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溺れる者は藁を掴めない

「2時間の内に4人が……」
「30分に、1人、殺されたことになります……よね」

放送を聞き終えて、未だ暗い路上で放送について歩きながら話し合う2人。
放送の声の主は、「死者が少ない」と言っていた。……少ないに越したことはない。
自分の知らない赤の他人でも、自分の知り合いでも、人が死ぬことなんて気分のいい事じゃない。

「ところで……さっきの放送に出て来た『ミュータント』についてだが……どう思う?」
「今の所、何とも。実物が現れない限り、完全には信じられません」
「自分も、今の所半信半疑だ」

第一、自分たちから見たら、奴らは敵なのだ。
敵の言う事を鵜呑みにするのも、危険な気がする。
とはいえ、全員に伝わる放送で嘘をつくメリットも、思い付かない。

「用心するに越した事はないだろう、今の所は」
「ですね」



◇



「……もう2時間も経ってんのか」

小さな喫茶店で、溜息交じりに呟く。
待ち伏せをすると決めたはいいが、その後時計を見ると放送までそんなに時間がなかった。
それに、少々疲れていたので、ちょっと休もうと思い、見つけた喫茶店に反射的に入ったのだった。

「さて、そろそろ出るか」

喫茶店を出て、次はどこに向かおうかと思っていた、その時。
……足音が聞こえる。
咄嗟に、辺りを見回してみるも、誰もいない。
気のせいだったのか……?と思ったが、確実に足音はしている。

(くそっ……どこだ……どこにいる)

姿の見えない奴が相手では、下手に動けない。
どうしようか。せめて、せめてどの辺りにいるか分かれば。
どこにいるか分かれば、自分の投げナイフで何とか対処することもできるかもしれない。

(来るなら来い……!)

そう思った瞬間。
突然、左側から何かが現れ、襲い掛かってきた!

「……ッ!」

突然の事すぎて、上手くかわせずに左手を切られてしまう。
何か、刃物でも持っているのか?と思ったが、その考えはすぐに消えることとなった。
襲われた方向に立っていたのは……醜い、醜い化け物だった。

「何だ……こいつは……」

……どうしよう。
思ったことは、それだけだった。
このままでは、この化け物に切り裂かれて、自分は死ぬ。
普通の人間なら、この場で頭を吹き飛ばしてやるだろう。だが、こいつはどう見ても人間じゃない。
もしかしたら、ナイフ程度ではビクともしないかもしれない。
一体、どうすればいいんだ。
溺れる者は藁をも掴むと言うが、本当に溺れている者は藁すら掴めないのが現実だ。

(……死んでたまるか)

こいつが何なのかなんて、どうでもいい。
逃げた先に、誰かがいるかもなんてことも、どうでもいい。
今の自分の中には、たった1つの思考しかなかった。

――死にたくない。死んでたまるか。

「……死んでたまるか!!俺は、死なねえ!!」

思わず大声を出してしまう。
半ばヤケで手に持つナイフを投げようとしたが……ナイフが、無い。
もしかして、さっき切られた衝撃で落としたのか。
良く見ると、化け物の足元に、自分のナイフが転がっている。
一瞬前まではあれほど漲っていた生きる気力が、瞬く間に無くなって行く。

(……怖い)

生きる気力の代わりに心を満たして行くのは――死の恐怖。
呼吸ノスピードが上がり、心拍数も増して行く。
額を伝うのは、冷や汗が脂汗か。
立ち上がりたい。今すぐにでも、走って逃げたい。
だが、足が動かない。まるで、石にでもなってしまったように。
自然と、涙が溢れだしてくる。溢れた涙は頬を伝い、地面を小さく濡らす。

「誰か、誰か俺を助けろ―――――――ッ!!!!!」

無意識に、大声で叫んでいた。
自分でも、何故叫んだのかわからない。
もしかして、自分の心の奥で、「誰か、自分を助けてくれ」と思っていたのかもしれない。
――本人は、それに気づいていないようだが。

「……もう、ダメか……」

もう、死を受け入れるしかないのか?
何も出来ずに、この化け物に殺されるしか無いのか?
そう思うと、急に気が楽になってきた。
自分は、何のために、こんなに頑張ってるんだろうか?
疑問しか浮かんでこない。

「……この辺りでしたよね!?あの声!!」
「ああ、そうだろう!!」

……誰かが、こっちにやってくる。
片方の声には、聞き覚えがある。
間違い無い……8n氏だ。



◇



時間は、遡って行く。

「今度は、どこに行きましょうか」
「そうだな……医療品を調達したい。薬局でも探して……」

『……死んでたまるか!!俺は、死なねえ!!』

「今の声は!?」
「もしかして、誰かに襲われているのかもしれない」

もしも、誰かが襲われているのなら、見過ごす訳にはいかない。
とにかく、声のした方へ走り出した。

(もう1度……大声を出してくれ!)
「速水さん!何で立ち止まってるんですか!?」
「す、すまない!急ごう!」

『誰か、誰か俺を助けろ―――――――ッ!!!!!』

2回目の絶叫。
心の底から、「助けてくれ」と言わんばかりの、悲痛な叫び。

「……分かった!あっちだ!」
「行きましょう!!」

再度、声のした方向に走りだす。

「……この辺りでしたよね!?あの声!!」
「ああ、そうだろう!!」

息を切らしながら、声のした所を見回す。
……いた。
人間程の背丈の何かが、いた。

「……あれが、まさか?」
「かも、しれない」

その「人間のような何か」が、こちらに振り向いてきた。
……本来口があるであろう場所に、だらだらと短い触手のような物をたらしている。
そして、土のような皮膚が全身を包んでいる。
見た目の壮絶さに、思わず息を飲んでしまう。

「僕が、あいつを追い払う。その間に、襲われた人を頼む!」
「1人じゃ危険ですよ!!」
「でも、やらなきゃいけないんだ!!もう、話している暇はない!!」

そう言い終わると同時に、化け物に向かって真っすぐ走って行く速水。
それに釣られるように、◆8nn53GQqtYも襲われた人に向かって走る。

「大丈夫で……WYG氏!?」
「……8n氏……」

小さな声で絞り出すように一言呟いた後、ぐったりと項垂れた。
すかさず、脈を確認する。
……脈はある。どうやら、失神しただけのようだ。

「速水さん!早く、逃げましょう!」
「分かってる!でも、相手の姿が無いんだ!」
「きっとどこかに行ったんですよ!今の内に行きましょう!」
「……仕方無い、分かった!その人は、僕が背負おう!」

化け物を野放しにしておくのは気に食わないが、あいつがどこにいるのか分からない以上、どうしようもない。
未練を立ち切り、再度走り出した。

【一日目・黎明/E-2】
【速水祐司@絶体絶命都市2】
[状態]:健康、肉体疲労(中)、◆WYGPiuknm2を背負っている
[装備]:組長のバット@龍が如く2
[所持品]:支給品一式、不明支給品(確認済み)
[思考・行動]
基本:何故こんなことになっているのか調べる。
1:今は、ここから逃げる
2:あれが……ミュータントか……?
3:「Yc氏」と呼ばれている人に会いたい
4:安全が確保できたら、医療器具を探したい

【◆8nn53GQqtY@非リレー書き手】
[状態]:健康、肉体疲労(中)
[装備]:なし
[所持品]:支給品一式、説明書、予備弾×2、ロケットランチャー@コマンドー
[思考・行動]
基本:ゲームには乗らない。
1:とにかく、ここから逃げる。
2:WYG氏……大丈夫かな……
※E-2周辺に、◆WYGPiuknm2の声が響き渡りました。
※E-2喫茶店前に、投げナイフとデイパックが落ちています。

2人はまだ知らない。◆WYGPiuknm2が、ゲームに乗っていることを。
そして、目覚めた◆WYGPiuknm2は、一体どうするのか。
それは、誰にも分からない――。

【◆WYGPiuknm2@非リレー書き手】
[状態]:健康、失神、恐怖、精神ダメージ(大)
[装備]:なし
[所持品]:なし
[思考・行動]
基本:……。
1:(失神中)


この騒動の原因となったミュータント、Bloodsuckerは未だに喫茶店辺りをウロついていた。
しかし、あまり機嫌が良くない。せっかく襲った標的に、まんまと逃げられてしまったからだ。
せっかく、持ち前の光学迷彩能力を生かして不意打ちを狙ったのに。
Bloodsuckerは何も喋らない。一体何を思い、何を行うのだろうか。


【一日目・黎明/E-2:喫茶店辺り】
【Bloodsucker@ミュータント(S.T.A.L.K.E.R.)】
[損傷率]:0%
[状態]:無傷

≪ミュータント情報≫
【Bloodsucker@ミュータント(S.T.A.L.K.E.R.)】
E-2付近に出現。通称「さっちゃん」。
攻撃方法は主に爪による切りつけ、吸血。
また、自身を透明にする光学迷彩を使用可能。
攻撃時は光学迷彩の効果が発揮されないので、そこを狙うのがベスト。

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最終更新:2011年09月06日 22:21
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