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ヒーローズ・ラスト(後編)

◆ ◆


シャナの身体が陽炎のように揺らめいて、その矮躯からは想像も出来ないような速度の剣戟が迸る。
一瞬その気迫に気圧されるも、士郎はどうにかキュプリオトの剣でそれを受け止めた。
ぎりぎりと響く金属同士が擦れ合う音が、鍔競り合いの激しさを物語っている。
しかし、シャナは涼しい顔しているのに反して士郎の表情は苦悶に歪んでいた。

「ぐ―――ぅ、ぅう」
「どうしたの? その程度って言うんじゃないでしょうね!?」

戦況はどう見ても、衛宮士郎の劣勢。
だがこの実力差はあるべくして生じたものである――ヒトとフレイムヘイズの、越えられぬ壁だ。
元より戦闘向きに出来ている訳ではないヒトの肉体と、「紅世の徒」を討伐する役割を帯びて生まれたフレイムヘイズ、どちらが強いかなど比べるまでもないだろう。
士郎は魔術師である故、普通の人間よりも実力は高い。
しかし相手がサーヴァントとまでは至らずとも、人外の戦力を有するフレイムヘイズである以上、魔術師としても未熟者である士郎の勝率は決して高くはない。

(なん……て、力だ……こいつ、人間じゃない……!?)

強引に勝ち目の無い競り合いを解除し、体勢を立て直そうと士郎は後退する。
無論みすみすそれを見逃すシャナではない。
贄殿遮那と称された彼女の相棒たる刀を手に、超人的な速度で士郎の下へ接近していく。
銀色の煌めきが走り、キュプリオトの剣がそれを受け止めて軋む。
破壊されないのは、ひとえにその剣が不屈の武勇からもたらされた産物であるが故か。

「相手が人間じゃなくなった途端、これって訳?」
「嘗……めるな――――!!」

その右腕に閃光が生まれる。
即座に衛宮士郎の中で構成されていくイメージ。
思い描くのはあの赤い弓兵の使っていた陰陽の夫婦剣、その片割れ――干将。

「投影、完了(トレース・オン)!!」

佩刀に威力で勝るとはいえ拮抗している状態で、士郎は真横から投影した剣を叩き付ける。
如何にフレイムヘイズとはいえ、紛い物であろうと奇跡の具現化たる宝剣の加勢を受けて、それを受け止めきれる道理はない。
さすがのシャナもこれには驚いた様子で飛び退き、今度の激突は士郎に軍配が上がる。

「はぁぁぁぁああああああっ!!!」
「このっ、いい気になるんじゃないっ!」

シルエットも性質もまるで異なる二本の剣を、士郎はほぼ同時にシャナに叩き付けんと振りかぶる。
またも状況が再現され、贄殿遮那の銀に輝く刀身が金属音を迸らせて士郎の剣を止めた。
三度目の再現、そして士郎の手数は間違いなく増えているというのに――押し切れない。
少女一人の矮躯を押し切ることさえ出来ない自分の軟弱さに歯噛みし、より込める力を強くする。
が、馬鹿の一つ覚えのような戦闘局面の繰り返しにいつまでも甘んじているほどシャナは甘くない。
身体を翻してその爪先を、士郎の脇腹に叩き込み、彼の身体を勢いよく吹き飛ばす――。

「ぐっ……! 何て、パワーだよ……」
「フレイムヘイズ相手にここまでやれた時点で、お前は十分に頑張ったわ」

シャナは全身を壁に打ち付け、ダメージで行動不能になっている士郎へ近付いていく。
たかが人間といえど、衛宮士郎の力が到底まともな人間のそれでないことはもはや明白だった。
終止余裕綽々の態度を崩さずにいたシャナだが、内心では士郎の猛攻に冷や汗すらかいていたのだ。
人間の癖に、ヒトの手には余るような逸品を複製して使ってくる、その魔術なる力に。
もしも士郎が「紅世の王」クラスの身体能力を有していたら、無傷では済まなかったろう。

(……悠二に、怒られるかな)

ふと脳裏をよぎるのは、彼女が想いを寄せる一人の少年のこと。
ミステスという奇異なる運命に狂わされ、しかしシャナを支えてくれるかけがえのない存在。
彼はきっと、シャナが殺人を犯すことをどんな形であろうと望みはしないだろう。
衛宮士郎は紅世の徒のような化け物ではなく、一介の人間だ。
それを殺すことは、フレイムヘイズの本領から逸脱した、人殺しの所業である。
しかし、士郎をここで殺しておかなければいずれ大きな脅威となる。そんな気がしてならない。

――それに。
必要な殺人もあると、あの男――◆ymCx/l3enUは言っていたではないか。


(………殺す)


もはや戦意を失った脱け殻と化している少年の首に、刃の切先が届く位置までシャナは近付いていた。
先端が掠めただけでも、首を狙えばまずどうにか殺せるだろう。
あえてその距離を選んだのは、殺人行為に対する免罪符が欲しかったからかもしれない。
坂井悠二に嫌われたくない、無意識にそんな思いが彼女に逃げの一手を選ばせていた。

――――しかしその時、衛宮士郎は唐突に立ち上がり、シャナから距離を取った。

「っ、逃げる気か!」

一方の士郎の耳に、シャナの怒鳴り声など届いてはいない。
榎本とymとかいう男はもう逃げてしまったらしい、薄情なものだ、と少し思う。
まるで時間が静止したように、今の士郎は落ち着いていた。
このまま屈服すればこれ以上苦しむことはない。その代わりに、生命を失う。
それは出来ない。
諦められない。
愛する後輩の笑顔が諦めかけた士郎の瞼の裏に浮かんだその時、瞬間的に彼は覚醒した。

戦力の差は歴然。
サーヴァントクラスの運動能力を有している為、正攻法では勝ち目は薄い。
刀の性質は先のどさくさに紛れて読み取った。性質は不浄。
如何なる不可思議もあの一刀には無意味。セイバーの「全て遠き理想郷」にも似た性質を保有。
本来ならばもっと戦い方があるだろうが、そこは彼女の苦手分野と断定。
結論、衛宮士郎の死亡確率は極めて高い。だが、勝率は零ではない。
深手を厭わない立ち回りを行えば或いは可能性があるかもしれない。が、これを却下する。
後の行動に支障が出るまでの傷を負っての勝利は敗北に等しい。
ここで手に入れるべきは鮮烈なる勝利。


"――――あるだろ"


衛宮士郎はヒトより強い。
弓の腕前は卓越しているし、魔術の心得も人並み以上にはある。
しかしそれでも、フレイムヘイズに届かない。


"――――おまえには、あるだろ、衛宮士郎"


ある。
フレイムヘイズどころかサーヴァントにさえ匹敵し得る力を、士郎は既に有している。
その手に巻かれた赤き聖骸布。
その下に隠されているモノを解き放てば、衛宮士郎はたちまち人外の力を得ることだろう。
理想に破れて世界に英霊として召し上げられたある男の、力を得ることだろう。


"――――おまえは、迷うのか?"


だが、一度でも解き放てば衛宮士郎の生命のカウントダウンが始まる。
バトルロワイアル終了まで保つかも分からない、常に終わりに付き纏われて戦うことになる。
身体の内側から突き刺されるような激痛が続いて、間違いなく長く生きることは出来ないだろう。
そうまでして戦う理由がどこにある。
結局のところ、命と比重して尚重いモノなんてないんだ。だから、保身に走るのが一番じゃないのか。
今ここで、頭を垂れて詫びれば許してくれるかもしれない―――だから。
衛宮士郎は、自身の迷いを拭い去るかの勢いで、聖骸布の封印を解いた。


瞬間、体内を駆け巡る激痛。激痛というにはあまりにも生易しい地獄が士郎の中に開かれる。
討つべき外敵はすぐそばまで迫っているのに、身体が動くことを拒否するまでの激痛が襲う。
駄目だ。このままでは聖骸布を解いた甲斐なく、首を斬られてお終いだ。
灼熱の眼光が、炎のような赤色が―――。
思い描くは遠いイメージ。追うのはあの赤い背中。
衛宮士郎の全てを懸けて、たった一人の大切な人のために。


「なっ!?」
「――――同調、開始(トレース・オン)」


士郎の持つ陰陽の投影剣の強度が増したその瞬間を、シャナは確かに感じ取った。
更に言うならば、キュプリオトの剣も先の激突よりも鋭利なモノを発しているような気さえする。
だが何より変化したのは、目の前の赤髪の少年が纏っていた雰囲気だ。
ついさっきまではまだ人間らしさがあった筈なのに、今の彼を人間と見ることが出来ない。

「……、厄介な!」

殺気を迸らせ、先程までとは比べ物にならない速度で衛宮士郎の生命を奪わんと剣を振るう。
フレイムヘイズの全力を以てこの少年を殺せと、シャナの中の何かが命令していた。
いや、普段ならば彼女に指示を与えてくれただろう存在が、今はいない。
シャナの相棒ともいえる存在、「天壌の劫火」アラストールとのコンタクトが、如何な手段を用いたのかは不明だがどうやら断絶されているのだ。
と、いうより――コキュートス自体が、彼女の手元にない。
これではフレイムヘイズの力をフルに発揮できないし、何より目の前の少年は、あの聖骸布を外した瞬間から、力を最大動員せねば超えられないレベルの壁に見えた。

「はぁッ!!」

斬り上げ。それを長い刀身を活かして軽々と防ぐ。
全くサイズの異なる剣を使っている以上、その間合いを読み取って戦うことはなかなかに困難である。
とりあえず危険視すべきは陰陽剣。
その判断は正しい。キュプリオトの剣よりも上のランクの宝具であるし、とある英霊の腕を解放したことによって士郎には、その宝具を使いこなすだけの「経験」すら備わっている。
腕を解放した後の投影魔術は自殺行為にも等しい。
時限爆弾のカウントを早め、破滅の刻限をより近付けてしまう。少なくともこんな序盤戦で、軽率に投影を行うわけにはいかない――そこで、彼は戦いながら一つの決断をした。

(くっ……! いつもならこんなヤツ、苦でもないのに!)

力をセーブされているシャナは、この状況に少なくない焦燥を感じる。
自分の弱さに、コキュートスへの依存に、すべてに腹が立つ。
感情が荒ぶっていくにつれてその太刀筋は粗くなり、士郎の剣戟が疲労となって蓄積していく。
その時――シャナは見た。

「――――"壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)"」

脅威として捉えていた干将ではなく、キュプリオトの剣を、彼は勢いよく、投げつけたのだ。
その完全に予想外の攻撃に、シャナはただ防御するしかなく、結果として後退を余儀なくされる。
しかし、それで終わりではなかった。
キュプリオトの剣の刀身が光輝いたかと思った次の瞬間、焼け付くまでの閃光が生じ、それを最後にシャナの意識は鈍痛と共に闇へと消える。
爆風の影響で崩れたレストランの壁が、少女の矮躯を呑み込んでいった。

立っているのは、肩で息をしている衛宮士郎一人だ。
宝具を一つの爆弾として用いる技術、壊れた幻想。
本来ならば彼の十八番、投影魔術によって複製した武器を使うのがセオリーではあるのだが、無闇やたらに投影し、強化した武器を投げ捨てることは命取りとなる。
故にここは、ランクの低い宝具を射出することで妥協した。
結果としてシャナを撃破することには成功したし、その証拠に目の前には、破壊の爪痕がくっきりと残されている。何にせよ、勝利したことには間違いないだろう。
それを見て士郎は悲痛な面持ちになるも、覚悟を決めるために口を開く。

「………投影、開始」

不意にそう呟くと、一際耐え難い激痛が襲う。
呻き声をあげつつも、自らの空いた手の中に生まれたその武器を見て会心の笑みを溢した。
陰陽剣のもう片方――莫耶。
干将が真の力を発揮するためには、片割れである莫耶の存在が必要不可欠である。
そして命と引き換えに力を得た士郎は、今この二対の剣の使用経験を所持しているのだ。

「………待ってろよ、桜」

大切な後輩の為に、理想を投げ捨てた男。
彼の辿る運命は果たして、間桐桜を救うものか。
それとも、かの赤き弓兵のように理想に破れ、現実に沈むのか。
堕ちた正義の味方の末路は、まだ誰にも分からない。


【一日目/深夜/B-3・レストラン】

【衛宮士郎@Fate/stay night】
[状態]疲労(中)、聖骸布解放
[装備]干将・莫耶@Fate/stay night
[支給品]基本支給品一式、ランダム支給品0~2
[思考・行動]
基本:桜の為に優勝し、聖杯を勝ち獲る
1:サーヴァント達には最大限の注意を払う
※桜ルート、アーチャーの腕を移植した後からの参加です
※聖骸布を解いたことにより、命のカウントダウンが始まりました
※榎本夏美から『EDLロワ・一周目』の話を聞きました

※レストラン内部が爆風の影響で大分破壊されました



◆ ◆


◆ymCx/l3enUは書き手である。
バトルロワイアルの物語を紡いできただけあって、その知識と発想の広さは常人の比ではない。
参加者の中には彼の知る人物たち――同じ書き手は勿論のこと、本来ならば存在していること自体があまりにも異常な「オリジナルキャラクター」達までが存在している。
これは言うまでもなく大きなアドバンテージだ。
全参加者の半数近くの情報を、ymは所持しているのだから。
こいつはどうやったらどんな風になるだとか、こいつは危険だから近付かないだとか、対処の仕方がある程度分かるのは非常に好都合だった。

だが、実のところそんなことはどうでもいい。
彼は割り切っているのだ。現実の存在と創作の存在を割り切っているから、目指すところは既に一つ。
その判断は「創造主」として、あまりに身勝手すぎるものだったかもしれない。
守るべきは「現実」の存在である書き手のみ。
他の人間達は書き手が生き残れるように利用して、時には捨て石にでもしてやればいい――と、ymは考えたのだ。

(……おいおい。まさかあの娘、負けたのか?)

シャナを士郎にけしかけて、榎本夏美を連れて逃げたのは彼の作戦の一つだった。
ymがバトルロワイアル開始後初めて出会った相手こそ、炎髪灼眼の討ち手、シャナである。
情報交換をしているように装いつつ、彼は書き手としての経験を生かして相手の人物像を分析した。
結論から言うと、シャナという少女は少なからず危険な人物だ、という結論に到った。

知り合いの情報は書き手のものをymは少し開示した程度だが、シャナから得た情報はかなり有益な、それでいてこのゲームがやはり一筋縄ではいかないことを意味していた。
フレイムヘイズ――シャナ、ヴィルヘルミナ・カルメル、マージョリー・ドー。
紅世の徒――フリアグネ。
まるでアニメや漫画の設定の話のようだったが、そういうことが起こりうるのがこのゲームである。
ymは事実と割り切って順応し、両サイド共に危険人物の枠組みに入れた。
が、唯一彼女が語るのを渋った人物。
"ミステス"とかいう少年、坂井悠二。
彼のことを語る彼女の姿は、紛うことなき恋する乙女のそれだった。
しかも、彼女の依存はかなり重度のもので、坂井悠二を失えばどうなるかは想像に難くない。
所謂、奉仕マーダー化が危惧される。

フレイムヘイズなんて特殊なもの、他の書き手に危害が加わる可能性だって決して低くないのだ。
今のところは大丈夫でも、後々のことを考えれば――ここで処分しておくべきか。
そう考えた彼はシャナとレストランを訪れた。
そこで偶然にも士郎と榎本の会話を盗み聞けたことは、紛れもない幸運だったと言えよう。
シャナと士郎を同士討ちさせるか、どちらかが死んでどちらかが消耗する。
そうして戦力を削ぎ、いざという時の危険を減らそう――そういう企みだった。榎本夏美は危険人物でないと「書き手」の彼には分かりきっていたことだし、弾避けくらいにはなるかもしれない。

しかし、理想的な展開としては士郎の死亡だった。
危険因子のシャナと危険人物の士郎、どちらが目下厄介な存在であるかは明らかである。
シャナが負けるとは――コキュートスとかいう物を没収されて力を発揮できないらしい彼女に、あれだけの爆発を起こす術などないのだから、間違いなく彼女は魔術師に屈したのだろう。

(チッ……そう上手くはいかねえな)

やはり創作と現実は違う。
さっきだって、後数秒シャナの救援が遅れていたら自分は命を落としていたかもしれないのだ。
何とも言えぬ苛立ちをなるだけ包み隠して、ymは背中に背負った少女に話しかけた。

「榎本さん、もうそろそろ降りるか?」
「ええ、ありがとう、ymさん」
「良いってことさ。俺だって手を引いて逃げるよりは逃げやすかったしな」

衛宮士郎とシャナの激突が苛烈を極めることはもはや間違いなかったので、二人は逃げた。
榎本はシャナを置いていくことに若干の引け目を感じたようだが、危険因子に構ってはいられない。
榎本夏美も本来ならばどうでもいい、あの場で優先すべきは自らの保身だった。

(Vx氏、xR氏、6L氏にHa氏、9n氏……誰も死なせない。何を犠牲にしても俺達は帰るんだ)

言っていることは正しいのに、どこか致命的な歪みを孕んで、ymは少女と共に往く。
今の彼に――殺人行為への忌避は、無い。


【◆ymCx/l3enU@非リレー書き手】
[状態]健康
[所持品]M1ガーランド@現実
[支給品]基本支給品一式、ランダム支給品0~2
[思考・行動]
基本:書き手全員を生還させる。その為の手段は厭わない。
1:榎本夏美としばらくは同行。使い捨てることも視野に。
2:危険人物は殺していく。


◇ ◇


さて。予期せぬ幸運に恵まれたおかげで衛宮から逃げられたあたしなわけなんだけど。
―――いや、でもどうだろうね。
多分、あたしが引いたのは幸運のくじじゃなくて、不運のくじだったんだと思う。
◆ymCx/l3enUさん。
あの人とあの女の子が助けてくれなかったらあたしは今頃、冗談抜きであの剣の錆になってた。そこに関して言えば、確かにあたしは幸運なのかもしれない。
……だけど、ymさんがもし危険な人間だったとしたら、どうだろう。

恩知らずな話だとは思うし、もしもこれが勘違いだったらymさんにすごく申し訳ない。
でも、普通あの場で女の子一人を置いて逃げようという選択になるか、と言われたら?
その前に、銃一丁で衛宮と渡り合っていながら、あの状況に臆して逃げた、ってのは苦しいでしょ。
これはあたしの身勝手な妄想。
推理ごっこと思ってくれてもいいけど――結論。あたしはymさんを疑っている。
何か目論見があって、衛宮とあの娘を相討ちでもさせようとしていたんじゃいかと、思ってる。
だからってどうするかと言われたら、残念だけど答えなんてあたしは持ってない。
もしあたしが逃げようとしても、背中から撃たれておしまい。ちゃんちゃん、なんて笑い事じゃない。

(どうしましょう……?)

なるべく不信感を悟られないように、あたしは考える。
そんな器用な真似がうまく出来ているかも自分じゃ分からないんだけど、そこは祈るしかないでしょ。

不意打ちがうまく決まりでもすれば逃げられるかもしれない。……決まりでもすればね。
落とし物したから先行ってて欲しいと言ったら……馬鹿、そんなのバレバレじゃない。
愛の告白をして怯んだ隙に!……末期ね。さよなら、あたしの理性。
って、マジでどうすんのよこれ……?


【榎本夏美@非リレーのオリキャラ】
[状態]疲労(小)、衣服に埃がついている
[装備]なし
[支給品]基本支給品一式、ランダム支給品0~3
[思考・行動]
基本:理想の結末を目指す
1:ymさんからどうにかして逃げたい
2:柳沼、楓之と合流する。楔音はとりあえず保留。
※一週目終了後からの参加です
※衛宮士郎から『聖杯戦争』についての大まかな概要を聞きました


◆ ◇


赤髪の剣士が去り、書き手と時間跳躍者も去って、小綺麗だった店内は見る影もなくなっていた。
言ってしまえば宝具の炸裂弾、奇跡の具現が無下に使い捨てられた爪痕はかなり大きい。
壁が崩れ、テーブルが吹き飛んで、誰が見てもここで何かがあったことは明白だ。
自然崩壊にしては、被害が爆発的過ぎる。

「………う………」

――そんな惨状の中で、瓦礫の中から這い出てくる小さな少女の姿があった。
衛宮士郎の"壊れた幻想"で死亡したかと思われた少女――シャナは、ダメージを負いこそしたものの、致命傷には到らずに済んでいたのだ。
後はフレイムヘイズ特有の回復力の恩恵あって、身体の擦過傷は少しずつ治癒しつつある。
一時間も休憩すれば、また戦闘を行うことが出来るくらいには回復できることだろう。
が、不甲斐ないにも程がある、とシャナは自らを自嘲していた。

相手は「王」のような化け物じみた存在ではなく、言ってしまえば人間である。
赤い聖骸布を解いたその瞬間から強さが化け物じみたレベルで跳ね上がったとはいえ、決め手となったあの一撃を防げなかったのは完全に自身の弱さがもたらした失態だ。
もしもコキュートスが、アラストールの声があったなら、あれを起点に戦況を変えられたろうか。
もしも――悠二がいたなら。

「……ばっかみたい」

自分は確かに悠二のことが、一人の異性として好きだ。
しかし、それは依存しきっていいという免罪符には決してならない。
炎髪灼眼の討ち手として、このバトルロワイアルを破壊しなければならないのだから。
もう少し身体を休めないと、さすがに残留しているダメージの総量が多すぎる。
小一時間でいい。シャナは自らの頭を冷やすことと体力の回復、二つの理由で休息を開始した。


【シャナ@灼眼のシャナ】
[状態]疲労(中)、全身にダメージ(大)
[装備]贄殿遮那@灼眼のシャナ
[支給品]基本支給品一式、ランダム支給品0~2
[思考・行動]
基本:バトルロワイアルの破壊。
1:休息をとって、その後に悠二を捜す
2:コキュートスを探す。
3:剣使い(士郎)は次に出会ったら殺す



◆ ◆


              体は  剣で 出来ている
 「――――I am the bone of my sword.」

              血潮は鉄で          心は硝子
 「―――Steel is my body, and fire is my blood」

            幾たびの戦場を越えて不敗
 「―――I have created over a thousand blades.
           ただ一度の敗走もなく、
      Unaware of loss.
           ただ一度の勝利もなし
      Nor aware of gain」

                  担い手はここに独り。
 「―――With stood pain to create weapons.
                剣の丘で鉄を鍛つ
       waiting for one's arrival」

           ならば、    我が生涯に 意味は不要ず
 「――I have no regrets.This is the only path」

              この体は、         無限の剣で出来ていた
 「―――My whole life was “unlimited blade works”」



◆ ◆

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最終更新:2012年06月11日 11:14
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