あまりに大きすぎる損失

暗い海上を、クルーザーでゆっくり進んでいく。
運転手は無免の素人、スピードを出し過ぎるのは怖い。
第一、スピードを出し過ぎてエリアから飛び出ても困る。

「クルーザーの運転なんてよく出来るわね…」
「いや、免許も何も無いけど?なんとなくで操縦してる」
「…え?」
「何だよ、そこまで露骨に嫌そうな声出す事ねえだろ」

誰だって、運転手が無免許だと分かれば途端に怖くなる。
例え、本人が大丈夫だと言っていても、だ。

「なんだか、急に空恐ろしくなってきたわ」
「…だ、大丈夫だよ!今んとこ上手く行ってるし」

確かに今の所は上手く行っている…。
今の所は。
だが、いつ事故を起こしたり故障したりするか分からない。
しかし、自分もクルーザーの操縦なんてできない。
今は、剛に任せるしか無い。

(…そういえば、あのガラクタの中に、「爆弾」とか言うのがあったわね…)

ガラクタ袋の中から、小さなジュラルミンのケースを取り出す。
ケースの隅に、「爆弾」と掘られている。
…怪しい。
ケースを開けてみるが、中にあるのは日用品と小さな紙。
どう見ても、爆弾にはなりそうにない。

「やっぱりガラクタ…でも、一応組み立ててみても良いわね」






「よし、ここにでも停めるか…」
「…あそこにあるのは病院みたいね」

病院近くの小さな岸にクルーザーを停泊させる。
あくまでただの岸なので、停泊用のスペースなんてない。
仕方無く、ちょっと沖合に停める事になってしまった。

「…おい、行かないのか?」
「ちょっと待って…もう少しで出来るから」
「何作ってるんだ?呑気に工作なんてやってる場合じゃないだろ」
「…よし、できた。でも、こんな物が本当に爆発するのかしら」

試しに、起動させた後にビニール袋に入れて、沖の方に放り投げる。
綺麗な放物線を描きながら、袋に入った「爆弾」が飛んで行く。

「結構遠くまで行ったな」

心の中で10カウント数える。
5…4…3…2…1…。
カウントが0になると同時に、爆弾の落下した当たりに爆発が起こる。
眩い閃光と、大きな爆音。

「…おいおいおいおい!本物じゃねえか!マジかよ!!」
「作った私自身びっくりよ。あのケースに入ってたのって、ただの日用品だったし」
「本当に日用品だったのか…?」

クルーザー内に入り、机に出しっ放しのケースを見る。
…間違いなく、普通に店などで買えるような日用品だ。
一体、どうやれば爆弾になるのか、見当も付かない。

「…訳分からん。まあ、武器になるならいいか…」






ドーン…と爆発音がどこかから聞こえてくる。
すかさず窓の外を見る。
…西の方で爆発があったようだ。
とは言え、ここから西と言うと海に繋がっている川があるはず。
川の上で爆発があったのか…?

「…確認する必要があるわね」

辺りを警戒しながら病室を出て、階段を降りる。
1階に降りると、血の臭いがまた鼻をつく。
自分からすると、さして珍しい物でもないが。

「さて…西の方だったわね…」

入り口は北と、西の方に急患用の入り口がある。
やはり、西を調べるなら西から出た方が都合がいい。

「…さて、西に何があるのかしら?」






「…結局材料を使い切って、3つ爆弾ができた訳で」
「3つも作って、どうするのよ」
「何かの役には立つだろう、さてどうする?上陸して、病院を見て回るか?」
「いいわね、役に立つ物もありそうだし」

甲板に出て、病院に入るかどうか話し合う。
足元に、手製の爆弾を転がしたまま。
起動させてはいないので、爆発しないが。

「水ん中通っていくしかないな、濡れるけど我慢しろよ」
「仕方無いわね、我慢するわ」

水上に降りようとした時。
病院方面から、女が近づいてくる。
手には、何かを握っている。

「おい、そこにいるのはだれだ?ゲームに乗ってるなら、それ以上近づいてこないでくれよ」
「わざわざ聞かなくても、懐中電灯を使えばいいじゃない」

そう言ってデイパックから懐中電灯を取り出し、ライトを付けて相手に向ける。
右肩辺りに包帯を巻いている。
負傷したのだろう。
そして…手には、サバイバルナイフらしき物を握っている。

「…やっぱりゲームに乗ってるっぽいな。船を出して逃げよう」
「分かったわ!」

運転席に飛び込む。その間にも、敵はこちらに近づいてくる。
水中を歩いているお陰でスピードが遅いのが救いか。

「くっ…早く、早くかかれ!」

焦っているせいか、エンジンがなかなかかからない。

(早く早く早く!早く!)

いくら焦ってもキーは空回りするだけだ。
落ち着こうにも、そんな暇は無い。

「きゃあっ!」

甲板で、忍の悲鳴が聞こえる。

「!!」

反射的に運転席を飛び出し、甲板へ出る。
そのまま上がってくる女を体当たりで水中に叩き落とす。
勢いが付き過ぎて自分も一緒に落下する。

「ゴボッ…よくもやってくれたわね」
「へっ、よく言うぜ。俺達を殺す気でこっちに来たんだろ?」
「仲よくするために近づいたとでも思って――!?」

言い終わる前に、剛の拳が女の顔面にヒットしていた。
鼻の骨が折れたようで、鼻血を出しながら倒れた。

「質問に質問で返せって、誰が言った!!」
(えっ、怒るのはそっち!?)

妙な方向に怒ることに心の中でツッコミを入れる。
…今はそんな事を言っている場合では無い。
殴り倒された女が、憤怒の表情を浮かべ起き上がってくる。

「よくも…やってくれたわね…」
「元はと言えばそっちが悪いんだろ、正当防衛とでも言っておくか」
「絶対…許さないわよ…」

殺気を剥き出しにし、こちらを睨み付けてくる。

「うっ…」

思わず体が委縮する。
その視線が、まさしく獣のそれだったからだ。

「…隙だらけよ!」

水中を歩いているにも関わらず、素早い動きで剛に襲い掛かる。
未だ眼光にビビって、身動きがとれない。

「あぐっ…」

ナイフが、柄の部分まで腹に突き刺さった。
刺さった部分が、焼けるように熱い。
まるで、傷口に焼けた鉄棒でも突っ込まれているようだ。
汗が滝のように流れる。

「…クソッタレが!!」

僅かな力を振り絞り、女の首に手をかけ、絞め上げる。
自分でも驚くほどの力で絞め上げている。
これが、火事場のバカ力とか言う物だろうか?

「苦…し…放し…」

何か言っているが、耳に入って来ない。
そして、掌に厭な感覚が伝わってきた後、女は力無く崩れ落ちた。
絞め過ぎて首の骨が折れたのだろう。
首が異常な方向に捻じ曲がっている。

「まさか、この俺が人を殺めるとはな…流石に、過剰防衛か?」

再度腹の痛みが襲ってくる。
見る所出血は致死量ギリギリか…。
周りの水が、血で染まっている。

「ちょっと、しっかりしなさいよ!」
「流石に、もう無理だから。こう言うのは自分が良く分かるんだよ」

もう、忍の顔も良く見えない。
こんな下らねえ場所で死ぬなんて不本意すぎるが、仕方が無い。
これも、きっと運命だったのだろう。

「…お前の…事…ゴリラなんて…言って…悪…か…た…」

思いを最後まで伝える事無く、剛は力尽きた。
その顔は、苦しみとは無縁の表情だった。






「…。」

剛の遺体を陸にあげ、草地の上に安置する。
今は、ゆっくり墓を作ってあげることもできない。

(もし、私が生きて帰れたなら…きっと、貴方を弔う)

涙をぬぐい、決意の籠る目をして、クルーザーへ戻って行った。


【一日目・深夜/C-4:岸】
【大岩忍@オリジナル
[状態]:健康
[所持品]:支給品一式、ガラクタ袋@ロアシリーズ、日用品爆弾×3
[思考・行動]
基本:必ず、このゲームから脱出する。
1:…。

【緑川美紗子@オリジナル 死亡】
死因:頸椎骨折
【白川剛@オリジナル 死亡】
死因:失血死

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最終更新:2011年06月27日 23:04
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