル、略してBRの司会を務めさせていただく事になったダーハラといいます。
ではそのBRとは何なのか?その
ルールを説明させて頂きますね」
「おいダーハラ!!てめえ俺たちをこんな所に集めて何のつもりだ!!」
「ちょっと落ち着いてくださいヴァルカナさん、それをこれから説明しますから……。
では気を取り直して、BRとは集まって頂いた皆さんで殺し合いをして頂きましょうという企画です。
優勝者には企画者とそのスポンサーから出来る限りの援助が受けられますし
法による裁きは100%ありえませんので遠慮なく殺人をおこなってください」
「ふざけたこと抜かしてんじゃねえぞてめえ!!」
「馬鹿が……ダーハラ、お前がそこまで狂った行動をするとは思わなかったぞ」
「何て恐ろしい人なんでしょう……そんな残酷な事を行おうとするなんて処刑です!!即刻断罪処刑ですうううううううう!!」
司会者ダーハラの知り合いらしき三人の男女が怒りの視線を向ける。
特に目に隈のある男が今にもダーハラに殴りかからんとしていた。
「「「「「「「「「「ザッケンナコラー!!」」」」」」」」」」
「なんだこいつら?」
「この場で暴れた場合、彼らによって鎮圧されますので注意を
ヴァルカナさんもここは抑えて、ね?」
「くそ!!」
大量のクローンヤクザがダーハラを守るように整列する。
四方から銃口を向けられてはダーハラへ殴りかかる事すら叶わない。
……と思いきやその時。
「「「「「「「「「「グワ―!!」」」」」」」」」」
どこからともなく放たれたスリケンによってクローンヤクザ達は駆逐された。
いつの間にか赤い忍び装束を着た男がダーハラの目の前に立っていた。
「ドーモ、ダーハラ=サン。ニンジャスレイヤーです」
「ど、どーも……ニンジャスレイヤーさん、貴方の怒りも分かりますけどここは一旦落ち着いて……」
「ダーハラ=サン。貴様のその残虐な悪行、見過ごす訳にはいかん。死すべし」
「アイエエエエエエエエエ!?」
ニンジャスレイヤーに殺意を向けられたダーハラはニンジャリアリティショックを引き起こし。
哀れにも全参加者の前で失禁。
ニンジャスレイヤーによる手刀がダーハラの首に迫りかかったその時。
何者かによる真空刃がニンジャスレイヤーへと放たれる。
「何奴!?」
「おいおい、ダーハラ=サン。何をちんたらやっている?俺がいなきゃ今頃オダブツだったぜ」
「貴様は……ソニックブーム!!」
真空刃を放った相手はかつてニンジャスレイヤーの手によってサヨナラしたはずの男、ソニックブームであった。
足も付いておりユウレイではない。
「貴様は俺が殺したはず……何故生きている!?」
「クックック……。今のソウカイヤにかかれば死者の蘇生すら不可能じゃあない。
貴様の命など俺たちの匙加減でいつでも奪うことが出来るんだぜ。
そんな事よりもニンジャスレイヤー。お前さんはダーハラ=サンの忠告を聞かずに勝手な行動を取った。
そのケジメを取ってもらうぜ」
懐からリモコンを取り出したソニックブームは口をあんぐりと開けた能天気な表情の青年に向けてスイッチを押した。
すると首輪に付いているランプが赤く点滅し始めた。
「あれー?僕の首輪がピッピッなってるぞー?あはは~面白ーい!!」
「十四松!?」
おそ松は参加者の中に十四松がいる事に気づいた。
自分の事ばかり考えて気づかなかったが周囲をよく見たら弟達全員が連れて来られていたんだ。
「あ?兄さん達も来てたんだ~やっほー!!」
首輪から鳴る音の感覚が徐々に速くなっていく。
未だ首輪の機能を説明されてないが良くない事が起こっているのが本能で理解できた。
「十四松!!その首輪を外せーーーーー!!!!」
いくら名を呼んでも返事は来ない。
六つ子の中で最も破天荒で、最も生命力に溢れた。
それこそ殺しても死ななそうな十四松が、六つ子の中で最初に命を奪われたのだ。
弟達なんかいらない。
一人っ子の方が良かった。
何度もそう思った筈だが、実際にいなくなると。
「十四松……」
苦しい。辛い。
涙が止まらない。
「十四松ぅううううううう!!!!くっそおおおおおお!!!!」
「ソニックブーム!!よくも貴様!!」
「お前が悪いんだぜニンジャスレイヤー。お前が大人しくしていれば彼らのような犠牲は起きなかった」
「俺が原因なら俺だけを狙えばいい!無関係な人間を殺すことは無い!」
「それはお前みたいな無謀な正義感を持った奴が無意味な行動を取らせない様にするためさ。
そういう輩は自分が傷つくよりも他人が傷つけられる方が効果的だからなぁ。
じゃあダーハラ=サン。これで邪魔物はいなくなった。説明の続きだ」
「アッハイ」
「それじゃあ始めますねー。これから皆さんにBRの舞台へと転送される事になります。
舞台の構造に付いては、飛ばされた際にディバッグを用意させて頂きますので中に入っている地図をご覧ください。
ディバッグの中には他に水や食料、時計や懐中電灯やコンパス、BRのルールの詳細が書かれたスマホが用意されています。
それと殺し合うための武器が入ってますが、それは人それぞれ数や種類がバラバラですので当たりだったりハズレの人もいます。
もしハズレだった場合は他の人から奪い取るなりなんなり上手く工夫してください。
あとお気づきの方もいますが、一部の参加者には力を制限させていただいてます。
これは特別な力の無い一般の方にも勝ち目を与える為の処置ですのでご了承ください。
ですから例え非力でも最後まで諦めずに頑張りましょう!!」
「ここからが特に重要です。6時間毎に私たちが放送で会場の皆さんに死亡者や禁止エリアを伝えるので聞き逃さないようにしてください。
BRの舞台は地図上で縦横の線で数字とアルファベットで区切られています。例えば最北淡はAであり、南下する事にB、Cとエリアが変わり。
最西端は1であり、東に進む事に2、3と変わる事になります。
もし放送で7時にAー1 9時にA-2 11時にA-3が禁止エリアになると伝えられた場合は迅速に移動を開始してください。
禁止エリアに入った場合は警告音と共に1分後に首輪が爆発して命を落としてしまいます。
もしうっかり入っちゃった場合でもすぐさま引き返せば助かりますが、禁止エリアを突っ切っての移動は大変危険なのでおススメはしません。
これは皆さんが一つのエリアに籠城して殺し合いがストップしない為の処置ですのでご理解ください。
首輪に関してですが一定の衝撃を与えると爆発するように出来ているので決して外そうとしないでください。
それと多分あり得ないと思いますが24時間経って一人も死者が現れなかった場合は全員分の首輪が爆発して優勝者無しになってしまいますので
それだけは避けてくださいね。私としても全滅は大変心苦しいですから。ではここまでで何か質問ある人ー?」
「ダーハラ!優勝すればスポンサーから援助が入るだの何だの言っていたな?はっきり言ってとても信用出来ねえな」
「俺もそこは気になっていた所だ。優勝した人間に報酬を与えてお前たちに何のメリットがある?
むしろ余計な事を喋らせないように口封じに殺される方が遥かに可能性が高い。
だいたい本当に報酬が入るとして、大金の代わりに数十人を殺すのはリスクが大きすぎる。まともな人間なら参加する筈がないだろ」
ダーハラの言葉はとても信用が出来ない。
そんなヴァルカナと美影の前にソニックブームが近づいてダーハラに助け舟を与える。
「勘違いしているようだが報酬は金だけじゃねえぜ。お前たちが一生を賭けても起こし得ない奇跡を手にすることも出来るんだぜ。
例えばこの俺のように死んだ人間を蘇らせる、なんて奇跡だって叶えられるぜ。
メリットに関してだがこれは言わば実験だ。そのデータだけでこっちとしては十分だ。
一人に報酬を与える程度の損失など余りあるぐらいだ」
「そうですよーだから安心してください。もしかしたらBRで命を落としてもまた生き返らせて貰えるかもしれません。
だから二人ともここはもっとポジティブに考えて、他よりもちょっとデンジャラスなサバゲ―と思ってみてください。
他に誰か質問はありますかー?」
「……特にいなさそうですね。一度にルールを覚えきれないという方はディバッグの中のスマホをご確認ください。
先ほど私が言ったルールの詳細が書かれていますので、後は皆さんの言葉や文章に付きましては。
首輪の効力によって文化の違いを無視して伝えられるようになっています。
これは参加者達が交渉や駆け引きもしやすいようにとの配慮です。
首輪の機能が失われた時は……その時は死んでいる時だけですので問題ないですね
ではこれからBRの舞台となる島へ転送を行います。では皆さん頑張って殺し合いましょー!!ご武運を!!」
「くそがっ……ダーハラァ!!」
「あのねヴァルカナさん。そんな私ばっかり責められても困りますよ?
これは私自身の意思ではなく上からの命令で、仕方なく仕事をしているだけでして。
言うなれば私も皆さんと同じ被害者、みたいな状況なんですよー」
ダーハラのへらへらと愛想笑いを振りまく軽薄な態度にヴァルカナは怒りに震えた。
そして周囲に何かを訴えようと声を発しようとするが、言葉として伝わる前に彼の姿は転送され消えた。
転送が始まった事で他の参加者達も悲痛な叫びは徐々に消えていき。
最後には主催者であるダーハラとソニックブームの二人が残った。
こうして悪夢の日々が始まる。
バトルロワイアル、開始
【十四松@おそ松さん 死亡】
【主催】
【ダーハラ@迷家-マヨイガ-】
【ソニックブーム@ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン】
最終更新:2016年07月01日 23:50