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溺れる者は藁を掴めない

「2時間の内に4人が……」
「30分に、1人、殺されたことになります……よね」

放送を聞き終えて、未だ暗い路上で放送について歩きながら話し合う2人。
放送の声の主は、「死者が少ない」と言っていた。……少ないに越したことはない。
自分の知らない赤の他人でも、自分の知り合いでも、人が死ぬことなんて気分のいい事じゃない。

「ところで……さっきの放送に出て来た『ミュータント』についてだが……どう思う?」
「今の所、何とも。実物が現れない限り、完全には信じられません」
「自分も、今の所半信半疑だ」

第一、自分たちから見たら、奴らは敵なのだ。
敵の言う事を鵜呑みにするのも、危険な気がする。
とはいえ、全員に伝わる放送で嘘をつくメリットも、思い付かない。

「用心するに越した事はないだろう、今の所は」
「ですね」






「……もう2時間も経ってんのか」

小さな喫茶店で、溜息交じりに呟く。
待ち伏せをすると決めたはいいが、その後時計を見ると放送までそんなに時間がなかった。
それに、少々疲れていたので、ちょっと休もうと思い、見つけた喫茶店に反射的に入ったのだった。

「さて、そろそろ出るか」

喫茶店を出て、次はどこに向かおうかと思っていた、その時。
……足音が聞こえる。
咄嗟に、辺りを見回してみるも、誰もいない。
気のせいだったのか……?と思ったが、確実に足音はしている。

(くそっ……どこだ……どこにいる)

姿の見えない奴が相手では、下手に動けない。
どうしようか。せめて、せめてどの辺りにいるか分かれば。
どこにいるか分かれば、自分の投げナイフで何とか対処することもできるかもしれない。

(来るなら来い……!)

そう思った瞬間。
突然、左側から何かが現れ、襲い掛かってきた!

「……ッ!」

突然の事すぎて、上手くかわせずに左手を切られてしまう。
何か、刃物でも持っているのか?と思ったが、その考えはすぐに消えることとなった。
襲われた方向に立っていたのは……醜い、醜い化け物だった。

「何だ……こいつは……」

……どうしよう。
思ったことは、それだけだった。
このままでは、この化け物に切り裂かれて、自分は死ぬ。
普通の人間なら、この場で頭を吹き飛ばしてやるだろう。だが、こいつはどう見ても人間じゃない。
もしかしたら、ナイフ程度ではビクともしないかもしれない。
一体、どうすればいいんだ。
溺れる者は藁をも掴むと言うが、本当に溺れている者は藁すら掴めないのが現実だ。

(……死んでたまるか)

こいつが何なのかなんて、どうでもいい。
逃げた先に、誰かがいるかもなんてことも、どうでもいい。
今の自分の中には、たった1つの思考しかなかった。

――死にたくない。死んでたまるか。

「……死んでたまるか!!俺は、死なねえ!!」

思わず大声を出してしまう。
半ばヤケで手に持つナイフを投げようとしたが……ナイフが、無い。
もしかして、さっき切られた衝撃で落としたのか。
良く見ると、化け物の足元に、自分のナイフが転がっている。
一瞬前まではあれほど漲っていた生きる気力が、瞬く間に無くなって行く。

(……怖い)

生きる気力の代わりに心を満たして行くのは――死の恐怖。
呼吸ノスピードが上がり、心拍数も増して行く。
額を伝うのは、冷や汗が脂汗か。
立ち上がりたい。今すぐにでも、走って逃げたい。
だが、足が動かない。まるで、石にでもなってしまったように。
自然と、涙が溢れだしてくる。溢れた涙は頬を伝い、地面を小さく濡らす。

「誰か、誰か俺を助けろ―――――――ッ!!!!!」

無意識に、大声で叫んでいた。
自分でも、何故叫んだのかわからない。
もしかして、自分の心の奥で、「誰か、自分を助けてくれ」と思っていたのかもしれない。
――本人は、それに気づいていないようだが。

「……もう、ダメか……」

もう、死を受け入れるしかないのか?
何も出来ずに、この化け物に殺されるしか無いのか?
そう思うと、急に気が楽になってきた。
自分は、何のために、こんなに頑張ってるんだろうか?
疑問しか浮かんでこない。

「……この辺りでしたよね!?あの声!!」
「ああ、そうだろう!!」

……誰かが、こっちにやってくる。
片方の声には、聞き覚えがある。
間違い無い……8n氏だ。






時間は、遡って行く。

「今度は、どこに行きましょうか」
「そうだな……医療品を調達したい。薬局でも探して……」

『……死んでたまるか!!俺は、死なねえ!!』

「今の声は!?」
「もしかして、誰かに襲われているのかもしれない」

もしも、誰かが襲われているのなら、見過ごす訳にはいかない。
とにかく、声のした方へ走り出した。

(もう1度……大声を出してくれ!)
「速水さん!何で立ち止まってるんですか!?」
「す、すまない!急ごう!」

『誰か、誰か俺を助けろ―――――――ッ!!!!!』

2回目の絶叫。
心の底から、「助けてくれ」と言わんばかりの、悲痛な叫び。

「……分かった!あっちだ!」
「行きましょう!!」

再度、声のした方向に走りだす。

「……この辺りでしたよね!?あの声!!」
「ああ、そうだろう!!」

息を切らしながら、声のした所を見回す。
……いた。
人間程の背丈の何かが、いた。

「……あれが、まさか?」
「かも、しれない」

その「人間のような何か」が、こちらに振り向いてきた。
……本来口があるであろう場所に、だらだらと短い触手のような物をたらしている。
そして、土のような皮膚が全身を包んでいる。
見た目の壮絶さに、思わず息を飲んでしまう。

「僕が、あいつを追い払う。その間に、襲われた人を頼む!」
「1人じゃ危険ですよ!!」
「でも、やらなきゃいけないんだ!!もう、話している暇はない!!」

そう言い終わると同時に、化け物に向かって真っすぐ走って行く速水。
それに釣られるように、◆8nn53GQqtYも襲われた人に向かって走る。

「大丈夫で……WYG氏!?」
「……8n氏……」

小さな声で絞り出すように一言呟いた後、ぐったりと項垂れた。
すかさず、脈を確認する。
……脈はある。どうやら、失神しただけのようだ。

「速水さん!早く、逃げましょう!」
「分かってる!でも、相手の姿が無いんだ!」
「きっとどこかに行ったんですよ!今の内に行きましょう!」
「……仕方無い、分かった!その人は、僕が背負おう!」

化け物を野放しにしておくのは気に食わないが、あいつがどこにいるのか分からない以上、どうしようもない。
未練を立ち切り、再度走り出した。

【一日目・黎明/E-2】
【速水祐司@絶体絶命都市2】
[状態]:健康、肉体疲労(中)、◆WYGPiuknm2を背負っている
[装備]:組長のバット@龍が如く2
[所持品]:支給品一式、不明支給品(確認済み)
[思考・行動]
基本:何故こんなことになっているのか調べる。
1:今は、ここから逃げる
2:あれが……ミュータントか……?
3:「Yc氏」と呼ばれている人に会いたい
4:安全が確保できたら、医療器具を探したい

【◆8nn53GQqtY@非リレー書き手】
[状態]:健康、肉体疲労(中)
[装備]:なし
[所持品]:支給品一式、説明書、予備弾×2、ロケットランチャー@コマンドー
[思考・行動]
基本:ゲームには乗らない。
1:とにかく、ここから逃げる。
2:WYG氏……大丈夫かな……
※E-2周辺に、◆WYGPiuknm2の声が響き渡りました。
※E-2喫茶店前に、投げナイフとデイパックが落ちています。

2人はまだ知らない。◆WYGPiuknm2が、ゲームに乗っていることを。
そして、目覚めた◆WYGPiuknm2は、一体どうするのか。
それは、誰にも分からない――。

【◆WYGPiuknm2@非リレー書き手】
[状態]:健康、失神、恐怖、精神ダメージ(大)
[装備]:なし
[所持品]:なし
[思考・行動]
基本:……。
1:(失神中)


この騒動の原因となったミュータント、Bloodsuckerは未だに喫茶店辺りをウロついていた。
しかし、あまり機嫌が良くない。せっかく襲った標的に、まんまと逃げられてしまったからだ。
せっかく、持ち前の光学迷彩能力を生かして不意打ちを狙ったのに。
Bloodsuckerは何も喋らない。一体何を思い、何を行うのだろうか。


【一日目・黎明/E-2:喫茶店辺り】
【Bloodsucker@ミュータント(S.T.A.L.K.E.R.)】
[損傷率]:0%
[状態]:無傷

≪ミュータント情報≫
【Bloodsucker@ミュータント(S.T.A.L.K.E.R.)】
E-2付近に出現。通称「さっちゃん」。
攻撃方法は主に爪による切りつけ、吸血。
また、自身を透明にする光学迷彩を使用可能。
攻撃時は光学迷彩の効果が発揮されないので、そこを狙うのがベスト。

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最終更新:2011年09月06日 22:21
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