あ、見てください。堂上教官」
館内警備中に郁が堂上を、小さく手招きをする。
警備中に何をやってんだ、お前。と、心の中でつぶやく堂上が近づいていくと、
郁の指差す方向に目を向けた。
「・・・カミツレか?」
「そうなんですよ。この前くらいから植えてるのを、柴崎が教えてくれたんです。
なんでも業務部の方から庭に新しく花を植えることになったらしくて」
無邪気に笑いながら郁がカミツレに見とれている。
「わかったから、行くぞ。カム」
「わん。・・・ってちょっと!いつまであたしのことを犬扱いしてるんですか!?
教官、あたしの事なんだと思って・・・」
「足はあるが頭が悪い犬・・・かな。二度もいわせるな。カム」
「もうっ。」
待ってください。堂上教官。
先に行く堂上に、まるで忠実な犬のようについていく郁。
ある出来事の後から、堂上は郁を犬扱いする。
―――教官の犬。
そんな卑猥な煩悩が郁の頭によぎる。
いやいや!何考えてるのあたし!!
郁は、煩悩を頭の外に出すように首をふった。
しかし、
「どうした?笠原」
「いえ!なんでもありません!」
煩悩の犬追えども去らず、
郁はこの後ずっと卑猥な煩悩を消すことができず、
堂上と目を合わせないようにしながら、
警備に戻った。
「すいません。」
図書館内の庭を警備していた所、
突然、声をかけられた。声をかけたのは、
愛犬のジェイクを連れた、初老の「上品な」女性。
前までなら、「上品そうな」女性と心の中で思っていた。
なぜならこの飼い主は以前、図書館内でマナーの悪さで、
一時期騒がせていた事があった。
連れてきた犬を、図書館の庭で放すのだ。
その間飼い主は、ベンチの上で本を読む。
彼女いわく、
犬を放してはいけない規則は書いてない。
気持ちいい庭を愛犬にも楽しませてあげたいと思って何が悪いの?
とのこと。――つまり、融通のきかないタチの悪い利用者だった。
以前までは。
――俺はな、素質のいい犬を駄目犬にしているあのバカ飼い主が心底許せないんだよ!
犬を放置プレイ(?)にしていた飼い主に、ついに堂上は見かねて、
飼い主にある賭を持ち込んだ。お互いの「犬」を徒競走させたのだ。
飼い主はもちろんご自慢の「犬」。
ジェイク ジャーマン・シェパード 成犬 ネコ目イヌ科イヌ属
対する堂上は足がご自慢の「犬」。
笠原 郁 純粋栽培乙女・茨城県産 人間 霊長目ヒト科ヒト属
対決カードの面白さも盛況に拍車をかけ、大勢のギャラリー(足フェチを含む)が見守る中、
堂上の策もあってか、「犬」である笠原郁が、
もとい、笠原犬が勝利したのである。
その出来事の後、決して負け犬の遠吠えを吐くことなく、
飼い主は犬のリードを放さないことを誓ってくれた。
今では、図書館利用者からも見直され、犬連れ愛読者として有名である。
そして今にいたるわけだった。
「すいません。」
再度、飼い主が声をかけ、堂上が答えた。
「どうなさいました?」
「実は、レファレンスをお願いしたいんですが・・・」
「レファレンスですか?でしたら、館内のカウンターで・・・っあ」
そこで堂上が気がつく。
飼い主は、愛犬のジェイクを連れているから、中に入れないことに。
「いつもはジェイクを置いて行くんだけど・・・、ねぇ」
あれ以来、マナーを守ってきた飼い主からしたら、気が引けるのだろう。
「そういうことでしたら、笠原」
「はい」
「すこし遠いが、ジェイクを庁舎の裏に連れて行ってくれ、
俺はレファレンスにあたる。」
「わかりました。」
「では、こちらへ。ちなみに、どのよな本をお求めで」
「ある人の、諸芸の本なんだけど・・・」
「たしかそれは先日、こちらで整理した際、奥の棚に変わりましたね。
すこし歩きますがよろしいですか?」
「ええ」
「ではまず、館内へ」
堂上が飼い主を案内しにいった。
「・・・ん?どうしたのジェイク?行こう」
郁がジェイクを庁舎の裏へと連れて行く途中のことだった。
ジェイクが突然立ち止まりそっぽを向いている。
こんなとき、どうすればいいんだろう?
1.リードを引き、無理矢理引っ張っていく
2.ジェイクがその気になるまで待つ
3.犬用のトレーニングコマンドを使用
「えっと・・・、ごー、すとれーと? ・・・って、きゃ!!」
いくら犬並の足を持つ、170cm級戦闘職種大女だろうと、
ジャーマン・シェパードの力と速さにはさすがに勝てない。
引っ張られる一方だ。
「わ、わっ!えっと、すてい!ステイ!ステーーーイ!!!」
声を上げて止める郁。さすが素質のある犬。
ピタッ。と止まり郁に振り返る。
「はぁ、はぁ。・・・と、止まったぁ・・・はぁ」
郁とジェイクの荒い息遣いが交差する。
どこまで引っ張られたんだろう。
周りを見渡すと、思ったより引っ張られたみたいだ。
塀と訓練道場の間まで来てしまっていた。
「もう。ダメじゃない、ジェイク。なんでこんな所まで・・・」
郁が叱ろうとジェイクを見るがどういうわけか、
ジェイクは郁周りをくるくると回り始めた。
「ちょっとジェイ、ひゃ!!」
目の前景色が変わる。仰向けに倒されたのだ。
ジェイクが郁周りを回った時、リードが足に絡まったのだ。
「コラ!ジェイク!!何やってるの!?いい加減、に・・・・・・っ!!」
しなさい、という言葉を飲み込んだ。
足に何かが当たっている。
思わず目をやると、ジェイクの「ソレ」が押しつけられていた。
その場にはもう、ジェイクの荒い息遣いしか聞こえなかった。
「ちょ!ま、待ってジェイク!?とりあえず離れ・・・きゃ!!」
リードが巻きついているためか、思うように足が動かない。
何とか上半身の動きだけで逃げようとしたが、ジェイクが体の上にのし掛かり、
それすらも叶わない。
「何でこ、んなこと、になんてんのよ。あっ・・・んんっ!!」
違和感を感じた。
転けた拍子にスカートが捲れたのだろうか。
さっきから押しつけている「ソレ」を足の下から上へ上へと、
擦りあげてゆき、探し当てたかのように、
郁の秘処を下着越しに「ソレ」を擦っていく。
「あぅ…やぁっ!お願い!、やめて、やだぁ……」
ジェイクはお構いなしに腰を振っていく。
段々――速くなってる。
どうしよう・・・。訓練道場からは声が聞こえない。
いや、もし聞こえてもこんな所、誰にも見せれない。
こんな所見られでもしたら、翌日には荷物をまとめ、実家に帰るだろう。
犬に欲情され、押し倒され、襲われている。
堂上教官が見たらなんて思うだろう。
仮にも、あたしは堂上教官の彼女だ。
彼女が犬に襲われている所を見たら・・・。
「んっ!!あっ…そ、んな、ダメだってばぁ…っ!!」
しかし、心で思っても体は正直になってきた。
下着が濡れているのは、ジェイクのせいだけではなくなってきた。
ジェイクと郁の息遣いに、水音が交じる。
・・・くっちゃ、・・・くちゃ。
「はぁ、ぁあ!・・・い、ぁっ!・・・はぁ、はぁ・・・んぁ!!」
思えば堂上教官と体を交えたのはずっと前になる。
スポーツブラ事件以来、何度かは経験を重ねたが、
最近はご無沙汰で、キスも恋しくなっていた。
「そ、・・・ぁっ。そんな。・・・あ!・・・・・・ジェイクに・・・」
・・・犬に襲われ、感じてるなんて。
あたしは・・・堂上教官の・・・。
―――教官の犬。
「んぁ!!はぁ!ぁ、ぁあ!やぁ!・・・っあ!!」
何を考えているんだあたし!
早く何とかしないといけないのに!
今にも堂上教官が飼い主と、レファレンスを終えてくるだろう。
そして、庁舎の裏にいるないと知るや、きっと探しに来るだろう。
自分たちの犬を探しに・・・。
煩悩の犬追えども去らず
「んぁ、・・・あぁ!!」
もはや罪悪感も、負い目も、快感を後押しする。
下着越しにもかかわらず、絶頂へと登り続けていった。
ごめんなさい。どうじょうきょうかん。
あたし、もう・・・だめです。
「はあ!ふっ、・・・ぁぁ、イ、イッちゃう。イク!!・・・っんああ!!」
郁が果てたと同時に、ジェイクもまた、自身の「ソレ」から精液を、
郁の下着に、足に、服装に撒き散らした。
「はぁ・・・ぁ、はぁ、・・・はぁ・・・」
後になって罪悪感と後悔が追いついてきた。
しかし、まだジェイクは腰を振り続けている。性欲が尽きないのだろう。
きっとそれは、この状況が発見されるまで続くだろう。
郁はもう、意識が遠のいていった。
「きょ、・・・っん。・・・かん。」
ごめんなさい。きょうかん。
こんな・・・・・・淫乱な・・・いぬで・・・。
・・・でもね。
薄らいでいく意識の中で、郁は・・・つぶやいた。
「ジェ・・・、ジェイクの・・・はぁ、きょうかんの・・・より・・・」
・・・大きっかったなぁ。
最終更新:2010年06月20日 20:36