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「光稀さん……お願いがあるんだ」
真剣な顔で高巳が言う。
デートを重ね(勿論ちゃんと2回目からは外泊を申請している)
いつの間にか『そういう関係』になり、そしてコトを終えた後、気を失うように眠りについてしまうのが光稀の常だった。
その光稀が目を覚ますと、隣に寝ていた高巳が急に体を起こして先のセリフを言い出したのだ。
「なんだ?」
さりげなくシーツで体を覆いながら尋ねる。
「そんな隠さなくても。光稀さんのカラダならもう何回も……」
「うるさい。それとこれとは話が別だ」
いきなり別の話になりそうな高巳のセリフを問答無用でぶった斬り睨むが、きっと半分照れ隠しなのはバレているだろう。
同じだと思うけどなーとぼやく高巳を再度ひと睨みしつつ先を促す。
「で、なんだ?」
「シャツ着てみない?」
真剣な表情から相変わらずの笑顔になった高巳が言った。
「は?」
意味が分からない。 シャツ?
「そ。シャツ」
言いながらごそごそとベッドから這い降り、なにやら自分の荷物を物色し
ている。
やがて目当てのものが見つかったのか光稀の元に戻って来た。
「これ」
そう言って高巳が差し出したのは、確かにシャツだった。
なんの変哲もない高巳のYシャツである。
「……これ……?」
戸惑ったように言ってとりあえず受け取る。
広げてみるがごくごく普通の白いシャツだ。
着ろと言われば、まあ別に構わない。
「……いいけど」
言いながら手探りで下着を掴み付けようとした時、いきなり高巳から待っ
たがかかる。
「なんなんだ?一体」
着ろと言ったり待てと言ったり。
怪訝な顔で高巳を見やる。
「そのまま着てほしいなー、なんて」
と高巳は能天気な笑顔のままで言った。
「………………」
このまま――素肌の上に着ろというのか。
下着も無しに。 困惑したままどうして良いか分からず手が止まった。
「どうしてこのままなんだ?」
ひとまず訊いてみることにする。
対する高巳の答えは、
「男のロマンだからね」
ますます意味が分からない。ろまん?
「寝起きの恋人が素肌に男モノの大きめのシャツ。そこはかとない色気がたまらないよね」
うんうん。と勝手に納得して頷いている高巳を呆れた目でみる。
この男は毎度毎度下らないことを。
「駄目?」
完全に手が止まった光稀を見て、やや残念そうな表情で見つめてくる高巳。
ずるい。そんな顔をされたら――
「……着ればいいんだろ、着れば!」
噛みつくように怒鳴り自棄になったように乱暴な手つきで高巳のシャツを羽織った。
なんだかんだと言って高巳のお願いには逆らえないところが悔しくて、せめてもの抵抗として不機嫌な顔でそっぽを向いてやったのだった。
最終更新:2008年09月23日 22:54