5巻「スイッチ・オフ」
第36話~44話,番外編1・2収録
一部編集済み。斜体は投稿者さんによる註。
第36話 過ちのエンジェル
ビバゲー編が終わってまたしばらく日常の1話物を描こうと考えて、気分的にはそろそろモモカあたりを出したいなと思ってたのですが、
ここは攻めの姿勢で新キャラを出すことにしました。
ダンテは何か一つの事に夢中になってるような、この漫画によく出てくるオタク系キャラですね。
コミュニケーションがとりづらいキャラというのはそれだけでツッコミがいがあるので作りやすいのかもしれないです。
イメージはビジュアル系アーティストのインタビュー(暗い部屋で椅子に座ってゆっくりポツポツと答えるような感じ)なんです。
それをエスカレートさせたらこんなんなっちゃいました。
個人的には好きなキャラです。
めんどくさいヤツだけど仲良くしてやって下さい。
第37話 リトルプリンセスは気分上々(ヒメコモモカ成長回)
第14話「リトルボスはご機嫌ななめ」を描いてた時に、この話を他のキャラ、例えばヒメコなんかでなったらどうなるのかなあと、なんとなくは思っていまして。
ボッスンの時とは逆にノリノリではしゃぐ感じも描いてみたかったんです。
子供っぽい動きは、甥っ子と遊んだ時のことを思い出して描いてました。
モモカを出したのはヒメコとの比較の為という意図もありますが、センターカラーの回だったのでどうせなら女キャラ二人の絵をメインに描こうかと。
華やかで女の子らしい、スケットには珍しいタイプのイラストになりました。
それにしてもいつも思いますが、1話につき19ページってあっという間なんですよ。
シーンをカットしたり構成を変えたり、1話完結の話をまとめるには毎回難儀しています。あと2ページあればなあ、とか。
でも原稿を描いてる時は、逆に「19ページ多っ!」と(笑)。
ページ数が増えるなんて考えたくもない。あと2ページ少なければなあ、と思いながら描いてます。
第38話 改じてくれよう桃太郎
ちょっと裏話をさせていただくと。
確かこの回のネームを描く時(ボクいつも普通に「ネーム」って言葉使っちゃってるけど、意味通じてるかな。
漫画の下書きというか、簡単な絵でコマ割りとかセリフを書いたラフの事ね)、ちょうど桜が咲いてる頃で、
アシスタントさん達と花見に行こうという話が持ち上がっていたんです。
でも、仕事が遅れたりネーム作業が進まなかったりすると休みが取れないので、ここらでちょっと楽に描ける話を描こうと。
ボクは原稿を描くのが遅い方なので、それほど時間をかけずに描ける回にしようと。
そんな発想から生まれたのがこの回でした。
要するに、お笑いでいうところのフリップネタというか、紙に描かれた絵にツッコんでいく系のネタですね。
絵を単純なモノにすれば原稿も早く終わるんじゃないかな、とかなんとか思った訳です。
いくつかパターンを考えながら結局紙しばいでいこうという事に。
結果的には言うほど楽にもならなかった訳ですが(笑)、ボケ倒す回は自分でも描いてて楽しいですし、
昔話を改編するのって子供の頃とかにもやってたので懐かしかったです。
あ、花見には無事に行けました。
第39話 オタクトオカルト
天敵同士のデートというネタ。結城さんお久しぶりです。
主義が真逆だから対立する事が多いけど、趣味に興じるマニアという点では共感し合ってるような、そんな関係の二人って感じでしょうか。
スイッチにはジャンルを問わずマニアックな友達が多そうですよね。何かに深く没頭してる人を全面的に肯定してるというか、
どこかに応援したい気持ちがあるんでしょう。
結城さんの「手を加えれば実は美人」という設定は以前から考えていたもので、実は初登場の第3話で小田倉君が、
「あのナチュラルな顔立ちは化粧をすると途端に化ける」とか言ってたりするんです。
いつかこんな感じの話を描けたらいいなと、おぼろげながらに思って忍ばせておいただけなんですが。念願叶って良かったです。
第40話 ランニングホームラン(子守回)
この回のネーム、実は連載前に描かれたものでした。
第13話「ファイティング・ペロリン」が2話目のネームとして描かれてお蔵入り。
この回は3話目として描かれてお蔵入りになったものです。
当然ですね。学園生活の助っ人とか言って全然生徒助けてねーじゃん!みたいな。
元々スケット団の部室にはソファが置かれるはずでした(読み切りでは既にソファがあります)。
でも、どうせなら徐々に部室に物が増えていく方が愛着感が湧いていいかなあと思って、ベンチからソファに切り替わる話を描いたんです。
ペロキャンのクジが当たってペロリン人形が置かれる話というのも同じ発想ですね。
だからそんな話、2話目や3話目でやるなっつーの(笑)。
今回ボッスンの変顔が初期に近いのは、昔のネームの影響が出たんだと思います。
ちなみに当時の話では、途中で誘拐犯が出てきてボッスンがスリングショットで…なんていう展開もありました。
なんとなくサブタイトルが気に入ってます。
第41話 兄・弟(振蔵兄弟回)
ぶっちゃけ繋ぎの回です。過去編への導入として描きました。
次からスイッチの過去話が始まる訳ですが、唐突に始まる訳にもいかないので何かしら兄弟の話をからめてそこから回想する構成にしたいな、と。
全く別の新キャラを出す案もあったのですが、ページ数の関係もあって既存のキャラを使わざるを得ない…
あ!じゃあ振蔵に弟を…みたいな流れでこうなりました。
話はベタですが、キャラの家族の話を描く事ってあまりなかったので新鮮でした。
振蔵はお兄さんキャラが意外と似合ってる気がしますね。
そしてスケット団には泥まみれがよく似合う。
第42話~44話 スイッチ・オフ
批判は覚悟の上で描きました。
スケット・ダンスの作風からすれば明らかに重い話ですし、人の死を扱う陰惨なエピソードだと思います。
キャラに感情移入している人は特に、出来れば読みたくなかった話なのではないでしょうか。
だけど、これらのエピソードは連載前から決めていた事でした。幼なじみやストーカー事件というような詳細は
後から考えたものですが、兄弟の死というのは設定として決定していた事なんです。
彼は何故喋らないのか。
スイッチというキャラを生み出した時点で、僕は一人の人間が言葉を閉ざすという事がどういう事なのかに
ついて向き合わなければなりませんでした。そしてそれはとても重い内容になるだろうし、そうしなければ
ならないとも思っていました。
連載開始前、スイッチのキャラ設定を煮詰めている段階で、兄弟の死と、そのエピソードを語る時の効果として
兄弟誤認の叙述トリックを思いつきました。
読み切りの時に「一義」だった名前を「和義」に変えたのはその為です。一という数字が付いてない方がやりやすいと思ったので。
しかし仕方のない事とは言え、他の話とのギャップが激しいですね。
特に後編は、ネームを読んだ担当が「想像の5倍くらい暗かった」と評したほど、これまでのスケットとはカラーが違います。
でも、僕にとってはこれが当初からのイメージでした。
多分僕の中に作家としてこういう側面があるんだと思います。
各話のジャンルやテンションを無視して色々なアプローチで描きたいという欲もあるのでしょう。
このエピソードを語る時期をいつにしようかという事も随分と考えていました。
個人的にはもっと早い段階で語るべきだったようにも思います。
僕自身、この話を描く事から逃げていた部分があって、描く前に連載が終わりを迎えるならそれでもいいとも思っていました。
続き物の話になるだろうし、ネームを描くのに時間がかかりそうなのでずっと先延ばしになっていたのですが、
GWで1週分休みが取れたので「ああ、このタイミングしかないな」と。
実際ネームの執筆中は精神的に楽しい訳もなく、また読者はどう思うだろうという迷いもありました。
だけど逃げずに描いて良かったと思っています。
ごめんよスイッチ。胸が痛かったよ。
後は頼んだぞ、ボッスン。
番外編 「リゾート・ダンス」
本編では夏を早々に終わらせてしまったという後悔がありまして。
連載開始後すぐに制服を夏服にしたのですが、あまり先の事を考えずに現実の季節に合わせて数カ月後に冬服仕様に戻したんです。
いつまでも夏服じゃおかしいしなあと律義に思ってしまって。
でも、ああ…夏っぽいイベントの話全然書かなかったなあ、とか(笑)。
正直言ってどうしようか困ってるんです。
このまま季節を進めるとアイツら進級しちゃう訳で、じゃあ生徒会長も引退?とか。
だから、一応本編では晩夏~初秋というところで時を止めてます(笑)。
果たして冬は来るのか、それともその辺の事全部ごまかして漫画らしく時間経過を無視するのか。
どうなるかまだわかりませんが、あまりツッコまないでいただけるとボク嬉しいなァ。
そんな訳で番外編。
夏をテーマにギャグ5ページという事で、描けなかった夏のネタを描く機会を得られました。
実は最初は、5ページという短さがちょうどいいと思って、「二人はナーバス!」の話を描いたんです。
二人がお互いの相手(婚約者、旦那)と海に出かけて、バッタリ会って何やかんや思い悩んで、その後最後の2コマぐらいで怪人を倒す☆みたいな…。
自分ではけっこう気に入ってたんですけど、担当に「ギャグ番外編でこの内容は…」とダメ出しされてボツに。
もうそれならいっそ全編水着でいこうと!
何を?しりとりを☆みたいな…。
これだけ女性の体を描くのも初めての作業だったので勉強になりました。
最終更新:2009年08月30日 11:58