F-03神社にて、びくびくと怯えながら物陰に隠れている少女が一人。
緑を基調とした華やかな衣装と、長髪が美しい少女。彼女の支給品はショットガン。
おそらく全支給品の中でも最強クラスの支給品なのだろうが、それを支給された参加者が
使いこなせないのであれば唯の宝の持ち腐れにすぎない。
少女、翠星石はショットガンを抱え込んで涙目になっている。
友達のやる美が吹き飛んだ光景が何度も何度も頭の中でフラッシュバックしている。
やる美をああも軽々しく殺した事を思い出すと、悲しい気持ちと共に悔しさと怒りが沸々と湧いてくる。
「くぅぅ……!あのド腐れ女、今に見ているですよ……」
ケツホルデス……あの女の事を考えると胸がムカムカしてくる。
まったく、本当にとんでもねー、どうしようもない女です。
なんとかして、やる美の仇を取ってやりたいところです……けど
翠星石は心細げに、ショットガンをさらに堅く抱きしめた。
とはいえ、根は臆病な彼女の事。殺し合いという状況は恐ろしい。
やる美の仇以前に、自分が生きていられるのかどうか、やはり、どうしてもそちらの事に気が向いてしまう。
やる美の仇を討ちたいが、自分一人で出来るのだろうか。
ああ、こんな時にあの白饅頭がいれば……多少は役に立ってくれるのに……
と、翠星石が思ったその時である。彼女は心から待ち望んでいた光景を目の当たりにした。
____
/ \ て
/ ─ ─\ そ
/ (●) (●) \ おっ?
| (__人__) |
\ ` ⌒´ ,/ そこにおわすは翠星石かお?
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| ::::| キュム
i \ ::::/ キュム
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↑心から待ち望んでいた光景
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V/.::/.:.:/ .:.:l:! .:.:::::::::.`ヽ _」 _
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./.:/ .::::l:|.:.:. .:.:.:.:::::::::〃.:/.:::ト、::::.:.ヽ .:.:.::::::::Vヽ やっ、やる夫!
/.:/ .:.:::::l:|.:.:. .:.:.::::::::://.:/.::::ハト、.:.:::::', .:.:.:::::::!.::.',
./.:/ .:.:.::::::i:|.:.:'"´ ̄`>' /.:/.:::/´ ̄`ヽ .:.:l .:.:.:::::!::::::',
l:::ハ .:.:.:::::::リ.:.:.:.:::::/ ノ.::/.:::/´ ¨` V:l .:.::::::j:::::::::
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ヽ! {i \.:.::::V///// i ///// /.:.::/ リ:::::::::::
{i _」 _ハー-- ` /;:イ リ.::::::::::::
{i 下 j} 1.:::ト、 r‐---っ ノノ_」 _ リ.:::::::::i::::
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「なんだ、やっぱり翠星石かお」
「可愛い可愛い翠星石に再会した第一声が「なんだ」とはずいぶんと人を舐めやがった白饅頭ですぅ」
翠星石が睨みを利かすとやる夫はたじろぐ。
「す、すまんお。そんなに深い意味はないから気にしないで欲しいお」
「まあ、翠星石は寛大ですから、特別に許してやるですぅ」
言葉とは裏腹に、翠星石は先程までとは違い安心しきった表情で物陰から飛び出して、
やる夫の元へと駆け寄った。翠星石が持っているショットガンに、やる夫はギョッとする。
「やる夫……それにしても大変な事になったですぅ……」
やる夫は伏し目がちになり、言われんでも分かってるお、と囁くように言った。
「やる美の事はそんなに気に病む必要はねーですよ。やる夫は何にも悪くないですぅ。
悪いのは全部ぜーんぶあのふざけた名前のケツホルデスです!」
「…………」
やる夫が俯きがちなのを見て、翠星石はさらに言葉を紡いだ。
こんな風に傷ついているやる夫なんて見たくない。翠星石が好きなやる夫は、
いつもの呆れるほどウザくて、そして呆れるほど行動力に満ちたやる夫だ。
早く元気を取り戻して、いつものようにやる夫と喧嘩がしたかった。
「翠星石だってやる美が死んで悲しいですぅ。でも、悲しいからこそ、
あの腐れケツホルデスをぶん殴ってやりたいって気持ちも強いですぅ。
翠星石はやる美の仇を絶対に討ってやるつもりですぅ。翠星石がこう思ってるからって、
無理にやる夫にまでこの気持ちを押しつけようとは思わないですけど、それでもやっぱり、
やる美の事をいつまでも引きずって腐るよりかは、別の事を考えて鬱憤を晴らした方が、
きっと気持ちがいいですよ?」
心配そうにやる夫の顔を覗きこんでくる翠星石の目を、やる夫は視線を上げて見つめ返した。
「あんまりやる夫を嘗めるんじゃねーお。翠星石に言われるまでもなく、
やる夫はすでにやる美について、自分の中で決着をつけているつもりだお」
「…………本当にそうならそれでいいですぅ」
だが、まだどうも安心できない。翠星石には、どうしてもやる夫がまだやる美の死を引きずっているように見える。
それはやはり、やる夫から普段のウザさとパワフルさが全く感じられないからだ。
いつものやる夫が相手なら、翠星石はついちょっかいを出したくなってくるのだが、
今のやる夫が相手だとどうしてもそんな気になれない。
やっぱり、双子の妹の死というのは想像以上に堪えるものなのだろう。
翠星石だって、双子の蒼星石がもし死んだら、もしこのゲームに参加していたら
と考えると、我が身が引き裂かれるような思いだ。
「やる夫、無理だけはしないで欲しいですぅ。翠星石は、どんな時でもやる夫の味方ですよ?
辛い時はいつでも、弱音や愚痴を吐いても構わないですぅ……」
「…………翠星石にそんなに優しい言葉をかけられるとは、思いもしなかったお」
翠星石は照れ臭そうに笑いながら
「まあ、今だけですよ!翠星石の優しさは今夜限りのタイムサービスですぅ!
精々有難がって堪能しておくといいですよ!」
「……感謝するお」
ふと、やる夫は翠星石が持つショットガンに目をとめた。
「どうしたですか?」
「翠星石は、ゲームに乗ろうとは思わなかったのかお? そんなに強そうな支給品があるのに」
「いくらなんでも翠星石を侮辱しすぎですよ。翠星石のような清い心を持つ乙女が、
人殺しなんてするわけがねーです。そんな事したら、ケツホルデスと同類ですぅ」
「でも、結局は一人しか生きられないお。それどころか、人を殺さないままだと24時間後確実に死んでしまうお……
翠星石は、乗るかどうか迷う事すらしなかったのかお?」
翠星石はやる夫の真剣な面持ちに気付き、やる夫に対して、真剣に返答する。
「迷う事すらしないですぅ。翠星石はケツホルデスが大っ嫌いですぅ。
あいつの言いなりになるくらいなら、死んだ方がマシですぅ。
やる美の仇を討ってやるですよ。24時間以内に、ゲームをぶっ壊して、やる美の仇をとってみせるですぅ。
やる夫は、乗るかどうか、迷っていたんですか?」
やる夫は目を伏せて、少しの間思案してから、口を開いた。
「いいや、やる夫も迷ってないお。すでに決心は固めてあるお」
「乗らずに、ケツホルデスと戦うつもりなんですか?」
「その通りだお。翠星石と同じ気持ちだお。やる美を殺したあいつだけは、絶対に……」
「それでこそ、やる夫ですぅ」
翠星石は満足気な笑みでやる夫を見た。これでこそ、やる夫だ。
ウザくて馬鹿でどうしようもないけど、彼は本当に素晴らしい正義感を持っている。
いざという時には、最高に頼りになる。
「さあ、やる夫!まずは仲間集めに出かけるですぅ!
翠星石は主催連中はまず確実にこの島に潜んでいると推測しているですぅ!
主催の本拠地に皆で一斉に奇襲をかければ、きっと首輪を爆破される前に倒す事も可能だと思うですぅ!」
翠星石は元気よく移動を開始する。やる夫もまた翠星石の後ろを付いていく形で歩き始める。
「ところで、翠星石はやる夫が乗っているか乗っていないか分からないってのに、
よくあんな風に軽々しく物陰から飛び出てこれたお。もしやる夫が殺し合いに乗っていたら、
お前、多分死んでるお……」
翠星石は後ろを振り返り、やる夫に向けて飛びきりの笑顔を見せた。
「やる夫が乗っているわけねーです!翠星石は、やる夫を信じているですよ!」
やる夫は翠星石が前を向き直った後、彼女に気づかれないように、溢れた涙をそっと拭った。
いつもいつも翠星石とは喧嘩ばかりしてきたが、実はやる夫自身も、彼女の事を誰よりも信頼していた。
やらない夫と同じく、翠星石はやる夫のかけがえのない親友だと胸を張って言える。
だからこそ、やる夫は辛かった。
____
.ィ:i / \
|::|l| / ノ \ \ (翠星石、やっぱりこいつは本当にいい奴だお……
ィ;|:;||| /( ○) ( ○) \
,イ⌒iイ:! | (__人__) u | だから、やっぱり辛い。でも、辛いけど、
ト,三l^l:;| \ ` ⌒´ /
゙l⌒ ´| /´/´`、ー‐ Y l| やる夫の決心を完璧に固めるためという点では、
| .|/ |_ハ_ \ / /|
| イ | ヽ ´ / | これ以上なく打ってつけな奴かもしれないお)
ト、 /| \ _ / |
____
/ \ (やる夫は、謝らねえお!これはやる夫自身が決めた事!
/ ノ \
/ ( ○) (○)'、 ,,_____,,,、 悪人だの鬼畜だの言われても、元々仕方がない事!
| u (__人__) y"_//___イニニニfi
\ _ ` ⌒´_,イ~ ̄マニフ,="´ ̄´ やる夫は、やる夫は悪でも構わんから、“あいつ”を……!)
/´ `゙ ̄ ̄´; " />´
〈 _...;::::──,"i ̄´イ
i ´ ̄ /、. ̄,/
| |  ̄
(────あいつだけは元の日常に返してみせる!!!)
「翠星石、ちょっとこっちを向いてみるお」
「むう、出発早々何なんですぅ……」
_.. ‐'''''''''''' ‐ 、
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/_,ノ ,, :::::::::::::::ヽ, 「死ね」
( о) ミ ヽ、,,,_ :::::::::::..i
i. ミミ( ○)::::::::::: .|
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ノ__,,/⌒ヽ\_/
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[ニニ〉
└―'
乾いた銃撃音が響き、翠星石は胸に穴をあけて地面に崩れ落ちた。
理由はさておき、やる夫がゲームに乗った事、大好きなやる夫が自分を撃った事、
全てに気付かないまま即死できたのは、翠星石にとって、ある意味で幸運だったのかもしれない。
やる夫は翠星石の手からショットガンを拾い上げ、彼女のデイパックの中身を調べる。
その後、なんとなく翠星石の頭を踏みつけてみた。もう心は痛まない。
という事は、やる夫の中の決意が、翠星石を殺した事でとうとう完全に固まったという事なのだろうか。
【翠星石@やる夫スレ常連 死亡】
【残り37人】
▼ ▼ ▼
やる夫は翠星石の死体から急いで離れた後、ポケットから支給品の携帯電話を取り出して、
どこかに電話をかけ始めた。まもなくして、電話の向こう側に女が出る。
『思ったよりあっさり殺せたわね。GJよ』
「御託はいいからさっさと次の獲物の情報をよこせお。ケツホルデス」
「焦るんじゃないわ。こっちだって殺して欲しい奴を選り好みするのに結構手間がかかるのよ?」
「お前の都合なんて知ったこっちゃねーお」
やる夫は携帯を片手に、鼻を穿りながら苛立たしそうに眉間に皺を寄せている。
『そうね。じゃあ次はF-02の役場に潜んでいる夜神月と如月千早にちょっかいを出してきてくれる?
あいつらをこのまま引き籠らせるわけにはいかないわ。なんとかしていぶりださないとね。ここから近いでしょ?』
「F-02に月と如月千早、分かったお」
『ふふ、それにしても、本当に本当にあっさり殺してしまったわねえ。もしかして、こういう事得意なの?』
ケツホルデスが楽しそうに言う。
「これから、上達していくつもりだお」
やる夫は電話を切り、携帯の電源を落とした。向こうから電話を掛けてこられて、
妙な物音を立ててしまっては溜まったものではないからだ。
【やる夫@やる夫スレ常連】
[状態]:健康
[装備]:デザートイーグル、ショットガン、携帯電話
[所持品]:基本支給品一式(パン残り4個)
[思考・行動]
基本:ゲームに乗る?
最終更新:2010年02月19日 22:03