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時計は午前二時を回り、辺りは静かに寝静まっていた。
明かりが点灯しているのは、コンビニくらい。
これと言ったものが無い街であるため、国道にすら車は走っていない。
廃ビルとなった建物の中で、少し音が聞こえる。
ポチャリ、ポチャリと水が落ちる音以外の。
甲高い声。笑い声だ。


「ひゃはハハハハハァァァァァ!!!!!いるのは分かっているんだぜェ。」


それを見て、狂気じみた笑い声を上げるのは、暴食ことジャック・ザ・リッパー。
イギリス犯罪史上最悪の連続娼婦惨殺事件犯人。別名切り裂きジャック。
所有者とは別行動で、両手には血で染まった刃を持つナイフとノコギリ。
彼は、最狂の精霊。


「アンタも精霊かいな。なんや、分かっとるなら、さっさと来てくれや。」


弓矢を片手に、古き日本の鎧を着た関西弁で長い髪の女性。
巴御前。源氏側についた武士。弓矢の天才として、源頼朝とも親交が深い。
精霊のクラスは憤怒。すなわち怒りやすいという事だ。
有無を言わさず、弓を切り裂きジャックへと向け射殺しようとする。


「平氏のお偉いさんか?やけに派手な格好しとんなぁ。」
「あァ?雑魚は脳みそも雑魚いのか?」


ロンドン犯罪史上最悪の殺人鬼は、源氏最強の弓兵に向かって鋸を切りつけた。
無論、鉄の鎧で覆われた向かって斬りつけた場合、鋸の刃が折れる事はバカでも分かる。
案の定、鋸の刃は悲壮な金属音を上げて、コンクリートの床に落ちた。
狂っている。すなわちバカでも分かることが分からない、そういうことだと思い込んでいた。


「アンタの目的は何や?何で所有者がおらへんねん?」
「俺の目的?俺の目的は、強い奴と戦う。そしてソイツを食う。」


ジャック・ザ・リッパーはの刃の無くなった鋸を投げ捨てると、ナイフを持ち替えて走り出す。
史上最強では無く、異常最狂の殺人鬼────ジャック・ザ・リッパー。
彼の目には巴御前という、一人の標的しか入っていなかった。
そして、彼は狂った笑みを浮かべた。

ザクッ
グチャ!!
廃店舗の白い壁には、赤黒い大量の血が不気味に染まった。
血を噴出しているのは、巴御前───ではなく、ジャック・ザ・リッパー。


「強い者の肉を喰らうや?アホか、強い奴やったら倒せへんやろ。」


辛うじて立っているような姿の殺人狂ジャック・ザ・リッパー。
死を恐れない。生きる屍、化け物のような姿。
その生きる屍の腹部には、巴御前が見事に射抜いた矢が不気味に刺さっている。

「クソが……てめぇみたいな……雑魚に……この俺…が…。」
「動くなや。あまり苦しませたか、無いからな。」

頭部に向ける弓と矢。そして、フラフラと立っているだけのジャック・ザ・リッパー。
ナイフを捨て、動けば殺すと言わんばかりにただ睨むだけ。
しばらくすると、ジャック・ザ・リッパーは俯く。
そして、巴御前は弓を引き、矢を射るために構えた。


その時だった。


「なーんちってなァ!!!!!!」


顔上げると、不適に笑うジャック・ザ・リッパーの顔。



「俺の能力は返り血!!!!血を浴びればァその分だけ強くなれんだよォ!!!!!」


固有能力─────『返り血』
他人であろうと、自分であろうと、生物の血であれば浴びれば浴びるほど攻撃力が上昇する。
腕がもげようと、腹が吹き飛ぼうと、失血するまで戦う。
しかも、攻撃を喰らえば喰らうほど強くなってしまう。


「雑魚には興味ねェ。お暇させてもらうぜ!!!!」
「雑魚やと。ふざけんなや。」


弓を構えて、近距離から腹部をもう一回射る。
矢は確かな弾道を描き、ジャック・ザ・リッパーの左脇腹に突き刺さる。
だが、彼の行動を静止するまでには至らない。
化け物のように、立ち上がり矢を抜くと、巴御前に睨みつけた。
そして、巴御前も物凄い剣幕で、ジャック・ザ・リッパーを無言のうちに威嚇する
両者はそれから動くことは無かった。

「おい、ここで何している!?」

二人の行動───いや、ジャック・ザ・リッパーを動かせたのは一つの声だった。
青い服を着た警備員が懐中電灯を片手に叫んだ。
運の悪い。
片手には警棒。そして無線。


「さっさと失せろ。肉片。」
「肉片?何を言っている。犯罪は犯罪だ、帰らないぞ。」


それが、警備員の最期の言葉だった。
真っ赤な血が、廃店舗の天井、床、壁を塗りつぶす。
警備員を顔面上半分を見事に切り落とされて、無残にも脳みその欠片が散乱している。

「今から肉片になるんだよ。肉片。」

素手で、頭蓋骨は切り裂けないはず。
刃物は持っていなかったはず。ナイフも転がっている。
彼の片手には、長い刃を持つ刃物。
警備員の頭を切り裂いたのは、その刃。


「‥‥どういうことや?」
「固有能力は、一人一つじゃねェのは、テメェの雑魚い頭でも知っているはずだぜ?」
「こりゃ、大変なことなったなぁ。」
「固有能力を使えよ、雑魚。それとも使えねェとか言うんじゃねェだろうな。」
「自分の持っとる、ソレ。よぉ、見たらどうや?」

血まみれの刃が床に落ちた。
いつの前にか巴御前はその刃物を射抜いていた。
だが、その矢で、刃物を貫通させたほうがおかしい。

「最強の矢や。」
「ひゃはハハハハハァァァァァ!!!!!そうじゃねェとな、女ァ!!!!」
「アンタの首。貰うで。」
「上等だァ。かかって来やがれ!!!!」




【2012 6/2 Saturday “gluttony”START】
【2012 6/2 Saturday “wrath” START】

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最終更新:2011年12月26日 14:48
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