光機能性プローブによるin vivo微小がん検出プロジェクト


スプレーするだけでがん細胞が光り出す蛍光試薬を開発
-外科・内視鏡手術における微小がん見落としの問題に大きく貢献-
JST 課題達成型基礎研究の一環として、東京大学 大学院医学系研究科の浦野 泰照 教授と米国国立衛生研究所(NIH)の小林 久隆 主任研究員は、外科手術時や内視鏡・腹腔鏡施術時に、がんの存在が疑われる部分にスプレーするだけで、1分前後でがん部位のみを鋭敏に検出できる試薬の開発に成功しました。

現在、PETやMRIなどの原理に基づくがん診断法が医療現場で利用されていますが、これらの手法では1cm以下の微小がんの検出は困難です。しかし、がんの再発を防ぐには、例えば、腹腔内に転移した1mm程度の微小がんを検出し、これを全て取り除くことが非常に重要です。現状では、特殊な光学系を採用した内視鏡などを用いて、手術者自身の経験に基づいてくまなく探す以外に方法がなく、微小がん部位の見落としや取り残しが大きな問題となっていました。

このようにがん手術の臨床現場では、微小がん部位の適確な検出法の確立が強く求められていました。今回研究者らは、がん細胞が持つ特殊な酵素活性を鋭敏に検出し、がん部位のみに強い蛍光色を付ける試薬の開発に成功しました。この試薬を溶解した水溶液をがんが疑われる部位に少量スプレーするだけで、数十秒~数分程度で手術者の目でも直接確認できるほどの強い蛍光が、がん部位から観察されることを、がんモデル動物を用いた実験で証明しました。このような局所散布による、短時間での鋭敏ながん部位可視化技術は、ほかに例のない世界初の技術です。

本研究成果は、外科手術時や近年実施例が急増している内視鏡・腹腔鏡下施術において、微小がん部位の発見や取り残しを防ぐ画期的な技術として、臨床応用が期待されるものです。現在、浦野教授を研究代表者とするJST 研究加速課題において、東京大学医学部附属病院、がん研究会有明病院、NIHと協同して、この蛍光試薬の効果の検証を患者体内から取り出したばかりのがんサンプルを用いて行っています。

本研究成果は、2011年11月23日(米国東部時間)発行の米国の医学科学誌「Science Translational Medicine」に掲載されます。

本成果は、以下の事業・研究領域・研究課題によって得られました。

戦略的創造研究推進事業 研究加速課題

研究課題名 「光機能性プローブによるin vivo微小がん検出プロジェクト」
研 究 者 浦野 泰照(東京大学 大学院医学系研究科 教授)
研究期間 平成22年1月~平成26年12月

上記研究課題では、モデルマウスでの成果・実績をもとに、開発した有機プローブ分子をヒトのがん診断に臨床応用するための基礎データ(前臨床データ)を収集するとともに、新たな有機プローブ分子の開発を行う研究を加速します。



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最終更新:2011年11月28日 21:18