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天覇絶槍の調

武田軍。群雄割拠の戦国時代でも名を馳せる武人、武田信玄の率いる強力な軍勢である。
奥州のならず者たちや尾張の魔王、果てには安芸の知将にも匹敵するだけの武力を彼らが持つ理由はただひとつ、稲妻とも称される最強の騎馬隊だ。
強さに決して驕らぬ信玄の心意気に惹かれて集う猛者たちの支えあってこそ、武田は強くいられる。
その中でも一際熱く燃えたぎり、武田軍最強の槍使いと称される一人の青年があった。

「許せぬ……! 許せぬぞ、シャルルとやら……! 拙者は絶対に、貴殿らを許さぬ!!」

彼の名は真田幸村。正しく言うならば真田源次郎幸村。
彼の熱き心を象徴するかのような赤い鉢巻きと、胸元で鈍く輝く六文銭が特徴的な青年だ。
しかしその本質は戦国の乱世にて、数多の武人と矛を交えてきた武田軍最強の武士(もののふ)である。
幸村は、血が滲むくらいに強く右拳を握り締めて、この事態を仕組んだ男たちに怒りを燃やしていた。
幸村は決して、知略が冴え渡るタイプの人間ではない。
仕える忍の佐助のような状況分析もできなければ、尊敬すべきお館様のような冷静な判断も下せない、まだまだ青臭さの残る青二才に過ぎない。
それを承知の上で、それでも真田幸村は自身の感情を抑え込むことができなかった。

「罪のない人々を無理に戦わせる暴挙に飽き足らず、武士である片倉殿にあのような仕打ちをッ!」

幸村は、見せしめとして殺された片倉小十郎という男がどんな人物であったかを覚えている。
尾張の魔王、信長を討伐する時の本能寺で、明智光秀に怒りに任せて我を失いかけた自分を激励し、我が身を挺して自分と独眼竜――伊達政宗を魔王の下へ向かわせてくれた。
彼がいなければ、幸村は魔王を討ち倒すどころか、あの本能寺に没していたかもしれない。
戦国の世を馳せてきた幸村だが、あれほど忠義に厚く、それでいて強き漢(おとこ)、そうはいない。
だからこそ、だろうか――その小十郎が、あんな風にして殺されたことが、許せなかった。

「見ていろ外道! 貴殿の企み、必ずやこの真田源次郎幸村が打ち砕いてくれようぞ!!」

刃向かえば殺されると分かっていたところで、それで自らを抑えられるほど幸村は温くない。
一瞬たりとも物怖じすることなく、シャルル・ジ・ブリタニアとモノクマへの宣戦布告を行った。
少し意気込みすぎたのか、彼はもうその額に汗を滲ませている。
それを右手で豪快に拭うと、幸村は衣服が汚れることも構わずに胡座をかいた。

「……しかし、我が槍が奪われるとは不覚。まずはこの鞄に入っているという武具を確認しておくべきでござろう。今日の拙者は何だか冴えている気がするでござる!」

真田幸村を象徴するといってもいい、二本の槍。
驕るわけではないが、槍を扱わせればそうそう右に出る者はいないだろうと幸村は自負していた。
それだけに、刀を扱うにはやや不安が残ってしまう。
西洋の鉄砲などに至っては、まともに的を射ることができるかさえも怪しい始末だ。
彼の尊敬するお館様が見たなら怒鳴った後に殴り飛ばすだろうほどの不甲斐なさに、幸村は猛省する。

「ぬおおおおおおおっっっ!!??」

鞄――デイパックのファスナーを勢いよく開け放つと、明らかに封入できる質量を超えた量の物品が、どさどさどさっ!と音を立てて溢れてきたのだ。
その不可思議な光景に、思わず幸村は目を丸くして驚く。

「な、なんと……南蛮の技術はここまで発展しておったのか……!」

デイパックのデザインを見る限り海外のものだと判断した幸村は、そう結論を下す。
まだまだ彼の時代では、南蛮の技術は未知に溢れたものであったのだ。
感心しながらも、出てきた物品をひとつひとつ、念入りに幸村は確認していく。
だが最初に、幸村はその少年の面影がまだ残っている表情を笑顔に破顔させた。

「これは……! 少々奇特な装飾ではござるが、立派な槍でござる!!」

それは、紅の光沢を放った異彩を放つ槍だった。
彼にとっては知る由もないことではあるが、それは彼にとって遠い異国の英雄が振るった魔槍である。
フィオナ騎士団随一の騎士、ディルムッド・オディナの誉れも高き武装。
―――"破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)"。
触れた物の魔力の流れを断ち切る宝具であり、真田幸村ほどの実力者であれば相応しい業物だ。
幸村は慣れた手つきでそれを振り回し、この槍を造った打ち手に感謝の念を込めて、目を瞑った。

「貴殿の打った槍、お借り申す」

感謝の言葉を簡潔に告げると幸村は破魔の紅薔薇を地面に突き刺し、残り2つの確認にあたる。
だが、残りの2つは武器ではなく、幸村にとっては見覚えのない代物だった。
言伝てに聞いたことのある、西洋の「時計」が大量に描かれた一枚の風呂敷。
そしてもう一つは――透けた窓がついており、しかし本来のそれとは些か違う形の箱。
どちらも武器には見えず、幸村にとっては単なる『外れ』の支給品でしかない。
だが、彼の思っているよりもこの2つが持っている意味は大きく、紛れもない『当たり』であった。

一つ目の奇妙なデザインをした風呂敷は、『タイム風呂敷』という。
これを被せた物の時間を操作できる、幸村の時代どころか現代でも実現できないような代物。
尤も、主催者がこんなチートアイテムを見逃すわけもなく、使用回数は三回までに制限されている。
これが果たしてどこまでの物に対してその効果を示すのかは分からない。
確かなことは、どちらにしろ真田幸村はこの『ひみつ道具』の使い道をまるで理解していないことだ。

二つ目の箱は俗に『電子レンジ』と呼ばれる、これまた戦国時代では考えられない保温装置である。
が、これに関して言えば大きく本来の電子レンジとは勝手が違う。
これは幸村と同い年のとある学生が仲間と共に開発した偶然の産物、神への冒涜にさえ値する道具。
その名を電話レンジ(仮)。が、こう形容するのが最も適切かもしれない。
――タイムリープマシンと。
使用者の意識のみを過去に飛ばし、事実上の時間遡行を可能とする発明品だ。
正しく進む未来でなら、開発者の青年が体感時間百年にも及ぶ時間遡行の末に、目的を成し遂げる。
だがこの未来はあるべきでない絶望の未来。
このタイムリープマシンが使えるかどうかは分からない。
しかしそれが分かる時はいずれすぐにやってくる。
カウントダウンはとっくに始まっていて、後はただ時の流れに身を任せるのみだ。
何故ならここはバトルロワイアル――――運命の賽子はもう、天高く放り投げられているのだから。


「待っていて下され、片倉殿――貴殿の仇、必ずやこの真田源次郎幸村が取って見せましょうぞ!!」


何も知らない若武士は、戦場を往く。
シャルル・ジ・ブリタニアの悪事を叩き潰す為に、しかし足元をまるで見ずに突っ走る。
彼は程なくして知ることになるだろう。
バトルロワイアルという遊戯が彼の想像を上回って悪質なもので、そしてこの場に集っている者共の中には『天覇絶槍』真田幸村の力量さえ超える怪物も存在することを。
彼がこれまでの二十年余りの月日を経てきた中で、未だ見たこともないような深い深い絶望を、この僅か四十八時間の間で見て、時は感じることになる。
その果てに若き戦士が辿り着く結末が如何なものであるのかは、まだ誰も知りはしない。


【一日目/深夜/C-5・森】


【真田幸村@戦国BASARA】
[状態]健康
[装備]破魔の紅薔薇@Fate/Zero
[所持品]基本支給品一式、タイム風呂敷(使用回数・残り三回)@ドラえもん、電話レンジ(仮)@Steins;Gate
[思考・行動]
0:シャルル・ジ・ブリタニアの企みを打ち砕き、片倉殿の仇を討つ。
1:弱き者の保護にあたり、弱者を虐げる者とは戦う。
※アニメ一期終了後からの参加です。
※名簿を確認していません。
※支給品説明を読んでいないので、タイム風呂敷、電話レンジ(仮)共に使い方を知りません。

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最終更新:2012年08月17日 09:03
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