「……なんだろう、これ」
参加者の一人、ラトゥーニは首を傾げていた。
その原因は自らの首に付けられた首輪でもなく、自らのデイバッグの中身についてでもなく、ましてや自分がフリフリのドレス姿でいる事でもない。
ラトゥーニの前には、一体のロボットらしき存在が倒れていた。
ロボットとはいっても、せいぜい3~4メートルくらいの大きさで、とても人が入れるようなサイズでは無いのだが。
全身は白を基調とし、所々には青と赤のトリコロールカラーが使われている。
そう、まるでガン…
「……えっと、ガン…?」
そこまで思い出して、急に頭の中にもやがかかったかの様になり、その先に続く言葉が思い出せない。
誰かに言われるか、実物を見れば思い出せるのだろうけど……
(たしか、リュウセイと一緒に見た…えっと……?)
そんな事を考えながら頭を捻らせていると、自分のすぐ傍で小さな物音がした。
ロボットの指が僅かに動いたのだ。
「わっ!?」
突然の事に驚き、少し距離を置くもロボットは未だ動き出す気配が無い。
いや、正しくは指は動かしているが、それ以外の部分が上手く動かせないでいるようなのだ。
(ど、どうしよう…)
思わず唸りながら、ラトゥーニは頭を抱えた。
首輪が付いてるからにはこのロボットも参加者の一人と言う扱いなのだろう。
そこまではいい。
問題はこのロボットが、このゲームに乗る気か、否か、という所の一点に尽きる。
乗る気だったとしたら、何とか今の内に破壊しなければいけないし、でももし乗っていないなら…
そんな考えが堂々巡りをしていたが、ここで一つの案が浮かぶ。
直接聞いてみたらどうだろうか、と。
何とも思慮の足りない判断だと思うが、他に方法も無いし、自分だっていつまでもこんな所にいる訳には行かないのだ。
ゼンガーや、それと警戒も必要だがおそらくはアクセルも、このゲームには乗っていないだろう。
彼らと早期に合流して、このゲームに巻き込まれた他の人達と一緒にここから脱出しなくてはいけないのだから。
それにさっきからの様子だと、どうやら動くのも困難のようだ、そこまで危険という訳でも無いだろう。
そう思いながら再びロボット(?)に視線を移し、この会場にいない仲間達に脱出を誓い、
「……あ、あの、私の言葉…分かる?」
そう声を掛けながら、もがいている巨人へと手を伸ばして、
伸ばしていた右手が、腕ごと真後ろに吹き飛んだ。
「……え…あ…?」
あまりにも唐突に起こった事態に、痛みが追いついてこない。
自分の身に何が起きたのか、どうして自分の右腕が無くなっているのか、それすらも分からない。
ただただ、その視線は鮮血をだらしなく垂らし続けている自らの右腕が『あった』場所に注がれており、右腕を動かそうとしても何の感覚も無く、ようやく自らの腕が吹き飛ばされた、という事実を理解した。
「ア、アアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァアアアアアァァァァァァァァァァァアア!!」
次いで襲ってきた想像を絶する痛みが身体を駆け巡り、自然と口からは絶叫が漏れる。
だが、その直後にはもう絶叫は止まっていた。
―――おいおい、ラトゥーニ、なんだぁそのゴスロリファッションは―――
―――いつでも帰ってきていいんだよ、だって、ここは私達の家なんだからね―――
自分の親になってくれた二人の男女がいた。
―――ラトゥーニ、私達、友達でしょう?―――
初めての、友達になってくれた少女がいた。
―――私は、マイ・コバヤシ―――
私と一緒に、彼を好きになった子がいた。
―――よっしゃー、食って食って食いまくるぜー!―――
―――こらバカ、お金を払うのはジャーダさんなのよ!?―――
兄と姉は、いつも私の事を心配してくれていた。
―――私の、本当の敵は!―――
私を、本当に愛してくれて、私達より先に行ってしまった人がいた。
―――おお、スゲーなこれ、SRX型のおにぎりか!ありがとよ、ラト―――
彼の笑顔を見ると、私の心は幸せで一杯になった。
そんな人達と、もう会えなくなる。
もう、話す事も、笑いあう事も、喧嘩する事も、好きだって告白する事も―――もう、出来なくなる。
ラトゥーニは、それが何よりも恐ろしかった。
腕が無い事よりも、死ぬほど痛い目に会う事よりも、ずっとずっと、恐ろしかった。
その時、足同士が縺れ、遂にその場に倒れこんでしまう。
そのまま後ろの巨人を見ると、もう後は発射するだけだと言わんばかりに、光が両肩に凝縮されていた。
「い、やだ…」
それでも、ラトゥーニは諦めない。
地面を這いながら、それでも後方の巨人から一歩でも遠ざかり、生き延びるために地面を這いずる。
だが、もう駄目だった。
右腕は既に無く、左腕のみで動こうとしても、思うように動けない、血を流しすぎたのだ。
それでもただひたすらに地面を這って逃げようとするその姿は、まるで三流映画の小悪党の様だった。
だが、それが何だと言うのか。
彼女はただ生きたくて、もう一度みんなと笑い合いたくて、ただ、ただ、みんなと一緒にいたかっただけなのだ。
でも、もうそれは叶わない。
遠方から巨人の奇声が響き、それと同時に光が彼女に迫ってくる。
でも、もうその光を避けるだけの力は少女には、無い。
それでも彼女は、まだ地面を這って。
死にたくなくて。
ただ、死にたくなくて。
「リュウ…セ…」
彼女の呟きをかき消すように、光が彼女を飲み込まんと迫る。
奇跡が起きて、少女がこれを避けれる事も無く。
誰かが横から現れて、少女を救ってくれるわけでもなく。
ただ、光が少女を飲み込んでゆく。
そこには一片の救いも無く、ただ絶望と理不尽と暴力しかない。
それが、バトル・ロワイアルなのだから。
彼女はそのルールを真に理解できていなかっただけ。
それ以外には何も無く
結局、最後まで少女に少女に救いは訪れなかった。
◇ ◇ ◇
『……妙だ、力が落ちている…?』
大地を抉り、コンクリートの床を粉砕し、少女の身体を消し飛ばした後を見た巨人は、しかし愉悦に浸るのでもなく、ただ訝しげに自らの不調を確認していた。
『それにこの虚脱感…力を使用した後の疲労が激しい、復活した直後の影響か?』
実際には首輪による制限が原因なのだが、その事にこの巨人は気付いていなかった。
『…まぁいい、しばらくすれば快復するだろう』
そう呟き、巨人は周囲を見回した。
もはやそこには何も無い。
ただ、この殺戮を繰り広げた巨人と―――巨人の一撃の範囲外に落ちていた、少女の右腕があるだけだ。
巨人はそれには見向きもせずに、宙に浮かび、移動を開始した。
『ム…あまり高くは飛べん…か。早く元の力を取り戻さなければな、そして―――』
そこまで語り、空中で静止した巨人は、背を丸めくっくっと笑い声を漏らした。
『そして…今度こそは貴様を殺し、人間共を根絶やしにしてやろうじゃないか…なぁ、フレデリック?』
かつて、人類の作り出した最強にして最悪の存在があった。
彼は作られた後、人類に対して自らとその同胞達の存在意義を提唱し、人間へと戦いを挑み、最後は自らに同調しなかった同胞により討たれた。
その存在の振るった力と脅威はあまりに大きく、その存在亡き後も世界に大きな爪痕を残した。
彼らは、そんなギアの事をまるで―――少なくとも、彼ら人類にとっては真逆の意である名を付け、恐れた。
その名は、『正義』
◇ ◇ ◇
ジャスティスが去った後、そこに残されたものはなく、ただ破壊の爪痕が全てを荒らした形跡しか残されていなかった。
そして、その場にいた筈の少女は文字通り消滅し、彼女の生きていた証は、その場に残された一本の腕しかない。
そして、残された右手の中に、一つの道具が握られていた事を知るものも、今は無く。
【F-4南東/街入り口、道路/一日目/深夜】
【ジャスティス@GUILTY GEAR】
[状態]: やや疲労
[服装]:
[装備]: 無し
[道具]: 基本支給品一式、不明支給品×?
[思考]
基本:力を取り戻し、人類を抹殺する
0: どこかに移動、殺戮を繰り返す
1: フレデリック(ソル)がいたら必ず殺す
2: 自身の力に違和感
[備考]
※ソルに破壊された後からの参戦です
※首輪に気付いていません、そもそもロワの事を理解していません
※ラトゥーニの右手に何かが握られています。
※ラトゥーニのデイバッグは消滅しました。
※F-4南東の道路は、ジャスティスのインペリアルレイで破壊されました、歩いて通る分には問題ありません。
【ラトゥーニ・スゥボータ@スーパーロボット大戦オリジナル 死亡】
【残り70人】
最終更新:2010年04月19日 12:47