気付けば、皆その場にいた。
その場に集うは超学生級の子ども達。
常人を超えた才能を有する、まさに日本の未来を担うにふさわしい子ども達。
その子ども達は、気付いた時にはそこにいた。
そこは始まりの場。
これより開催される【絶望】の宴の、始まりの場。
「うぷぷ~、みんな目が覚めたかなあ?」
それは馬鹿みたいに明るい声であった。
集まる人々を尻目に唐突に現れた存在。
身体の右半分が白色で左半分が黒色の、大きな熊のぬいぐるみ。
そのぬいぐるみが、動いていた。
それがさも当然のように動き、喋っている。
まず最初に人々は言葉を失い、身体を固める。
次いでざわざわとした小声が波のように広がっていく。
ぬいぐるみが喋って、動いている。
常識離れの光景に、超学生級の集団は驚きの感情と共に騒ぎ始めていた。
「おはようございます。ぼくモノクマです。これから始まるゲームのゲームマスターだよ」
モノクマと名乗ったそれが放ったゲームという言葉。
その言葉に、参加者の内の一部が表情を変える。
この異常事態にあって尚、冷静さを貫く者は既に事態の把握に努めていた。
「さて突然だけど、ここでモノクマから重大発表~!」
モノクマに向けられる視線は多様なものであった。
驚愕、恐怖、怒り、羨望……数多の感情をはらんだ視線を受けて、その人形は稼働を続ける。
「これからここに集まった【超学生級の生徒】の皆さんには、コロシアイをしてもらいま~す!」
そして、言い放った。
絶望の言葉を。
全ての始まりとなる言葉を。
告げた。
人々は、今度こそ言葉を失った。
「皆には今からとある島にいってもらいます。そこで最後の一人となるまでコロシアイをしてもらい、生き残った優秀な【超学生級】の生徒だけが元の世界に戻れるのです」
気味が悪いほどの静寂の中、一人楽しげに口を動かす人形。
その明るい口調と話の中身とのギャップに、人々は寒気すら感じていた。
コロシアイ。
言葉の意味する事は分れど、あまりに唐突で非現実的な発現だ。
受け入れろという方が遥かに無理のある話であった。
「各々の【超学生級】の才能を使うも良し、配布されるアイテムを使用するも良し、どんな卑怯で残酷な手を使うのも良し……とにかく他の参加者をぶっ殺し尽くして、生き残って下さ~い。
……まあ、細かいルールはこれから配布するしおりの中に記載されてるから、各自確認しておくように。知らない間にルール違反をしていて罰ゲーム―――なんて事になっても知らないからね。
そ・れ・と! 皆さんが円滑にコロシアイができるように、参加者名簿を作成させていただきました! 名簿には皆さんの名前と顔写真、それと【超学生級の才能】が書かれているからね~!
あうう、僕って親切なクマだなあ……」
だが、事態についていけない人々を置き去りにして、モノクマは語りを続ける。
呆然自失にある【超学生級】の面々の、その様子すら楽しんでいるかのようであった。
「【超学生級】の皆の手で行われるコロシアイ……うぷぷ、わっくわくのどっきどきだね~♪」
誰も、何も分からない中で、そのゲームは始まろうとしていた。
全てが理解不能の中で、そのゲームは始まろうとしていた。
指針はない。道しるべはない。
ただ混乱の中で開始される、コロシアイ。
誰も声をあげない。
ただ沈黙の中で場は流れ、全てが始まる。
「では、皆コロシアイの世界に、レッツゴー!!」
絶望のコロシアイが、始まる―――。
最終更新:2012年09月01日 22:53